困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

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26、隣のクラスの人気者

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「わざわざ家まで来てくれるなんて」

小さく笑って健太の手を握った。

健太も答えるように強く握り返して「なんかすごく会いたくて」と白い歯を見せて笑う。

「でも、最寄り駅も違うのに」

「早起きするのも気持ちよくていいじゃん!」

そう言って小さく欠伸を殺して笑う。

バレてるよ、と言うのは健太のカッコつけを私がぶち壊してしまうようで心の中に留めておく。



電車に揺られながらウトウトと私に倒れかかってきて、ハッと元の体制に戻っては、またゆっくり眠りの中に落ちていく。

「眠い?」

私が小さな声で聞くと、「ううん」と笑って首を振った。

「私にもたれてもいいよ」

「え!?い、いいよ」

絶賛睡魔に襲われ中の健太にとって、もたれかかる存在はとても魅力的なはずなのに、少しばかりの反抗を見せる。

でも、体はゆっくり私の体とくっついて、こてんと肩に健太の頭が乗った。

「あっ」

またハッとしたように起きて「ごめん」と言われた。

「いいのに。眠いんでしょ?」

「そうだけどぉ....」

頑として私にはもたれないぞということか。

「あ!健太じゃん!」

乗り込んできた人の中に数人健太の知り合いがいたらしく、こちらに歩いてくる。

「うーわ、眠そう」

「あたしの胸を貸してあげよう!」

それは3人とも女子で、私が少し苦手だなと思っている部類だった。

私が話に入っていくのはやめようと下を向く。

「それは泣きたい時な!眠い時は肩だろ!」

健太も眠気が覚めたようで笑って返す。

「てか、あんたの胸まな板なんですけど!健太に貸す胸どこ!」

「失礼ね!Bカップあるわ!」

普通にこんな話もしちゃうんだ、びっくり。

「俺からしたら胸は胸だから、あればなんでもいい!男のニセおっぱいでも」

クスクス笑って言う健太に、『え!?こういう話にも乗るの!?』と顔をあげるとここぞとばかりに彼女らが話しかけてくる。

「てか、彼女さん?」

「あ、例の?」

「結構かわいくない?」

「それな!思った!」

「だろー?」

「え、名前は?」

「みな」

「うわー!あたしもこんな名前が良かったわ!」

私の話のはずなのに私抜きで進む話に戸惑って、健太をじっと見るのに、そんな私に気が付かない。

この人達にはこれが普通なのかな。

私も話したいのに話す暇も無く、お前は話に入ってくんなという雰囲気がある。

そうではないと思うけれど、元気よくこの会話に参加できる子ではないのだ。私は。

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