3IN-IN INvisible INnerworld-

ゆなお

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if六章【決着】

if四十六話 闇と光が交わるとき

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 目を覚ますとそこに闇の化身はいなかった。
「倒せたのか?」
 ヴィッツがそう言うと隣にいたティアスが
「はい、恐らく」
 と答える。
「!! グレイ! グレイは!?」
 ヴィッツは立ち上がり辺りを見回す。すると少し離れたところに他の皆が集まっている。慌てて二人が駆け寄ると、そこには胸の辺りに傷がつき、血が付いたグレイが倒れていた。
「ま、まさか……」
 ヴィッツがそう言うとカルロが
「ブレッシングアース!」
 と唱える。すると傷口がふさがった。そして
「傷が治ったってことは、生きてるってことだ。兄貴自体は生きてる! 大丈夫だ!」
 そう言ってヴィッツに抱き着いた。頭を撫でながら
「よくやったよ! 兄貴の心臓は貫かないで化身の心臓だけ貫けた。ヴィッツも姉貴も、ありがとうな」
 と言ってヴィッツから離れる。しばらくグレイの様子を見ていると、ようやく意識が戻ったらしく目を開けた。
「うっ……化身の一部に飲み込まれて、そこから急に意識がなくなって……。俺は、化身から逃れられた、のか?」
 と不思議そうな顔をする。ヴィッツは膝をついてグレイの額に自身の額を当てて
「そうだよ。俺とティアスでなんとか助けられた。お前を一人だけ死なせやしない。そうだろ? 相棒」
 そう言ってヴィッツはグレイが闇の化身に飲み込まれてからの経緯を話す。グレイは
「む、そうだったのか。何の力にもなれないどころか迷惑をかけてしまった。すまない」
 と言った。それに対してヴィッツは
「んなこたぁねーよ。俺だって想定外の出来事だった。とにかくグレイが無事で本当によかった。まあ怪我はさせちまったが、助けることが出来て本当によかった」
 ヴィッツはグレイから離れ、立ち上がると
「皆にも苦労させちまったな。特にナスティ。お前がいなかったら本当にお手上げだった。お前の静の魔法、本当に役に立ったよ」
 と言って全員に礼を言った後、ナスティに感謝する。ナスティは
「はい! 凄く魔力使いましたが、私の魔法が役に立ってよかったです! でも、やっぱり疲れちゃいましたね、あはは……」
 と笑いながらペタンと座り込んでしまった。
「皆をこき使っちまうが、少し休んだらまた儀式を一からやり直しだ」
 そう言ってヴィッツも座り込む。
「いやはや、波瀾万丈な戦いだったけど、丸く収まってよかったな」
 ブルーがそう言うと
「あーお前たちがいたから時間かけずにあそこまで削れた。多分俺だけで他の皆は地上戦じゃあ結構時間かかってた。そういう意味でも本当助かったよ。ってああ、ストナは元に戻っちまったか」
 ヴィッツはブルーに話しかけたあと、ストナに声をかけた。
「場の属性が治まったから、力は抜けた」
 そう言ってぺたんと座り込む。
「少しくらいなら休んでも大丈夫よね?」
 スティアが聞くと
「一分一秒争ってるわけじゃねぇ。ただ、一回失敗しちまってるから崩壊の段階は進んでるな。でもまだ大丈夫だ。なあ、二人とも力の注ぎ具合は分かったよな?」
 とヴィッツは答えつつ、ティアスとグレイに聞くと二人はうなずいた。
「今度こそ失敗しないように努めます」
「俺も細心の注意を払う」
 こうして八人で雑談しながら休憩を取り、そして再度儀式の場へと向かった。最初と同じ配置に立ち、儀式を始めた。天秤を呼び出しヴィッツが両手で持つ。
「これより光と闇の均衡を保つための儀式を開始する。結界を」
