照らすのは。

ゆゆ

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ある日の夜

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暗い部屋で、ボンヤリと光るスマホを頼りにボーッと颯人の寝顔を眺める。
今日も何も無かった。
ただそれだけの事なのに、最近は何だか少し切ない気持ちになることがある。
俺と一晩過ごして身体を重ねなかった奴は一人もいなかった。
なのに、一緒に寝ているにも関わらず何も起こらない。
ハグもキスも何もない。
これじゃまるで……

「友達みたいだな。」

前に一度聞いたら、好き同士じゃないからしない。と、言われてしまった。
好きだから、嫌いだから、そんな事考えたこと無かった俺は、衝撃的だったからよく覚えている。
そういえば……。
同棲を始めた最初に似たような会話をしたような気がする。
……あれは確か、同棲した日の夜だった。
初めて一緒に寝た日に、セックスをして期待だけはさせない様に確認した時の会話だ。

『俺、お前とは一応付き合ってるけどさ。別にお前のこと好きでも何でもないし、普通に遊ぶけどいいのかよ?』
『良いんだよ。それも含めて君でしょう?僕のにならない君がいいんだ。』

そう笑い俺の頭をポンポンと叩いた後、優しく笑う。
照れた様に、幸せそうに、俺が好きだと云う様に。
勿論、そのうち僕のにはなって欲しいけどね。と続かせて彼は欠伸を漏らす。
俺も何か伝えようと思ったけど、何を伝えても嘘くさい気がして唇を噛んだ。

…………。
思い返してみて想う。
なんか俺、とんでもないこと言ってんな。
半年付き合ってみて何となく知った、颯人の優しさや、家庭的なところ。
そこまで考えて身体を起こし、何だか溺れてしまったかの様に息苦しい胸を押さえた。
一気に罪悪感と後悔の念が押し寄せる。
胃がぐるぐるとし吐き気を催す。
一体今までどれだけ傷つけ、どれだけ嫌な思いをさせてしまったんだろう。
俺をただ好いて、側にいたいと願い、身の回りのことをしてくれる颯人に、俺は一体何をして何を返せるだろうか。
こんな自分といない方が良いんじゃないか?
そう考えた途端、頬を何か熱いものが伝った。
俺、泣いてる、のか。
拭っても拭っても零れ落ちる其れを止めずに、俺は部屋を飛び出した。
———————。
—————。
———。

翔がいない。
そうやっと気づいたのは深夜三時ごろの話だった。
トイレにでも行こうと体を起こすと、いつも感じる熱いぐらいの体温が無かった。
いつもの事だけど、何となく今日は気になってしまう。
取り敢えずトイレに向かい用を足しキッチンに向かう。
コップに水を注ぎ一気に飲み下し布団に戻る。
何となく携帯を手に取り通知を確認した。

「連絡なし、か。」

そう漏らし上着を手に取りながら思考を巡らせる。
いつもなら外出する時に連絡があるのに今日は何もない。
まだ半年しか一緒にいなかったし、生活時間が違うせいでまだまだ分からないことが沢山ある。
でも、こんな事一度もなかったし嫌な予感がする。
もしかして、もしかするかもしれない。
僕は適当に靴を履き走って最寄の公園へ向かう。
息が上がり全身を気怠さが包む。
運動不足を極めている僕は、もう死んでしまうんじゃないかと云う錯覚にさえ陥る。
でも良い、翔を失ってしまう事に比べたらなんて事ない。
やっとの思いでたどり着いた公園には横たわる翔の姿が視界に映った。

「しょ、う?」

やっとの事で見つけた愛しい姿に俺はか細い声を漏らすほか無かった。
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