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第1章 スプリング×ビギニング
第23話 マ ノ コクイン
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「あ、経吾。今日の帰り野菜買ってきてくれない?重いのよ、野菜って」
朝食を食べ終わった俺に母さんがそう言ってきた
「ん?まあ、いいけど」
俺は椅子から立ち上がりながらそう答える
「じゃあ頼むわね・・・手、出して」
母さんの言葉に従い手の平を上に右手を差し出す
俺の右手を取った母さんは手の平を裏返し、
俺の手の甲にマジックで何か書き始めた
「・・・って、何してんだよ!?母さん!」
俺は母さんの不可解な行動に困惑の声をあげる
「何って・・・買い物メモ」
母さんはしれっとそんなことを言った
「紙に書いて渡せばいいじゃないか!」
「それだと無くすかもしれないでしょ?
手に書いとくのが一番確実なのよ」
しかし母さんは俺の非難を意にも介さない
「だからって手の甲に『大根』とか『人参』とか書いてあったら
マヌケ過ぎるだろ!?」
「ふふん、母さんもその点はぬかりないわ」
そう言ってドヤ顔で口の端を上げる母さん
だが母さんがこの顔をする時はろくなことがない
やっと解放された右手の甲を見た俺は脱力感で一杯になった
「Dが大根、Aがアボカド、Rがリンゴ、Kがキャベツだからね」
「あのなあ・・・・、なんでリンゴだけローマ字?」
「だって英語でアップルにするとアボカドのAと被るでしょ?」
「・・・もういいよ」
俺は朝からげんなりした気分で家を後にした
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「・・・お、落ちねえ」
始業前
学校のトイレの中、俺は愕然としていた
通学途中は右手をずっとズボンのポケットに入れていたため誰にもこのマヌケな手の甲は見られないで済んだ
だがさすがにポケットに手を突っ込んだまま授業を受けるわけにはいかない
俺は隣の席に座る園崎に
「俺、ちょっとトイレな」
といって席を立った
さすがの園崎も男子トイレまではついてこない
手に書かれたメモの内容をケータイのメモ機能に入力した後、
石鹸をつけて洗い始めたのだがマジックで書かれた文字は
一向に落ちる気配はない
「おろ?何やってんのお前」
声をかけられ振り返るとそこに立っていたのは我が悪友、
キング・オブ・アホ、タナカと
最近影の薄い影のキング・オブ・アホ、サトウだった
見られたからには仕方ない
「いや、実はな・・・」
俺は自分の手の甲に書かれたマヌケなメモについてのいきさつを
二人に語った
「ぶはははは・・・、お前のかーちゃんてたまにナイスな笑いを提供してくれるよな」
語り終えると案の定タナカは腹を抱えて爆笑した
サトウも笑いを噛み殺して目尻に涙を溜めている
「ま、諦めろ。それ、しばらく消えねーよ」
タナカの言葉に俺は諦めまじりの深い溜息をついた
・・・・・・・
「経吾、遅かったな」
トイレから戻ると教室前の廊下で待っていた園崎が駆け寄ってきた
「いや、実はこれなんだがな・・・」
見つけられるより先に自分で説明するつもりで右手の甲を園崎に見せた
「実は今朝な・・・」
朝の経緯を話そうと口を開くが、それより早く園崎に右手を掴まれた
「園・・・崎?」
突然のその行動に困惑する俺
園崎は俺の手の甲を見て驚愕に目を見開いた
そして震える声で
「こ、これはまさか・・・・・・・竜の邪刻(じゃこく)!?」
と言った
「・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
ちょっとついて行けなかった俺は否定するタイミングを失った
「まさか右腕の邪竜が・・・目覚めようとしている?」
「いや・・・あのな?」
なにやらぶつぶつ言い出した園崎の耳には、
もう俺の言葉は届いていなかった
「ちょ、ちょっと待っていろ」
呆気に取られる俺を置いて教室に飛びこんだ園崎が
何か掴んで戻ってきた
「クロウ、不用意だぞ!?奴らに見られたらどうする」
潜めた声でそう言いながら、持ってきた包帯で
俺の右手をぐるぐる巻きにしていく
用意いいな・・・さすが中二病だ
おかげで手の甲の文字は隠すことが出来たが別の意味で余計目立つ事になった
さらに園崎の中では新たな設定(おもいこみ)が生まれることになったようだ
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺の憂鬱な心中に反して、今日の放課後の空は嫌味なくらい晴れ渡っていた
自らの不用意により園崎に新たな設定を与えてしまった俺は、
不安な気持ちでいつもの旧棟屋上にいた
ガチャリ
ドアに鍵をかけた園崎がゆっくりと俺に振り向く
俺の心に悪い予感が渦巻いた
伏せた顔をゆっくり上げた園崎は俺に向かって
「服を脱いで僕に身体を見せろ、クロウ」
と言った
「は?」
脳がその言葉の意味を理解するのに十数秒かかった
「なあああああああああああ!!!!!!?????」
「邪刻(じゃこく)が現れたのが右手だけとは限るまい?
