先輩、私だけを見てください!

加藤 忍

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第十九話

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 真奈美が風邪を治してから一週間が経った。クラスでは異様な雰囲気が漂っている。

「今年も来たぞ」

 教卓の前に立つクラス委員長が眼鏡を中指でご少し持ち上げる。日光の反射でアニメのワンシーンのように眼鏡全体のレンズが光る。

「体育祭だ!」

「「イエーイ!!」」

 クラスが一気に歓声を上げる。中には立ち上がるものすらいる。

 うちの体育祭がなぜそれほどまでに盛り上がるのか。それは景品にある。

 色分けは赤、青、黄、緑、そして白の五色。一年から三年までのクラスごとに分けられているため、各色の人数が少ない。一色あたり百二十人。

 優勝景品は毎年変わる。去年は購買のパン無料券、その前は商品券だったらしい。

「今年はクオカード千円分だそうだ」

 委員長の言葉により声が大きくなる。学生にとって千円は人によるが嬉しい金額だ。あるかないかではあったほうがいいに決まっている。

 この景品は学園長が考えたらしく、「生徒の運動への関心を高めたい」と言うことらしい。

 その体育祭の二週間前の今日、六時間目を使って生徒の出場種目を決めるごとになっている。

 副委員長が黒板に種目をずらーと書いていく。その下に人数を書いていく。おおよそ個人種目に四人、団体は十人以上となっている。

「それでは出たい種目の名前を言われたら手を挙げてくれ」

 俺はすかさず手を上げる準備をした。出る競技は一択しかない。

「百メートル競争」

 委員長の言葉のあとすかさず手を上げる。もちろん上げるのは俺一人ではない。あちこちから手が上がる。走る競技にはほとんど女子は手をあげない。これらの競技は男女混合で男子が圧倒的優勢。陸部で男子より早いなら話は別だが。

 手を上げたのは俺を含め七名。メンバーは四人。三人が落選となる。こうなったら運に任せるしかない。

「多いからジャン勝ちな」

 手を上げた生徒が前に出て来る。いつも見慣れた顔ぶれ、だが今だけは全くの別人にも見えるほどの真剣な目をしている。

 チラッと椅子の方を見ると、目が合った真奈美がガッツポーズで応援してくれている。一方の耀太は興味なさげに本に目を向けている。

「いくぞ!」

 前に出てきた一人が声を上げる。その声に合わせて皆が手を出す。

「ジャンケン、」

 俺は全てを右手に託し、気合を込めるという思いも載せてグーを出した。

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