うつしよの波 ~波およぎ兼光異伝~

春疾風

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関ヶ原の章

第十三話 忍び、僧、暗殺者

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 伏見城を落とした三成らは、軍勢を各方面へ展開させる。
 大垣方面へ自身と宇喜多秀家、小西行長、島津義弘・豊久。
 北陸方面の調略へ大谷吉継、平塚為広、戸田勝成、脇坂安治、朽木元網、赤座直保、小川祐忠。
 四国方面へ毛利の傘下にある村上水軍。
 九州方面へ旧領の奪取を目論む大友義統。
 伊勢方面・安濃津城の攻略へ吉川広家、毛利秀元、安国寺恵瓊ら毛利軍と長宗我部盛親、鍋島勝茂、そして――小早川秀秋。
 しかし、秀秋に攻城戦に参加する気は毛頭無かった。無論、伏見城の戦いの後家康へは釈明の書状を送ったのであるが、届かなかったか、あるいは黙殺されたか。この返事が来る事は無かった。
 より懐に入り込み、家康殿へ同心すると確実に伝えなければ。
 秀秋は安濃津城へ向かう道中、病と称して近江・石部に滞在する。この石部は、甲賀の程近くにあった。
「よく来て下さいました、秀秋殿」
「景以殿も息災で何よりです。関白様の御生前以来でしょうか」
 藁葺きの屋敷の一室。秀秋は年若い男に饗応されていた。
 山岡景以。かつて豊臣秀次に仕えていた男である。
「その節は……」
 景以が口篭る。秀次の事を思い返したのだろう。秀次の死後、景以は所領を没収されたものの秀吉に仕えていた。
「本日此処へ参らせて頂いたのは外でもありません。……家康殿と接触したく」
 景以が息を呑んだ。
「叔父上と連絡を取れ、という事で御座いましょうか」
 景以の叔父である山岡道阿弥は甲賀の地侍であった。道阿弥は岡野江雪斎と共に秀吉の御伽衆として仕えていたが、秀吉の死後は徳川家康に接近し、会津征伐にも従軍していた。
「景以殿と甲賀衆を見込んでお頼み申す」
 秀秋が頷き、頭を下げる。この男には負い目がある。そして、伏見城の一件でこの地の甲賀衆にも負い目がある。ならば、この申し出は通る筈。
 甲賀衆――即ち、忍びの者の手を借りる事が出来れば、家康ないし徳川方の将と連絡を取る事が出来る。そう見込んでの依頼であった。
「……それがしに出来る事であれば」
 景以が頭を下げた。これで、家康への道が出来る。秀秋は俯いたまま口角を上げた。
「なれば景以殿。この書状を長政殿までお願いできるか」
 秀秋は顔を上げると、袂から取り出した書状を景以へ手渡した。

 八月二十八日。秀秋は伊勢・安濃津城により近い鈴鹿方面へと進軍する。
 無論、安濃津城の戦いに加わる為では無い。関地蔵院。この寺院である僧と会う為であった。
「久方振りですね、江雪斎殿」
 秀秋が辞儀をする。
「丁度昨年振り……ですね」
 まるで知人に再会したが如く穏やかな挨拶。だが秀秋も江雪斎も脇へ刀を置いており、この会談が緊迫した情勢の元行われている事が察せられた。
 秀秋の隣には波およぎ兼光、そして江雪斎の隣にはそれより幾分大振りの太刀が置かれている。
 江雪左文字。名工・左安吉が鍛えた太刀である。彼は銘として「左」の一字を切っており、そのため彼の鍛えた刀は「左文字」の名を冠していた。
「やはり、こう成る事は避けられなかったのでしょうか」
 悲しげに江雪斎が呟く。
「嘆いたとて始まりません。今は民への害を最小に食い止め、一刻も早く戦を終わらせましょう」
 秀秋が毅然と言い放つ。江雪斎は静かに頷き、懐より小さく折り畳まれた紙を取り出した。
「長政殿より返答をお預かりしております」
 秀秋が紙を受け取り、開く。小さな紙にびっしりと文字の書き込まれた密書であった。
 早鐘を打つ鼓動を押さえながら、文字を流し読む。

  貴様何方に御座候共、此度御忠節肝要候、
  二三日中に内府公御着ニ候条、其以前に御分別此節候、

 今貴方が何処へ居ようとも、家康殿へ与することが肝要です。二、三日中に家康殿も到着するので、それ以前に決定して頂きたい。
 要は、一刻も早く同心せよとの返事であった。
「東国衆は先日、岐阜城を陥落させたとの事」
 岐阜城の戦い。三成に与した織田秀信は自身の居城で福島正則・池田輝政ら東国衆を迎え撃つが、あえなく八月二十三日開城となっていた。
 江雪斎の声に、秀秋の脳裏で版図が組み上がっていく。広家らの軍もまた、先日安濃津城を攻略した。恐らく、広家らの軍は岐阜より西進する長政らの押さえとして動かされるであろう。――大垣城を援護出来る南宮山辺りだろうか。
 家康殿が本当に二、三日中に到着するかどうかは分からない。しかし長政殿が西進出来る今であれば、万一我らに兵が差し向けられたとしても援軍の見込みはある。
「相分かったと長政殿にお伝えください」
 決断する。今こそ動くと。無論、ただ内応するとの返事のみでは不足であろう。なれば、行動あるのみだ。
 江雪斎は辞儀をすると、秀秋をじっと見据えた。
「世の平穏が何よりとの秀秋殿の言葉は、今も秀秋殿の袂に有ると信じて良いのでしょうか」
 秀秋が力強く頷く。懐の藤四郎吉光を袂の上から押さえる。
 ふと昔、秀次が藤四郎吉光の短刀を前に畠山政長の昔語りをしていた事を思い出す。
「無論です。その為にも、応仁の乱を再び起こさぬ為にも……手立ては御座います」

