邪な令嬢ちゃん

ますくばろん

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置き去り 4

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「落ち着きましたか?」
「――申し訳ございません。ティアマト様」
「あー……一応は人のふりしてるので、ティアって呼んでください」
「御意」

 なんというチンピラから狂信者化したチンピラ君改めヴィスタ君。

「あとそれ気持ち悪いからやめて。普通に、してください」
「はいっす」

 私ってば魔法を扱う者からする崇拝とかするほど慕われてるんだとか。
 深淵の最果て、あるいは底に行きつけば私にあえて契約できるとか。
 知りませんよそんな事……。
 だいたいあちらで漂ってる時に生身で私の前に立った人間とか――数人いますね。
 あー思い出した。
 珍しいから印付けたんだ。なんとなく。
 まぁいいです。そんな事

「さて、と。ヴィスタ君。もう一度聞くけど。私襲えって依頼したのはアレで間違いないですね?」
「そうっす。えーっと名前はエリエル? でしたっけ?」
「確かそんな感じです。で、あなたのお仲間さんはそっちも襲うと」
「うっす。そーいう手筈になってます。で捕まえた後、身代金をふんだくると言ってました」
「私は襲われてから、そこそこ時間がたってますから。もう襲われたころ合いですかね?」
「そーっすね。今頃は楽しんでるんじゃないっすか?」

 犯されも別にどうでもいいんですが……。
 まだ迷ってるんですよね。

 あの家に戻るか戻らないか。
 戻るなら面倒ですがアレを回収した後に帰らないと、私だけだと面倒になる。
 戻らないのであれば、このまま姿をくらませればいい。
 誰も探したりしないでしょうから。

 でも……あの子の事思うとねぇ。

 私を慕う、あの家で数少ない
 家族と思うべきなんでしょうが、私にとって家族は呼べるのは『お母さん』だけです。

 でも、この髪を褒めてくれた二人目の存在でもある彼女。
 名前はディアナ。
 陽だまりのように優しい笑顔を向けてくれる。
 これもお母さんに続いて二人目ですね。

 うー……邪神たる私がこのような事で悩むとは。

「どうしたんすか? 難しい顔して」
「家に戻るか戻らないか、悩んでましてね」
「はぁ?」

 とキョトンとした顔のヴィスタ君。間の抜けた返事の後に彼はこう続けました。

「帰る家があるんでしたら帰った方が、いいじゃないっすかね?」

「その心は?」と聞いてみる。

「俺にはもうそーいった家がないっすから。あーいうのって無くなった時に『ああ、大事な場所だったんだな』と思ったからですかね」
「そういうもんですか?」
「たぶん……あっ! あと帰りを待ってくれてる人がいるなら、とか」
「それなら何となくですが、わかる気がしますね。待ってるかどうかはしりませんが」
「え? ティア様のお力なら簡単にわかるんじゃないんですか?」
「――ヴィスタ君。いいですか? 例え神でも、全てがわかってしまうと退屈と暇で死んじゃうんですよ?」
「それほんとなんすか?」
「さぁ――どうでしょう」

 そこで話を切り上げ騒いでるヴィスタ君を、無視して行動する事にしましょう。

 私のとる行動は……あの子、ディアナいる処へ帰る事です。

「んじゃ」と声に出しながら立ち上がり――

「――差し当たりバカというか間抜けを、回収しに行きますかね」

 と、まだ騒いでいるヴィスタ君に告げる。


 でも、ヴィスタ君以外の二人を思い出すと、頭の悪そうな感じでしたからね。
 正直な感想言えば、アレは無事なんじゃないかと。

「とりあえず、ヴィスタ君。襲撃地点まで案内してください」

「り、了解っす」と何故か慌てた様子。
 ちょっと気になりましたが……まぁいいでしょう。

 それから、私達は川辺から元来た道をたどり襲撃予定地を目指しました。
 その場所は私が襲われた地点からそう離れてない場所で、すぐに到着する事に。

「これは――」と言いつつ現場を見渡します。

 四体? でしょうか。正確な数がわからないほど食い散らかされたがあります。
 というか、現在進行形で喰われてるます。

「ティ、ティア様……夜天狼ですよぉ」と私の横で震えながら声を潜めて状況説明をしてくれますが、

「ヤテンロ? なんですか? それ」
「――っ! 声っ!」
「ん?」

 口に人差し指を立ててシーっという仕草をするヴィスタ君。
 それから、死体っぽいモノに群がる黒い毛玉を指さします。

「あの犬っころがどうしたんですか?」
「犬じゃないですよ! 狼です! それもとびきり質の悪い!!?」

「ふーん」と言ってから茂みから出て犬っころが燥ぐ場所に行ってみる事にします。

「ちょっ! ティア様!?」

 ヴィスタ君は無視です。
 ある程度近づくと毛玉が一斉にこちらを向きます。
 中には人の腕っぽいモノを加えたままのも、いますね。

「グルルルルッ」と唸ってますが……可愛いですね。

 しかし、所詮は犬畜生ですね。
 どちらが上かわかってないようです。
 私、なめられるのはあんまり好きじゃないので、ここはガツンと行きますか。

 スーッと大きく息を吸い込み――

「おすわりっ!!!!」

 と魔力込めて威圧マシマシでそう声を張り上げました。
 魔力のこもったその声で地面若干爆ぜると、黒い犬っころ達は皆跳ね上がる様にしてから、姿勢正しく犬のようにおすわりをします。

「うん。わかればよろしい。伏せっ!」と言えばちゃんと伏せます。

「よしっ!」

 そう言うと先ほどの唸り声ではなく、尻尾振りながら「くぅぅん」と可愛らしい声を上げながら一斉に私に群がってきました。

「ちょ! どこに鼻ツッコんですんですか!!? やめ! なめるんじゃない! 血が、服にっ! もう可愛いじゃないですか! 君たち!? アハッ!」

 可愛らしいので、しばし黒い犬っころとじゃれる事にしました。

 後ろの方でヴィスタ君が何か言っていたようですが……無視です!



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