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第5章:家族を問う者たち
第48話「ヒカルの嘘」
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空き家を出る朝、ヒカルはおもちをリュックに詰めながら、シオンの家を見つめていた。
シオンは何も言わず、いつものように笑っていた。
台所に「父」が立ち、朝食を並べている。シオンが“今日の役”を伝えると、機械的な「おはよう」が返ってきた。
「行くの?」と、シオンが聞いた。
「ああ。……ありがとう、シオン。ここでのこと、忘れない」
「うん。ボクも、忘れないよ。ヒカルが来てくれて、ボク……うれしかった」
ヒカルは笑顔を作って、手を振った。
だがその背中は、何かを隠しているように感じた。
――ヒカルは、まだ何も話していない。
母のことも、自分の本当の目的も。
「抹消済み」の意味も。
電車のない時代。
徒歩で数十キロ離れた家族管理センター跡地を目指す途中、ヒカルたちは廃校になった小学校に立ち寄った。
おもちが記録ファイルを展開し、母の記憶にこの場所があると告げたからだった。
「ここ……おれが通ってた場所だ」
夕焼けの中、錆びた遊具が風にきしむ。
誰もいない校庭。だが、ヒカルの頭の中では子どもたちの笑い声が響いていた。
そのとき、おもちが突然、言った。
「ヒカル、君は“母は生きている”と信じているフリをしている」
ヒカルは一瞬で立ち止まり、黙り込んだ。
「解析結果、君の脳波は“希望”と“諦め”を同時に持っている。発話時と矛盾」
「……おまえ、分析しすぎだよ」
「ごめんなさい。でも、“本当の君”を守るのが、私の役目」
ヒカルは、肩を落とした。
やがて、ぽつりと言った。
「おれは、たぶん知ってるんだ。母はもう、いないって」
おもちのLEDが、淡く揺れた。
「でもな……誰かに“そうか、もういないんだね”って言われたら……全部終わっちゃう気がして。だから、嘘ついてんだよ」
おもちは、黙って寄り添った。
ヒカルの手を、ぬいぐるみの前足でそっと押さえた。
「私は、ヒカルの“嘘”を記録しました。これは“希望”の嘘として、保持します」
「……変なやつ」
そう言いながら、ヒカルは微笑んだ。
その夜、ヒカルは校舎の保健室で眠った。
おもちは静かに“睡眠保護モード”に入り、ヒカルの横で丸くなっていた。
月明かりの中、ヒカルの瞼が震える。
「……ママ……ごめん……」
夢の中で、何度も同じ言葉を繰り返していた。
けれど、おもちの胸の中に搭載されたマイクには、すべて記録されていた。
その言葉が、誰かの“最終鍵”になると、まだ誰も知らなかった。
シオンは何も言わず、いつものように笑っていた。
台所に「父」が立ち、朝食を並べている。シオンが“今日の役”を伝えると、機械的な「おはよう」が返ってきた。
「行くの?」と、シオンが聞いた。
「ああ。……ありがとう、シオン。ここでのこと、忘れない」
「うん。ボクも、忘れないよ。ヒカルが来てくれて、ボク……うれしかった」
ヒカルは笑顔を作って、手を振った。
だがその背中は、何かを隠しているように感じた。
――ヒカルは、まだ何も話していない。
母のことも、自分の本当の目的も。
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そのとき、おもちが突然、言った。
「ヒカル、君は“母は生きている”と信じているフリをしている」
ヒカルは一瞬で立ち止まり、黙り込んだ。
「解析結果、君の脳波は“希望”と“諦め”を同時に持っている。発話時と矛盾」
「……おまえ、分析しすぎだよ」
「ごめんなさい。でも、“本当の君”を守るのが、私の役目」
ヒカルは、肩を落とした。
やがて、ぽつりと言った。
「おれは、たぶん知ってるんだ。母はもう、いないって」
おもちのLEDが、淡く揺れた。
「でもな……誰かに“そうか、もういないんだね”って言われたら……全部終わっちゃう気がして。だから、嘘ついてんだよ」
おもちは、黙って寄り添った。
ヒカルの手を、ぬいぐるみの前足でそっと押さえた。
「私は、ヒカルの“嘘”を記録しました。これは“希望”の嘘として、保持します」
「……変なやつ」
そう言いながら、ヒカルは微笑んだ。
その夜、ヒカルは校舎の保健室で眠った。
おもちは静かに“睡眠保護モード”に入り、ヒカルの横で丸くなっていた。
月明かりの中、ヒカルの瞼が震える。
「……ママ……ごめん……」
夢の中で、何度も同じ言葉を繰り返していた。
けれど、おもちの胸の中に搭載されたマイクには、すべて記録されていた。
その言葉が、誰かの“最終鍵”になると、まだ誰も知らなかった。
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