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第1章 過去に囚われる声:屈服のトリガー②
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第二節 呪いの合成と肉体の服従
羽生は低く笑い、「やりにくいな」と囁いた。片手でジッパーをゆっくり下ろすと、布地の奥からかすかに冷たい空気が触れ、股間に直接触れられる準備が整った。
(この日のために、完璧な“呪い”を準備した。あんたの理性そのものを、声で壊すために――)
羽生は心の奥で、くつくつと笑う。
今夜、新城を屈服させる切り札は、彼を永遠に縛りつけるための最高の毒だと、羽生は確信していた。
ーー数日前の深夜。
人気のない新城の研究室。
羽生は静まり返った椅子に腰を下ろし、パソコンの画面に浮かぶ音声波形に集中していた。
画面には二層の音――ひとつは「恥の夜」に録音した喘ぎ声、もうひとつは、盗聴アプリで手に入れた午後の講義録音だった。
『講義の声なら、あんたの理性が一番鋭利だ。それを崩せば、二度と教授には戻れない』
羽生は、講義録音から新城の冷静で理知的なセリフを細かく切り抜き、その句読点や息継ぎの隙間に、短く、切羽詰まった喘ぎや懇願の吐息を差し込んでいく。
《……この理論のン、ッ……倫理的観点、ッ、ああっ……から考察をッ、やめろ、……加えていく》
繋ぎ合わせた声は、まるで新城の理性的な言葉の奥底で本能が暴れ出しているかのように響く。
羽生は恍惚とした表情で、その完成ファイルに「新城先生_最高のコレクション」と名をつけ、ロックをかけた。
『これで、先生はもう僕から逃げられない。この声が、あんたのアイデンティティを抉り続ける……永遠に、僕のモノだ』
羽生は、目の前で身を強張らせる新城を見下ろした。新城の喉奥で、羞恥と恐怖に引きつった呼吸が小さく漏れる。
新城の耳には、まだイヤホンが残されていた。 再生は止まっていない。
《や……やめろ、こんな声、もう……聞きたくない……のに……っ、止まんねぇ……なんで……あ……っ、やだ……やだのに、身体が……ああ……っ……》
“過去の自分”の声が、肌の下の神経を撫でるように響く。
「……ッ、だれが、そんな……っ!」
「先生に決まってるじゃん」
その言葉とほぼ同時に、羽生は反対の手で新城のズボンと下着を半分ほどずらし、股間を露わにした。
新城はデスクの上で、息を詰まらせながら体を強ばらせ、顔を背ける。
「……や、やめ……っ!」
「大丈夫。僕がちゃんと受け止めてあげるから……ほら、逃げなくていいよ。」
羽生は指先でそっと尻を撫で、わずかな間を置いてから、狙い定めるように指をゆっくりと滑り込ませた。
「……っ、あ……ぅ……っ……や、ぁ……っ……!」
新城の喉が震え、息が乱れる。
録音から流れる声と、今この瞬間の吐息が重なり合い、音が現実と過去を溶かしていく。
《んあっ……お、お前だけ……お前じゃなきゃ……ダメなんだってばぁ……あっ、んっ、わかってんだろ……はぁっ、ああっ……》
「それ、消せ……ッ!」
「でも、“お前”が言ったんだよ? だったら、自分でちゃんと聞かないと。」
羽生の指が内壁をなぞるたびに、録音と今の感覚の境界が曖昧になっていく。
耳の奥で響く声と、喉から漏れる声が、まるで音と肉体のシンクロのように交差した。
「……く、くそっ……ああっ……っ」
新城の眉間に皺が寄り、歯が軋んだ。
だがその奥では、もはや身体が勝手に反応を始めている。
「先生、“快感”って、残酷だよね。」
羽生が淡々と囁いた。
「拒んでいたのに、残ってしまった“快感の記憶”は、消えないんだね。先生なのに」
「いい加減にしろ! 俺とお前の関係は、指導教授と学生だ! その倫理と……ッ、この行為の逸脱を……ぅぐっ……、理解でき……ちが……ないのか!」
「倫理? じゃあ先生、その“倫理的観点”から、今の反応を説明できる? 心じゃなくて、身体のほうの――ね」
「……ッ! だ、だま……っ、理論が……っ、うぐ……ッ!」
「大丈夫。先生がまだ“拒むふり”をしても、心の奥ではもう――僕に委ねてる」
静かで、しかし一点の迷いもない声。
恋人の囁きのようでありながら、支配者の声にも似た残響があった。
羽生の言葉に、新城は唇を強く噛みしめた。
――反論の余地は、なかった。
デスクに押し付けられたまま、羽生の指に翻弄され、内壁は無意識に指を迎え入れるように、熱く脈打っていた。
それはまるで、長年の研究で築き上げた指導教授としての矜持が、たった一つの卑猥な快感に取って代わられる、裏切りの疼きだった。
羽生の指が、新城の反応を確かめるように探る。撫で、試し、また遠ざける。
「新城……どこがいちばん感じるのか、ちゃんと教えて。……この辺?ほら、先生?」
指の角度を少し変えた。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
他にもこの二人が主人公のお話を投稿しているのでよかったら読んでみてくださいね。
羽生は低く笑い、「やりにくいな」と囁いた。片手でジッパーをゆっくり下ろすと、布地の奥からかすかに冷たい空気が触れ、股間に直接触れられる準備が整った。
(この日のために、完璧な“呪い”を準備した。あんたの理性そのものを、声で壊すために――)
羽生は心の奥で、くつくつと笑う。
今夜、新城を屈服させる切り札は、彼を永遠に縛りつけるための最高の毒だと、羽生は確信していた。
ーー数日前の深夜。
人気のない新城の研究室。
羽生は静まり返った椅子に腰を下ろし、パソコンの画面に浮かぶ音声波形に集中していた。
画面には二層の音――ひとつは「恥の夜」に録音した喘ぎ声、もうひとつは、盗聴アプリで手に入れた午後の講義録音だった。
『講義の声なら、あんたの理性が一番鋭利だ。それを崩せば、二度と教授には戻れない』
羽生は、講義録音から新城の冷静で理知的なセリフを細かく切り抜き、その句読点や息継ぎの隙間に、短く、切羽詰まった喘ぎや懇願の吐息を差し込んでいく。
《……この理論のン、ッ……倫理的観点、ッ、ああっ……から考察をッ、やめろ、……加えていく》
繋ぎ合わせた声は、まるで新城の理性的な言葉の奥底で本能が暴れ出しているかのように響く。
羽生は恍惚とした表情で、その完成ファイルに「新城先生_最高のコレクション」と名をつけ、ロックをかけた。
『これで、先生はもう僕から逃げられない。この声が、あんたのアイデンティティを抉り続ける……永遠に、僕のモノだ』
羽生は、目の前で身を強張らせる新城を見下ろした。新城の喉奥で、羞恥と恐怖に引きつった呼吸が小さく漏れる。
新城の耳には、まだイヤホンが残されていた。 再生は止まっていない。
《や……やめろ、こんな声、もう……聞きたくない……のに……っ、止まんねぇ……なんで……あ……っ、やだ……やだのに、身体が……ああ……っ……》
“過去の自分”の声が、肌の下の神経を撫でるように響く。
「……ッ、だれが、そんな……っ!」
「先生に決まってるじゃん」
その言葉とほぼ同時に、羽生は反対の手で新城のズボンと下着を半分ほどずらし、股間を露わにした。
新城はデスクの上で、息を詰まらせながら体を強ばらせ、顔を背ける。
「……や、やめ……っ!」
「大丈夫。僕がちゃんと受け止めてあげるから……ほら、逃げなくていいよ。」
羽生は指先でそっと尻を撫で、わずかな間を置いてから、狙い定めるように指をゆっくりと滑り込ませた。
「……っ、あ……ぅ……っ……や、ぁ……っ……!」
新城の喉が震え、息が乱れる。
録音から流れる声と、今この瞬間の吐息が重なり合い、音が現実と過去を溶かしていく。
《んあっ……お、お前だけ……お前じゃなきゃ……ダメなんだってばぁ……あっ、んっ、わかってんだろ……はぁっ、ああっ……》
「それ、消せ……ッ!」
「でも、“お前”が言ったんだよ? だったら、自分でちゃんと聞かないと。」
羽生の指が内壁をなぞるたびに、録音と今の感覚の境界が曖昧になっていく。
耳の奥で響く声と、喉から漏れる声が、まるで音と肉体のシンクロのように交差した。
「……く、くそっ……ああっ……っ」
新城の眉間に皺が寄り、歯が軋んだ。
だがその奥では、もはや身体が勝手に反応を始めている。
「先生、“快感”って、残酷だよね。」
羽生が淡々と囁いた。
「拒んでいたのに、残ってしまった“快感の記憶”は、消えないんだね。先生なのに」
「いい加減にしろ! 俺とお前の関係は、指導教授と学生だ! その倫理と……ッ、この行為の逸脱を……ぅぐっ……、理解でき……ちが……ないのか!」
「倫理? じゃあ先生、その“倫理的観点”から、今の反応を説明できる? 心じゃなくて、身体のほうの――ね」
「……ッ! だ、だま……っ、理論が……っ、うぐ……ッ!」
「大丈夫。先生がまだ“拒むふり”をしても、心の奥ではもう――僕に委ねてる」
静かで、しかし一点の迷いもない声。
恋人の囁きのようでありながら、支配者の声にも似た残響があった。
羽生の言葉に、新城は唇を強く噛みしめた。
――反論の余地は、なかった。
デスクに押し付けられたまま、羽生の指に翻弄され、内壁は無意識に指を迎え入れるように、熱く脈打っていた。
それはまるで、長年の研究で築き上げた指導教授としての矜持が、たった一つの卑猥な快感に取って代わられる、裏切りの疼きだった。
羽生の指が、新城の反応を確かめるように探る。撫で、試し、また遠ざける。
「新城……どこがいちばん感じるのか、ちゃんと教えて。……この辺?ほら、先生?」
指の角度を少し変えた。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
他にもこの二人が主人公のお話を投稿しているのでよかったら読んでみてくださいね。
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