確認する!脱げ!」
「いや、ちょっと待て」
俺は慌てて後ずさるが園崎の目には有無を言わさぬ迫力があった
「い、い、か、ら、脱、げ」
「は、はい」
押し切られた
園崎・・・目が据わってて恐え
諦めた俺は制服のジャケットを脱ぎ園崎に手渡す
「はあ・・・、なんでこんな事に・・・
って、何やってんのオマエ!?」
園崎が、手渡した俺のジャケットに顔を埋めていた
「ふあっ!?か、確認だ!確認!!
な、何かいりょうがひゃるやみょひりぇないりゃりょ!!」
スゲェ、ろれつ回ってねぇ!
なんか目もマンガみたいにぐるぐるになってるぞ
「そんなことよりクロウ。手が止まってるぞ・・・」
異様な迫力で睨まれた
ううう・・・
ここ、ホントに周りから死角になってるんだろうな?
ワイシャツのボタンを外し両腕を抜く
「ほふっ!」
何!?
謎の異音に顔を上げると園崎の美少女顔がとんでもない事になっていた
細かい描写は控えさせて頂きたい・・・
「クロウ・・・お前の鎖骨のライン・・・いいな」
「さ、鎖骨・・・?」
「ああ、首元から肩にかけての曲線が・・・絶妙だ」
そう言って伸ばしてきた指先で・・・ゆっくりと俺の鎖骨をなぞる
うおぅ!ぞくっときた
「ふひ・・・・さあ、これもだ」
異様な熱の篭った指先が鎖骨の上のタンクトップの生地を引っ掻く
抵抗することの許されない威圧感に負け、タンクトップも脱ぎ去る
「・・・ふ、ほ、ほわはぁああぁぁぁぁ」
とても残念な表情で残念な歓声を上げる園崎に軽く引く俺
だがその時、背後のドアの向こうに・・・
人のやって来る気配を感じた!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ああ、やっぱり最高のロケーションですよ、部長」
「うん、今日は天気も快晴だ。これ以上ない程の撮影日和だな」
ドアを開け数人の生徒が現れた
皆、カメラを持っているところを見ると写真部員のようだ
「屋上の使用許可は30分だ。時間がもったいない。始めるぞ」
そんな彼らの様子を俺達は物陰に身を潜めて伺っていた
彼らがドアを開ける直前、間一髪俺達はなんとか身を隠した
狭い物陰で園崎を抱くような体勢で息を殺した俺は生きた心地がしなかった
状況としては最悪だ
立ち入り禁止の屋上で女子生徒と二人きり、といういつもの状態に加え今日の俺の格好は上半身裸だ
さらに彼らの持つ複数のカメラ・・・
見つかった時の事を考えると気が遠くなる
「園崎・・・絶対物音立てるんじゃ・・・」
・・・って、なんで俺の乳首ガン見して息荒くしてんの!?
