6 / 6
太陽と光
しおりを挟む
朦朧とする意識の中、何となくボンヤリと颯人の姿が見える気がする。
はは、幻覚まで見えだしたら終わりだよな、何て自分で嗤ってしまう。
その懐かしく感じる様な淡い幻覚は何となく俺の為に泣いている様な気がした。
その影は勢い良く俺を抱きしめ口を開く。
精液や汗、涙に血液で汚れている事など気にしていない様にグッと強く。
「俺のじゃなくていいからいなくならないでよ!」
叫び声の様なその声に一気に意識が引き上げられる。
「は、や、と?お、れ、きたな、い、ぜ?」
「そんなのどうでもいいよ。君が今、ここに存在してたら何でもいい。」
そう言われ胸が熱くなる。
また、こんな事、言わせてしまった、な。
「ごめんな、ありがとう。かえろうぜ?俺たちの幸せのゴミ屋敷にさ。」
「な、に、急に。てか、ゴミ屋敷なのは、翔のせいだろう?」
涙を拭い俺の顔を見て笑う。
そんな笑顔に釣られて何だか俺も笑ってしまう。
立ち上がった颯人は勢い良く俺を抱き上げる。
「い、た。怪我人なんだから、もっと丁寧に扱えよ。」
「はっ。良く言うよ、どうせ自業自得なくせに。」
「どうせ、ってなんだよ」
憎まれ口を叩き合いながら帰路に着く。
これは向き合うための第一歩にしか過ぎない。
やっと向き合えるぐらいまともになったって、好きにはなれないかもしれない。
それでも今はこの時間が尊くて大切で、颯人と過ごしていたいと心の底から思う。
「颯人、颯人、颯人。はやと」
何だか口にしたくなって沢山名前を呼んでみる。
どこと無く彼の口端が上がったのを見ると、俺は急に意識の糸がプツリと切れた。
「はやとぉ……」
—————。
————。
———。
知らないうちに眠りについてしまっていた様だ。
目を開けるとそこは見慣れた景色が広がっていた。
身体を起こし首を回し颯人を探す。
体の痛みはだいぶマシになっており、体に違和感を感じ見てみれば胴体は包帯でグルグルと巻かれていた。
「ははっ。家事はできんのにこう言うのは不器用なのかよ」
「あ、おきたの?おはよ。……仕方ないだろう、初めてなんだから。」
いないと思って口にした悪態はしっかりと、本人に届いてしまい俺は慌てて立ち上がり声の主のもとに急ぐ。
「違うんだよ、別に文句とかじゃ無くてさ。」
「いいけどさ、事実だし。あ……のさ。何でそんなに怪我と体液まみれだったか、聞いてもいい?一応、付き合ったるんだし、さ。」
歯切れ悪く続くその言葉に短く息を吐き笑いかける。
「セフレ全員と縁切った。ほら」
そう言いながら、もう既に器と化してしまった薄いそれを投げ渡す。
向き合うにはまずは信用が大事だからな。
「え、……ほんと、だ。」
「あとさ、履歴書の書き方教えて」
「なんで、急に?」
「別に。何となく。それが付き合う上での当たり前、だろ?」
俺が視線を外しながらそう告げると彼が嬉しそうに笑ったのに気付いた。
その様子にこれが正解だったのかと安堵し顔を上げると優しく笑う颯人と目が合った。
朝ごはんにしようと提案する彼に頷き俺は野菜室を開ける。
いつも入っているのは確か……豚肉にキャベツに人参に玉ねぎ。
「そういえばさ、何で毎朝、野菜炒めなんだ?美味しいから良いんだけどさ。」
「確実に作ってやれるのは朝だけだから。それならせめて野菜取って欲しくって……。」
そう口にしながらトントンと、小気味のいい音を立てながら野菜を切る姿に心臓が高鳴る。
俺のために、こんなに材料使うのに、手間もかかるのに。
何だか嬉しい様な気恥ずかしい様な、むず痒い気持ちになり視線を逸らす。
その視線の先には、太陽の光に二人分の指輪が輝いた。
意識をしてしまえばそれはとてもとても輝いて見え、頬を一気に熱くする。
激しく高鳴る心臓。おまけに変な汗までかく始末だ。
え?あれ?もしかして俺……もう?
