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世の中何が起こるか分からない
ヤング弁護士事務所
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ステラはヤング弁護士事務所へといそいでいた。ステラはヤング弁護士事務所で週に二度、書類の整理や清書を手伝っている。
ステラがヤング弁護士と縁ができたのは近所に住んでいたレベッカの離婚を手伝ったためだった。
十二歳の時にレベッカから、ディアス人の弁護士と話をしたいがディアス語でこみいった話ができるか不安なので通訳してほしいと頼まれた。
ステラは両親をふくめノルン人がディアス語で苦労するのを見てきたので子供の頃から頼まれると通訳をしてきた。
ディアス人が流暢にディアス語を話すノルン人にむかってノルン訛りのせいで何をいっているか分からないとからかったり、片言のディアス語しか話せないノルン人を馬鹿にするのを、同じディアス人として恥ずかしく思っていた。
ステラに通訳してほしいと頼んだレベッカはステラよりも十二歳年上の女性だった。
「ごめんね、こんなことにステラを巻き込んで」
レベッカはなぜ弁護士に会う必要があるのかを説明した。
レベッカはノルン国から恋人と一緒にディアス国へ移住してきたが恋人に裏切られ捨てられた。その後ディアスで出会ったノルン人と結婚した。
結婚後、夫がディアスでの生活の不満を酒でまぎらわせるようになっただけでなくレベッカに暴力をふるうようになった。
「ノルンでは離婚できないけど、ディアスでは離婚できるはずだからから離婚したい。でも結婚の誓いをたてたノルン村の教会で離婚はできないっていわれて。
ディアス人の弁護士で二か月に一度無料で相談にのってくれる日をつくってる人がいると聞いたの。だから本当に離婚できないのか聞きたい」
相談をうけたヤング弁護士は、レベッカの話を聞いたあと「離婚できるよ」と力強くいった。
夫婦間で暴力や虐待があったり、働かないなど夫婦として正常な関係を維持するのがむずかしい場合は離婚が可能だった。
「結構あるんだよ。ディアスの法に従うべきなのに、他国の法を押し通そうとする教会は本当にたちが悪い」
ディアス国で結婚した場合、結婚した人がどの国の人間であってもディアスの法が適用される。
しかしノルン村にある教会のように、離婚が認められていない国の移民があつまる教会では離婚をみとめず、離婚させないようにするという。
レベッカはキャンベル弁護士から離婚するのにどのような手続きが必要なのかを教わり、離婚に同意しない夫に手こずったが無事に離婚することができた。
ステラは弁護士事務所で通訳しただけでなく、レベッカがディアス語の読み書きをほぼできないことからステラが必要な書類作りを手伝った。
不明な点があったためステラがひとりで弁護士事務所へ質問しにいったところ、ヤング弁護士に気に入られ事務所の手伝いをすることになった。
ステラはノルン村の商会で書類をととのえる仕事をしていたため商業的な知識があったことがさいわいした。
「遅くなってすみません」
ステラが挨拶しても誰も返事をしない。よほど切羽詰まった状況にあるらしい。
ステラは自分が処理する書類をさがし黙々と片付けはじめた。
事務所は大きな商会同士が取り引きをするための契約締結で先月からごたついていた。
急に一方が契約内容をかえたいといいだし、署名すれば終わるという段階だったものをくつがえした。
そのため交渉のやり直し、契約内容の見直し、契約書の文言のすり合わせなど変更につぐ変更で翻弄された。
「もう嫌だ!」
弁護士見習いのポールがペンをなげだし叫んだ。ポールの限界をこえてしまったらしい。
「残念ながら帰っていいとはいえないから食べ物をかってきてくれ」
ヤング弁護士が財布から金をだしポールにわたす。
「一杯やらないとこれ以上がんばれません」
ポールの目の下には濃い隈ができており、そのようにいうポールには凄みがあった。
