13 / 20
懐かしいあなた
しおりを挟む
「……どうかお立ちください。近衛騎士の方に膝を突いていただくような身ではありません」
騎士の瞳が、私の内側を探ろうとするかのように細められる。けれども、笑みの形に結ばれた唇はこの場で私の身の上話を披露するつもりはないらしい。
軽く顎を引いた騎士は、無駄のない所作で立ち上がる。
「では、ありがたく」
さあと言わんばかりに、白手袋を嵌めた手のひらが差し出された。
私が応えるのが当然とだと思っている手のひらを前にしてもなお、心は凪いでいた。
目の前に鏡がないから、いま自分がどんな表情をしているのかわからない。ただ、習性のように唇が微笑んでいることだけを知っていた。
「一つ伺ってもよろしいでしょうか」
「はい、何なりと」
「私はいつ帰していただけるのでしょう?」
片眉を上げた騎士は、微かに唇を歪ませる。
「恐れながら、なぜそのようなことを知る必要が?」
「ご存じの通り私は移民ですから、無断欠勤で勤め先を失えば、生活が立ちゆかなくなってしまいます。有給を申請してから伺います」
言いながら机の抽出を開けて、紙挟みを取り出す。しんと静まりかえった室内で、抽出を閉める音がいやに大きく聞こえた。手の震えをごまかしたくて、強く紙を押さえる。ペン先にインクを浸して名前を書く間、騎士は何も言わなかった。
ペンを止めて見つめた先で、薄い唇が息をつく。
「……おそらくは、一週間ほどでお帰しできるでしょう。予定が変わった際には、こちらで日数分の給与を補填します。それでよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます」
七日分の有給をここで使うのは惜しいと思って、私はこんなときだというのにおかしみを感じた。
この八年、もうずっと当たり前のように庶民として暮らしてきたのだ。今の生活が身の丈に合っていると思っていたし、信じていた。祈るように。
商家の主に申請書を渡して、この場を騒がせた詫びを告げる。主は納得がいかないと言いたげに騎士を見たものの、多少日を過ぎても籍を残しておくと請け合ってくれた。
騎士の後に続いて商家を出た私は、促されるままに何の紋章も付いていない馬車に乗り込んだ。
おそらくは、まだ私の生まれは公になっていない。ドミニクの困惑ぶりからして、近衛騎士隊の中でも広く共有されているとは考えにくい。
膝に抱いた鞄を握りしめていると、遅れてひっそりとした悲しみが追いかけてくる。
言質は取ったものの、本当に戻ってこられるかどうかはわからない。
(あと少し。あと少しで面会も終わって、移民としての扱いが終わるはずだったのに)
懐かしい諦念が胸に忍び寄ってきて、ことりと一つ、錘が落ちるのがわかった。
馬車に乗せられて向かったのは、ヘルヴェスの王宮の一角だった。
故国とは構造が異なるものの、騎士が先導する道は明らかに隠し通路で、表立って迎え入れられていないことはわかる。
通されたのは、貴族用の客室だった。室内で待っていた数人の女官たちが淑やかに膝を折り、微笑んでこちらを見つめる。
「お嬢様。まずは身支度を調えて、ゆっくりお寛ぎください。
女官たちに言ってくだされば、何でも支度いたしましょう。ゆめゆめ逃げだそうとはお思いになりませんように」
漆黒の外套を翻した騎士が去ると、女官たちはあらまあと顔を見合わせる。
「恐いこと。王立騎士団長と違って、近衛騎士隊長は厳めしくて困りますわ」
「ねえ。お湯を支度しておりますので、どうぞこちらへ」
さやさやと鳴る葉擦れのようなお喋りに促されて、私は備え付けの浴室に通される。