はは、幻覚まで見えだしたら終わりだよな、何て自分で嗤ってしまう。
その懐かしく感じる様な淡い幻覚は何となく俺の為に泣いている様な気がした。
その影は勢い良く俺を抱きしめ口を開く。
精液や汗、涙に血液で汚れている事など気にしていない様にグッと強く。
「俺のじゃなくていいからいなくならないでよ!」
叫び声の様なその声に一気に意識が引き上げられる。
「は、や、と?お、れ、きたな、い、ぜ?」
「そんなのどうでもいいよ。君が今、ここに存在してたら何でもいい。」
そう言われ胸が熱くなる。
また、こんな事、言わせてしまった、な。
「ごめんな、ありがとう。かえろうぜ?俺たちの幸せのゴミ屋敷にさ。」
「な、に、急に。てか、ゴミ屋敷なのは、翔のせいだろう?」
涙を拭い俺の顔を見て笑う。
そんな笑顔に釣られて何だか俺も笑ってしまう。
立ち上がった颯人は勢い良く俺を抱き上げる。
「い、た。怪我人なんだから、もっと丁寧に扱えよ。」
「はっ。良く言うよ、どうせ自業自得なくせに。」
「どうせ、ってなんだよ」
憎まれ口を叩き合いながら帰路に着く。
これは向き合うための第一歩にしか過ぎない。
やっと向き合えるぐらいまともになったって、好きにはなれないかもしれない。
それでも今はこの時間が尊くて大切で、颯人と過ごしていたいと心の底から思う。
「颯人、颯人、颯人。はやと」
何だか口にしたくなって沢山名前を呼んでみる。
どこと無く彼の口端が上がったのを見ると、俺は急に意識の糸がプツリと切れた。
「はやとぉ……」
—————。
————。
———。
知らないうちに眠りについてしまっていた様だ。
目を開けるとそこは見慣れた景色が広がっていた。
身体を起こし首を回し颯人を探す。
体の痛みはだいぶマシになっており、体に違和感を感じ見てみれば胴体は包帯でグルグルと巻かれていた。
「ははっ。家事はできんのにこう言うのは不器用なのかよ」
「あ、おきたの?おはよ。……仕方ないだろう、初めてなんだから。」
いないと思って口にした悪態はしっかりと、本人に届いてしまい俺は慌てて立ち上がり声の主のもとに急ぐ。
「違うんだよ、別に文句とかじゃ無くてさ。」
「いいけどさ、事実だし。あ……のさ。何でそんなに怪我と体液まみれだったか、聞いてもいい?一応、付き合ったるんだし、さ。」
歯切れ悪く続くその言葉に短く息を吐き笑いかける。
「セフレ全員と縁切った。ほら」
そう言いながら、もう既に器と化してしまった薄いそれを投げ渡す。
向き合うにはまずは信用が大事だからな。
「え、……ほんと、だ。」
「あとさ、履歴書の書き方教えて」
「なんで、急に?」
「別に。何となく。それが付き合う上での当たり前、だろ?」
俺が視線を外しながらそう告げると彼が嬉しそうに笑ったのに気付いた。
その様子にこれが正解だったのかと安堵し顔を上げると優しく笑う颯人と目が合った。
朝ごはんにしようと提案する彼に頷き俺は野菜室を開ける。
いつも入っているのは確か……豚肉にキャベツに人参に玉ねぎ。
「そういえばさ、何で毎朝、野菜炒めなんだ?美味しいから良いんだけどさ。」
「確実に作ってやれるのは朝だけだから。それならせめて野菜取って欲しくって……。」
そう口にしながらトントンと、小気味のいい音を立てながら野菜を切る姿に心臓が高鳴る。
俺のために、こんなに材料使うのに、手間もかかるのに。
何だか嬉しい様な気恥ずかしい様な、むず痒い気持ちになり視線を逸らす。
その視線の先には、太陽の光に二人分の指輪が輝いた。
意識をしてしまえばそれはとてもとても輝いて見え、頬を一気に熱くする。
激しく高鳴る心臓。おまけに変な汗までかく始末だ。
え?あれ?もしかして俺……もう?
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる