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第十二章 高熲
第十二章 高熲 五
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しかし伽羅は高熲の身に不自由がないかどうか、その後も気に掛かけていた。
「そなた、密かに高僕射(高熲)の暮らしぶりを探ってきてはくれぬでしょうか」
そばに控えていた宦官に伽羅は声をかけた。
「高僕射の、でございますか?
何か謀反の兆しでもございましょうか。
高僕射は昔から忠誠心篤く、長く誠実に陛下に仕えていらっしゃいました。
あの清廉な高僕射が、王朝に弓を引くとは到底思えぬのでございますが……」
宦官は驚いて伽羅を伺い見た。
「そういう話ではないのです。実は先日――――」
伽羅は声音柔らかに宦官に、先日の話を打ち明けた。
「そういうことでございましたか。
いや、吃驚いたしました。しかし不穏なこととは関係が無いようで安心致しました。
優秀な上に策にも長けた高僕射が王朝を裏切っていたなら、ただではすみませぬ。
陛下や皇后様にとっても一大事でございましょうから」
宦官はそう言って胸をなでおろした。
「ほほ……。高僕射は妻想いの誠実な男です。
亡きご正妻様も、きっとご夫君の優しさ、つつましさを嬉しく感じていらっしゃることでしょう。
その誠実なお方が王朝に弓を引くなど有り得ぬと、わたくしとて思っておりますよ。
なれど妻の居ない生活は、灯が消えたようにわびしかろう。辛かろう。
彼も年を取りました。陛下の前では気丈に振舞っていらっしゃるようですが、その誠実さゆえに激しく気落ちして、病気などになって寿命を縮めては気の毒に思います」
「まこと、その通りでございますな。
長年、隋王朝を盛り立てた忠臣が、そのようなわびしいことになってはいけませぬ」
宦官も心配げにうなずく。
高僕射は今でも、外向きには『妻一筋・真面目一筋な男』で通っているのだ。
「家の采配にしても、細々としたところまで気が配れる女主人が居ないと難しいものです。
苦労していないか心配でなりませぬ。
あの様子であれば、わたくしの方から何か申し上げても遠慮なさるでしょう。読経の邪魔になるような事もしたくはありませぬ。
ですから、困っていそうなことだけこっそりと把握して、何かの折には助けて差し上げたいのです」
「なるほど。それは良うございますな。
このように皇后さまに心配していただけるとは、まことに高僕射は幸せ者でございます。
では、早速手の者を二、三用意して探ってまいりましょう」
元々この宦官は間諜を束ねていたので、この手の事は得意である。
早速準備を整えて、翌朝には出発していった。
凶事などとはかかわりの無さそうな、よく晴れた早朝のことであった。
「そなた、密かに高僕射(高熲)の暮らしぶりを探ってきてはくれぬでしょうか」
そばに控えていた宦官に伽羅は声をかけた。
「高僕射の、でございますか?
何か謀反の兆しでもございましょうか。
高僕射は昔から忠誠心篤く、長く誠実に陛下に仕えていらっしゃいました。
あの清廉な高僕射が、王朝に弓を引くとは到底思えぬのでございますが……」
宦官は驚いて伽羅を伺い見た。
「そういう話ではないのです。実は先日――――」
伽羅は声音柔らかに宦官に、先日の話を打ち明けた。
「そういうことでございましたか。
いや、吃驚いたしました。しかし不穏なこととは関係が無いようで安心致しました。
優秀な上に策にも長けた高僕射が王朝を裏切っていたなら、ただではすみませぬ。
陛下や皇后様にとっても一大事でございましょうから」
宦官はそう言って胸をなでおろした。
「ほほ……。高僕射は妻想いの誠実な男です。
亡きご正妻様も、きっとご夫君の優しさ、つつましさを嬉しく感じていらっしゃることでしょう。
その誠実なお方が王朝に弓を引くなど有り得ぬと、わたくしとて思っておりますよ。
なれど妻の居ない生活は、灯が消えたようにわびしかろう。辛かろう。
彼も年を取りました。陛下の前では気丈に振舞っていらっしゃるようですが、その誠実さゆえに激しく気落ちして、病気などになって寿命を縮めては気の毒に思います」
「まこと、その通りでございますな。
長年、隋王朝を盛り立てた忠臣が、そのようなわびしいことになってはいけませぬ」
宦官も心配げにうなずく。
高僕射は今でも、外向きには『妻一筋・真面目一筋な男』で通っているのだ。
「家の采配にしても、細々としたところまで気が配れる女主人が居ないと難しいものです。
苦労していないか心配でなりませぬ。
あの様子であれば、わたくしの方から何か申し上げても遠慮なさるでしょう。読経の邪魔になるような事もしたくはありませぬ。
ですから、困っていそうなことだけこっそりと把握して、何かの折には助けて差し上げたいのです」
「なるほど。それは良うございますな。
このように皇后さまに心配していただけるとは、まことに高僕射は幸せ者でございます。
では、早速手の者を二、三用意して探ってまいりましょう」
元々この宦官は間諜を束ねていたので、この手の事は得意である。
早速準備を整えて、翌朝には出発していった。
凶事などとはかかわりの無さそうな、よく晴れた早朝のことであった。
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