困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

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8、健太の彼女 七海side

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見事、健太はみなちゃんと付き合えたそうで。

「みなに会う!?会うよな!」

興奮ぎみの健太に「いい」と一言だけ言って本に視線を戻した。

「なんでだよー」

「人見知りなの、知らなかったっけ?」

「でもみなは大丈夫だよ!」

「絶対無理」

健太に彼女が出来たのは良かったけど、会いたいとは思わない。

人見知りだからあまり話せないし、どんなにみなちゃんがいい子でも自分とは接しがたいだろうと思っていた。

「じゃあ、会わなくていいから見るだけ!」

「それ意味あるの?」

「みなのかわいさを見ろ!」

半ば強制的にみなちゃんのクラスまで行かせられる。

健太は教室のドアから顔を出して、「窓際の後ろから2番目!」と指示を出した。

「寝てるけど?」

机に突っ伏して寝ているみなちゃんの、何を見ろというのか。

「あ、休み時間は寝てるの忘れてた」

健太は教室から出て、こっちに走り寄って来た。

「でもさぁ、ああやって寝てるのもかわいいよなぁ」

「どこが?」

「たぶん、俺とイチャイチャしてる夢見てる」

「そんなわけあるか」

「あっ!」

健太が急に柔らかい笑顔になって「かわいいなぁ」とつぶやく。

ふと目を移すと、みなちゃんが顔をこっちに向けていた。

みなちゃんの寝顔に、健太が耐えきれなくなったように教室の中に走っていく。

「みなー!」

ぐっすり寝ているみなちゃんの後ろから抱きしめて、クラス中から驚いた顔で見られているのも気づかないようだ。

「あ、健太」

花が咲くような笑顔に、不覚にもキュンとしてしまった。

「みなはなんてかわいいんだ!」

ぎゅっと抱きしめて、俺のものだと言うように笑っている健太が、なぜかとても遠いと思った。

健太の腕に抱きしめられて笑っているみなちゃんの風景がひどく恨めしく感じた。

胸が締め付けられるように苦しくて、耐えがたくて、もう見たくなくて、そんな気持ちは後にも先にも初めてだったと思う。

「今、七海がそこに、、、、七海?」

健太が呼ぶ声が聞こえたけど、教室に戻ってしまった。

優しい健太と、かわいいみなちゃん。

お似合いだ。

早く別れてしまえばいいのに....そうしたら、そうしたら....自分が側に...。

そこまで考えてハッとした。

一番、最低な事を考えていた。




「あ、いたいた!あれが七海だよ!」

教室のドアから健太とみなちゃんがこちらを見ている。

「あれが、七海ちゃん?」

みなちゃんの声で、心が震えた。

なぜ追いかけてきたのか、なぜここに連れてきたのか、なぜ出会わせたのか。

健太、なぜ。


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