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嵐の足音
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いよいよ、今日が作戦決行日だ。
「さて。これで問題はないな。アイカ、最終チェック」
「了解。……燃料、弾薬、シールドエネルギー、全項目チェック完了。異常なし。ハイペリオンも同様です。出撃可能です、艦長」
「よし──ヘッジホッグ、発進」
「了解。発進します」
艦橋に微かな振動が走る。エンジンが唸りを上げ、ヘッジホッグは銀河の虚空へと滑り出した。
向かうのは、帝国軍が指定した待機座標。
作戦開始前に、味方艦が集結しているはずのポイントだ。
「ここで……合ってるよな?」
「はい。指定座標に到達。マーカー一致、誤差ゼロです」
「……しかし、数が……思ったより少ないな。これが“応援艦隊”か?」
マリナが眉をひそめながら、ウィンドウを操作して艦影の一覧を表示する。
「はい。指名に応じて現地入りしたのは、全体の約3割。予定の6割を大きく下回っています」
アイカの無機質な声が、どこか寂しげに響く。
「……3割か。まぁ、予想通りとはいえ、ひでぇな」
「帝国と組むのを嫌がった連中が多かったみたい。『正規軍の足を引っ張るのはゴメンだ』って、どこかへ消えたわ」
「……足を引っ張るのがどっちかなんて、分かりゃしねぇのにな」
ウィンドウに映し出された艦影は、大小まちまちの私掠船。
明らかにパッチワーク状態のボロも、ちらほら混じっていた。
「本当にこれ、“実績ある艦”を集めたのか? 見た目だけなら寄せ集めって感じだぞ」
「外観はボロでも、ジェネレーター反応を見る限り、中身はそれなりのようです」
「ま、見た目が全部じゃねぇしな。動けばそれでいい」
そんな艦の中で、俺たち“ヘッジホッグ”は、明らかに異質だった。
準新鋭の船体に、フル装備の武装と艦載機。そして──AIと高火力兵器を備えた万能艦。
「でもまあ、こういうときこそ、俺たちの出番ってことだ」
「ええ、艦長。“実績”を積むには、最高の舞台です」
「はいっ! わたしもがんばる!」
「ふふん、今日は派手にいっちゃうよ~。久々に“燃える”わね」
──そんなやり取りの最中。
帝国艦隊が到着した。数はそれなりに揃っている。
あとは──練度次第だが……期待は、しないでおこう。
帝国軍からの通信が入る。
「こちらケルベロス・スロット宙域駐留艦隊、提督リサだ。まずは、今回の招集に応じてもらったことに感謝する。これより作戦の説明を行う」
帝国軍の戦艦から、通信ウィンドウに整然とした女性の顔が映し出される。銀髪、鋭い眼差し。あの時、直接会ったリサ提督だ。
「作戦は単純だ。敵は民間船を改造した旧式艦が中心。火力・装甲ともに我々の戦艦の相手ではない」
淡々とした口調で、しかし一切の迷いもなく言い切る。
「よって、本艦隊は敵拠点を包囲し、長距離からの一斉砲撃で戦力を削減。拠点に群がる艦を一掃する」
「その後、砲撃から逃れようとする残党が出ると想定される。そこで──」
一拍置いて、提督の視線がこちらに向けられる。
「海賊諸君には、指定宙域にてその残党の掃討を任せたい。数こそ多いが、組織力のない連中だ。十分に対処可能なはずだ」
短くまとめられた作戦概要。それだけに、質問の余地はある。
「──以上だ。質問のある者は?」
「こちら、星間海賊ギルド所属──コウキ艦長だ。ひとつ確認させてもらう」
俺は通信チャンネルを開き、やや低めの声で言う。
「失礼ながら……そちら駐留軍の戦力、本当に信用していいのか?この宙域、あまり良い評判は聞かないんでな」
一瞬、静寂。が、その隙を割って、リサの声が平然と返ってくる。
「問題ない。“止まっている目標”に当てる程度は、我が軍の最低限の訓練範囲だ。貴艦と比べれば見劣りするかもしれんが──戦闘能力は保証する」
率直な自覚と、必要十分な自信。嘘ではない。少なくとも、見栄で大言壮語を吐くタイプではないらしい。