 九月一日。秀秋は三成の居城・佐和山城から一里半(約6キロメートル)ほどの近江・高宮へと兵を動かした。
 『時慶記』によればこの時、佐和山城表では「東国衆」による放火と言った小規模な戦闘行為が行われたと言う。しかし三成が大垣を押さえている今、それを越えこの地へ東国衆が入る事は可能であろうか。
 即ち、これは小早川軍の手の者と考えるのが妥当であろう。秀秋は長政の書状を受け、具体的な行動を起こしたのである。
 無論、これを見逃す三成と吉継では無かった。
 九月三日。北陸の調略を終えた吉継は、平塚為広、戸田勝成、脇坂安治、朽木元網、赤座直保、小川祐忠らを伴い一旦大垣城へと移っていた。
「成程。高次殿に続いて秀秋殿までも、か。やはり岐阜城の落城は痛手であったな」
 三成より状況を聞いた吉継は瞑目し考え込んだ。
 この時、琵琶湖畔の大津城でも京極高次が反旗を翻し籠城の準備を始めていた。
「手立てを打たねばならない。しかし大津城に宗茂殿と秀包殿を派兵した今、これ以上兵力を分散する訳にもいかん……」
 立花宗茂は八月十三日頃大坂に到着し、三成らに与していた。
「ふむ。東国勢が赤坂で陣を張った今、この大垣の軍を割く訳にもいかぬな」
 岐阜城を下した正則・長政らは、家康を待つためか西進せず美濃・赤坂に逗留していた。
 吉継は目を開き、続けた。
「我が脇坂殿らと関ヶ原へと布陣しよう。古来よりの交通の要所……如何様な事態にても対応は易いだろう。それと」
「それと?」
 吉継の怜悧な目が三成を居る。とうに無くした筈の眼光が鋭く閃く。
「秀秋殿は闇討ちとしたい」
 三成の目が見開かれる。耳に響くほど鼓動が鳴っていた。
「……なにゆえ闇討ちなどと」
「秀秋殿は万の軍勢を率いている。これと正面から戦っては我らのみでは心許無い。かと言って軍勢を割いては西進する東国勢に呑まれる。故に闇討ちする」
 漸く絞り出した声で答える三成に、吉継は淡々と返した。
「だが……」
かねてより秀秋殿は病と言い戦にも参加しておらぬ。なれば病死とすれば良い。討ってしまえばどうとでも出来る」
 三成が吉継の肩を掴む。その顔は青ざめているようであった。
「その様な問題では無い。秀秋殿は、あの方は殿下の……! せめて捕縛は出来ないのか。或いは恩賞、そうだ、秀頼様ご成人まで関白の位を」
 吉継が溜息を吐く。
「三成。お前のその甘さが命取りになるのだ。それに、あの方が望む物は此方から絶対に出す事は出来ない。家康殿に対抗する我らを追い落とす事こそが望みなのだ」
 三成が口篭る。吉継は先年の秀秋の態度を思い返していた。
 そうだ。あの方は長政らの襲撃事件に際しても、どちらにも加担しなかった。あの方が望む物は地位では無い。唯、天下静謐なのだ。
 若いな、と吉継は思った。青く鮮烈、それでいて純真であると。嘲謔ちょうぎゃくと羨慕の入り混じった感情を吉継は覚えていた。
 だが、我にも退けぬ願いがある。
「三成。関白様の妻子を死に追いやったお前が、今更小倅一人に躊躇するな」
 三成は無言のまま吉継を見つめている。その表情は能面の様に無であり、また如何なる表情をも内包していた。
 吉継が一段、三成に寄る。
「殿下の天下を守りたいのなら、お主が殿下に成るのだ。されば、我は石田三成と成ろう」
 三成は目を伏せ一息吐くと、吉継を見据え、肩から手を離した。
「吉継。お前は何時も俺の進むべき途への迷いを無くしてくれる」
 三成の表情が動く。喜に。或いは怒に。或いは哀に。或いは楽に。
 その示指が吉継を差す。
「大谷刑部少輔吉継に命ずる。筑前中納言秀秋を討て」

 九月七日。二人の男が近江・高宮の秀秋の陣――秀秋が臥しているという屋敷へと赴いていた。
 平塚為広と戸田勝成。共に甲冑を着込み、為広は薙刀、勝成は刀を携えていた。
「これは為広殿、勝成殿。如何御用の向きで御座いましょうか」
 相対する正成もまた、腰に脇差を差していた。
「秀秋殿の御容態は如何か見舞って参れと吉継殿より命を仰せ付かって参りました、御目通りを」
 勝成が淡々と述べる。その様を稲葉正成は冷静に見やっていた。
 否、恐らく動向を怪しんだ吉継殿が手を差し向けたのだ。間違ってもこの者らを秀秋様へ会わせてはならない。
「行軍も苦しい程の病ゆえ、御容赦を。臣としても主の弱った姿を御目に掛けたくは御座いませぬ」
 哀れじみた声色で正成がつとつとと語る。勝成の傍らに立つ為広の眉が吊り上がる。
「其程の大病であれば、なにゆえ他の者に兵を預けぬのか」
 正成は為広を見やると、不敵に口角を上げた。
「当家の兵卒は亡き隆景様の鍛え上げた屈強の練兵共に御座います。お言葉で御座いますが、隆景様の薫陶をお受けになられた秀秋様を除いてこの日本ひのもとで彼らを率いられる将が居るとお思いで?」
 為広は口を真一文字に結び押し黙った。
 脇の勝成が一歩、前へと出る。
「これは命令です。同心頂けないのであれば……」
 勝成が刀の柄に手を掛ける。
 刹那、火花が散った。
「やはり、最初からそれが目的か!」
 鍔迫り合い。勝成が抜き放った刀を正成の脇差が受け止める。
「為広殿!」
「応!」
 勝成が為広に目配せをする。為広が即座に手にした薙刀を構える。
 ――南無三!
 正成は死を覚悟した。だが。
 為広の刃はその背後の襖を斬り裂いた。
「筑前中納言殿、御覚悟!」
 為広は襖の向こうへ駆けこみ、そして。
 布団にくるまったそれ・・を斬った。
「……っ!」
 しかし、その手に『人』を斬った感触は無かった。
 布団を剥ぎ取る。
 丸められたむしろ
「図ったか!」
 為広が正成を睨みつける。
 正成は勝成の膝を蹴るように跳び、間合いを取った。
「言った筈です。秀秋様にお会いさせる事は出来ないと」
 脇差を構えたまま、正成が言う。勝成と為広は苦虫を噛み潰した顔になると、互いに視線を交わした。
「これ以上此処で事を起こされますか?」
 正成がさらに続ける。
 勝成と為広は武器を収めた。秀秋が居ない以上、彼らも留まる理由は無い。命に代えても秀秋を屠るならばともかく、此処で危険を冒す理由は無かった。
「……吉継殿には宜しく伝えておこう」
 苦々しく為広が言葉を紡ぎ、二人はその場から去っていった。

