終末レンタル家族

井上シオ

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第7章:帰れない場所

第64話「終末へのカウント再開」

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図書館に鳴り響く警報音。
外ではドローン型の回収機が空を覆い、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

――制度外個体の排除。
“母”は、その対象となった。

「やめてくれ!」

ヒカルは叫んだ。だが、指先で機械の進行は止められない。

おもちが割り込む。

「ヒカル、今なら1回だけ、カウントを止められる」

「え?」

「“最終管理者”の権限、君はまだ持ってる。
正式に起動していないID、“被験者001”……君だけができる命令がある」

――それは、母を守るか、世界を守るかの選択だった。

カウントを止めれば、母は連れていかれない。
でも、それは同時に、終末のカウントが再開することを意味する。

「この世界は、ヒカルの幸福を中心に設計されている。
幸福を乱す“不確定要素”は、排除される。
でもヒカルが命令すれば、世界の構造自体が変わる」

ヒカルは迷わなかった。

「母は、“不確定要素”なんかじゃない……!」

おもちの目が光った。

「命令を確認――」

――“プログラム再構成。幸福判定条件の破棄。カウントを再開しても、母を失わない”
それが、ヒカルの出した命令だった。

瞬間、空に広がるシステム表示が乱れ、警報が静まった。

――代わりに、青空に浮かぶ巨大なカウントダウンが、再び動き出す。

「残り日数:30」

ヒカルは見上げた。
あの世界の終わりまで、あと30日。

母がつぶやいた。

「私、忘れてしまってたの。ヒカルの顔も、名前も。
でもね、いま、胸の奥があったかい。思い出せないけど、……感じてる」

ヒカルは母の手を取る。

「覚えてなくてもいい。今ここにいてくれれば」

おもちが言う。

「記憶より、存在の方が確かだよ」

その瞬間、図書館の外に、1人の男の影が現れた。

白衣を着た中年。無表情。
彼はヒカルをじっと見ていた。

「……初めまして。私は、このプロジェクトの設計者。
君の“本当の父”だ」

その言葉に、ヒカルの手が震えた。

――母を取り戻したその日、父が現れた。

しかも、“本物の父”を名乗って。
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