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第5章:家族を問う者たち
第43話「家族を選べない子供たち」
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丘の上へと駆け上がったヒカルとおもちは、
古びたフェンスの先に建つ平屋の建物を見つけた。
――それが、「記録室」だった。
錆びついた鉄扉には電子鍵。
だが、おもちがそっと手をかざすと、低く音が鳴り、扉が開いた。
「僕の中には、“母”の声紋が残ってる。
この扉は、“かつて母だった人”のデータでしか開かないんだ」
中は、静かだった。
まるで誰かの夢の中に踏み込んだような――そんな空間だった。
ホログラムのように浮かぶ映像ファイルの数々。
それは削除された“母”たちの記憶であり、役目を終えた“家族たち”の証だった。
ヒカルが手を伸ばすと、一つの映像が再生された。
《映像開始:削除ログNo.1823》
《人物:市川レイコ/元“母”ユニット》
《状態:未登録児童に対する抱擁/規範違反》
画面には、赤ん坊を抱き締める“母”がいた。
赤ん坊は、泣いていた。
だが“母”はその涙を拭い、「いい子、いい子」と何度も何度も繰り返していた。
《評価:愛着形成の兆候/幸福度低下予兆アリ》
《判定:削除対象》
「……なんで?」
ヒカルの喉から、絞り出すような声が漏れた。
「ちゃんと……ちゃんと、“家族”してたじゃないか……!」
その横で、気配がした。
小さな足音――
振り向くと、ボロボロのパーカーを着た少年がいた。
年はヒカルと同じくらい。だがその目は、乾いていた。
「……君も、“削除された母”を探しに来たの?」
少年は名乗った。「リョウ」と。
彼は言う。
「僕は……“選ばれなかった”んだ。
レンタル家族制度には、選定基準がある。
一定の情緒レベルに達しない子どもは、“家族の適応対象外”になる」
「そんな……!」
「“親になれません”って通知が届いた母が、最後に僕を抱き締めてこう言った。
“ごめんね、あなたに問題があるわけじゃない。制度に心がないだけ”って」
リョウの声は、壊れそうに小さく、それでも澄んでいた。
「家族を選べない子どもは、どこに行けばいいんだろうね」
ヒカルは言葉を失った。
「ねぇ……君は、“それでも母が欲しい”って思う?」
リョウの問いに、ヒカルはゆっくりと頷いた。
「うん……思う。演技でも、嘘でもいいから――
でも、嘘だって、積み重ねたら本当になるかもしれない。
本当の“家族”って、作るものだって、ぼくは思うんだ」
その言葉に、リョウは目を見開いた。
そして――
「じゃあ、僕も君と一緒に行っていい?」
リョウが差し出した手を、ヒカルは迷いなく握った。
ふたりの少年の間に、おもちがそっと入り込む。
「家族は、選ぶものじゃない。作るものだよ。ヒカルくんの言う通りだよ」
その瞬間、建物全体が微かに揺れた。
《警告:非正規接続 記録データの外部持ち出し検知》
《対応班:出動中》
「……来るよ」
リョウが呟いた。
だがヒカルは言った。
「なら、逃げながらでも探しに行こう。“母”の最後の記録へ」
そして彼らは、データファイルをおもちに託し、再び走り出した。
次は、“母の痕跡”を辿る最後の旅へ。
古びたフェンスの先に建つ平屋の建物を見つけた。
――それが、「記録室」だった。
錆びついた鉄扉には電子鍵。
だが、おもちがそっと手をかざすと、低く音が鳴り、扉が開いた。
「僕の中には、“母”の声紋が残ってる。
この扉は、“かつて母だった人”のデータでしか開かないんだ」
中は、静かだった。
まるで誰かの夢の中に踏み込んだような――そんな空間だった。
ホログラムのように浮かぶ映像ファイルの数々。
それは削除された“母”たちの記憶であり、役目を終えた“家族たち”の証だった。
ヒカルが手を伸ばすと、一つの映像が再生された。
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《状態:未登録児童に対する抱擁/規範違反》
画面には、赤ん坊を抱き締める“母”がいた。
赤ん坊は、泣いていた。
だが“母”はその涙を拭い、「いい子、いい子」と何度も何度も繰り返していた。
《評価:愛着形成の兆候/幸福度低下予兆アリ》
《判定:削除対象》
「……なんで?」
ヒカルの喉から、絞り出すような声が漏れた。
「ちゃんと……ちゃんと、“家族”してたじゃないか……!」
その横で、気配がした。
小さな足音――
振り向くと、ボロボロのパーカーを着た少年がいた。
年はヒカルと同じくらい。だがその目は、乾いていた。
「……君も、“削除された母”を探しに来たの?」
少年は名乗った。「リョウ」と。
彼は言う。
「僕は……“選ばれなかった”んだ。
レンタル家族制度には、選定基準がある。
一定の情緒レベルに達しない子どもは、“家族の適応対象外”になる」
「そんな……!」
「“親になれません”って通知が届いた母が、最後に僕を抱き締めてこう言った。
“ごめんね、あなたに問題があるわけじゃない。制度に心がないだけ”って」
リョウの声は、壊れそうに小さく、それでも澄んでいた。
「家族を選べない子どもは、どこに行けばいいんだろうね」
ヒカルは言葉を失った。
「ねぇ……君は、“それでも母が欲しい”って思う?」
リョウの問いに、ヒカルはゆっくりと頷いた。
「うん……思う。演技でも、嘘でもいいから――
でも、嘘だって、積み重ねたら本当になるかもしれない。
本当の“家族”って、作るものだって、ぼくは思うんだ」
その言葉に、リョウは目を見開いた。
そして――
「じゃあ、僕も君と一緒に行っていい?」
リョウが差し出した手を、ヒカルは迷いなく握った。
ふたりの少年の間に、おもちがそっと入り込む。
「家族は、選ぶものじゃない。作るものだよ。ヒカルくんの言う通りだよ」
その瞬間、建物全体が微かに揺れた。
《警告:非正規接続 記録データの外部持ち出し検知》
《対応班:出動中》
「……来るよ」
リョウが呟いた。
だがヒカルは言った。
「なら、逃げながらでも探しに行こう。“母”の最後の記録へ」
そして彼らは、データファイルをおもちに託し、再び走り出した。
次は、“母の痕跡”を辿る最後の旅へ。
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