「そ、園崎、正気に戻れ。見つかったら俺達は破滅だぞ!?」
「くは、破滅の道・・・それは甘美な罠と表裏一体・・・」
ダメだ、何言ってるかわからん
・・・よし、最悪見つかったら強行突破だ
顔さえ見られなければなんとかなる
顔を隠して校舎に入ってしまえば、木の葉を隠すにゃ森の中・・・
みんな同じ制服だ。紛れ込めればなんとか・・・
そこまで考えたところで園崎の足元に気付いた
縞ニーソ・・・
もちろん園崎以外にも縞ニーソを履いた女子はいるが、特定される確率はグンと上がるだろう
「園崎、そのニーソックス、脱げ」
「・・・・ほわっ!?」
突然の俺のセリフに園崎が目を丸くする
そしてなにか別のスイッチに切り替ったように、今まである意味男性的ともいえる輝きを放って俺の身体に向けていた目を急に女性的なものへと変化させた
「え?ぬ、脱ぐの?あたし」
「ああ、そのニーソはまずい。脱いでくれないか?」
「ふあ・・・、け、経吾がそう言うなら・・・わかった」
園崎は俺の言葉に同意してうなずいた
「ありがとう、ごめんな?」
「んーん、いいよ。・・・・じゃあ経吾、脱がせて」
「・・・へ?」
「だってあたし、両手塞がってるから」
「あ、そうか」
園崎の腕の中には俺の脱いだ服があった
冷静に考えればそれを俺が受け取ればいいだけだったのだが、
その時の俺達はテンパっててそこに考えが至らなかった
園崎の前にひざまづき、そのフトモモへと手を伸ばす
「園崎、もうちょっと脚、開いて」
「!・・・・ふぁ、・・・わ、わかりました・・・・・」
俺の指示に素直に従い両脚の隙間を拡げる園崎
まず向かって右側からだ
もう片方のフトモモに触れないように慎重に両足の間に手の平を差し入れる
そして、緊張で震える両手の親指を、
ニーソの布地と素肌の間へとゆっくりと滑り込ませた
その瞬間、園崎がぴくんと身体を震わせる
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?天国(ヘブン)?
一瞬気が遠くなった
初めて触れる園崎のフトモモの感触・・・・・・
すべすべで柔らかくて、その上すべすべで柔らかく、
おまけにすべすべで柔らかかった
・・・あれ?俺、いま同じ事2回言った?(注:3回です)
いかんいかん、お茶漬け・・・いや、落ち着け俺
これからが本番だ
ゆっくりとその両手を下に・・・滑り降ろす
「う、あ、あ、あ、あ・・・・」
園崎が俺の手の動きに合わせて吐息を漏らす
「ご、ごめん園崎。大丈夫か?」
「んーん、へいき・・・、け、経吾の指がきもちよ・・・
じゃなくて・・・くすぐったかった、から・・・」
「わ、悪い、もうちょっと我慢してて・・・」
「ん、わかった・・・」
再び止めていた手を動かす
ゆっくりと下げていくと、
やがて可愛いらしいひざ小僧が現れる・・・
そして滑らかな脛・・・
ふくらはぎ・・・
「園崎、ちょっと脚、上げて・・・」
「んく、は、はい・・・」
素直に上げた足を手の平に乗せ、踵から優しく上履きを外す
脱がせた上履きを床に置き、続いてニーソックスも脱がす
そして素足になった足の甲に唇を・・・じゃなくて!