あの頃のことなんてもうほとんど覚えていないと思っていたのに、私の肌は人に世話をされることを一瞬で思い出した。女官たちに大人しく服を脱がされても羞恥はなく、ただ当然のように佇み、身体を洗われることを知っていた。
「まずは御髪の色を落としますね。頭を台にお乗せします」
「まあ……なんてもったいない! こんなに美しい御髪を隠していらっしゃったなんて」
「綺麗な色ですこと。まるで光をくしけずったようですね」
「お肌もすべらかで、日焼けもほとんどしていらっしゃいませんね」
「どんなドレスがお似合いかしら。もっとドレスを持ってこさせなくては」
薔薇が描かれたタイル、金の脚付きのバスタブで湯気を立てる乳白色のお湯、花のオイルが立てる柔らかな香り。軽やかに耳を通り過ぎてゆく女官たちのお喋り、優しく眠気を誘う手つき。時折口に宛がわれる、よく冷えたグラス。いい香りのする石鹸、密な泡が肌の上をすべる感触、身体のくぼみを撫ぜる指の腹……。
微睡みのように穏やかな世界は、奇妙な慕わしさで私を包み込む。
私がこうした世界にいたのは、五つか六つほどの頃だったように思う。まだお母様のもとにお父様が通い続けていたその頃、私は世界中から祝福された王女のように扱われていた。
うやうやしく手を引かれながら浴槽を出ると、肌に化粧水が塗られ、さらに香油を重ねづけされてゆく。ふと鼻先に薫ったそれは、お母様が好んで使っていたものと似ている。
ふんわりとしたガウンで肌を包まれて案内されたのは、大きな鏡台の前だ。
正面から見ていたくなくて目を閉じていると、とろりとした眠気が忍び寄ってくる。
女官たちは私の髪を乾かしながら、くすくすと楽しそうに笑い、ああでもないこうでもないとドレスの案を出し合っている。まあ、お疲れなのですね。お目覚めになられたら、きっとびっくりなさいますよ……。
「お寝みのところ、申し訳ございません。お嬢様にドレスをお選びいただきたくて」
「私たちで絞り込んだのですが、意見が割れてしまいまして……」
肩を優しく叩かれて目覚めると、女官たちがそれぞれ真剣な面持ちでドレスを手にしていた。
クラウディアが着ていたドレスや商家で扱うレースを思い出しながら、私は用意されたドレスが流行に則っていることに気づいた。
商家に迎えに来たときからずっと、近衛騎士隊長は私を丁重に扱うつもりでいることを端々で示していた。おそらく女官たちも詳しい事情は聞かされていないものの、賓客として遇するよう言いつけられていることはわかる。
「これから御目にかかる方のことを知らされていないものだから、判断に迷うわ。もちろん、あなたたちの見立てだから間違いはないのでしょうけれど」
女官たちは笑みを浮かべて、今日は何も予定は入っていないと教えてくれる。
私はなるほどと思いながら、故国でよく着せ付けられていたような淡い色のドレスを選んだ。
「お嬢様は腰が細くていらっしゃいますね」
「ねえ。首もすんなりと長くていらっしゃいますから、装飾品が映えますわ」
「お嬢様は鎖骨がお綺麗ですから、肩を出すドレスもお似合いになりますよ」
久し振りにコルセットをつけると、どうしてこんな窮屈なものを身につけていたのかしらと思ってしまう。さらさらと音を立てながら引き上げられたドレスは少しゆったりとしていたから、後ろの編み込みをきつめに締められる。絹の靴下を履かされた爪先に宛がわれたのは、花の刺繍を施された靴だった。
さあと手を取られて立ち上がった私は、促されるままにくるりと回って、大きな鏡台の前に立つ。
よく磨かれた鏡の内側には、誇らしげに微笑む女官たちを背にした娘が一人佇んでいる。
瞬くと、鏡の向こうの娘も同じように睫毛を揺らしてこちらを見返してくる。
鏡の中にぼんやりとした表情をした娘を見つけて、私は懐かしい人に再会したような気持ちになった。
