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25、私は愛されている

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「ん?新しいクラス?仲いいヤツ多くていい感じ」

朝はうるさいほど妬いていたのに、すっかり楽しそうに笑う健太。

「ふーん。なら、私がいなくても大丈夫だね」

私は全く気にしていませんよ、という顔で言ってのけたことに健太は明らかに焦った顔をした。

「違う違う!そうじゃない!」

「友達が多くていいね。私は今のところ話せるのは2人だけだよ」

健太は友達がたくさんいて、クラスの中心にいる人気者だけど、私はどちらかというと隅の方で流されながら生きているタイプだった。

2人でいる時、健太の友達に話しかけられても私はうまく答えられない。

私と一緒にいても何もいいことないんじゃないのだろうか、と思いながら健太に告白されるがままに付き合ってしまったけれど。

「2人?すごいじゃん!」

「絶対思ってないでしょ」

「え!?思ってるよ!1日に2人も!」

「健太は1日もあれば10人と仲良くなれるでしょ」

「そんなこと、はあるか」

「あるんじゃん!」

少しくらい喧嘩しても、健太とならすぐ仲直りできそうでホッとする。

健太なら大丈夫だ。

自意識過剰とかじゃなくて、健太は私のことをちゃんと好きでいてくれる。

すごく好きだって伝えてくれる。

「あ、そういえば!俺の部屋すっごく綺麗になったよ!」

「本当にー?」

あんな有り様にしておいて、正直あまり信じられない。

「本当に!」

「弟さんにも手伝ってもらったんでしょ」

からかい気味に腕をつつくと、バレたかという顔をした。

「また今度来てよ!びっくりするから!」

子供のように無邪気な笑顔で自然に約束を取り付ける手腕は本当に素晴らしい。

期待して待っていますよ。









「行ってきます!」

遅刻しそうで慌てて飛び出した先に健太がいる。

「やっと来た!遅すぎ!」

全然怒ってない顔で腕をくんで「怒るぞ」と言うのがなんだかすごく愛おしくて、ギュッと抱きついた。

「おわっ、」

驚きながら腕を回して私よりも強く抱きしめ返すと、「好き」と耳元で囁かれる。

ゾワッとする感覚と、自分が愛されている幸せで満たされた。

けれど、

今日もがんばるぞ!と意気込んで2人でなんとか遅刻しないように走る暖かい朝は音を立てて崩れ落ちようとしていた。


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