先に下に置いた上履きへとその素足になった足を導く
ふう、やっと片方終わった・・・よし、次
そう思った時だった
背後で
「よし、撤収するぞ。忘れ物はないか?」
「はい、大丈夫です」
と言う声
・・・・・・・・・。
た、助かった
なんとか見つからずにすんだ
去っていく物音に、俺は安堵の吐息を漏らした
「園崎。もう大丈夫だ。写真部の奴らみんな行ったみたいだ」
反応がない
「・・・園崎?」
見上げると園崎はまだ変なスイッチが入ったままで
何かぶつぶつと呟いていた
「どうしよう、けいごに…られちゃう・・・お…されちゃう・・・・
あたしはじめてなのに・・・・こんなそとで・・・・
おくじょうなんかで・・・うれしい・・・・ゆめみたい・・・でも・・・・」
「園崎?大丈夫か園崎?戻ってこい、園崎。戻ってこーい!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結局、なんとか園崎は数分ほど後に正気を取り戻した
元に戻った園崎は
「こふんこふん・・・・。
フッ・・・邪竜の魔力に当てられてしまっていたようだな・・・」
などと言っていた
もちろん、ただのマジックで書いたものにそんな力はない
多分、中二病的な思い込みから来る自己暗示みたいなものだったのだろう
それにしても今日はマジでヤバかった
もし、見つかっていたらと思うと冷や汗が出る
「えーと、経吾。それ、返して・・・」
「え?・・・・うわ!ご、ごめん」
言われて園崎のニーソを握り締めたままだったことに気付き慌てて返却する
いかんいかん、危うくポケットに突っ込むところだった
「園崎も、俺の返して」
俺の服も園崎の腕の中だ
「え?なんで?」
予想外の返答が返ってきた
「ククッ・・・、クロウ。お前の身体、まだ調べ終わってないだろう?
さあ、続きを始めようじゃないか・・・」
そう言って唇を舐める園崎の目の奥には、男性的ともいえる光が宿っていた
「ひいっ」
晴天の空に俺の悲鳴が消えていった
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その後、結局俺は園崎の手によりズボンを脱がされる羽目になる
しかし、なんとか最後の一枚は守りきることは出来た
謎の興奮状態に陥った園崎が鼻血を出したためだ
ああ、それにしても今日はエライ目にあった・・・
自室のベッドの上
寝転んで右手の甲を眺めながら思い返す
朝より薄くなったとはいえ、まだ文字は残っている
園崎にはしばらくこのネタで引っ張られそうだ
そういえば今日・・・
俺、園崎の足に触っちゃったんだよな
すべすべで・・・柔らかかったな・・・・
そのことを考慮すれば俺はこの災難から十分過ぎる対価を貰ったのかもしれない
(つづく)
朝食を食べ終わった俺に母さんがそう言ってきた
「ん?まあ、いいけど」
俺は椅子から立ち上がりながらそう答える
「じゃあ頼むわね・・・手、出して」
母さんの言葉に従い手の平を上に右手を差し出す
俺の右手を取った母さんは手の平を裏返し、
俺の手の甲にマジックで何か書き始めた
「・・・って、何してんだよ!?母さん!」
俺は母さんの不可解な行動に困惑の声をあげる
「何って・・・買い物メモ」
母さんはしれっとそんなことを言った
「紙に書いて渡せばいいじゃないか!」
「それだと無くすかもしれないでしょ?
手に書いとくのが一番確実なのよ」
しかし母さんは俺の非難を意にも介さない
「だからって手の甲に『大根』とか『人参』とか書いてあったら
マヌケ過ぎるだろ!?」
「ふふん、母さんもその点はぬかりないわ」
そう言ってドヤ顔で口の端を上げる母さん
だが母さんがこの顔をする時はろくなことがない
やっと解放された右手の甲を見た俺は脱力感で一杯になった
「Dが大根、Aがアボカド、Rがリンゴ、Kがキャベツだからね」
「あのなあ・・・・、なんでリンゴだけローマ字?」
「だって英語でアップルにするとアボカドのAと被るでしょ?」
「・・・もういいよ」
俺は朝からげんなりした気分で家を後にした
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「・・・お、落ちねえ」
