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第一章 エルマイラムの冒険者
㉒ 『悪夢の終わり』
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気配を感じてコウが振り向くと、暗い闇の向こうから、いくつもの赤い瞳がこちらを見ている。
そしてそれは、少しずつコウに近づいてくる。しかも、近づくにつれて速度がだんだん速くなってくる。
やがてその赤い瞳をしたなにかの姿が、コウの目でも視認できるほどの距離になる。
それは、巨大な猿のような外見をしているのに、その顔にはいくつもの赤い目がある怪物だった。
「あっ、ああ……」
恐怖のあまり後ずさるコウの足に、何かが当たった。
それを確認しようと視線をそちらに向けると、それが血の池に沈む、父の腕だったことに気づく。
「おっ、お父さん……。お父さん!」
コウは倒れた父にすがりついて体を揺らすが、「逃げろ、コウ……」という言葉を残して彼は動かなくなってしまう。
迫ってくる。怪物が迫ってくる。
逃げないといけない。逃げないと殺される。
それが分かっているのに、コウは恐怖で動けない。そして、もたもたしている間に、怪物は目の前までやってきてしまった。
「くっ、来るな……。来るなぁぁぁぁっ!」
あらん限りの声でコウは叫ぶ。しかし、そんな言葉を怪物が聞いてくれるはずがない。
怪物は、大きく腕を振りかぶる。それが振り下ろされれば、自分は殺される。
「助けて……。 誰か、助けて……」
懸命にコウは願う。でも、いつもその願いは叶わない。
コウは無残に体を切り裂かれて死ぬ。そう、それはいつも変わらない結末。
しかし、このときは違った。
「大丈夫だ、心配はいらない」
「えっ?」
不意に、頭上から男の人の声が聞こえた。
コウがそちらに視線をやると、白い衣を身に着けた黒髪の男の人が空から降りてくるのが見えた。
そしてその人は、そのまま怪物を、手にしていた長い剣で切り裂く。
怪物は血を吹き出しながらも、奇声を上げて腕を振り回し始めたけれど、その腕は全て男の人の剣で弾き飛ばされていく。
「コウ! 俺の手の上に掌を重ねろ! 俺とお前でこいつを倒すんだ」
いつの間にか、男の人はコウの隣にやってきて、コウにそう命じる。
「はい!」
コウは頷き、言われるがまま、男の人の手に自分恐れを重ね合わした。
すると、男の人の剣が眩しい光を発した。
その凄まじい光に照らされて、怪物の体がみるみるうちに消えていく。
「……消えた。あの怪物が……」
驚くコウの頭に、ポンと手が置かれた。
「大丈夫だ。もう、怯えなくてもいいんだ」
男の人は優しくコウの頭を撫でて微笑む。
その笑顔に、コウも微笑みを返した。
――この夢を最後に、コウは件の怪物の夢を見ることはなくなる。
けれど、コウはこの夢の終わりを、自分を救ってくれた、白き服の黒髪の剣士の姿をずっと忘れることはなかった。
そしてそれは、少しずつコウに近づいてくる。しかも、近づくにつれて速度がだんだん速くなってくる。
やがてその赤い瞳をしたなにかの姿が、コウの目でも視認できるほどの距離になる。
それは、巨大な猿のような外見をしているのに、その顔にはいくつもの赤い目がある怪物だった。
「あっ、ああ……」
恐怖のあまり後ずさるコウの足に、何かが当たった。
それを確認しようと視線をそちらに向けると、それが血の池に沈む、父の腕だったことに気づく。
「おっ、お父さん……。お父さん!」
コウは倒れた父にすがりついて体を揺らすが、「逃げろ、コウ……」という言葉を残して彼は動かなくなってしまう。
迫ってくる。怪物が迫ってくる。
逃げないといけない。逃げないと殺される。
それが分かっているのに、コウは恐怖で動けない。そして、もたもたしている間に、怪物は目の前までやってきてしまった。
「くっ、来るな……。来るなぁぁぁぁっ!」
あらん限りの声でコウは叫ぶ。しかし、そんな言葉を怪物が聞いてくれるはずがない。
怪物は、大きく腕を振りかぶる。それが振り下ろされれば、自分は殺される。
「助けて……。 誰か、助けて……」
懸命にコウは願う。でも、いつもその願いは叶わない。
コウは無残に体を切り裂かれて死ぬ。そう、それはいつも変わらない結末。
しかし、このときは違った。
「大丈夫だ、心配はいらない」
「えっ?」
不意に、頭上から男の人の声が聞こえた。
コウがそちらに視線をやると、白い衣を身に着けた黒髪の男の人が空から降りてくるのが見えた。
そしてその人は、そのまま怪物を、手にしていた長い剣で切り裂く。
怪物は血を吹き出しながらも、奇声を上げて腕を振り回し始めたけれど、その腕は全て男の人の剣で弾き飛ばされていく。
「コウ! 俺の手の上に掌を重ねろ! 俺とお前でこいつを倒すんだ」
いつの間にか、男の人はコウの隣にやってきて、コウにそう命じる。
「はい!」
コウは頷き、言われるがまま、男の人の手に自分恐れを重ね合わした。
すると、男の人の剣が眩しい光を発した。
その凄まじい光に照らされて、怪物の体がみるみるうちに消えていく。
「……消えた。あの怪物が……」
驚くコウの頭に、ポンと手が置かれた。
「大丈夫だ。もう、怯えなくてもいいんだ」
男の人は優しくコウの頭を撫でて微笑む。
その笑顔に、コウも微笑みを返した。
――この夢を最後に、コウは件の怪物の夢を見ることはなくなる。
けれど、コウはこの夢の終わりを、自分を救ってくれた、白き服の黒髪の剣士の姿をずっと忘れることはなかった。
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