 ヴィッツの合図に合わせて五人が結界を張る。ティアスとグレイは杖を握り祈りを込めた。天秤は水平が保たれている。
「そのまま……同じ力で祈り続けて……」
 こうして二人は祈り続ける。そして数分後、天秤の皿の白と黒の光は浮かび上がり、両者が混ざり合う。そして灰色の光となり、そのまま台の水の中に入り込んだ。天秤も姿を消した。ヴィッツが
「これで……成功、か?」
 と思った瞬間、台の水が波打ち弾ける。そして、次の瞬間、台とナスティの間に一人の青年が倒れていた。
「わっ! 急に目の前に人が現れましたよ! 転送事故とかですか?」
 ナスティが驚いていると
「そりゃねーな。人間はこの海域にはあの魔法陣以外で来れねぇ場所だ。さっき、台の水が動いたよな? ってことはもしかして……」
 そうヴィッツが言っていると青年が
「う、うう……」
 と頭を上げて上半身を起こす。周りを見回して
「あれ、儀式の場……」
 と言いながらヴィッツを見るや否や
「あ! あれ! なんで俺以外の竜人がいるんだよ!」
 と言った。それを聞いてヴィッツは
「ま、まさか……。千年前の……竜人?」
 と聞く。すると
「千年前? あ、えーと……あっ! そういうことか!」
 と青年は立ち上がり自己紹介を始めた。
「俺はティルト。ティルト・テイラー。竜リンドヴルムと賢者マリノアールとの間に生まれた竜人だ。俺の時代で光を司る者がいなくなっちまってな。本当ならあとちょっと時間がずれてたら、光を司る者さえ見つかれば儀式を無事終わらせることが出来たんだ。でも間に合わなかった。だから俺たち仲間で俺が犠牲になって千年分の闇の力を受け取って、天秤の光を調整することにした。天秤そのものになり、千年間だけだが均衡を保ち続けることにした。ちょうどその儀式を始めるときだったかな。そこにいる水色の髪の魚人がこの縁の水面から顔出してさ、俺たちの様子を見に来た。だから俺は言ったんだ『この儀式は千年しか持たないから、千年後に俺たちの時代の光を司る者が目覚めるから何とかしてくれ』ってな。元々、ここルードリー海域にはルードリー海の奥底に生きる魚人がいたから、そいつは転送無しでもこの場所に来れる。でも魚人じゃ陸に上がれないから、俺の力で陸に上がれる魔法をかけた。そしていなくなってから俺は天秤の役割になって千年間ずっとバランスとりながら封印されてた。そして目覚めたってことは千年経ったってことだな?」
 ティルトの話に
「あ、ああ。ついさっき、天秤に乗ってた白と黒が合わさって、灰色になって水の中に入った」
 とヴィッツが話すと
「おー! つまりは均衡が保たれたってことか! いやぁー、千年間護り続けた甲斐があった! そういや千年後……あ、いや今の時代の竜人。お前の名前教えてもらっていいか?」
 と聞いてきたため
「俺はヴィッツ。ヴィッツ・ウェアルド。父さんは同じ、母さんは賢者イアリティーナだ」
 と答えた。そして
「でもさ、父さんが同じってことはティルトは俺の兄さんってことか?」
 ヴィッツがそう言うと
「んー、どうだろうな。腹違いの兄弟ってことになんのかな? 俺はお前たちからすると千年前の人間だが、年齢は二十二だな」
 とティルトが言い
「俺より二歳上かぁ」
「お前は二十歳か」
「ああ、そうだよ」
 と二人は会話する。
「俺の千年間の役目も終わったし……ってその後のこと何も考えてなかったな!」
 とティルトが言う。
「元の時代には戻れないのかしら」
 ミーンの問いに対して
「そりゃあ俺自体帰ることはできるっちゃあ出来るが。お前とそっちの光を司る者は過去に戻るんだろ? それなら俺たち兄弟の力が必要になる。ヴィッツと二人でお前たちを元居た時代に戻せる。ただし使えるのは一度限りだ。しかも一人を送るのに一人の力が必要だから、二人とも戻るならなおさら俺とヴィッツの力が必要になる」
