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6、幼なじみの健太くん 七海side

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基本的に教室にいたい。

教室でクラスメイトが話していることを他人事のように聞きながら、窓から空を眺めていたい。もしくは本を読みたい。

こうしてれば、誰も話しかけてこなくて安心する。

「なぁ!おいっ、七海ちょっと聞いて!」

最近、健太はニヤニヤしていることが多い。

「なに、またニヤニヤして」

確か誰かに会いに行くと言って教室を出ていったはず。たぶん、みなちゃん。

「みながかわいくってかわいくって!」

「ふーん」

健太に好きな人が出来たことにはすぐ気づいていたけど、こんなに毎日かわいいかわいいと言われては少々気になってくるというもの。

「今日のみなちゃんはどこがかわいかったの」

極力興味が無いように装って、本に向かって聞く。

「さっきの授業の教科書借りてたから今返しに行ったんだよ!そしたらさ、絶対に今寝てたろ!?って顔でお役に立てて良かったですって!!」

こっちはその『絶対に今寝てたろ!?』って顔を見てないから分かんないけど。

「ほっぺに寝あととかついててさーあ!もう!抱きしめたくなったよね!俺、頑張った!」

ようするに、キュンキュンしたんだね健太は。

「かーわいいな!もう!あー!かわいい!!」

「そ~だね」

「俺、みなの代わりに七海抱きしめるわ!」

「失礼か。普通は代わりとか堂々と言わないでしょ」

「もういいから!ぎゅー」

クラスメイトの視線もちらほらと感じる。健太モテるもんね。

「あー!!みな本当にかわいいかわいい!」

「わかったから」

そろそろ離して、と健太の腕をポンと叩く。

「七海ぃ。いい匂いすんなぁ」

「気持ち悪いよ。もういいでしょ」

「俺はいつになったらみなを抱きしめられるんだァ!」

「みなちゃんじゃない人抱きしめてその欲求満たすのやめてくれない。そのうちキスされそう」

健太はぎゅっと腕に力を込めて体を揺さぶる。

「うわぁぁ!キスもしたいぃ!」

健太は自分が満足するまでやめないつもりかもしれない。

「みなちゃんにこんなところ見られたらまずいんじゃないの?」

ハッとしたように体を離して廊下を見る。みなちゃんがいないことに明らかにホッとしていた。

「...そんなに気になるなら抱きしめないでよ」

そう言いながら思わず笑いがこみ上げてきた。
健太は素直でかわいくて小動物のように愛でたくなる。

「七海も好きだからやだ!」

こんなことばっかり言って、人は健太に魅せられていく。

自分もその1人で、健太は自分がいないとなにもできないと思っている。

自分と同じくらい、もしかしたらそれ以上に健太は自分のことが大好きだと確信していた。








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