そこへ、別の私掠艦から通信が割り込む。
「こちら、同じくギルド所属──ロウ艦長だ。ちょいと確認。緊急時の退却は……認めてもらえるんだろうな? まさか、沈むまで付き合えってんじゃないだろうな?」
口調は軽いが、真剣な問いだ。
リサは一拍置いて、静かに答える。
「退却は、各艦長の判断に任せる。危険と判断したなら、即座に離脱して構わない。──沈むまで戦うのは、我々帝国軍の役目だ」
通信に、一瞬の沈黙が走る。
重たい言葉だった。だが、それが“覚悟”というものだと、誰もが理解したはずだ。
「質問は他にないか?」
少しの間、静寂が続く。
「──よし。では各艦、指定宙域へと移動。作戦開始を待て」
「了解」
「了解」
通信チャンネルに、複数の返答が短く重なった。
それぞれが、自分の責任を抱えて戦場へ向かう──そんな、緊張と覚悟が感じ取れた。
数分後、俺たち“ヘッジホッグ”は指定宙域へと到着する。
帝国側が全艦隊を展開するまで、しばしの待機時間。
そのとき、通信が入った。
「よう、噂は聞いてるぜ。“最近目立ってきた、新進気鋭の艦長”ってな。こっちはロウ。お手柔らかに頼むよ、エースさん」
やや砕けた調子の声。軽口に見せかけて、様子を探っているような気配もある。
「ありがとな。でも──過度な期待はすんな。俺は俺のやり方でやるだけさ」
「へぇ、謙虚だな。だが、その分“やってくれる”と見込んでる連中は多いぜ。──自信、持っとけよ」
一瞬、通信が切れる。けれど、言葉の余韻は残った。
……さて、期待されてる以上、応えるしかねぇか。
アイカが静かに告げる。
「帝国艦隊、配置につき始めました。作戦開始まで、残り12分」
「了解。──全システム再確認。万が一にも、準備不足で沈むわけにはいかねぇからな」
「任せて」
「了解~。さぁ、派手にやりますかねぇ!」
「わたし、がんばる!」
ヘッジホッグの艦内が、じわじわと戦闘モードに切り替わっていく。
銀河の辺境、ケルベロス・スロット宙域。
静けさの中に、嵐の足音が近づいていた──
「さて。これで問題はないな。アイカ、最終チェック」
「了解。……燃料、弾薬、シールドエネルギー、全項目チェック完了。異常なし。ハイペリオンも同様です。出撃可能です、艦長」
「よし──ヘッジホッグ、発進」
「了解。発進します」
艦橋に微かな振動が走る。エンジンが唸りを上げ、ヘッジホッグは銀河の虚空へと滑り出した。
向かうのは、帝国軍が指定した待機座標。
作戦開始前に、味方艦が集結しているはずのポイントだ。
「ここで……合ってるよな?」
「はい。指定座標に到達。マーカー一致、誤差ゼロです」
「……しかし、数が……思ったより少ないな。これが“応援艦隊”か?」
マリナが眉をひそめながら、ウィンドウを操作して艦影の一覧を表示する。
「はい。指名に応じて現地入りしたのは、全体の約3割。予定の6割を大きく下回っています」
アイカの無機質な声が、どこか寂しげに響く。
「……3割か。まぁ、予想通りとはいえ、ひでぇな」
「帝国と組むのを嫌がった連中が多かったみたい。『正規軍の足を引っ張るのはゴメンだ』って、どこかへ消えたわ」
「……足を引っ張るのがどっちかなんて、分かりゃしねぇのにな」
ウィンドウに映し出された艦影は、大小まちまちの私掠船。
明らかにパッチワーク状態のボロも、ちらほら混じっていた。
「本当にこれ、“実績ある艦”を集めたのか? 見た目だけなら寄せ集めって感じだぞ」
「外観はボロでも、ジェネレーター反応を見る限り、中身はそれなりのようです」
「ま、見た目が全部じゃねぇしな。動けばそれでいい」
そんな艦の中で、俺たち“ヘッジホッグ”は、明らかに異質だった。
準新鋭の船体に、フル装備の武装と艦載機。そして──AIと高火力兵器を備えた万能艦。
「でもまあ、こういうときこそ、俺たちの出番ってことだ」
「ええ、艦長。“実績”を積むには、最高の舞台です」
「はいっ! わたしもがんばる!」