 と説明する。
「えっ……。私たちが過去に戻るために必要なのは、竜人二人の力だったの?」
 ミーンは驚いた。
「なんだ。帰る方法も調べずに戻れるつもりでいたのか」
 ティルトが呆れた様子で話す。
「私はてっきり、時空の歪みのように過去に戻れる場所があるのかと思っていた。ここにあるって。はぁ……まさかの大失態だわ」
 ミーンが頭を抱えてるとヴィッツが
「俺はまあ元々この時代の竜人だからよ、このまま残るから使っても問題ねぇ。でもティルトはどうするんだ? 貴重な元の時代に戻れる魔法、二人に使っちまうのか?」
 とティルトに聞く。ティルトは笑いながら
「今更戻ったって仕方ねーしな! せっかく貴重な弟と出会えたんだ、俺はこの時代に残るぜ!」
 と言う。
「っつーわけでティアスとミーンは過去に戻れるってよ。とりあえず、なんだ。外に出ようぜ」
 とヴィッツは竜人の姿のまま外に出る。それに続いてティルトやミーンたちも外に出た。外で待っていたブルーたちを見て
「おおっ? 珍しいもんが見えるぞ。翼を持つ者に人を監視するものか。こりゃまた凄いの引き連れてたんだなぁ」
 感心するティルトにヴィッツは事情はあとで話すと説明し、ミーンとティアスを送る話をする。
「二人を過去に転送できるのはこの場所だけだ。だから一度街に戻ってからまたここに来てってのは出来ない。儀式が完了した後、この場所は人がいなくなれば封印される。ティアスにミーン、戻る覚悟出来たか?」
 二人に確認する。
「少し、姫と話をさせて」
 と時間が欲しいことを願ってきたのでヴィッツとティルトは待つことにした。しばらくティアスとミーンが話し合い、そしてこちらに戻ってきた。そして
「ティルトの貴重な転送魔法を使ってしまうけど、ヴィッツと二人で私と姫を元の時代に戻してほしい。どうかお願い……」
「ヴィッツ。今までありがとうございました。私は私の罪を背負い、そして過去に戻って女王としての責務を全うします。もし生まれ変わって再び出会えたら、その時今の記憶があるのなら……嬉しいです」
 と二人は言った。ヴィッツはティアスに対して
「そうだな。その頃に記憶があれば、もし見かけたら声かけてくれよな」
 と言った。ティアスは微笑みながらヴィッツの前に立つ。そしてミーンもティルトの前に立った。そして他の皆の方を見て
「皆、ここまでありがとう……。もしかしたら生まれ変わって会えるかもしれないし、記憶を忘れて時代も違って会えないかもしれない。でも皆との旅は楽しかったわ。本当に、ありがとう……」
 とミーンが言う。続けてティアスも
「私も、皆さんに会えて本当に良かったです。特にグレイ。貴方の中で過ごした二十七年間、貴方を護れてよかった」
 と言う。そんな二人に
「姉貴にミーン。元気でな! つってもまあこの時代から数えりゃ過去だから俺らからすると生まれ変わってもすぐなんだろうな。二人にとっちゃ長い長い時間かけての転生だろうけど、まあまた会えたら嬉しいよ」
 とカルロが言い
「ふふっ。最初に会った時はびっくりするような人だったけど。ミーンも結構丸くなったわよね。ティアスも色々あったわね。二人とも元気でね」
 とスティアが言い
「ミーンの子供とはずいぶん違う年齢になっちゃったけど、短い子供時代に色々話出来たりして楽しかったし。大人の姿になってからも色々教えてもらった。ティアスは僕より大人っぽかったのに、すっかり子供になっちゃったね。でもいずれは王位を継ぐんだよね。大変だろうけど頑張って」
 とザントが言い
