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29、幕間

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安井はよく話すなあ。ネタが続くものだ。まあ、ああ見えて努力家であることは努力家なんだよ、あいつは。彼は野球選手の役をやるというので区の図書館に3日ぐらいこもったことも知っている。というより3日坊主なんだよ。野球選手なんてアマチュアにもたくさんいるのだからそういう人から話を聞いていけばよいのではないかと思うのだがそれはこっちの考えだからな。バイトの経験も多くその経験を役者として生かしていた。役者にとどまらない活動というのが奴の理想らしいんだな。プロデューサーとか映画監督、舞台演出家を束ねる職業をしてみたいという理想を持っていた。そんな高い理想が実現するはずはないのだ。ないと断言しても危険だな。世の中本当に読めないことばかりだものな。「ジャンヌ・ダルク生存説ですが」「そういえばそういうのあるね」流そうとしている。割り込むとするか。「ルーアンの時点ですり替えられたんだ」「すり替え…」藤野が割り込む「あのヒヨコが見たものを親だと思い込むやつね」無視する俺と岡田さん。「もっと前に視点を移動させて、つかまった時点でジャンヌが替え玉だったと。本物はどこかに身を潜ませていた。」「そうなれば生存率が高まりますね」藤野がまた割り込む。「でも600年も前だからさすがに死んでるよ」無視する。「前にもこの話したかもしれないけど、ただの個人のジャンヌダルクが個人としてどういうことができるだろうか。とある小説ではとある騎士(傭兵ピエール:カッコ内は発言していないのであしからず)に連れられて北仏を旅するけど」「とある騎士?」「そう、なろう小説なんだよ(註:でたらめ。ここも発言していない)。ジャンヌを助けたなろう騎士。どうしてフランス語を話せるのかわからないけど。なぜか大活躍するんだ」どうしてそんなウソが言えるのか自分でもわからない。「そうなんですか。読んでみたいですね」いやあ、とんでもないことになった。今日は寝られないぞ。もちろん偽のなろう小説の執筆で。まあなくてもごまかすのが俺の人生哲学だからな。安井がミックスジュースを飲む。「そのなろう小説。なんつったっけか『三人目の殺人2022』だっけ」わけがわからん。藤野が続ける「三度目の何とかはパリを奪還するんだね。」勝手なことを言い過ぎだ。俺も返さないといけない。「パリ凱旋でひとまず終了だろう。」イングランドはカレー付近の領土を何とか保持するしかなくなった。イングランドは打つ手がなさそうだな。それにしても架空の小説をなんとかしないとな。あいつに連絡を取ってみてはどうかと思った。しかし、ただの歴史改変小説だな、こりゃ。それにしても幸せに死んだジャンヌはあまりドラマとして・・・ここまで長く語り継がれたのだろうか。それはこの場合どうでもよい。分岐点があるとすれば貴族として収まるか、ドンレミ村に戻るという展開だろうな。岡田さんなら帰るんだろうなという意味のない比較はどうでもよい。貴族と結ばれるという展開もくだらなそうで俺なら却下。
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