困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

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39、遊び人の兄

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「なんでここに!」

珍しく大きな声を出した七海くんは、私たちの視界を遮るように立った。

「テスト週間なの!それより、女の子と一緒なんて珍しいじゃん!だれ?」

「誰でもいいだろ」

七海くんはその子の手をとると、私を無視してさっさとどこかに行ってしまった。

あれが七海くんの好きな子なのかな。

あの子を目の前にしたら、私のことなんてどうでも良くなっちゃうんだ。

手なんか繋いじゃって、私を置いてけぼりにしてお幸せそうだね。

「もっとちゃんと安心させてくれてから帰ればいいじゃん....」

口から出た言葉は自分の耳まで伝わって、脳がその意味を理解した時、初めて涙が出た。

健太が他の人とキスしてたのを見たことを思い出す。

こぼれ落ちる涙を我慢しながら家まで歩いた。

「は!?なんで泣いてんだ!?」

家に入ってすぐ昼寝から起きたばかりの兄に驚かれた。

「なんでもない」

「なんでもなかったら泣かないだろ!」

「ほっといてくれる?」

珍しく心配そうにする兄を素通りして部屋に戻った。

健太は私の部屋にだって来たのに。

なんで、どうしてキスしてたの。

初めからキスすることが分かってたみたいにすぐ周りを見渡して。

部屋でわんわん泣いて気がつけば夜になっていた。

鏡にうつる真っ赤な顔を見て、明日は腫れるだろうなと思った。

ただでさえ、行きたくないのに。

今日は珍しく下の階に女の人はいないようだった。

兄も浮気症で、いつも何人かの女の人を取っかえ引っ変えしている。

それなのにトラブルになった事がないのは、特定の人がいないからなんだろうな。

でも、私と健太は違う。

ちゃんと付き合ってた。

また涙が溢れて来て、布団に潜り込む。

そのまま朝を迎えた。












「みな?大丈夫か?」

兄の声で目が覚めた。

大丈夫じゃないだろうな、と鏡を見るとやっぱり目が腫れていた。

こんな顔じゃ学校なんて行けれないし、行きたくない。

「お母さんはまた仕事が忙しいらしいからしばらく向こうに泊まるって」

「分かった」

そう言った瞬間、部屋のドアが開いた。

「ノックしてから.....」

「ああ、ひどい顔だな。お前今日学校休め」

勝手にベットに座って私の顔を触る。

「こんなになるまで泣くなんて、どうした?」

「お兄ちゃんには理解できないことだよ」

「理解出来なくてもいいから話してみろって」

「彼氏が他の子とキスしてみるの見ちゃったの!」

「あ?ああ、うーん。そんで泣いてたんか?」

頭をポリポリかいて複雑そうな顔をする兄に枕を投げつけた。

「お兄ちゃんなんか大嫌い!出てって!」

なにかいい事言ってくれるんじゃないかと期待した私がバカだった!


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