(ごきげんよう、ヒルデガルト。久しぶりの再会ね)
静かにこちらを見つめ返すヒルデガルトは、淡く輝く金髪を背に流している。軽く巻いて編み込みを施された髪には花冠を模した髪飾りが輝き、首には瞳と同じ色の輝石が飾られている。
淡く色を挿された顔は寄る辺なく、髪と同じように色を抜かれた眉はなだらかに線を描いて優しい。光に透ける睫毛は長く、瞬けばその下に覗く緑の瞳を扇のように隠そうとする。
秘密を飲み込んで久しい唇に乗せられた色は肌を白く見せる色が選ばれて、今も心をひた隠しにするように結ばれていた。
鏡を見ていれば、自分がどんな顔かたちをしているのかはわかる。
でも、ドレスを着せ付けられて丁寧に化粧を施されないとわからないことも、わずかに残っていた。
たぶんきっと。ヒルデガルトは綺麗な娘で、綺麗に生み落とされたことの幸いを知っているのだろう。
鏡越しにヒルデガルトと視線を重ね合わせると、彼女が――自分がお母様に似ていることがよくわかった。
私は意識して、肌の上に微笑みを形作る。
ありがとうと囁くと、鏡の向こうでそわそわと私たちを見守っていた女官たちが華やいだ声を上げて手を合わせた。
「お三時にいたしましょう、おいしいケーキがございますよ」
「お嬢様はどんなお茶がお好きですか? ちょうど春の茶葉が届いたばかりです」
「すぐに茶葉を持ってこさせましょう。一番お好きな香りのものをお淹れします」
歌うように言葉を転がす女官に手を引かれて、私は頷いた。だって、それしか求められていないから。
ああ、本当に。喉をせり上がってくるさみしさを飲み込んで、私はただ微笑んだ。
――ヒルデガルト、あなたには二度と会いたくなかったわ。
胸の奥底で、また一つ錘が落とされる微かな気配がしたけれど、もちろん私のほかには誰も知ることはなかった。
騎士の瞳が、私の内側を探ろうとするかのように細められる。けれども、笑みの形に結ばれた唇はこの場で私の身の上話を披露するつもりはないらしい。
軽く顎を引いた騎士は、無駄のない所作で立ち上がる。
「では、ありがたく」
さあと言わんばかりに、白手袋を嵌めた手のひらが差し出された。
私が応えるのが当然とだと思っている手のひらを前にしてもなお、心は凪いでいた。
目の前に鏡がないから、いま自分がどんな表情をしているのかわからない。ただ、習性のように唇が微笑んでいることだけを知っていた。
「一つ伺ってもよろしいでしょうか」
「はい、何なりと」
「私はいつ帰していただけるのでしょう?」
片眉を上げた騎士は、微かに唇を歪ませる。
「恐れながら、なぜそのようなことを知る必要が?」
「ご存じの通り私は移民ですから、無断欠勤で勤め先を失えば、生活が立ちゆかなくなってしまいます。有給を申請してから伺います」
言いながら机の抽出を開けて、紙挟みを取り出す。しんと静まりかえった室内で、抽出を閉める音がいやに大きく聞こえた。手の震えをごまかしたくて、強く紙を押さえる。ペン先にインクを浸して名前を書く間、騎士は何も言わなかった。
ペンを止めて見つめた先で、薄い唇が息をつく。
「……おそらくは、一週間ほどでお帰しできるでしょう。予定が変わった際には、こちらで日数分の給与を補填します。それでよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます」
七日分の有給をここで使うのは惜しいと思って、私はこんなときだというのにおかしみを感じた。
この八年、もうずっと当たり前のように庶民として暮らしてきたのだ。今の生活が身の丈に合っていると思っていたし、信じていた。祈るように。