「ミーンさんからもっと料理を教えてもらえばよかったなって思いました! 私もいずれは料理がまともに作れるようにがんばりたいです! ティアスとは同じ仕事仲間だった時期もありました。色々難しい任務も一緒にしましたよね! 私はもう戦うことはなくなるでしょうが、再会できることがあればお二人にちゃんとした料理を振舞ってみたいです!」
 とナスティが言い
「ミーン。お前には色々過去の件で教えてもらったな。遠回りの過去巡りだったが、ある意味それが正解だったと俺は思う。それとティアス。お前とは二十七年の付き合いだった。でも今は別々の人間だ。王位継承、しっかりしろよ。達者でな」
 とグレイが言った。
「よし、全員挨拶終わったな。それじゃあ俺とティルトでティアスとミーンを過去に戻す。俺の準備は出来てる。ティルトはどうだ?」
 ヴィッツがティルトに言うと
「アディル シアーザ!」
 と唱えて竜人の姿に変わる。ヴィッツと違うところと言えば角の数が一本な所だ。
「本来なら同じ年に一人しかいないはずの竜人が二人もいる。圧巻ね」
 ミーンがそう言うと
「まあまあ、細かいことは気にするな。それじゃヴィッツいくぞ!」
「ああ、ティルト。二人を元の時代に戻そう!」
 ティルトとヴィッツは二人から距離を取り、呪文を唱えた。
「「時の流れを遡りしこの瞬間。いざ行かん! 時の扉!」」
 するとミーンとティアスに光が集まり玉となり、そして次の瞬間弾けて二人の姿は消えた。しんと静まる。ヴィッツとティルトは変身を解き、しばらくして
「これで、ティアスもミーンも元の時代に帰っちまったんだな……」
 と寂しそうにつぶやくヴィッツに
「大丈夫だ! あいつらが過去に戻ったってことは、早ければこの瞬間にこの時代に生まれ変わってるはずだ。十年以上すればどこかで会えるかもしれない。まあ記憶の有無は分からんがな」
 とティルトが言う。ヴィッツの隣にグレイが来て
「寂しくなるな。だが、俺たちにはまだやることがある。いや、これからが本当の意味での『生きる』ことになる。さあ、行こう」
 と励ました。
「そうだな。よーし! 皆、役目は終わった! ここから出るのは簡単だ。なんか忘れ物とかねぇな?」
 すると
「ちょっと待て」
 とグレイが儀式の場に戻り、しばらくして杖を二本持ってきた。一つはグレイの闇の杖、そして
「そっちはティアスの光の杖か」
 とヴィッツが言った。
「あいつには持ち帰る必要のない物だ。だから置いて行ったんだろう、次の時代のために」
 グレイの説明に
「そうだな。過去に持ち帰っても意味がねーもんな。なあ、グレイ。お前に頼みたい。その二つの杖をサウザント城で預かってもらえるか。竜人とか光と闇のバランスがどうのこうのって説明は俺とティルトでするからよ。本当の意味を国の中で伝えていってほしいんだ」
 とヴィッツが返す。それに対してグレイは
「ああ、分かった。お前の頼みなら聞き入れよう」
 そう返事をした。そんなやり取りを見ていたカルロは
「それ、親父にもだが俺に一番最初に言うことじゃねぇかな? 俺、次期国王だぞ? 俺が後世に引き継ぐ必要がある内容だぞ? そこんとこ忘れんなよ!」
 と指摘する。ヴィッツは
「そういやそうだな。忘れてたわ。わりぃ」
 と言い、ティルトは
「へぇ、サウザントの次期国王が仲間にいたのか」
 とカルロを眺める。
「まあこれ以上は後でも出来る話だ。とにかく一回、サウザントにでも戻ろう。ティルトは転送魔法でサウザントには行けるか?」
 ヴィッツがそう聞くと
「ああ、千年前だがサウザントは訪れた。あの城は特殊なんだっけか。確かキーコインとかいうものをもらった」
 とティルトは腰の袋から取り出す。それは今とは形が少し違うキーコインだった。するとカルロが