普段であれば飲むのは終わってからにしろというヤング弁護士だが、ポールの様子に思うところがあったのか黙って財布から金をとりだし「一杯だけだ」といってわたした。
ポールがコートをひっつかみ出ていくのを見ながら「ポール、大丈夫でしょうか?」とステラがきくと、ヤング弁護士が「大丈夫じゃないだろうな」と苦笑した。
ポールは高等学校を卒業したあと弁護士になるため見習いとして働いていた。
いつもであればヤング弁護士の息子であり、すでに弁護士であるジュニアがいるが、たちの悪い風邪にかかってしまい寝こんでいた。
そのためポールの仕事量が一気にふえた。ステラも本来なら週に二度事務所にくるだけだが、あいている日があれば来てほしいといわれきていた。
ポールが戻ってこずさがしに行った方がよいのではと思い始めたころ、
「おいしいお夜食と幽霊みたいな弁護士見習いをお届けにまいりました!」
明るい声が弁護士事務所にひびきわたった。
レベッカが道でポールとばったりあったので顔をだしにきたと、ポールとポールがかかえている夜食がはいったバスケットを指さした。
「あら、今日はステラが働いてる日なのね。サンドイッチいっぱい入ってるようだからちゃんと食べさせてもらいなね」
レベッカのよく通る声と笑い声がお葬式のような雰囲気の弁護士事務所に心地よくひびいた。
「ポールが夜食のはいったバスケットをかかえて酒場にいこうとしてたのでとめときましたよ」
レベッカがヤング弁護士に目くばせした。
ポールがあきらめたように自分の席にもどるのをみて、レベッカにまくしたてられたら諦めるしかなかっただろうと少し気の毒になった。
レベッカは離婚について相談してからときどき事務所に差し入れするようになり、事務所の人達とすっかり顔なじみだった。
レベッカはポールが放置したバスケットからサンドイッチをとりだすと皆にくばった。
「ステラ、レベッカと一緒に帰っていいぞ」ヤング弁護士がステラに声をかけた。
「でも、まだ今日の分を終えてませんが」
「暗くなってきたし妊婦をひとりで帰すわけにもいかないだろう」
レベッカが「先生、さすが紳士だから」とおだてたあとステラに帰り支度をうながした。
ステラは先に帰ることを申し訳なく思いながら、とくにポールと目があわないよう急いで荷物をあつめ事務所をでた。
ステラがヤング弁護士と縁ができたのは近所に住んでいたレベッカの離婚を手伝ったためだった。
十二歳の時にレベッカから、ディアス人の弁護士と話をしたいがディアス語でこみいった話ができるか不安なので通訳してほしいと頼まれた。
ステラは両親をふくめノルン人がディアス語で苦労するのを見てきたので子供の頃から頼まれると通訳をしてきた。
ディアス人が流暢にディアス語を話すノルン人にむかってノルン訛りのせいで何をいっているか分からないとからかったり、片言のディアス語しか話せないノルン人を馬鹿にするのを、同じディアス人として恥ずかしく思っていた。
ステラに通訳してほしいと頼んだレベッカはステラよりも十二歳年上の女性だった。
「ごめんね、こんなことにステラを巻き込んで」
レベッカはなぜ弁護士に会う必要があるのかを説明した。
レベッカはノルン国から恋人と一緒にディアス国へ移住してきたが恋人に裏切られ捨てられた。その後ディアスで出会ったノルン人と結婚した。
結婚後、夫がディアスでの生活の不満を酒でまぎらわせるようになっただけでなくレベッカに暴力をふるうようになった。
「ノルンでは離婚できないけど、ディアスでは離婚できるはずだからから離婚したい。でも結婚の誓いをたてたノルン村の教会で離婚はできないっていわれて。
ディアス人の弁護士で二か月に一度無料で相談にのってくれる日をつくってる人がいると聞いたの。だから本当に離婚できないのか聞きたい」
相談をうけたヤング弁護士は、レベッカの話を聞いたあと「離婚できるよ」と力強くいった。
夫婦間で暴力や虐待があったり、働かないなど夫婦として正常な関係を維持するのがむずかしい場合は離婚が可能だった。
「結構あるんだよ。ディアスの法に従うべきなのに、他国の法を押し通そうとする教会は本当にたちが悪い」
ディアス国で結婚した場合、結婚した人がどの国の人間であってもディアスの法が適用される。