始業前
学校のトイレの中、俺は愕然としていた
通学途中は右手をずっとズボンのポケットに入れていたため誰にもこのマヌケな手の甲は見られないで済んだ
だがさすがにポケットに手を突っ込んだまま授業を受けるわけにはいかない
俺は隣の席に座る園崎に
「俺、ちょっとトイレな」
といって席を立った
さすがの園崎も男子トイレまではついてこない
手に書かれたメモの内容をケータイのメモ機能に入力した後、
石鹸をつけて洗い始めたのだがマジックで書かれた文字は
一向に落ちる気配はない
「おろ?何やってんのお前」
声をかけられ振り返るとそこに立っていたのは我が悪友、
キング・オブ・アホ、タナカと
最近影の薄い影のキング・オブ・アホ、サトウだった
見られたからには仕方ない
「いや、実はな・・・」
俺は自分の手の甲に書かれたマヌケなメモについてのいきさつを
二人に語った
「ぶはははは・・・、お前のかーちゃんてたまにナイスな笑いを提供してくれるよな」
語り終えると案の定タナカは腹を抱えて爆笑した
サトウも笑いを噛み殺して目尻に涙を溜めている
「ま、諦めろ。それ、しばらく消えねーよ」
タナカの言葉に俺は諦めまじりの深い溜息をついた
・・・・・・・
「経吾、遅かったな」
トイレから戻ると教室前の廊下で待っていた園崎が駆け寄ってきた
「いや、実はこれなんだがな・・・」
見つけられるより先に自分で説明するつもりで右手の甲を園崎に見せた
「実は今朝な・・・」
朝の経緯を話そうと口を開くが、それより早く園崎に右手を掴まれた
「園・・・崎?」
突然のその行動に困惑する俺
園崎は俺の手の甲を見て驚愕に目を見開いた
そして震える声で
「こ、これはまさか・・・・・・・竜の邪刻(じゃこく)!?」
と言った
「・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
ちょっとついて行けなかった俺は否定するタイミングを失った
「まさか右腕の邪竜が・・・目覚めようとしている?」
「いや・・・あのな?」
なにやらぶつぶつ言い出した園崎の耳には、
もう俺の言葉は届いていなかった
「ちょ、ちょっと待っていろ」
呆気に取られる俺を置いて教室に飛びこんだ園崎が
何か掴んで戻ってきた
「クロウ、不用意だぞ!?奴らに見られたらどうする」
潜めた声でそう言いながら、持ってきた包帯で
俺の右手をぐるぐる巻きにしていく
用意いいな・・・さすが中二病だ
おかげで手の甲の文字は隠すことが出来たが別の意味で余計目立つ事になった
さらに園崎の中では新たな設定(おもいこみ)が生まれることになったようだ
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺の憂鬱な心中に反して、今日の放課後の空は嫌味なくらい晴れ渡っていた
自らの不用意により園崎に新たな設定を与えてしまった俺は、
不安な気持ちでいつもの旧棟屋上にいた
ガチャリ
ドアに鍵をかけた園崎がゆっくりと俺に振り向く
俺の心に悪い予感が渦巻いた
伏せた顔をゆっくり上げた園崎は俺に向かって
「服を脱いで僕に身体を見せろ、クロウ」
と言った
「は?」
脳がその言葉の意味を理解するのに十数秒かかった
「なあああああああああああ!!!!!!?????」
「邪刻(じゃこく)が現れたのが右手だけとは限るまい?
確認する!脱げ!」
「いや、ちょっと待て」
俺は慌てて後ずさるが園崎の目には有無を言わさぬ迫力があった
「い、い、か、ら、脱、げ」
「は、はい」
押し切られた
園崎・・・目が据わってて恐え
諦めた俺は制服のジャケットを脱ぎ園崎に手渡す
「はあ・・・、なんでこんな事に・・・
って、何やってんのオマエ!?」
園崎が、手渡した俺のジャケットに顔を埋めていた
「ふあっ!?か、確認だ!確認!!
な、何かいりょうがひゃるやみょひりぇないりゃりょ!!」
スゲェ、ろれつ回ってねぇ!
なんか目もマンガみたいにぐるぐるになってるぞ
「そんなことよりクロウ。手が止まってるぞ・・・」
異様な迫力で睨まれた
ううう・・・
ここ、ホントに周りから死角になってるんだろうな?
ワイシャツのボタンを外し両腕を抜く
「ほふっ!」
何!?
