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第一章 エルマイラムの冒険者
⑦ 『裏切り』
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懸命に走り続けて、港の倉庫付近まで走ってきたレイは、倉庫の屋根を走る化け物の姿を見つけた。
化け物は、空中に不意に現れては襲いかかってくる鋭利な氷の塊に追われて、逃げ回っている。
「くそっ! やっぱり、あいつらの仕業か!」
怒りで頭が沸騰しそうになるレイ。
だが、あの化け物を倒すことが先決だと思い直し、レイは化け物を追おうとした。
しかし……。
「なっ、なんだ、これは?」
大道に突然炎の壁が現れて、レイの進行を阻む。
炎は凄まじい熱量で近づくものを阻むが、決して建物などを焼くことはない。
魔法に疎いレイにも分かるほどの馬鹿げた魔法技術の高さ。
それが誰の仕業なのかは明白だった。
ジェノの仲間の魔法使い、リットだ。
「おいおい、邪魔をするなよ。これから良い所なんだからな」
遠くにいるはずなのに、何故か頭の中に軽薄そうな男の声が聞こえてきた。その事でレイは自分の考えが正しかったことを確信する。
「ふざけるな、リット! 今すぐにこの炎を解除しろ! あの化け物は俺たちが懸命に追い詰めたんだ。あれを倒すのは俺達だ!」
「はっ、嫌なこった。お前らは、そこで指を咥えて待っていろよ。すぐに俺達が終わらせるからな」
その言葉を最後に、リットの声は聞こえなくなった。
「させるか、そんな事! あいつは、俺達が懸命に見つけ出したんだ! 俺達が仕留める。仕留めなければいけないんだ!」
レイは裏道に回り込み、倉庫街に向かおうとする。この街の土地勘ならリットより自分のほうが上のはずだ。
そして、ついに炎の壁がない道を見つけた。
レイはすぐさまそこに駆け寄るが、やはりそこにも炎の壁が現れてしまう。
「はい、おつかれさん。あいにくと俺は空を飛べるんでね。お前の動きなんて丸見えなんだよ」
また声が聞こえる。その人を小馬鹿にした声に、レイは悔しさで歯噛みする。
だが、そこでレイは、建物の上に立つ人間の姿を視界に捉えた。
リットではない。
倉庫の屋根の上に立っているそいつは、自分達と同じ制服を身にまとった黒髪の少年だった。
「くっ……。ジェノォォォォッ!」
レイはありったけの怒りと怨嗟を込めて、その名を叫ぶ。
その声に気づいたのか、ジェノは静かにこちらを向く。
「何のつもりだ、ジェノ! さっきの化け物の幻も、お前とリットの仕業か!」
「そうだ。お前達は下がっていろ。後は俺がやる」
ジェノはそれだけ言って、再びレイに背中を向ける。
「裏切るのか。裏切るのか、お前は! 手柄を独り占めするために、お前は!」
レイの激情に、しかしジェノは振り返りもせずに、
「お前は、俺を仲間だと思っていないと言っていたな。……俺も同じだ。お前たちを仲間だと思ったことはない」
その言葉を残して炎の先に消えていった。
「ふざけるな。……ふざけるな!」
絶叫するレイ。だが、彼にできるのはそれだけだった。
何人も近づけぬ業火の壁の前で、レイは自身の無力さを噛み締めて、何度も大地に拳を叩きつけるのだった。
一時間後、炎の壁が消えると、レイと彼を追ってきた自警団のメンバーは倉庫街に突入した。そして、彼らはすぐにそれを発見した。
血の池に沈み、事切れた巨大な猿のような化け物の死骸を。
頭部に剣を突き刺された痕がある。どうやらそれが致命傷のようだ。
しかし、すでにこの化け物を倒した人物の姿はなかった。
「…………」
自警団のメンバーは誰も言葉を口にしない。感情を押し殺して、ただ現場を確認、調査する。
口を開いてしまうと、怨嗟の言葉が漏れてしまうから。
「俺は、俺はあいつを許さねぇ……」
レイは血が滲むほどに両拳を握りしめて、そう決意する。