商家の主に申請書を渡して、この場を騒がせた詫びを告げる。主は納得がいかないと言いたげに騎士を見たものの、多少日を過ぎても籍を残しておくと請け合ってくれた。
騎士の後に続いて商家を出た私は、促されるままに何の紋章も付いていない馬車に乗り込んだ。
おそらくは、まだ私の生まれは公になっていない。ドミニクの困惑ぶりからして、近衛騎士隊の中でも広く共有されているとは考えにくい。
膝に抱いた鞄を握りしめていると、遅れてひっそりとした悲しみが追いかけてくる。
言質は取ったものの、本当に戻ってこられるかどうかはわからない。
(あと少し。あと少しで面会も終わって、移民としての扱いが終わるはずだったのに)
懐かしい諦念が胸に忍び寄ってきて、ことりと一つ、錘が落ちるのがわかった。
馬車に乗せられて向かったのは、ヘルヴェスの王宮の一角だった。
故国とは構造が異なるものの、騎士が先導する道は明らかに隠し通路で、表立って迎え入れられていないことはわかる。
通されたのは、貴族用の客室だった。室内で待っていた数人の女官たちが淑やかに膝を折り、微笑んでこちらを見つめる。
「お嬢様。まずは身支度を調えて、ゆっくりお寛ぎください。
女官たちに言ってくだされば、何でも支度いたしましょう。ゆめゆめ逃げだそうとはお思いになりませんように」
漆黒の外套を翻した騎士が去ると、女官たちはあらまあと顔を見合わせる。
「恐いこと。王立騎士団長と違って、近衛騎士隊長は厳めしくて困りますわ」
「ねえ。お湯を支度しておりますので、どうぞこちらへ」
さやさやと鳴る葉擦れのようなお喋りに促されて、私は備え付けの浴室に通される。
あの頃のことなんてもうほとんど覚えていないと思っていたのに、私の肌は人に世話をされることを一瞬で思い出した。女官たちに大人しく服を脱がされても羞恥はなく、ただ当然のように佇み、身体を洗われることを知っていた。
「まずは御髪の色を落としますね。頭を台にお乗せします」
「まあ……なんてもったいない! こんなに美しい御髪を隠していらっしゃったなんて」
「綺麗な色ですこと。まるで光をくしけずったようですね」
「お肌もすべらかで、日焼けもほとんどしていらっしゃいませんね」
「どんなドレスがお似合いかしら。もっとドレスを持ってこさせなくては」
薔薇が描かれたタイル、金の脚付きのバスタブで湯気を立てる乳白色のお湯、花のオイルが立てる柔らかな香り。軽やかに耳を通り過ぎてゆく女官たちのお喋り、優しく眠気を誘う手つき。時折口に宛がわれる、よく冷えたグラス。いい香りのする石鹸、密な泡が肌の上をすべる感触、身体のくぼみを撫ぜる指の腹……。
微睡みのように穏やかな世界は、奇妙な慕わしさで私を包み込む。
私がこうした世界にいたのは、五つか六つほどの頃だったように思う。まだお母様のもとにお父様が通い続けていたその頃、私は世界中から祝福された王女のように扱われていた。
うやうやしく手を引かれながら浴槽を出ると、肌に化粧水が塗られ、さらに香油を重ねづけされてゆく。ふと鼻先に薫ったそれは、お母様が好んで使っていたものと似ている。
ふんわりとしたガウンで肌を包まれて案内されたのは、大きな鏡台の前だ。
正面から見ていたくなくて目を閉じていると、とろりとした眠気が忍び寄ってくる。
女官たちは私の髪を乾かしながら、くすくすと楽しそうに笑い、ああでもないこうでもないとドレスの案を出し合っている。まあ、お疲れなのですね。お目覚めになられたら、きっとびっくりなさいますよ……。
「お寝みのところ、申し訳ございません。お嬢様にドレスをお選びいただきたくて」
「私たちで絞り込んだのですが、意見が割れてしまいまして……」