謎の異音に顔を上げると園崎の美少女顔がとんでもない事になっていた
細かい描写は控えさせて頂きたい・・・
「クロウ・・・お前の鎖骨のライン・・・いいな」
「さ、鎖骨・・・?」
「ああ、首元から肩にかけての曲線が・・・絶妙だ」
そう言って伸ばしてきた指先で・・・ゆっくりと俺の鎖骨をなぞる
うおぅ!ぞくっときた
「ふひ・・・・さあ、これもだ」
異様な熱の篭った指先が鎖骨の上のタンクトップの生地を引っ掻く
抵抗することの許されない威圧感に負け、タンクトップも脱ぎ去る
「・・・ふ、ほ、ほわはぁああぁぁぁぁ」
とても残念な表情で残念な歓声を上げる園崎に軽く引く俺
だがその時、背後のドアの向こうに・・・
人のやって来る気配を感じた!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ああ、やっぱり最高のロケーションですよ、部長」
「うん、今日は天気も快晴だ。これ以上ない程の撮影日和だな」
ドアを開け数人の生徒が現れた
皆、カメラを持っているところを見ると写真部員のようだ
「屋上の使用許可は30分だ。時間がもったいない。始めるぞ」
そんな彼らの様子を俺達は物陰に身を潜めて伺っていた
彼らがドアを開ける直前、間一髪俺達はなんとか身を隠した
狭い物陰で園崎を抱くような体勢で息を殺した俺は生きた心地がしなかった
状況としては最悪だ
立ち入り禁止の屋上で女子生徒と二人きり、といういつもの状態に加え今日の俺の格好は上半身裸だ
さらに彼らの持つ複数のカメラ・・・
見つかった時の事を考えると気が遠くなる
「園崎・・・絶対物音立てるんじゃ・・・」
・・・って、なんで俺の乳首ガン見して息荒くしてんの!?
「そ、園崎、正気に戻れ。見つかったら俺達は破滅だぞ!?」
「くは、破滅の道・・・それは甘美な罠と表裏一体・・・」
ダメだ、何言ってるかわからん
・・・よし、最悪見つかったら強行突破だ
顔さえ見られなければなんとかなる
顔を隠して校舎に入ってしまえば、木の葉を隠すにゃ森の中・・・
みんな同じ制服だ。紛れ込めればなんとか・・・
そこまで考えたところで園崎の足元に気付いた
縞ニーソ・・・
もちろん園崎以外にも縞ニーソを履いた女子はいるが、特定される確率はグンと上がるだろう
「園崎、そのニーソックス、脱げ」
「・・・・ほわっ!?」
突然の俺のセリフに園崎が目を丸くする
そしてなにか別のスイッチに切り替ったように、今まである意味男性的ともいえる輝きを放って俺の身体に向けていた目を急に女性的なものへと変化させた
「え?ぬ、脱ぐの?あたし」
「ああ、そのニーソはまずい。脱いでくれないか?」
「ふあ・・・、け、経吾がそう言うなら・・・わかった」
園崎は俺の言葉に同意してうなずいた
「ありがとう、ごめんな?」
「んーん、いいよ。・・・・じゃあ経吾、脱がせて」
「・・・へ?」
「だってあたし、両手塞がってるから」
「あ、そうか」
園崎の腕の中には俺の脱いだ服があった
冷静に考えればそれを俺が受け取ればいいだけだったのだが、
その時の俺達はテンパっててそこに考えが至らなかった
園崎の前にひざまづき、そのフトモモへと手を伸ばす
「園崎、もうちょっと脚、開いて」
「!・・・・ふぁ、・・・わ、わかりました・・・・・」
俺の指示に素直に従い両脚の隙間を拡げる園崎
まず向かって右側からだ
もう片方のフトモモに触れないように慎重に両足の間に手の平を差し入れる
そして、緊張で震える両手の親指を、
ニーソの布地と素肌の間へとゆっくりと滑り込ませた
その瞬間、園崎がぴくんと身体を震わせる
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?天国(ヘブン)?