「ふむ……秀秋殿は既に高宮に居らず、と」
 近江・佐和山城。吉継は傍らの武士に肩を貸され座り込んだ。向かいには勝成と為広が座している。
 秀秋の闇討ちを計画するにあたり、吉継は勝成・為広と共にこの三成の居城に張っていた。通常、自身の居城をおいそれと他人に渡す真似はしない。現に京極高次も大津城の受け渡し命令に反対し、三成らより離反したのである。しかし、三成はこの計画にあたり吉継が佐和山城に入る事を良しとした。或いはそれは、信頼の証であったのやもしれない。
「申し訳御座いませぬ。我らの不徳の致す所にて……かくなる上は」
 頭を下げる二人に、吉継は押し止める様手をかざした。
「良い」
 流石よ。これしきで呆気無く散る玉では無いか。
 己が知略を駆使し、なお勝てぬ手合いとの戦い――不謹慎ではあるが、吉継は愉悦を覚えていた。
「関ヶ原へと戻るぞ。防柵を築き上げ、引き続き松尾山城を改修させるのだ。万の軍勢が入る城へとな」
 松尾山城。この城に輝元殿が軍勢を率いて入れば大垣城、南宮山、松尾山城の三重の防衛線が完成する。
「かくなる上は戦場にて決するのみか」
 吉継の目は爛々と輝いていた。

 美濃・南宮山。大垣城の備えとして構えられたこの陣所に、吉川広家・毛利秀元・安国寺恵瓊は同じく九月七日より陣を張っていた。
 これで、輝元様が松尾山城に来ることは無い。
 南宮山の麓に陣を張る広家は、身を丸める様に手元の書状、否、密書を見、そう考えていた。差出人は黒田長政。そう。広家もまた内応していた。そして。
 毛利輝元は最初こそ広家に内応させまいと伊勢・安濃津城の攻撃へと赴かせていたが、この頃――正確には岐阜城が陥落した後――より半ば広家の行動を黙認していた。
「広家殿」
 陣幕の外、背後より声がする。広家は密書を懐に仕舞うと、声の方へ向き直った。
「どうされました、秀元様」
 毛利秀元。輝元と広家の従弟であり、かつては輝元の養子であった男である。この戦には輝元の名代として出陣していた。即ち、毛利軍の事実上の大将である。。
「中山道を西に向かう一団があった。あれは若しや東国衆では無いか? 手を講じた方が良いのではないか」
 秀元は吊り上がった目で広家を見詰める。
 秀元の陣所は山頂付近であり、広家の陣所は麓であった。即ち、広家の認を得ねば出陣出来ぬ位置に秀元の軍勢は着陣していたのである。
「元より街道ゆえ、民がこの道を通るのも至極当然でありましょう」
 秀元が一段、広家へと詰め寄る。
「若し東国衆の手の者であればどうするのだ。我ら・・の切り崩しを企んでいるやも知れぬのだぞ。今手を打たずしてどうする」
 広家は軽く息を吐き、秀元へ返答した。
「それこそ、若し民であればどうするのです。毛利が罪も無き民を殺めたとなっては天下に顔向けできませんぞ」
 秀元が眉をひそめたまま黙り込む。自身と広家、どちらの意見の利が大きいか思案している様であった。
「……いざと成れば、我らが打って出れば良いか」
 結局、秀元は広家の意見に利が有ると見た様であった。大きく溜息を吐くと、秀元は陣幕を翻し去っていった。
 秀元が去るのを見やった後、広家は中山道を横目に見る。
 ――恐らく、秀元様の勘は正しいだろうな。……内応しているのは俺だけでは無いという事か。

