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人夢
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目が覚める。
いつも通り部屋を歩く。
いつもと違う部屋の中を。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
そして、目が覚める。
いつもと変わらない部屋。
いつも通り起き上がり、部屋を歩き、食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
駅へと向かう。
黄色い帽子を被り、ランドセルを背負った子供たちが元気にはしゃぎながら通学路を歩いている。
それを横目に、いつも通り街を歩く。
駅のホームでは、人が列を作っている。
列の最後尾に立つ。
目が覚める。
視点は天井を向いたまま。
身体は起き上がっている感触があるのに、天井の模様だけがはっきりと見える。
……またか。
この状態は、眠り直せば終わる。
目を閉じる。
天井は消えない。
数秒待つ。
ゆっくり暗くなる。
目が覚める。
……どうやら正しく起きられたようだ。
わずかに倦怠感を感じる。
どうせすぐに正常に戻る。
であれば、支障はない。
いつも通り起き上がり、ゆっくりと食事をとる。
部屋を眺める。
いつもと変わらない室内。
どこにも変化はない。
はずだ。
天井が低いのか、高いのか。
部屋の隅の観葉植物は、この形だったか。
まぁ些細なことだ。
日常生活に支障はない。
であれば、些細なことだ。
横に座っているこれも。
……問題はない。
正常な生活を送れている。
家を出て、駅へと向かう。
黄色い帽子を被った子供たちが通学路を歩いている。
その列がいつもより整っているような気がした。
駅のホームでは、スーツを着た大人たちが列を作っている。
いつも通り電車に乗り、職場へと向かう。
車内の広告は良く見えない。
誰もそれを気にしていない。
職場は最寄駅から徒歩で数分。小さなビルの3階にある。そこでプログラマーとして働いている。
おはようございます。と声を出す。まばらに返ってくる返事。そのまま自分のデスクへと向かう。
淡々と仕事をこなしていると、声をかけられた。
「昨日のメールの件ですが。」
思考が止まる。
……問題ない。
用意していた返答を選ぶ。
……問題なく終わった。
彼は納得した様子で戻っていった。
仕事に戻る。カチ、カチ、と時計の音とキーボードを叩く音のみが静かに部屋を満たしている。
ふと正面の同僚を見る。左手の薬指には指輪が納まっている。彼は結婚していただろうか。
……それは日常生活に必要なことだろうか。
……必要ない。
であれば、問題はない。
「どうかしましたか?」
声をかけられた。
見ていたことに気づかれたらしい。
指輪について触れた。この程度であれば問題なく対応できる。
「何のことですか?」
彼の薬指を見る。
指輪が消えていた。
思考が止まる。
……目の錯覚のようだ。
……そうでなければいけない。
疲れていたのかもしれない。気のせいだよ。そう言って会話を区切る。
彼は少し怪訝な顔をしながら、無理はしないでくださいね、と言った。
……何かが引っ掛かったままだった。
そのまま仕事に戻った。
淡々とプログラムを書いていく。
時計を見る。秒針が一つ。ゆっくりと動いている。そろそろ定時だ。帰るとしよう。
帰路もいつもと変わらない。人がホームに列をなしている。
家に帰り、着替える。観葉植物が部屋の中心にある。部屋の隅に戻す。
……いつもと変わらない。
入浴を済ませ、夕食をとる。
食後にゆったりとした時間を過ごすのが好きだ。テレビでは相変わらず着ぐるみを着た名物アナウンサーが司会を務めて笑いを提供している。
そろそろ眠るとしよう。
今日もいつも通りの日常だった。
目が覚める。視点は天井を向いたまま。
天井の模様が違う気がした。
……こんな形だっただろうか。
そうだった気がする。
目を閉じる。
天井は消えない。
目が覚める。
時計を見る。木曜日。
……手帳を見る。
書き込みはある。
スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
駅のホームではスーツを着た大人たちがホームドアに背を向け、列を作っている。
電車が停まる。
振り返り、乗り込んでいく。
職場につく。
いつも通りに挨拶をする。
返事が返る。
スケジュールを確認する。
木曜日。
……どうやら日付を間違えていたらしい。
些細なことだ。問題はない。
昼休み。自分はいつもと同じように作ってきた弁当を食べる。
同僚から話しかけられた。
それは誰が作っているのですか、と。
……どう答えるのが正しいのか。
……自分で作っていると答えた。
彼は感心したようだ。自分は料理できないので。と。
決められた量食材を決められた手順で調理しているだけだ。
栄養バランスも考えらえている。過不足はない。
問題はない。
仕事に戻る。
仕事は進む。
モニターの日付を見る。
