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第8話 春の国と、永遠の誓い
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春の陽ざしが、山を金色に染めていた。
雪はすでに跡形もなく、山桜と梅が一斉に咲き誇る。
村の人々はその光景を“神の加護の年”と呼び、山へ感謝の祈りを捧げた。
その日、ミナはふと思い立ち、再び山の社を訪れた。
風は穏やかで、鳥たちの声がこだましている。
あの冬の夢のことを、どうしても確かめたかった。
社の前まで来ると、ひときわ大きな梅の木が目に入った。
白い花が満開で、風に舞う花びらが金色に輝いている。
ミナはその木の下に立ち、静かに目を閉じた。
「――また、あなたに会える気がして」
そう呟いた瞬間、風がふわりと吹き抜けた。
花びらが舞い上がり、その中から、淡い光の粒が生まれていく。
光は集まり、形を成した。
白い衣、金の髪、琥珀の瞳。
優しく微笑む青年が、そこにいた。
「……灯」
懐かしい響きが、春の空気を震わせた。
ミナの瞳が見開かれる。
胸の奥に、痛いほどの記憶があふれた。
「――白鷺様……」
その名を口にした瞬間、涙が溢れた。
それは、悲しみではなく、百年越しの再会に流れる涙。
白鷺は微笑み、そっと手を伸ばした。
「久しいな。約束どおり、春に戻ってきた」
「ずっと……待っていました」
ミナ――いや、灯の魂が微笑み返す。
白鷺の指先が彼女の頬に触れた。
もう、それは幻ではなかった。
春の風が二人を包み込み、花びらが舞い上がる。
「これからは、永遠の冬も春もいらぬ」
「え?」
「共に生きよう。この山と、人々と、そして春の中で」
灯は小さく頷き、白鷺の胸に顔を埋めた。
その胸の鼓動が、確かに聞こえた。
――生きている。
ふたりを包む光がゆっくりと溶け、
社の上に、金色の鳥が飛び立った。
それはまるで、冬と春の境を越えて、
新しい季節を告げる“神の使い”のようだった。
数日後。
山のふもとの村では、ひとりの若い夫婦が社を修復し、花を供えていた。
人々はいつしか彼らをこう呼ぶようになった。
――春の守り神。
社の裏手には、白狐と巫女を象った二体の石像が並んでいる。
その足もとには、毎年春になると白い梅が咲き、
花の中心には、金色の光が静かに瞬いていた。
それはまるで、今も変わらず寄り添う二つの魂の、
穏やかな息づかいのようだった。
雪はすでに跡形もなく、山桜と梅が一斉に咲き誇る。
村の人々はその光景を“神の加護の年”と呼び、山へ感謝の祈りを捧げた。
その日、ミナはふと思い立ち、再び山の社を訪れた。
風は穏やかで、鳥たちの声がこだましている。
あの冬の夢のことを、どうしても確かめたかった。
社の前まで来ると、ひときわ大きな梅の木が目に入った。
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ミナはその木の下に立ち、静かに目を閉じた。
「――また、あなたに会える気がして」
そう呟いた瞬間、風がふわりと吹き抜けた。
花びらが舞い上がり、その中から、淡い光の粒が生まれていく。
光は集まり、形を成した。
白い衣、金の髪、琥珀の瞳。
優しく微笑む青年が、そこにいた。
「……灯」
懐かしい響きが、春の空気を震わせた。
ミナの瞳が見開かれる。
胸の奥に、痛いほどの記憶があふれた。
「――白鷺様……」
その名を口にした瞬間、涙が溢れた。
それは、悲しみではなく、百年越しの再会に流れる涙。
白鷺は微笑み、そっと手を伸ばした。
「久しいな。約束どおり、春に戻ってきた」
「ずっと……待っていました」
ミナ――いや、灯の魂が微笑み返す。
白鷺の指先が彼女の頬に触れた。
もう、それは幻ではなかった。
春の風が二人を包み込み、花びらが舞い上がる。
「これからは、永遠の冬も春もいらぬ」
「え?」
「共に生きよう。この山と、人々と、そして春の中で」
灯は小さく頷き、白鷺の胸に顔を埋めた。
その胸の鼓動が、確かに聞こえた。
――生きている。
ふたりを包む光がゆっくりと溶け、
社の上に、金色の鳥が飛び立った。
それはまるで、冬と春の境を越えて、
新しい季節を告げる“神の使い”のようだった。
数日後。
山のふもとの村では、ひとりの若い夫婦が社を修復し、花を供えていた。
人々はいつしか彼らをこう呼ぶようになった。
――春の守り神。
社の裏手には、白狐と巫女を象った二体の石像が並んでいる。
その足もとには、毎年春になると白い梅が咲き、
花の中心には、金色の光が静かに瞬いていた。
それはまるで、今も変わらず寄り添う二つの魂の、
穏やかな息づかいのようだった。
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