 高宮を出た秀秋は、関ヶ原へより近い柏原の寺院・成菩提院に居た。勝成と為広が訪れた際、秀秋は既にこの場所へと移動していたのである。
 正成もまた勝成と為広を遣り過ごした後、兵を率い秀秋と合流した。
「ご苦労だった、正成」
「流石に少々肝が冷えました。しかし、随分と思い切りましたね」
 正成の言に秀秋が小首を傾げる。
「私に軍勢を預けた事です。……若し私が離反し、秀秋様に刃を向けたのならばどうなされる御積りだったのです」
 秀秋は微かに笑った。
「其程お主に信を置いているのだ。それに万が一つお主に見限られたとて、私がそれだけの男であったというだけの事だ」
 正成の胸が俄かに熱く沸き立つ。其程までに某を信頼して下さっている――その歓喜に満ちていた。
 矢張り私は、此の方に付いてきて良かった。
 正成は溢れそうになる涙を目頭で押さえつつ、あくまで冷静に言った。
「それにしても、戸田殿と平塚殿がよもや秀秋様を闇打ちしようなどと……」
「恐らくは、吉継殿の命であろうな。抜け目ないあの男の事だ、大事となる前に私を始末しようと目論んだのであろう」
 其処まで言うと、秀秋は溜息を吐いた。
 三成と吉継、彼らの目指す「世」に私は不要ということか。
 寂寥せきりょうと銷魂。秀秋は気の抜けたように板張りの間に腰を下ろした。その勢いに、波およぎ兼光の鞘が床に当たり音を立てる。
 そうだ、秀次義兄上の事も。
 秀秋は思い返す。秀次が亡くなった後、その妻子らの処刑を主導したのもあの男だった。或いは、義兄の死もあの男が。
 そうだ。あの男は蔚山の一件でも私を。福原長堯と組んで追い落とそうと――。
 あの男の目指す「世」に我らは、私と義兄上は要らなかったのだ。あの、唯殿下の、豊家の天下を望む男には。
 ――?
 ふと、違和感を覚える。寄っていた眉間の皺が不意に緩む。
「どうされました、秀秋様」
「いや……」
 主の変化に正成が聡く気づく。しかし秀秋は平生を装うと、何でも無い、と返答した。
 秀秋はそのまま思案を続け、違和感の正体を探らんとした。
 豊家の天下の為には、我らが居た方があの男にとっても良かったのではないか?
 我らを――否、秀次義兄上を亡き者にしたとて、豊家にとって何一つ利は無い。現に幼子一人が当主として遺されたが故、この様な事態になっているのだ。
 あの聡明な男が、その様な不利益を自ら行うだろうか。
 ――佐吉……三成からも否と言われたわ。
 ふと、秀吉より藤四郎吉光を賜ったあの日の言葉を思い出す。その時分、秀秋はこの言葉の意味を深く考えてはいなかった。
 だが、冷静に考え直せば、あの男は自身へ下される筈であった筑前への移封を拒否したのだ。絶対とする筈の殿下の命に逆らってまで。
 ――若しや、あの男は。
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