この場から立ち去ろうと、あいつの住処は分かっているのだ。この落とし前は必ずつけさせる。
それは、レイだけではなく自警団のメンバー全員の思いだった。
化け物は、空中に不意に現れては襲いかかってくる鋭利な氷の塊に追われて、逃げ回っている。
「くそっ! やっぱり、あいつらの仕業か!」
怒りで頭が沸騰しそうになるレイ。
だが、あの化け物を倒すことが先決だと思い直し、レイは化け物を追おうとした。
しかし……。
「なっ、なんだ、これは?」
大道に突然炎の壁が現れて、レイの進行を阻む。
炎は凄まじい熱量で近づくものを阻むが、決して建物などを焼くことはない。
魔法に疎いレイにも分かるほどの馬鹿げた魔法技術の高さ。
それが誰の仕業なのかは明白だった。
ジェノの仲間の魔法使い、リットだ。
「おいおい、邪魔をするなよ。これから良い所なんだからな」
遠くにいるはずなのに、何故か頭の中に軽薄そうな男の声が聞こえてきた。その事でレイは自分の考えが正しかったことを確信する。
「ふざけるな、リット! 今すぐにこの炎を解除しろ! あの化け物は俺たちが懸命に追い詰めたんだ。あれを倒すのは俺達だ!」
「はっ、嫌なこった。お前らは、そこで指を咥えて待っていろよ。すぐに俺達が終わらせるからな」
その言葉を最後に、リットの声は聞こえなくなった。
「させるか、そんな事! あいつは、俺達が懸命に見つけ出したんだ! 俺達が仕留める。仕留めなければいけないんだ!」
レイは裏道に回り込み、倉庫街に向かおうとする。この街の土地勘ならリットより自分のほうが上のはずだ。
そして、ついに炎の壁がない道を見つけた。
レイはすぐさまそこに駆け寄るが、やはりそこにも炎の壁が現れてしまう。
「はい、おつかれさん。あいにくと俺は空を飛べるんでね。お前の動きなんて丸見えなんだよ」
また声が聞こえる。その人を小馬鹿にした声に、レイは悔しさで歯噛みする。
だが、そこでレイは、建物の上に立つ人間の姿を視界に捉えた。
リットではない。
倉庫の屋根の上に立っているそいつは、自分達と同じ制服を身にまとった黒髪の少年だった。
「くっ……。ジェノォォォォッ!」
レイはありったけの怒りと怨嗟を込めて、その名を叫ぶ。
その声に気づいたのか、ジェノは静かにこちらを向く。
「何のつもりだ、ジェノ! さっきの化け物の幻も、お前とリットの仕業か!」
「そうだ。お前達は下がっていろ。後は俺がやる」
ジェノはそれだけ言って、再びレイに背中を向ける。
「裏切るのか。裏切るのか、お前は! 手柄を独り占めするために、お前は!」
レイの激情に、しかしジェノは振り返りもせずに、
「お前は、俺を仲間だと思っていないと言っていたな。……俺も同じだ。お前たちを仲間だと思ったことはない」
その言葉を残して炎の先に消えていった。
「ふざけるな。……ふざけるな!」
絶叫するレイ。だが、彼にできるのはそれだけだった。
何人も近づけぬ業火の壁の前で、レイは自身の無力さを噛み締めて、何度も大地に拳を叩きつけるのだった。
一時間後、炎の壁が消えると、レイと彼を追ってきた自警団のメンバーは倉庫街に突入した。そして、彼らはすぐにそれを発見した。
血の池に沈み、事切れた巨大な猿のような化け物の死骸を。
頭部に剣を突き刺された痕がある。どうやらそれが致命傷のようだ。
しかし、すでにこの化け物を倒した人物の姿はなかった。
「…………」
自警団のメンバーは誰も言葉を口にしない。感情を押し殺して、ただ現場を確認、調査する。
口を開いてしまうと、怨嗟の言葉が漏れてしまうから。
「俺は、俺はあいつを許さねぇ……」
レイは血が滲むほどに両拳を握りしめて、そう決意する。
この場から立ち去ろうと、あいつの住処は分かっているのだ。この落とし前は必ずつけさせる。
それは、レイだけではなく自警団のメンバー全員の思いだった。
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