火曜日だ。
昨日は月曜日だったのだから当たり前だ。
しかし、皆妙に楽しそうだ。
今日は夕方から会議がある。
作業方針について、だそうだ。
与えられた仕事を問題なくこなすだけだ。
……。
会議は穏やかに進む。
ときおり質問されるが、すべて想定の範囲内だ。
帰り際、上司に呼ばれた。
ミスがあったらしい。
……思考が止まる。
指摘された箇所を確認する。
修正で足りる。
……。
上司は笑顔のまま、気を付けるようにとだけ言った。
頷く。
修正した。
帰る。
……どこにミスがあったのか、はっきりとは思い出せない。
……生活に支障はない。
問題はない。
駅のホーム。皆前を向いて列を作っている。
いつもと変わらない。
薄暗くなった街を歩く。
何もない。
そのまま前へ進んでいく。
家についた。
家に帰っても誰も迎えてくれない。
いつもと変わらない。
夕食をとる。
自分以外いないこの部屋にも慣れたものだ。
今日は早めに寝ることにする。
目が覚める。
染み一つない天井。
朝食をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
駅へと向かう途中で空を見上げる。
雲一つない快晴だ。
いつもと変わらない。
改札を抜ける。
……何かを忘れている気がした。
車のカギはある。
……電車に乗る。
職場はいつもと変わらず静かだ。
皆表情がない。
……支障はない。
同僚が声をかけてきた。
「忘れ物ですよ。」
そういって電車の定期券を手渡される。
礼を言う。
彼は戻っていく。
作業中、紙コップを落としてしまった。
ガシャリ、と大きな音がする。
皆がこちらを見ている。
手早く片付け、仕事に戻った。
……誰も何も言わない。
……。
キーボードの音が再開する。
部下が質問してきた。
来月のタスクだ。
……それはもう終わっている。
先月のことだ。
データは保存済みになっている。
「そうでした。」
部下は戻っていった。
私より上がいないのは、不便だ。
……問題は……。
今日も会議がある。
議事録には私の発言が記録されている。
会議は終わっている。
明日は休みになっている。
議事録は共有済みだ。
帰ろう。
家についた。
用意されている夕食をとる。
外は静かだ。
……明日も仕事だ。寝ることにする。
目が覚める。
朝食はすでにとっている。
歯は磨かれている。
スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
雨が降っている。
傘を差し、外を歩く。
雨は風に流されている。
だいぶ暖かい。
体調には留意しよう。
今日は締め切り日だ。
作業は16時で終っている。
スケジュールは完了済みだ。
職場についた。
挨拶は返ってこない。
……いつものことだ。
席に着く。
モニターはすでに立ち上がっている。
タスクが完了済みになっている。
……仕事がない。
上司のところへ行く。
仕事ができる。
正面の彼がいない。
そこは空席だった。
……そうだろうか?
そうだろう。
名札が空欄になっている席に座る。
仕事をこなす。
メールを送る。
今日は在宅勤務だ。
明日は出社だ。
目が覚める。
朝食をとり、歯を磨く。
スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
今日は冷える。
ジャケットを用意して正解だった。
駅への道は、変わらない。
子供たちが元気に通学路を歩いている。
踏切の警報器がカンカンと鳴っている。
駅のホームはにぎわっている。
職場についた。
いつも通り挨拶をする。
返事が返ってくる。
席につき、モニターを立ち上げる。
正面の彼女もいる。
おはよう、と言えば、「おはよう」と返ってくる。
淡々と仕事を進めていく。
時計を見る。
秒針が二本ある。
重なったまま、わずかにずれている。
音は一つしか聞こえない。
視線を外す。
作業に戻る。
昼休み。いつものようにコンビニで買った弁当を食べる。
正面の彼女は自分で作ったりはしないのか、と聞いてくる。
料理は苦手だ、と答える。
今度作ってきてくれるそうだ。
……彼は作れないと言っていたはずだ。
……彼女だった。
……。
彼女はやけに饒舌だ。
昨日は釣りに行ったらしい。
写真を見せてくれた。
そこには船に乗った彼が写っている。
彼女は笑っている。
今度も一緒に行かないかと誘われた。
写真には私も写っている。
昨日は仕事だった。
……休みだった。
彼女はまだ喋るようだ。
あんなに楽しそうな私は初めて見たらしい。
写真の私は苦い顔をしている。
もう一枚の写真には、私と彼女が楽しそうに笑っていた。
もう一度写真を見せてほしいと言う。
見せてくれた。
苦い顔の私はいなかった。
誰が撮ったのか尋ねた。
二人で撮ったと言う。
昼休みが終わる。
次も一緒に行くと約束をし、仕事へ戻った。
家で写真を見る。
苦い顔の私がいた。
写真のタイムスタンプを見る。
日時は来週だった。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
仕事をこなす。
帰る。
写真を見た。
日付は今日だった。
……。
……問題はなかった。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
空は晴れている。
子供たちが歩いて……
列に並ぶ。
職場につく。
仕事をこなす。
彼女と話す。
近い。
仕事に戻る。
帰る。
……。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
駅へと向かう。
職場につく。
仕事をこなす。
誰も話さない。
帰る。
目が覚める。
食事をとる。
スーツに着替える。
ネクタイは締まっている。
ドアを開ける。
雨が降っている。
傘は濡れていない。
駅へ向かう。
改札を抜ける。
職場につく。
仕事をこなす。
作ってきた弁当を食べる。
仕事に戻る。
帰る。
目が覚める。
スーツに着替える。
ネクタイは締まっている。
ドアを開ける。
駅へと向かう。
子供たちが歩いている。
声は聞こえない。
……遠いだけだ。
問題はない。
駅につく。
列に並ぶ。
職場につく。
仕事をこなす。
仕事をこなす。
帰る。
目が覚める。
ネクタイは締まっている。
ドアを開ける。
駅へと向かう。
職場につく。
仕事をこなす。
帰る。
目が覚める。
ドアを開ける。
足元を見る。
影が薄い。
……光のせいだ。
職場につく。
帰る。
目が覚める。
帰る。
目が覚める。
帰る。
目が覚める。
帰る。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
外は快晴だ。
駅へと向かう。
交差点で信号を待つ。
青に変わる。
誰も動かない。
渡っている。
いつの間に。
ホームでは人が並んでいる。
最後尾に並ぶ。
職場につく。
仕事をこなす。
彼女と話す。
彼女はこんな顔だったか。
休みは近い。
仕事に戻る。
帰る。
写真を見る。
……写っていない。
……問題ない。
目が覚める。
仕事をこなす。
帰る。
目が覚める。
目が覚める。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
帰る。
……どこに。
目が覚める。
足元に影がない。
……問題はない。
帰る。
目が覚める。
帰る。
目が覚める。
目が覚める。
目が覚める。
いつも通り部屋を歩く。
いつもと違う部屋の中を。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
そして、目が覚める。
いつもと変わらない部屋。
いつも通り起き上がり、部屋を歩き、食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
駅へと向かう。
黄色い帽子を被り、ランドセルを背負った子供たちが元気にはしゃぎながら通学路を歩いている。
それを横目に、いつも通り街を歩く。
駅のホームでは、人が列を作っている。
列の最後尾に立つ。
目が覚める。
視点は天井を向いたまま。
身体は起き上がっている感触があるのに、天井の模様だけがはっきりと見える。
……またか。
この状態は、眠り直せば終わる。
目を閉じる。
天井は消えない。
数秒待つ。
ゆっくり暗くなる。
目が覚める。
……どうやら正しく起きられたようだ。
わずかに倦怠感を感じる。
どうせすぐに正常に戻る。
であれば、支障はない。
いつも通り起き上がり、ゆっくりと食事をとる。
部屋を眺める。
いつもと変わらない室内。
どこにも変化はない。
はずだ。
天井が低いのか、高いのか。
部屋の隅の観葉植物は、この形だったか。
まぁ些細なことだ。
日常生活に支障はない。
であれば、些細なことだ。
横に座っているこれも。
……問題はない。
正常な生活を送れている。
家を出て、駅へと向かう。
黄色い帽子を被った子供たちが通学路を歩いている。
その列がいつもより整っているような気がした。
駅のホームでは、スーツを着た大人たちが列を作っている。
いつも通り電車に乗り、職場へと向かう。
車内の広告は良く見えない。
誰もそれを気にしていない。
職場は最寄駅から徒歩で数分。小さなビルの3階にある。そこでプログラマーとして働いている。
おはようございます。と声を出す。まばらに返ってくる返事。そのまま自分のデスクへと向かう。
淡々と仕事をこなしていると、声をかけられた。
「昨日のメールの件ですが。」
思考が止まる。
……問題ない。
用意していた返答を選ぶ。
……問題なく終わった。
彼は納得した様子で戻っていった。
仕事に戻る。カチ、カチ、と時計の音とキーボードを叩く音のみが静かに部屋を満たしている。
ふと正面の同僚を見る。左手の薬指には指輪が納まっている。彼は結婚していただろうか。
……それは日常生活に必要なことだろうか。
……必要ない。
であれば、問題はない。
「どうかしましたか?」
声をかけられた。
見ていたことに気づかれたらしい。
指輪について触れた。この程度であれば問題なく対応できる。
「何のことですか?」
彼の薬指を見る。
指輪が消えていた。
