困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

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7、彼の大きな悩み 七海side

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みなちゃんと健太が付き合う前々日。



昼休み、いつもは飛んでくる健太が妙に遅い。

「七海、、、どうしよう、俺、、」

来たかと思えばどんよりとした顔で俯いている。

「うわっ、びっくりした。...どうかした?」

健太はおもむろに自分の鞄を漁って、2個のお弁当を取り出した。
いつものお弁当と、いつもと違うお弁当。

「こっちは、普通の弁当」

苦々しい顔をしてもう一つのお弁当を「こっちは人参弁当だ」と言った。

「人参食べられないんじゃなかった?」

「本当に、人参だけは無理」

「じゃあ何、人参弁当って」

「昨日の俺は勇気を出して、みなと一緒に帰ろうと試みた」

健太にしては大胆な、と関心しつつ少し違和感を覚えた。

昨日はたしか、いつもの通り一緒に帰ったはずだった。
家の前で「また明日」と別れたのをはっきりと覚えている。

「教室に行ったら、みなが友達が話しててさ。話の仲間に入れてもらったんだけど!好きなタイプは、料理が上手で好き嫌いなくてたくさん食べる子が好きって人らしくて!」

たくさん食べる子が好きって以外は当てはまらないな。

「それで、俺、心折れちゃって、一緒に帰るの諦めた」

「昨日あんまり話さなかったのはそのせいだったんだ」

「...俺、人参ご飯は味が染みてて食べられそうかなって思って母さんに作ってもらってきたけどやっぱり食べられる気がしない」

そう言って人参弁当を開けると、物の見事に人参だらけだった。
人参ご飯、人参のキンピラ、人参の煮物、人参の浅漬け....

「人参大嫌いの健太が突然人参食べようとしたから、おばさん張り切っちゃったんだね」

「たぶんそうだと思ってちょっと食べてみたけど人参の味がすごくて!無理だった!」

他の人参料理はともかく人参ご飯って、そんなに人参の味するもんか?

「お願いします!食べて!」

「人参はそんなに好きってわけじゃないし、、健太の食べかけって、、」

1度は断ったものの、健太の捨てられた子犬のような顔を見ていると可哀想になって結局食べてしまった。

「昔から人参だけは無理なんだよね、健太は」

「俺は本当に人参だけ!それ以外は食べれる!」

「はいはい、人参だけね」

「七海は人参食べれていいよなぁー」

いつものお弁当を食べながら「みなに嫌われちゃうよー」とクラス中に響く声で叫ぶ健太が本当に可哀想になって、明日はちゃんと食べれるような美味しい人参ご飯を作ってきてやらなくては、思った。

みなちゃんと上手くいくように。

健太がみなちゃんに告白する勇気が出るように。

健太が幸せになれるように。

健太が幸せならそれでいい。







それでよかったのに。


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