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第2章 甘い呪縛:境界の消失③
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第三節 崩壊の証明:舌と粘膜の対話
《んっ……や、やだ、羽生……あっ、も……ッ、やぁ……!》
──“あのとき”の、どうしようもなく喘いだ自分の声。
耳から、喉から、神経の奥へと、痺れが滲み込む。理性が、熱のようにゆっくり溶け出していく。
脳裏に焼きついたあの感覚が、再生のたびに血肉を得て蘇る。
「っ、うぐ……っ、やめ、ろ……っ、こんな、ふざけた音声は……っ、証拠に、なるわけないだろ……っ!」
「証拠? ふふ、先生。これね、愛の記録だよ。最高の。あんたの頭じゃ絶対認めないけど、身体が『もっと聴きたい』って震えてる。ね? 嘘つけないでしょ? それが僕らの真実で、一番大事な証拠なんだから」
羽生の囁きが、鼓膜に沿って這うように落ちてくる。
「……くっ、うぐ……っ、止めろ……っ、この卑猥な声を……っ、道具に使うな……っ!」
「卑猥な声って。ひどいよ、先生。僕が、こんなに頑張って最高の声を録ったのに。―― なのに、どうして耳、すっぽり塞ぐの? ちゃんと聞こうよ。ほら、前、また……僕の指を熱く待ってる」
羽生の手が、新城の下腹部をそっとなぞるわずかな動きに、身体がびくんと震えた。 その震えが、録音の中の自分と重なる。
《っ、あ、あっ……羽生……そこ、っ、だめぇ……っ!》
「ねえ。声、そっくりだ。……今のあんたの声と、まったく同じ」
その言葉に、新城の喉は恐怖でひきつった。
「っ……あ……や……、や……ば、……!」
言葉はもはや意味をなさず、ただのぐずぐずに崩れた音だけが漏れ出す。その無力な声を見逃すことなく、羽生は唇をぐいと押しつけ、録音の音声に現実の感触を重ねてきた。
【……ちゅっ……ぅ、……んっ、ぬ……っ、じゅ……ん、じゅる……っ】
今度のキスは、舌先から侵される。 唇を割り、ゆっくりと、しかし容赦なく舌が差し込まれる。
新城の喉奥から、また、声が漏れた。
「っふ、……ん、ん、んんっ……っ、く……っ、ぁ……っ」
唇を舐め、歯列をこじ開け、唾液を滲ませて押し入る羽生の舌──
それがまるで“犯す”ように、粘膜の隅々を暴きたてる。
「ふ……っ、舌……こんなに、びくびくして……気持ちいいんだ」
「ちが……っう、ちが……んんッ……!」
舌がねじ込まれるたび、新城の身体が仰け反る。 イヤホンのコードが揺れて、また録音音声が再生される。
《や……っ、やあっ、あ、あっ……んっ……!》
音声と、現実の羽生の息が、ゆっくりと混ざり合う。内耳を震わせる振動が、現実の舌と、口腔の奥で混ざり合い、境目を消していく。
羽生は、その顔を指先でぐいと持ち上げる。
「ちゃんと感じてる顔、見せて。……いやらしい顔してる、ほら。もう、舌の奥、ぐちゃぐちゃ」
「っ、ぅ、ん……ばか、っ……きもちわる、い……っ、う、ぅぁっ……!」
新城の口から溢れ出る唾液と、羞恥と快感でぐちゃぐちゃになった感情。だが、羽生はそんな新城を愛おしむように、その喉元に伝う唾液までを、舌でぬるりと舐めとった。
「気持ち悪くなんかない。こんなに僕に汚されて、ぐずぐずになってるあんた、すっごく、綺麗だよ」
その言葉に、新城は絶望した。羽生は、自分の最も醜い部分を、最も美しいものとして見ている。その事実に、彼の理性の最後の砦が、音を立てて崩れ落ちた。
イヤホンから、録音された喘ぎ。 現実で、喉を舐められる感触。 そして──羽生の舌が、また深く差し込まれてくる。
「……ほら、口だけじゃない。奥、もう……とろけてる」
羽生の手が、シャツの裾から滑り込み、下腹部に手を添える。 そこで触れた“熱”に、笑うように囁く。
「逃げたいなら、言って。……でも、身体がね、……もう、逃げる気なんかないって言ってるよ」
「っ、ちが……っ、あっ……く、ん、あ……っ、や……だ、や……ぁ……っ……!」
自分の声に追い詰められながら、唇が、舌が、耳が、喉が、奥が。 すべてが羽生に満たされて、責められて、崩れていく。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
