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夏祭り
第三十二話
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屋上にいずみさんの次に到着するとすでに多くの人がまだかまだかとフェンスの近くに立っていた。
「頑張れ!」
階段の方を向いていずみさんが後ろにいる遥華と美夢さんにエールを送る。それを終えると私の方を向いた。
「西野さん先行って場所取りしよっか」
「そう、だね」
返事をしながら階段の方をチラッと見た。階段を上がる音は聞こえてくるけど姿はまだない。
私といずみさんは人の少ないところに距離を置いて立った。二人のスペースを確保するため。
その頃、ようやく屋上に来た遥華と美夢さんが着いた、と声を漏らしていた。
「花火・・・はまだだね」
「後十秒間で始まるよ」
いずみさんがスマホのホームが面では時間を確認している。私もスマホの画面で時間を確認した。
「もう九時なんだ」
私の呟きは横に入って来た遥華にすら聞こえていないみたいだった。周りの遊具で遊んでいる子供の声が大きいからかもしれないけど。
みんなで集まったのは午後五時、とっくに四時間が過ぎた事になる。そんな長い時間一緒にいた気がしない。むしろ一時間しか経っていないようにすら思える。
スマホの画面が自然と消えたと同時にヒューという音が耳に届く。その音で周りの人の声が聞こえなくなった。間も無くしてパーンと火薬が爆発した音が鳴り響く。
ここの花火大会に来たのはこれが初めてではない。中学の友達と何回も来たことがある。高校に入っても去年は別のメンバーと来た。
それでも今日はすごく新鮮な気持ちになる。最初に打ち上げられた花火がこれまで見たことのない花火だからではない。人混みを離れてゆっくりと花火を見たからでもない。
横にかけがえのない大切な人がいるから。
私は花火から目を逸らし遥華の横顔を見る。遥華は打ち上がる花火に目を奪われている。目には花火の光が反射して見える。
遥華が付き合うと言ってくれて一ヶ月が経った。私は少しずつ遥華としたかったことを消費していっている。手を繋いだり関節キスしたり、口と口を合わせる普通のキスをしたり。
それは全て私の願望でしかない。そして私から攻めている。別に遥華からして欲しいとは思っていない・・・と言うわけではない。少しして欲しい。でも私から攻めて遥華は拒んだりしない。嫌な顔をしないで受け止めてくれる。
「ねぇ遥華」
だから聞いてみたくなってしまう。
「何?」
遥華はようやく花火からの目を逸らし私を見る。
「私のこと恋人として好き?」
私はこの質問になんて答えたらいいのだろう。
楓の急な質問に私は固まった。横ではいずみと美夢が花火綺麗だね、と花火の感想を言い合っている。だから私たちの会話が聞こえていない事に一安心する。
私は楓のことが好きなのだろうか。友達としてではなくもっと大切な人として。
考えているとここ一ヶ月の思い出が蘇ってくる。告白されたとき、保健室での一件、マックでシェイクを一口あげたとき、家に招いてキスをした日のこと。
私はそれらの記憶が嫌とは思わなかった。それがもしいずみだったら、美夢だったらと考えると私は拒んだと思う。だってあの二人とはそういうことをしたくないから。
そこで私は自分の答えがすでに出ていた事に気付いた。楓を受け入れている自分に。
「好きだよ、恋人として」
この声はきっと横の二人には聞こえていない。楓だけが聞こえているだろう。楓は私の答えを聞くとそっと私の左手を握った。私もそれに答えるように楓の右手に軽く力を入れた。
「頑張れ!」
階段の方を向いていずみさんが後ろにいる遥華と美夢さんにエールを送る。それを終えると私の方を向いた。
「西野さん先行って場所取りしよっか」
「そう、だね」
返事をしながら階段の方をチラッと見た。階段を上がる音は聞こえてくるけど姿はまだない。
私といずみさんは人の少ないところに距離を置いて立った。二人のスペースを確保するため。
その頃、ようやく屋上に来た遥華と美夢さんが着いた、と声を漏らしていた。
「花火・・・はまだだね」
「後十秒間で始まるよ」
いずみさんがスマホのホームが面では時間を確認している。私もスマホの画面で時間を確認した。
「もう九時なんだ」
私の呟きは横に入って来た遥華にすら聞こえていないみたいだった。周りの遊具で遊んでいる子供の声が大きいからかもしれないけど。
みんなで集まったのは午後五時、とっくに四時間が過ぎた事になる。そんな長い時間一緒にいた気がしない。むしろ一時間しか経っていないようにすら思える。
スマホの画面が自然と消えたと同時にヒューという音が耳に届く。その音で周りの人の声が聞こえなくなった。間も無くしてパーンと火薬が爆発した音が鳴り響く。
ここの花火大会に来たのはこれが初めてではない。中学の友達と何回も来たことがある。高校に入っても去年は別のメンバーと来た。
それでも今日はすごく新鮮な気持ちになる。最初に打ち上げられた花火がこれまで見たことのない花火だからではない。人混みを離れてゆっくりと花火を見たからでもない。
横にかけがえのない大切な人がいるから。
私は花火から目を逸らし遥華の横顔を見る。遥華は打ち上がる花火に目を奪われている。目には花火の光が反射して見える。
遥華が付き合うと言ってくれて一ヶ月が経った。私は少しずつ遥華としたかったことを消費していっている。手を繋いだり関節キスしたり、口と口を合わせる普通のキスをしたり。
それは全て私の願望でしかない。そして私から攻めている。別に遥華からして欲しいとは思っていない・・・と言うわけではない。少しして欲しい。でも私から攻めて遥華は拒んだりしない。嫌な顔をしないで受け止めてくれる。
「ねぇ遥華」
だから聞いてみたくなってしまう。
「何?」
遥華はようやく花火からの目を逸らし私を見る。
「私のこと恋人として好き?」
私はこの質問になんて答えたらいいのだろう。
楓の急な質問に私は固まった。横ではいずみと美夢が花火綺麗だね、と花火の感想を言い合っている。だから私たちの会話が聞こえていない事に一安心する。
私は楓のことが好きなのだろうか。友達としてではなくもっと大切な人として。
考えているとここ一ヶ月の思い出が蘇ってくる。告白されたとき、保健室での一件、マックでシェイクを一口あげたとき、家に招いてキスをした日のこと。
私はそれらの記憶が嫌とは思わなかった。それがもしいずみだったら、美夢だったらと考えると私は拒んだと思う。だってあの二人とはそういうことをしたくないから。
そこで私は自分の答えがすでに出ていた事に気付いた。楓を受け入れている自分に。
「好きだよ、恋人として」
この声はきっと横の二人には聞こえていない。楓だけが聞こえているだろう。楓は私の答えを聞くとそっと私の左手を握った。私もそれに答えるように楓の右手に軽く力を入れた。
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