「お、おおお! 千年前のキーコイン! いや、もらった時点でもっと前かもしれねぇ! 今、城に残ってんのは七百年くらい前のものから今現在作られてる物しかねえ! 千年以上前は貴重だ! 使えるか試したいところだ。よし、一度街の入り口辺りに戻ろう!」
 と感動しつつ、全員でサウザントの街に帰ることにした。こうして一行はサウザントの街に戻った。かろうじて夕闇が広がる時間帯に、全員で城に向かう。門番が
「あれ、人数が少し減りましたか? あと見知らぬ方もいらっしゃいますが……」
 と聞いてくる。カルロは
「ちと事情があってな。あとこっちの人はその、大昔のキーコインを持ってるんだが、それが今でも使えるか試してもいいか」
 と言う。
「はい。大昔というと七百年くらい前のですか?」
 門番の問いに
「それがだな、千年以上前のなんだ」
 とカルロが言うと
「えっ! 千年も前のキーコインがまだ存在してるんですか!」
 と驚く。
「だから使えるか試したいんだ。もしかすると異常が発生して警告音が鳴るかもしれねぇから、ちょっと試してみたい」
 カルロの説明に
「分かりました。警報が鳴った場合は上に連絡しますので、どうぞ試してください」
 と門番が言う。
「わりぃな。ティルト! ちょっとそのキーコイン持って門をくぐってみてくれ」
 カルロがそう言うと
「ああ。警報ならしたらすまないな。じゃあちょっと通してもらうぜ」
 と言ってティルトは門をくぐる。すると警告音は鳴らなかったが
『更新されてないキーコインが発見されました。直ちに情報更新をお願いします』
 とアナウンスが流れた。
「お、おお! 認識はしてるが情報が古くてこのままじゃ使えないってことか! よし! 俺がちと調整してくるから皆待ってろ! ティルトのキーコイン、借りるぜ!」
「分かった」
 ティルトはカルロにキーコインを渡し、カルロは中に入ってキーコインの管理所へと向かう。そして十分ほどして帰ってきた。
「いやぁ、キーコイン管理所の奴らも珍しすぎて見せて見せての大合唱だった、とにかく急ぎで使えるように更新してくれって頼んでなんとか戻って来れた。ゆっくりできたらでいい、後でキーコイン管理所の奴らにそれ見せてやってくれ」
 とカルロはティルトにキーコインを戻す。
「はは、流石にこんな古いの持ってたら興味示すよな。とにかく俺は千年封印されて働きづめだった。千年ぶりにベッドで寝たいよ」
 キーコインを受け取ったティルトはそう言って笑う。こうして城の中に全員入り、謁見の間でディア王に今までの報告をする。話を聞いていたディア王は
「そうか……そういうことであったか。ミーンとティアスは、元の時代に戻ってしまったのだな。そしてヴィッツ。君が竜人だったのだね。世界の均衡を保ってくれて本当に感謝しかない。ありがとう。だが、私の聞いていた伝承と食い違いがあるな」
 と言って考え込んだ。
「まあ千年も前の言い伝えだからな。記録した人間が聞き間違えたのもあるだろう。ディア国王、そしてカルロ。俺とティルトで本来の光と闇の歴史を説明するから、それを記録して今後起こるかもしれない光と闇のバランスの維持に役立てて欲しいんだ」
 とヴィッツが言うと
「いやはや、竜人本人。しかも千年前と現在の二人の竜人から話が聞けるとは、他の時代でも体験しないことだろう。皆がゆっくり休息を取り、時間が出来たら私とカルロ、そして歴史管理部門で詳細をまとめさせてもらおう。勇士たち、よく頑張ってくれた。と称えて今すぐに休息を取って、明日には宴を開こう」
 ディア王がそういうと
「おっと、ちょっと待った。親父にくらいは見せても大丈夫だよな?」
 とカルロが声をかけると
「そうだな。この城に街、研究し甲斐がある。しばらく滞在していいなら見せてもいいだろう」
 とブルーが言う。他の三人も同じようで
「よし、親父にも紹介しよう。ブルーたち、出てきてくれ」