しかしノルン村にある教会のように、離婚が認められていない国の移民があつまる教会では離婚をみとめず、離婚させないようにするという。
レベッカはキャンベル弁護士から離婚するのにどのような手続きが必要なのかを教わり、離婚に同意しない夫に手こずったが無事に離婚することができた。
ステラは弁護士事務所で通訳しただけでなく、レベッカがディアス語の読み書きをほぼできないことからステラが必要な書類作りを手伝った。
不明な点があったためステラがひとりで弁護士事務所へ質問しにいったところ、ヤング弁護士に気に入られ事務所の手伝いをすることになった。
ステラはノルン村の商会で書類をととのえる仕事をしていたため商業的な知識があったことがさいわいした。
「遅くなってすみません」
ステラが挨拶しても誰も返事をしない。よほど切羽詰まった状況にあるらしい。
ステラは自分が処理する書類をさがし黙々と片付けはじめた。
事務所は大きな商会同士が取り引きをするための契約締結で先月からごたついていた。
急に一方が契約内容をかえたいといいだし、署名すれば終わるという段階だったものをくつがえした。
そのため交渉のやり直し、契約内容の見直し、契約書の文言のすり合わせなど変更につぐ変更で翻弄された。
「もう嫌だ!」
弁護士見習いのポールがペンをなげだし叫んだ。ポールの限界をこえてしまったらしい。
「残念ながら帰っていいとはいえないから食べ物をかってきてくれ」
ヤング弁護士が財布から金をだしポールにわたす。
「一杯やらないとこれ以上がんばれません」
ポールの目の下には濃い隈ができており、そのようにいうポールには凄みがあった。
普段であれば飲むのは終わってからにしろというヤング弁護士だが、ポールの様子に思うところがあったのか黙って財布から金をとりだし「一杯だけだ」といってわたした。
ポールがコートをひっつかみ出ていくのを見ながら「ポール、大丈夫でしょうか?」とステラがきくと、ヤング弁護士が「大丈夫じゃないだろうな」と苦笑した。
ポールは高等学校を卒業したあと弁護士になるため見習いとして働いていた。
いつもであればヤング弁護士の息子であり、すでに弁護士であるジュニアがいるが、たちの悪い風邪にかかってしまい寝こんでいた。
そのためポールの仕事量が一気にふえた。ステラも本来なら週に二度事務所にくるだけだが、あいている日があれば来てほしいといわれきていた。
ポールが戻ってこずさがしに行った方がよいのではと思い始めたころ、
「おいしいお夜食と幽霊みたいな弁護士見習いをお届けにまいりました!」
明るい声が弁護士事務所にひびきわたった。
レベッカが道でポールとばったりあったので顔をだしにきたと、ポールとポールがかかえている夜食がはいったバスケットを指さした。
「あら、今日はステラが働いてる日なのね。サンドイッチいっぱい入ってるようだからちゃんと食べさせてもらいなね」
レベッカのよく通る声と笑い声がお葬式のような雰囲気の弁護士事務所に心地よくひびいた。
「ポールが夜食のはいったバスケットをかかえて酒場にいこうとしてたのでとめときましたよ」
レベッカがヤング弁護士に目くばせした。
ポールがあきらめたように自分の席にもどるのをみて、レベッカにまくしたてられたら諦めるしかなかっただろうと少し気の毒になった。
レベッカは離婚について相談してからときどき事務所に差し入れするようになり、事務所の人達とすっかり顔なじみだった。
レベッカはポールが放置したバスケットからサンドイッチをとりだすと皆にくばった。
「ステラ、レベッカと一緒に帰っていいぞ」ヤング弁護士がステラに声をかけた。
「でも、まだ今日の分を終えてませんが」
「暗くなってきたし妊婦をひとりで帰すわけにもいかないだろう」
レベッカが「先生、さすが紳士だから」とおだてたあとステラに帰り支度をうながした。
ステラは先に帰ることを申し訳なく思いながら、とくにポールと目があわないよう急いで荷物をあつめ事務所をでた。
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