「ふふん、今日は派手にいっちゃうよ~。久々に“燃える”わね」
──そんなやり取りの最中。
帝国艦隊が到着した。数はそれなりに揃っている。
あとは──練度次第だが……期待は、しないでおこう。
帝国軍からの通信が入る。
「こちらケルベロス・スロット宙域駐留艦隊、提督リサだ。まずは、今回の招集に応じてもらったことに感謝する。これより作戦の説明を行う」
帝国軍の戦艦から、通信ウィンドウに整然とした女性の顔が映し出される。銀髪、鋭い眼差し。あの時、直接会ったリサ提督だ。
「作戦は単純だ。敵は民間船を改造した旧式艦が中心。火力・装甲ともに我々の戦艦の相手ではない」
淡々とした口調で、しかし一切の迷いもなく言い切る。
「よって、本艦隊は敵拠点を包囲し、長距離からの一斉砲撃で戦力を削減。拠点に群がる艦を一掃する」
「その後、砲撃から逃れようとする残党が出ると想定される。そこで──」
一拍置いて、提督の視線がこちらに向けられる。
「海賊諸君には、指定宙域にてその残党の掃討を任せたい。数こそ多いが、組織力のない連中だ。十分に対処可能なはずだ」
短くまとめられた作戦概要。それだけに、質問の余地はある。
「──以上だ。質問のある者は?」
「こちら、星間海賊ギルド所属──コウキ艦長だ。ひとつ確認させてもらう」
俺は通信チャンネルを開き、やや低めの声で言う。
「失礼ながら……そちら駐留軍の戦力、本当に信用していいのか?この宙域、あまり良い評判は聞かないんでな」
一瞬、静寂。が、その隙を割って、リサの声が平然と返ってくる。
「問題ない。“止まっている目標”に当てる程度は、我が軍の最低限の訓練範囲だ。貴艦と比べれば見劣りするかもしれんが──戦闘能力は保証する」
率直な自覚と、必要十分な自信。嘘ではない。少なくとも、見栄で大言壮語を吐くタイプではないらしい。
そこへ、別の私掠艦から通信が割り込む。
「こちら、同じくギルド所属──ロウ艦長だ。ちょいと確認。緊急時の退却は……認めてもらえるんだろうな? まさか、沈むまで付き合えってんじゃないだろうな?」
口調は軽いが、真剣な問いだ。
リサは一拍置いて、静かに答える。
「退却は、各艦長の判断に任せる。危険と判断したなら、即座に離脱して構わない。──沈むまで戦うのは、我々帝国軍の役目だ」
通信に、一瞬の沈黙が走る。
重たい言葉だった。だが、それが“覚悟”というものだと、誰もが理解したはずだ。
「質問は他にないか?」
少しの間、静寂が続く。
「──よし。では各艦、指定宙域へと移動。作戦開始を待て」
「了解」
「了解」
通信チャンネルに、複数の返答が短く重なった。
それぞれが、自分の責任を抱えて戦場へ向かう──そんな、緊張と覚悟が感じ取れた。
数分後、俺たち“ヘッジホッグ”は指定宙域へと到着する。
帝国側が全艦隊を展開するまで、しばしの待機時間。
そのとき、通信が入った。
「よう、噂は聞いてるぜ。“最近目立ってきた、新進気鋭の艦長”ってな。こっちはロウ。お手柔らかに頼むよ、エースさん」
やや砕けた調子の声。軽口に見せかけて、様子を探っているような気配もある。
「ありがとな。でも──過度な期待はすんな。俺は俺のやり方でやるだけさ」
「へぇ、謙虚だな。だが、その分“やってくれる”と見込んでる連中は多いぜ。──自信、持っとけよ」
一瞬、通信が切れる。けれど、言葉の余韻は残った。
……さて、期待されてる以上、応えるしかねぇか。
アイカが静かに告げる。
「帝国艦隊、配置につき始めました。作戦開始まで、残り12分」
「了解。──全システム再確認。万が一にも、準備不足で沈むわけにはいかねぇからな」
「任せて」
「了解~。さぁ、派手にやりますかねぇ!」
「わたし、がんばる!」
ヘッジホッグの艦内が、じわじわと戦闘モードに切り替わっていく。
銀河の辺境、ケルベロス・スロット宙域。
静けさの中に、嵐の足音が近づいていた──
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