他にもこの二人が主人公のお話を投稿しているのでよかったら読んでみてくださいね。
《んっ……や、やだ、羽生……あっ、も……ッ、やぁ……!》
──“あのとき”の、どうしようもなく喘いだ自分の声。
耳から、喉から、神経の奥へと、痺れが滲み込む。理性が、熱のようにゆっくり溶け出していく。
脳裏に焼きついたあの感覚が、再生のたびに血肉を得て蘇る。
「っ、うぐ……っ、やめ、ろ……っ、こんな、ふざけた音声は……っ、証拠に、なるわけないだろ……っ!」
「証拠? ふふ、先生。これね、愛の記録だよ。最高の。あんたの頭じゃ絶対認めないけど、身体が『もっと聴きたい』って震えてる。ね? 嘘つけないでしょ? それが僕らの真実で、一番大事な証拠なんだから」
羽生の囁きが、鼓膜に沿って這うように落ちてくる。
「……くっ、うぐ……っ、止めろ……っ、この卑猥な声を……っ、道具に使うな……っ!」
「卑猥な声って。ひどいよ、先生。僕が、こんなに頑張って最高の声を録ったのに。―― なのに、どうして耳、すっぽり塞ぐの? ちゃんと聞こうよ。ほら、前、また……僕の指を熱く待ってる」
羽生の手が、新城の下腹部をそっとなぞるわずかな動きに、身体がびくんと震えた。 その震えが、録音の中の自分と重なる。
《っ、あ、あっ……羽生……そこ、っ、だめぇ……っ!》
「ねえ。声、そっくりだ。……今のあんたの声と、まったく同じ」
その言葉に、新城の喉は恐怖でひきつった。
「っ……あ……や……、や……ば、……!」
言葉はもはや意味をなさず、ただのぐずぐずに崩れた音だけが漏れ出す。その無力な声を見逃すことなく、羽生は唇をぐいと押しつけ、録音の音声に現実の感触を重ねてきた。
【……ちゅっ……ぅ、……んっ、ぬ……っ、じゅ……ん、じゅる……っ】
今度のキスは、舌先から侵される。 唇を割り、ゆっくりと、しかし容赦なく舌が差し込まれる。
新城の喉奥から、また、声が漏れた。
「っふ、……ん、ん、んんっ……っ、く……っ、ぁ……っ」
唇を舐め、歯列をこじ開け、唾液を滲ませて押し入る羽生の舌──
それがまるで“犯す”ように、粘膜の隅々を暴きたてる。
「ふ……っ、舌……こんなに、びくびくして……気持ちいいんだ」
「ちが……っう、ちが……んんッ……!」
舌がねじ込まれるたび、新城の身体が仰け反る。 イヤホンのコードが揺れて、また録音音声が再生される。
《や……っ、やあっ、あ、あっ……んっ……!》
音声と、現実の羽生の息が、ゆっくりと混ざり合う。内耳を震わせる振動が、現実の舌と、口腔の奥で混ざり合い、境目を消していく。
羽生は、その顔を指先でぐいと持ち上げる。
「ちゃんと感じてる顔、見せて。……いやらしい顔してる、ほら。もう、舌の奥、ぐちゃぐちゃ」
「っ、ぅ、ん……ばか、っ……きもちわる、い……っ、う、ぅぁっ……!」
新城の口から溢れ出る唾液と、羞恥と快感でぐちゃぐちゃになった感情。だが、羽生はそんな新城を愛おしむように、その喉元に伝う唾液までを、舌でぬるりと舐めとった。
「気持ち悪くなんかない。こんなに僕に汚されて、ぐずぐずになってるあんた、すっごく、綺麗だよ」
その言葉に、新城は絶望した。羽生は、自分の最も醜い部分を、最も美しいものとして見ている。その事実に、彼の理性の最後の砦が、音を立てて崩れ落ちた。
イヤホンから、録音された喘ぎ。 現実で、喉を舐められる感触。 そして──羽生の舌が、また深く差し込まれてくる。
「……ほら、口だけじゃない。奥、もう……とろけてる」
羽生の手が、シャツの裾から滑り込み、下腹部に手を添える。 そこで触れた“熱”に、笑うように囁く。
「逃げたいなら、言って。……でも、身体がね、……もう、逃げる気なんかないって言ってるよ」
「っ、ちが……っ、あっ……く、ん、あ……っ、や……だ、や……ぁ……っ……!」
自分の声に追い詰められながら、唇が、舌が、耳が、喉が、奥が。 すべてが羽生に満たされて、責められて、崩れていく。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
他にもこの二人が主人公のお話を投稿しているのでよかったら読んでみてくださいね。
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