 とカルロが言うと、カルロの両端にブルーたちが現れた。それを見たディア王は
「こ、この白い翼と黒い翼を持つ者たちは一体……」
 と驚く。カルロは
「あー話すと長いんで詳しいことは明日の宴で話すけど。まあ翼を持つ者っていう特殊な存在らしい」
 と説明する。すると閉じた扉からスッと
「私も居る」
 とストナが現れた。
「いっ、今この子供は扉を通り抜けた!?」
 さらに驚くディア王に
「これまた説明が長くなるんで後回しなんだが、まあ人間じゃないとだけ説明しておくよ」
 とカルロはさらっと言った。
「お前が何を言っていて、この者たちが何者なのかは分からんが……。少なくともお前と旅をした仲間である、とだけは分かった。ならば明日の宴にでも詳しく聞こうではないか」
 とディア王が言い、カルロとナスティ以外は客室へと案内された。そして一夜明け、昼には魔法科学研究所の面々も加わり盛大に宴が行われた。宴の席ではディア王とナスティが話をする。実家に帰り、普通に働いてそばで親孝行する話をした。名残惜しいが、ディア王はナスティの意思を尊重して別れを告げる。グレイはディア王の下で魔法科学研究所で働くことを改めて話す。カルロとスティアはお互いの約束をする。そしてディア王に対してスティアは一度アルデナス城に戻り婚儀の話を家族ですると話した。そして前日のブルーたちとストナの話を必死に説明するカルロの姿があった。ザントは黙々と料理を食べるが、その様子は少し寂しそうだった。ヴィッツが
「どうした、ザント。いつもの勢いがねーぞ?」
 と言うとヴィッツの方に顔を向け
「うん。僕が小さかった頃、ミーンって僕に結構優しくしてくれた。近い年頃の子供が居るから思い出してたたんだろうね。まあ大きくなってからの方が一緒にいた時間が長かったけど。ミーンがここにいないのがこんなに寂しいものだって、僕は改めて気付いたんだ。ほら、ミーンって大体いつも中心にいたじゃない。そんな仲間の柱だった彼女がいなくなったのが、寂しいなって思ったんだ」
 とザントは言う。それに対してヴィッツは
「そうだな。何かとうるさいヤツだったけど、あいつが今まで引っ張ってきてくれたから俺たちの旅は成立したようなもんだ。でもそれ以上に一緒に居た仲間だもんな。もう会えねーのは、たしかに寂しいよ。でもどこかでまた会えるさ。特にお前はエルフで長寿だ。俺より会うチャンスはでかいんじゃねーかな」
 と笑う。
「そうだね。悲しんでばかりもいられない。僕はカルロの側近として働くことを決めたんだ。少しでもカルロの役に立ちたくてね、そんな話を二人でしてたんだ」
 ザントがそう言うと
「なんだ、お前らいつの間にそんなに仲良くなってたんだ?」
 ヴィッツが不思議そうな顔をする。
「まあ、あのお酒の件から、かな」
 とザントは笑う。
「あー、セルヴィーテでのあの件かぁ」
 とヴィッツが言うと後ろから
「おい、ヴィッツー!」
 とティルトがやってきた。
「ああ、ティルト……あ、いや。兄貴とか兄さんって呼んだ方がいいのか?」
 ヴィッツが悩んでいると
「何でもいいよ。それより俺はこの時代じゃ全く交流がなくってよ。良かったら二人と一緒に食いながら雑談してもいいか?」
 とティルトが加わってきた。
「うん、僕は大歓迎だよ。特に千年前の生活とか、旅の話とか色々聞いてみたいからね」
 ザントはそう言ってティルトを迎え入れる。
「そうだな。じゃあティルト、一緒にうまい飯食おうぜ!」
 ヴィッツもそう言って三人で色々と雑談しながら食事を楽しんだ。こうして宴も無事終わり、各自それぞれの役割を果たした。
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