一瞬気が遠くなった
初めて触れる園崎のフトモモの感触・・・・・・
すべすべで柔らかくて、その上すべすべで柔らかく、
おまけにすべすべで柔らかかった
・・・あれ?俺、いま同じ事2回言った?(注:3回です)
いかんいかん、お茶漬け・・・いや、落ち着け俺
これからが本番だ
ゆっくりとその両手を下に・・・滑り降ろす
「う、あ、あ、あ、あ・・・・」
園崎が俺の手の動きに合わせて吐息を漏らす
「ご、ごめん園崎。大丈夫か?」
「んーん、へいき・・・、け、経吾の指がきもちよ・・・
じゃなくて・・・くすぐったかった、から・・・」
「わ、悪い、もうちょっと我慢してて・・・」
「ん、わかった・・・」
再び止めていた手を動かす
ゆっくりと下げていくと、
やがて可愛いらしいひざ小僧が現れる・・・
そして滑らかな脛・・・
ふくらはぎ・・・
「園崎、ちょっと脚、上げて・・・」
「んく、は、はい・・・」
素直に上げた足を手の平に乗せ、踵から優しく上履きを外す
脱がせた上履きを床に置き、続いてニーソックスも脱がす
そして素足になった足の甲に唇を・・・じゃなくて!
先に下に置いた上履きへとその素足になった足を導く
ふう、やっと片方終わった・・・よし、次
そう思った時だった
背後で
「よし、撤収するぞ。忘れ物はないか?」
「はい、大丈夫です」
と言う声
・・・・・・・・・。
た、助かった
なんとか見つからずにすんだ
去っていく物音に、俺は安堵の吐息を漏らした
「園崎。もう大丈夫だ。写真部の奴らみんな行ったみたいだ」
反応がない
「・・・園崎?」
見上げると園崎はまだ変なスイッチが入ったままで
何かぶつぶつと呟いていた
「どうしよう、けいごに…られちゃう・・・お…されちゃう・・・・
あたしはじめてなのに・・・・こんなそとで・・・・
おくじょうなんかで・・・うれしい・・・・ゆめみたい・・・でも・・・・」
「園崎?大丈夫か園崎?戻ってこい、園崎。戻ってこーい!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結局、なんとか園崎は数分ほど後に正気を取り戻した
元に戻った園崎は
「こふんこふん・・・・。
フッ・・・邪竜の魔力に当てられてしまっていたようだな・・・」
などと言っていた
もちろん、ただのマジックで書いたものにそんな力はない
多分、中二病的な思い込みから来る自己暗示みたいなものだったのだろう
それにしても今日はマジでヤバかった
もし、見つかっていたらと思うと冷や汗が出る
「えーと、経吾。それ、返して・・・」
「え?・・・・うわ!ご、ごめん」
言われて園崎のニーソを握り締めたままだったことに気付き慌てて返却する
いかんいかん、危うくポケットに突っ込むところだった
「園崎も、俺の返して」
俺の服も園崎の腕の中だ
「え?なんで?」
予想外の返答が返ってきた
「ククッ・・・、クロウ。お前の身体、まだ調べ終わってないだろう?
さあ、続きを始めようじゃないか・・・」
そう言って唇を舐める園崎の目の奥には、男性的ともいえる光が宿っていた
「ひいっ」
晴天の空に俺の悲鳴が消えていった
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その後、結局俺は園崎の手によりズボンを脱がされる羽目になる
しかし、なんとか最後の一枚は守りきることは出来た
謎の興奮状態に陥った園崎が鼻血を出したためだ
ああ、それにしても今日はエライ目にあった・・・
自室のベッドの上
寝転んで右手の甲を眺めながら思い返す
朝より薄くなったとはいえ、まだ文字は残っている
園崎にはしばらくこのネタで引っ張られそうだ
そういえば今日・・・
俺、園崎の足に触っちゃったんだよな
すべすべで・・・柔らかかったな・・・・
そのことを考慮すれば俺はこの災難から十分過ぎる対価を貰ったのかもしれない
(つづく)
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この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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神崎 未緒里
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※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
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※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
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