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第3章:幸福プログラム
第24話「オモチが見ていたもの」
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第24話「オモチが見ていたもの」
夜。ヒカルと律子が寝静まったリビングに、小さな気配が残っていた。
ソファの下、カーテンの隙間、ちゃぶ台の裏――
白くて丸いその影は、ただ静かに佇んでいた。
おもちだった。
ぬいぐるみのような体。パチクリとした目。けれど、その視線の奥には、誰も知らない深さがある。
おもちは“話す”ことができない。けれど、彼には“記録する”ことができた。
ヒカルが泣いた夜。律子が一人、冷蔵庫に残った野菜で味噌汁を作った夜。
ナオトが来て、そっとソファの裏に残していった“手紙のかけら”。
全部、おもちの中にある。
なぜこんな機能があるのか。誰が“おもち”をこの家に送ったのか。
ヒカルはまだ知らない。
でも、おもちは知っている。
――この家には“消されかけた記憶”が生きている。
そしてそれは、ただの記憶ではない。“家族になるための痛み”なのだと。
翌朝。おもちは玄関マットの上にいた。
「……おもち、またここで寝てたの?」
ヒカルが笑いながら抱き上げると、おもちはぷにっと軽く揺れた。
そのとき、ドアの郵便受けがカタンと鳴った。
ヒカルが覗くと、小さな封筒が一つ、落ちていた。
差出人はない。けれど、見覚えのある字だった。
中には、一枚の紙が入っていた。
《“再観察”を継続とします。仮登録は取り消されませんが、本登録には“外部評価”が必要です。》
その下に、小さく手書きで――
「わたしの心には、あなたたちの味噌汁の匂いが残りました。」
ヒカルは封筒を握ったまま、おもちを見た。
「……なあ、おまえさ。もしかして、俺たちよりずっと家族のこと知ってるんじゃないか?」
おもちは、答えなかった。ただ小さく尻尾を動かした。
その仕草に、ヒカルはなんとなく、笑ってしまう。
律子が台所から声をかけた。
「おもちも一緒に、朝ごはん食べる?」
「たぶん味噌汁は飲めないけどな」
「でも匂いだけでも、きっと思い出せるよ」
おもちはちゃぶ台のそばにちょこんと座る。
その小さな背中に、家族というものの“記録係”としての役割が、静かに宿っていた。
夜。ヒカルと律子が寝静まったリビングに、小さな気配が残っていた。
ソファの下、カーテンの隙間、ちゃぶ台の裏――
白くて丸いその影は、ただ静かに佇んでいた。
おもちだった。
ぬいぐるみのような体。パチクリとした目。けれど、その視線の奥には、誰も知らない深さがある。
おもちは“話す”ことができない。けれど、彼には“記録する”ことができた。
ヒカルが泣いた夜。律子が一人、冷蔵庫に残った野菜で味噌汁を作った夜。
ナオトが来て、そっとソファの裏に残していった“手紙のかけら”。
全部、おもちの中にある。
なぜこんな機能があるのか。誰が“おもち”をこの家に送ったのか。
ヒカルはまだ知らない。
でも、おもちは知っている。
――この家には“消されかけた記憶”が生きている。
そしてそれは、ただの記憶ではない。“家族になるための痛み”なのだと。
翌朝。おもちは玄関マットの上にいた。
「……おもち、またここで寝てたの?」
ヒカルが笑いながら抱き上げると、おもちはぷにっと軽く揺れた。
そのとき、ドアの郵便受けがカタンと鳴った。
ヒカルが覗くと、小さな封筒が一つ、落ちていた。
差出人はない。けれど、見覚えのある字だった。
中には、一枚の紙が入っていた。
《“再観察”を継続とします。仮登録は取り消されませんが、本登録には“外部評価”が必要です。》
その下に、小さく手書きで――
「わたしの心には、あなたたちの味噌汁の匂いが残りました。」
ヒカルは封筒を握ったまま、おもちを見た。
「……なあ、おまえさ。もしかして、俺たちよりずっと家族のこと知ってるんじゃないか?」
おもちは、答えなかった。ただ小さく尻尾を動かした。
その仕草に、ヒカルはなんとなく、笑ってしまう。
律子が台所から声をかけた。
「おもちも一緒に、朝ごはん食べる?」
「たぶん味噌汁は飲めないけどな」
「でも匂いだけでも、きっと思い出せるよ」
おもちはちゃぶ台のそばにちょこんと座る。
その小さな背中に、家族というものの“記録係”としての役割が、静かに宿っていた。
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