最強忍者とエルフのお姫様~隠れ里を抜けてぼっちになったので、辺境のエルフ村でのんびり暮らします~

ケンコーホーシ

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13話 忍者はエルフたちと和食を食べる。

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「それじゃあ、達者でな」
「べあー……」

 数日後、俺は隣の穴倉に住んでいたべあ殿に別れを告げていた。

「何、遠く離れるわけではない。またしばらく生活が落ち着いたら顔をだすさ」
「べあ……」

 と、べあ殿は何やらいそいそと穴倉から笹の葉に包まれた何かを手渡してくれた。

「これは……蕎麦《そば》か」
「べあー」

 なるほど確かに我が国の風習では、隣に引っ越してきた者にそばを渡す習慣がある。
 最初にべあ殿にお会いしたとき、私は持ち合わせがなく、代わりの非常食と川魚をお渡しした。
「本当はそばを渡すのが良いのだがな」
「べあー?」
「なに、我が国の風習であってな……」

 べあ殿はその時の話を覚えていてくださったのか。

「なるほど、引越し蕎麦とは、そばに寄るという意味に加え、細く長い蕎麦のようにゆるりと永き付き合いをすることを意味する。俺よりも幾百もの時を過ごすエルフの方々と暮らすには相応しき品かもな」
「べあー」
「慣れないからうまく作れてないかも? なあに気にするまい。こういうのは心意気だ」
「べあー」

 そうして俺はべあ殿と別れた。
 思ったよりも快適であった穴倉生活に終わりを告げ、俺はタランが作り出してくれた新居に住処を移すのであった。


 ☆


「そばうめー」
「美味しいですねぇ」
「はふはふはふっ!」

 その後、俺は新居にその身を移すとタランと、ディナ、カレナの3人が出迎えてくれた。

「あの熊さんこんなうまいもの作れたのか、すごいなぁ」
「50年くらいの付き合いですが知らなかったですねぇ」
「はふはうはふっ」

 まだ家財道具が何も揃ってない家ゆえ、鍋はカレナのお屋敷からとってきて、我が忍術にて火を起こし湯を沸かした。
 出し汁は魚を保存食として乾燥させていたので、それを利用した。そこに酒と、塩を加えて、薄口の蕎麦の完成だ。

「濃口の蕎麦が作れるとまた一風変わってくるのだが、べあ殿は麦と大豆の生産も始めておったからな。後に醤油の加工もできるやもしれん」
「魔素も使わないでそんなんできるのか」
「すごいですよこれは味ってこんな色々あるんですね」
「はふはふはっふ、クロウ、おかわり!」

 カレナが一杯目を食べ終わったようだ。
 ちゅるるん、と音を立てて美味しそうに蕎麦をすする姿は見ていて可愛らしい。

「待ってろ。たくさんあるからな」
「うん!」

 そう言って、大鍋に蕎麦を投入しようとしていると……別の視線を感じた。
 何やらこちらを見つめる視線。
 タランの時もそうであったが、俺はこうした視線に敏い。
 隣国の殿様の護衛役を仰せ使わさった時などは、自身だけではなく、他者に向けられた視線にも敏感になったものだ。

 そしてこの視線は、蕎麦を見つめている。


「…………じー」
「――――何かご用向きかな」

 気づけば、俺は視線の主の背後を取っていた。

「じー……あ」
「君は確かお隣の……」

 と、少女はボーッとした視線で背後を取った俺を見つめていた。

「わ、びっくりした」

 ……本当か?
 俺が急に姿を消したのに驚いたのか、ディナやカレナたちがこちらにワイワイ駆け寄ってきた。

「ど、どうしたんですかクロウさん……あら、ララノアさん」
「ララだ! おそばたべる?」
「たべたい」

 こくりと頷いたエルフの少女は、物欲しそうな目で俺を見つめてきた。
 ディナ、カレナ、タラン、とまた違った雰囲気の少女。
 ある意味で妖精に最も近い空気を纏っているだろうか。
 眠たげな視線で、こちらをじーっと見つめてくる。

「……承知した。準備しよう」
「だいすき」

 そう言ってにへらと笑った。
 冬の花畑に一輪だけ見事に咲いた花とでも形容すれば良いだろうか。
 美しさの入り混じった金髪の少女は俺の足をぎゅっと抱きしめながら、食事場へと赴いた。

「とてもおいしい」
「そうか」
「べりーでりしゃす」
「ならば重畳」

 気づけばべあ殿から貰った蕎麦も半分以上無くなっていた。

「しまった食べすぎたな」
「うっかり」
「仕方ないな、うまかったもん」
「ねー!」

 あきらめモードのカレナ、タランであったが、ディナだけはあわあわしていた。

「す、すみません、クロウさんついつい食べすぎてしまいまして」
「そういうディナが一番食ってたじゃん」
「――――ッ!」

 タランの突っ込みに、ディナは稲妻が落ちたかのように崩れ落ちるが。

「す、すみません……お詫びに私も熊さんのところにお邪魔して蕎麦籾の栽培をしてきます……」
「いや、そこまでしなくていいぞ」

 そもそも、この蕎麦は引っ越し祝いに振る舞ったもの。
 俺の家はカレナのお屋敷の隣、というわけではないが、それでもこれから長い縁になるのは変わりない。

「それにお隣さんは君なのだろ」
「んー」

 と、ララノアと呼ばれた少女が返事ともつかない奇妙な言葉で応答した。
 ここ数日、この村でタランにお願いして家を作ることを決めた際、少し歩いたところに彼女の家と思しきお家が存在していた。
 先ほど呼んだときは留守のようだったが

「これからよろしく頼む」
「まかせてー」

 どうやら任されたらしい。
 何はともあれ、俺はこの村に家を構えたのであった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

PON
2018.02.15 PON

面白い!期待大です!

2018.02.17 ケンコーホーシ

わーい、ありがとうございますー!

解除

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