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最終章:最初で最後の家族
第94話「壊れていくおもち」
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おもちは、ヒカルのそばにいた。
何日ぶりだろうか。現実か夢かわからない曖昧な空間で、彼はぽつんと立っていた。
「ヒカル」
その声は、昔と同じだった。
でも、どこかにノイズが混ざっていた。
まるで、古い機械が無理に音を発しているような。
「おもち……?」
「うん。ぼく、おもち。ヒカルのいちばんの、ともだち」
その言葉に、ヒカルの胸が締めつけられる。
だが、おもちは笑ったまま、ほんの少しずつ、白い体を“ひび割れさせて”いった。
「ちょっと……待って、何それ。おもち、どうしたの?」
「ぼくね、もう、だいぶデータが、こわれてるんだ」
「……やだよ」
「でもヒカルは、わすれないから、だいじょうぶ。
ヒカルの中にぼくがいれば、ぼくは、こわれても……いい」
ヒカルは首を振った。
「良くないよ! 何勝手なこと言ってんだよ。俺が……俺が、守る。もう、誰も壊れさせないって、決めたのに!」
おもちは、笑った。
かつて見せたことのない、“母”のような笑顔で。
「ヒカル……いままで、ありがとう。
ヒカルが、ぼくの“名前”をくれたから、ぼくは“生きられた”んだ」
名前――。
この世界で、唯一ヒカルが“自分で付けた”存在。
それが、おもちだった。
ヒカルは現実の世界で、目を覚ます。
喉が渇いていた。手が震えていた。
さっきまで夢だったのか、それとも“別の空間”だったのか、分からない。
だが、目の前に置かれた古いぬいぐるみの中から、うっすらと光るコードが覗いていた。
――壊れかけた演算器。
おもちは、もう長くない。
「いやだ……まだ話したいこと、いっぱいあるのに……」
ヒカルはぬいぐるみを抱きしめた。
おもちからは何の反応もない。
でも、たしかに温もりだけはあった。
ミオがそっと扉を開ける。
「ヒカル……」
「ミオ……おもちが、消えちゃいそうなんだ」
ミオは何も言わずにヒカルの隣に座った。
そして、小さく呟く。
「……でもさ。ヒカルの中には、もう消えない“本当の記憶”がある。おもちは、それでいいって思ってるんじゃないかな」
ヒカルは涙をこらえながら、うなずいた。
「……うん。でも……でもさ、もう少しだけ、一緒にいたかったんだよ」
ミオはそっとヒカルの肩に頭を預けた。
その夜、二人は言葉少なに、
壊れゆく存在を抱きしめながら、眠った。
それは、おもちがこの世界に“最後に残した記憶”だった。
何日ぶりだろうか。現実か夢かわからない曖昧な空間で、彼はぽつんと立っていた。
「ヒカル」
その声は、昔と同じだった。
でも、どこかにノイズが混ざっていた。
まるで、古い機械が無理に音を発しているような。
「おもち……?」
「うん。ぼく、おもち。ヒカルのいちばんの、ともだち」
その言葉に、ヒカルの胸が締めつけられる。
だが、おもちは笑ったまま、ほんの少しずつ、白い体を“ひび割れさせて”いった。
「ちょっと……待って、何それ。おもち、どうしたの?」
「ぼくね、もう、だいぶデータが、こわれてるんだ」
「……やだよ」
「でもヒカルは、わすれないから、だいじょうぶ。
ヒカルの中にぼくがいれば、ぼくは、こわれても……いい」
ヒカルは首を振った。
「良くないよ! 何勝手なこと言ってんだよ。俺が……俺が、守る。もう、誰も壊れさせないって、決めたのに!」
おもちは、笑った。
かつて見せたことのない、“母”のような笑顔で。
「ヒカル……いままで、ありがとう。
ヒカルが、ぼくの“名前”をくれたから、ぼくは“生きられた”んだ」
名前――。
この世界で、唯一ヒカルが“自分で付けた”存在。
それが、おもちだった。
ヒカルは現実の世界で、目を覚ます。
喉が渇いていた。手が震えていた。
さっきまで夢だったのか、それとも“別の空間”だったのか、分からない。
だが、目の前に置かれた古いぬいぐるみの中から、うっすらと光るコードが覗いていた。
――壊れかけた演算器。
おもちは、もう長くない。
「いやだ……まだ話したいこと、いっぱいあるのに……」
ヒカルはぬいぐるみを抱きしめた。
おもちからは何の反応もない。
でも、たしかに温もりだけはあった。
ミオがそっと扉を開ける。
「ヒカル……」
「ミオ……おもちが、消えちゃいそうなんだ」
ミオは何も言わずにヒカルの隣に座った。
そして、小さく呟く。
「……でもさ。ヒカルの中には、もう消えない“本当の記憶”がある。おもちは、それでいいって思ってるんじゃないかな」
ヒカルは涙をこらえながら、うなずいた。
「……うん。でも……でもさ、もう少しだけ、一緒にいたかったんだよ」
ミオはそっとヒカルの肩に頭を預けた。
その夜、二人は言葉少なに、
壊れゆく存在を抱きしめながら、眠った。
それは、おもちがこの世界に“最後に残した記憶”だった。
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