肩を優しく叩かれて目覚めると、女官たちがそれぞれ真剣な面持ちでドレスを手にしていた。
クラウディアが着ていたドレスや商家で扱うレースを思い出しながら、私は用意されたドレスが流行に則っていることに気づいた。
商家に迎えに来たときからずっと、近衛騎士隊長は私を丁重に扱うつもりでいることを端々で示していた。おそらく女官たちも詳しい事情は聞かされていないものの、賓客として遇するよう言いつけられていることはわかる。
「これから御目にかかる方のことを知らされていないものだから、判断に迷うわ。もちろん、あなたたちの見立てだから間違いはないのでしょうけれど」
女官たちは笑みを浮かべて、今日は何も予定は入っていないと教えてくれる。
私はなるほどと思いながら、故国でよく着せ付けられていたような淡い色のドレスを選んだ。
「お嬢様は腰が細くていらっしゃいますね」
「ねえ。首もすんなりと長くていらっしゃいますから、装飾品が映えますわ」
「お嬢様は鎖骨がお綺麗ですから、肩を出すドレスもお似合いになりますよ」
久し振りにコルセットをつけると、どうしてこんな窮屈なものを身につけていたのかしらと思ってしまう。さらさらと音を立てながら引き上げられたドレスは少しゆったりとしていたから、後ろの編み込みをきつめに締められる。絹の靴下を履かされた爪先に宛がわれたのは、花の刺繍を施された靴だった。
さあと手を取られて立ち上がった私は、促されるままにくるりと回って、大きな鏡台の前に立つ。
よく磨かれた鏡の内側には、誇らしげに微笑む女官たちを背にした娘が一人佇んでいる。
瞬くと、鏡の向こうの娘も同じように睫毛を揺らしてこちらを見返してくる。
鏡の中にぼんやりとした表情をした娘を見つけて、私は懐かしい人に再会したような気持ちになった。
(ごきげんよう、ヒルデガルト。久しぶりの再会ね)
静かにこちらを見つめ返すヒルデガルトは、淡く輝く金髪を背に流している。軽く巻いて編み込みを施された髪には花冠を模した髪飾りが輝き、首には瞳と同じ色の輝石が飾られている。
淡く色を挿された顔は寄る辺なく、髪と同じように色を抜かれた眉はなだらかに線を描いて優しい。光に透ける睫毛は長く、瞬けばその下に覗く緑の瞳を扇のように隠そうとする。
秘密を飲み込んで久しい唇に乗せられた色は肌を白く見せる色が選ばれて、今も心をひた隠しにするように結ばれていた。
鏡を見ていれば、自分がどんな顔かたちをしているのかはわかる。
でも、ドレスを着せ付けられて丁寧に化粧を施されないとわからないことも、わずかに残っていた。
たぶんきっと。ヒルデガルトは綺麗な娘で、綺麗に生み落とされたことの幸いを知っているのだろう。
鏡越しにヒルデガルトと視線を重ね合わせると、彼女が――自分がお母様に似ていることがよくわかった。
私は意識して、肌の上に微笑みを形作る。
ありがとうと囁くと、鏡の向こうでそわそわと私たちを見守っていた女官たちが華やいだ声を上げて手を合わせた。
「お三時にいたしましょう、おいしいケーキがございますよ」
「お嬢様はどんなお茶がお好きですか? ちょうど春の茶葉が届いたばかりです」
「すぐに茶葉を持ってこさせましょう。一番お好きな香りのものをお淹れします」
歌うように言葉を転がす女官に手を引かれて、私は頷いた。だって、それしか求められていないから。
ああ、本当に。喉をせり上がってくるさみしさを飲み込んで、私はただ微笑んだ。
――ヒルデガルト、あなたには二度と会いたくなかったわ。
胸の奥底で、また一つ錘が落とされる微かな気配がしたけれど、もちろん私のほかには誰も知ることはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる