困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

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43、大好きな笑顔は

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「みな!大丈夫か!?」

学校に来るなり健太が駆け寄ってきて、肩をつかんだ。

「もう、全然大丈夫」

我ながら自然すぎる演技に拍手喝采。

「そうかー。俺心配したんだぞ!」

「電源切れちゃってて、ごめんね。...ところで話があるから今日一緒に帰れない?」

声が震えそうになるのを我慢してなるべく穏やかに言うと、健太は屈託のない笑顔で「なになにー?気になる!」と言った。

よくもまあぬけぬけと、とは思ってもその場で口に出すのはやめた。

まだ真実は聞いていない。

浮気してたかどうかなんてまだ決まっていない。

そう言い聞かせても私にはなんとなく分かっていた。

そのなんとなくが、確信に変わることもなんとなく分かっていた。




俯き気味に教室に入ると、真っ先に目に入ったのは七海くんだった。

なんとも言えない顔で私をじっと見て、ふっと視線を外す。

「おはよ!」

元気に話しかけてくれたのは夏帆ちゃんで、私も「おはよう」と笑い返した。

夏帆ちゃんは時々嫌味なくらいの好奇心で私を見つめる。

それが少し不快で、私は夏帆ちゃんの顔をうまく見れなかった。

「おい」

席に着くなり、七海くんがなにか言いたそうに口を開けて、また閉じる。

「なに?」

「.....大丈夫か」

「なにが?」

「その、あれだよ」

「七海くんに心配されなくても、私たちのことは私たちで解決するから」

そう言っても、七海くんはなにか言いたそうにしていた。













「お、先に来てたんだ!」

健太は待ち合わせていた教室に小走りで入ってきた。

「話ってなにー?」

小首を傾げるその仕草が、好きで好きでたまらなく愛しい。

でも、何も聞かないで帰ることなんてできない。

「健太、変な事聞くけど、私以外の人と学校でキスしてなかった?」

終始笑顔だった健太の顔が強ばった。

「え?なに?なんで?」

「友達が見たって」

残っていた彼への想いが咄嗟についた嘘だった。

それが彼の醜い部分を私に見せた。

「なにそれー!してないけど!」

カラッとした笑顔で、平然と嘘を付いた。

「....え?でも、友達が見たって」

「見間違いでしょ!俺がみな以外の子とするわけなくない?信じてくれないの?」

「ほんとうに?」

「なんでそんなの信じちゃうの?俺はみなのこと信じてるよ?」

口角をあげて息を吐くように嘘をつく健太はゾッとするほど、私の大好きな笑顔そのものだった。



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