思考が止まる。
……目の錯覚のようだ。
……そうでなければいけない。
疲れていたのかもしれない。気のせいだよ。そう言って会話を区切る。
彼は少し怪訝な顔をしながら、無理はしないでくださいね、と言った。
……何かが引っ掛かったままだった。
そのまま仕事に戻った。
淡々とプログラムを書いていく。
時計を見る。秒針が一つ。ゆっくりと動いている。そろそろ定時だ。帰るとしよう。
帰路もいつもと変わらない。人がホームに列をなしている。
家に帰り、着替える。観葉植物が部屋の中心にある。部屋の隅に戻す。
……いつもと変わらない。
入浴を済ませ、夕食をとる。
食後にゆったりとした時間を過ごすのが好きだ。テレビでは相変わらず着ぐるみを着た名物アナウンサーが司会を務めて笑いを提供している。
そろそろ眠るとしよう。
今日もいつも通りの日常だった。
目が覚める。視点は天井を向いたまま。
天井の模様が違う気がした。
……こんな形だっただろうか。
そうだった気がする。
目を閉じる。
天井は消えない。
目が覚める。
時計を見る。木曜日。
……手帳を見る。
書き込みはある。
スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
駅のホームではスーツを着た大人たちがホームドアに背を向け、列を作っている。
電車が停まる。
振り返り、乗り込んでいく。
職場につく。
いつも通りに挨拶をする。
返事が返る。
スケジュールを確認する。
木曜日。
……どうやら日付を間違えていたらしい。
些細なことだ。問題はない。
昼休み。自分はいつもと同じように作ってきた弁当を食べる。
同僚から話しかけられた。
それは誰が作っているのですか、と。
……どう答えるのが正しいのか。
……自分で作っていると答えた。
彼は感心したようだ。自分は料理できないので。と。
決められた量食材を決められた手順で調理しているだけだ。
栄養バランスも考えらえている。過不足はない。
問題はない。
仕事に戻る。
仕事は進む。
モニターの日付を見る。
火曜日だ。
昨日は月曜日だったのだから当たり前だ。
しかし、皆妙に楽しそうだ。
今日は夕方から会議がある。
作業方針について、だそうだ。
与えられた仕事を問題なくこなすだけだ。
……。
会議は穏やかに進む。
ときおり質問されるが、すべて想定の範囲内だ。
帰り際、上司に呼ばれた。
ミスがあったらしい。
……思考が止まる。
指摘された箇所を確認する。
修正で足りる。
……。
上司は笑顔のまま、気を付けるようにとだけ言った。
頷く。
修正した。
帰る。
……どこにミスがあったのか、はっきりとは思い出せない。
……生活に支障はない。
問題はない。
駅のホーム。皆前を向いて列を作っている。
いつもと変わらない。
薄暗くなった街を歩く。
何もない。
そのまま前へ進んでいく。
家についた。
家に帰っても誰も迎えてくれない。
いつもと変わらない。
夕食をとる。
自分以外いないこの部屋にも慣れたものだ。
今日は早めに寝ることにする。
目が覚める。
染み一つない天井。
朝食をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
駅へと向かう途中で空を見上げる。
雲一つない快晴だ。
いつもと変わらない。
改札を抜ける。
……何かを忘れている気がした。
車のカギはある。
……電車に乗る。
職場はいつもと変わらず静かだ。
皆表情がない。
……支障はない。
同僚が声をかけてきた。
「忘れ物ですよ。」
そういって電車の定期券を手渡される。
礼を言う。
彼は戻っていく。
作業中、紙コップを落としてしまった。
ガシャリ、と大きな音がする。
皆がこちらを見ている。
手早く片付け、仕事に戻った。
……誰も何も言わない。
……。
キーボードの音が再開する。
部下が質問してきた。
来月のタスクだ。
……それはもう終わっている。
先月のことだ。
データは保存済みになっている。
「そうでした。」
部下は戻っていった。
私より上がいないのは、不便だ。
……問題は……。
今日も会議がある。
議事録には私の発言が記録されている。
会議は終わっている。
明日は休みになっている。
議事録は共有済みだ。
帰ろう。
家についた。
用意されている夕食をとる。
外は静かだ。
……明日も仕事だ。寝ることにする。
目が覚める。
朝食はすでにとっている。
歯は磨かれている。
スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
雨が降っている。
傘を差し、外を歩く。
雨は風に流されている。
だいぶ暖かい。
体調には留意しよう。
今日は締め切り日だ。
作業は16時で終っている。
スケジュールは完了済みだ。
職場についた。
挨拶は返ってこない。
……いつものことだ。
席に着く。
モニターはすでに立ち上がっている。
タスクが完了済みになっている。
……仕事がない。
上司のところへ行く。
仕事ができる。
正面の彼がいない。
そこは空席だった。
……そうだろうか?
そうだろう。
名札が空欄になっている席に座る。
仕事をこなす。
メールを送る。
今日は在宅勤務だ。
明日は出社だ。
目が覚める。
朝食をとり、歯を磨く。
スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
今日は冷える。
ジャケットを用意して正解だった。
駅への道は、変わらない。
子供たちが元気に通学路を歩いている。
踏切の警報器がカンカンと鳴っている。
駅のホームはにぎわっている。
職場についた。
いつも通り挨拶をする。
返事が返ってくる。
席につき、モニターを立ち上げる。
正面の彼女もいる。
おはよう、と言えば、「おはよう」と返ってくる。
淡々と仕事を進めていく。
時計を見る。
秒針が二本ある。
重なったまま、わずかにずれている。
音は一つしか聞こえない。
視線を外す。
作業に戻る。
昼休み。いつものようにコンビニで買った弁当を食べる。
正面の彼女は自分で作ったりはしないのか、と聞いてくる。
料理は苦手だ、と答える。
今度作ってきてくれるそうだ。
……彼は作れないと言っていたはずだ。
……彼女だった。
……。
彼女はやけに饒舌だ。
昨日は釣りに行ったらしい。
写真を見せてくれた。
そこには船に乗った彼が写っている。
彼女は笑っている。
今度も一緒に行かないかと誘われた。
写真には私も写っている。
昨日は仕事だった。
……休みだった。
彼女はまだ喋るようだ。
あんなに楽しそうな私は初めて見たらしい。
写真の私は苦い顔をしている。
もう一枚の写真には、私と彼女が楽しそうに笑っていた。
もう一度写真を見せてほしいと言う。
見せてくれた。
苦い顔の私はいなかった。
誰が撮ったのか尋ねた。
二人で撮ったと言う。
昼休みが終わる。
次も一緒に行くと約束をし、仕事へ戻った。
家で写真を見る。
苦い顔の私がいた。
写真のタイムスタンプを見る。
日時は来週だった。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
仕事をこなす。
帰る。
写真を見た。
日付は今日だった。
……。
……問題はなかった。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
空は晴れている。
子供たちが歩いて……
列に並ぶ。
職場につく。
仕事をこなす。
彼女と話す。
近い。
仕事に戻る。
帰る。
……。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
駅へと向かう。
職場につく。
仕事をこなす。
誰も話さない。
帰る。
目が覚める。
食事をとる。
スーツに着替える。
ネクタイは締まっている。
ドアを開ける。
雨が降っている。
傘は濡れていない。
駅へ向かう。
改札を抜ける。
職場につく。
仕事をこなす。
作ってきた弁当を食べる。
仕事に戻る。
帰る。
目が覚める。
スーツに着替える。
ネクタイは締まっている。
ドアを開ける。
駅へと向かう。
子供たちが歩いている。
声は聞こえない。
……遠いだけだ。
問題はない。
駅につく。
列に並ぶ。
職場につく。
仕事をこなす。
仕事をこなす。
帰る。
目が覚める。
ネクタイは締まっている。
ドアを開ける。
駅へと向かう。
職場につく。
仕事をこなす。
帰る。
目が覚める。
ドアを開ける。
足元を見る。
影が薄い。
……光のせいだ。
職場につく。
帰る。
目が覚める。
帰る。
目が覚める。
帰る。
目が覚める。
帰る。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
外は快晴だ。
駅へと向かう。
交差点で信号を待つ。
青に変わる。
誰も動かない。
渡っている。
いつの間に。
ホームでは人が並んでいる。
最後尾に並ぶ。
職場につく。
仕事をこなす。
彼女と話す。
彼女はこんな顔だったか。
休みは近い。
仕事に戻る。
帰る。
写真を見る。
……写っていない。
……問題ない。
目が覚める。
仕事をこなす。
帰る。
目が覚める。
目が覚める。
目が覚める。
食事をとり、スーツに着替え、ネクタイを締め、ドアを開ける。
帰る。
……どこに。
目が覚める。
足元に影がない。
……問題はない。
帰る。
目が覚める。
帰る。
目が覚める。
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