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第三章 誰がために、彼女は微笑んで
⑪ 『悔しさ』
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「すっかり食事が冷めてしまったな。まだ食べられそうか? それならば代えを運んでこよう」
ジェノはまた冷たい無表情に戻ったが、そう提案をしてくる。
「いいえ。結構です。冷ましてしまったのは私の責任ですから、これを頂きます。食べ物を粗末にするのは、カーフィア様の教えに反しますので」
ジェノの提案を受けいれるのが腹立たしくて、サクリはそれを断り、再び白くて甘いデザートに匙を伸ばす。
冷めてしまったパン粥などとは対象的に、このデザートは温くなってしまった。そのため味が少し落ちてしまったのだが、それでもサクリはそれを美味しいと思った。
ジェノは何も言わない。
ただ、彼はこちらの食事の邪魔をしないようにと思ったのか、サクリのベッドから離れ、入口近くの壁に背中を預ける。
「……」
サクリはそんな彼を一瞥し、冷めてしまった他の料理も、少しずつだが口に運ぶ。
腹が立つ。
そう、これは、ほとんど交友のない他人に、自分の心を見透かされてしまったことへの羞恥からくる怒りだった。
――すみません、カーフィア様。私は、貴女様を他人に侮辱させるきっかけを作ってしまいました。
信奉する女神様に対して、私はなんと不敬だったのだろう。
――ごめんね、カルラ。レーリア。私は、いつの間にか、貴女達を汚してしまっていたのね。
何よりも大切な親友たちを、私はいつの間にか、不甲斐ない自分を苦しめるための言い訳にしてしまっていた。
「……悔しい。悔しいよ……」
サクリは涙をこぼしながらも、食事を続ける。
カーフィア様は、苦しんで死ななければいけないなんて仰っていない。
カルラとレーリアは、最後まで私の味方だった。ずっと変わらず、私のことを心配してくれて、気にかけてくれていたのに……。
どうして、どうして私は、他人に言われるまでその事を忘れてしまっていたのだろう。
「あっ、あああっ……」
サクリは懸命に涙を堪えていたが、やがてスプーンを手から落とし、顔を両手で抑えて、嗚咽まじりに涙で顔を濡らす。
「……無理をするな」
いつの間にか、ジェノが側にやってきて、サクリの落としたスプーンを拾ってトレイに戻す。そして、彼は、泣きじゃくるサクリの肩に優しく手を置いた。
「サクリ。俺達の仕事は、目的の村までお前を送り届けるだけで終わりだ。だが、お前はその村にたどり着いてからが本番だ。だから、自分を責めている余裕はない。今は力を蓄えて置くべきだ」
ジェノの声は、別人のように優しかった。
「……でも、どうせ、どうせ私は、もう……」
「何を言っている。お前は病を治すために旅を続けているんだろう? そのために、これから聖女に会いに行くんだ。初めからそんな弱気でどうする」
ジェノの言葉に、サクリが顔を上げる。すると、彼は微笑んでいた。
サクリはその笑顔を見て、呆然としてしまう。
それがあまりにも優しかったから。
この人は、私の病が治ることを、心から願ってくれている。それがその笑顔で分かった。
「……ああっ、そうか。この人は、本当はとても……」
サクリはジェノの優しさに気づいたが、それを嬉しくは思いながらも、一つのことを女神カーフィアに誓う。
この旅の間は、もう自身を責めるのは、やめると。
そう。それくらいのことはしなければ申し訳が立たない。
……自分は、この優しさを裏切ることはできても、報いることは決してできないのだから。
ジェノはまた冷たい無表情に戻ったが、そう提案をしてくる。
「いいえ。結構です。冷ましてしまったのは私の責任ですから、これを頂きます。食べ物を粗末にするのは、カーフィア様の教えに反しますので」
ジェノの提案を受けいれるのが腹立たしくて、サクリはそれを断り、再び白くて甘いデザートに匙を伸ばす。
冷めてしまったパン粥などとは対象的に、このデザートは温くなってしまった。そのため味が少し落ちてしまったのだが、それでもサクリはそれを美味しいと思った。
ジェノは何も言わない。
ただ、彼はこちらの食事の邪魔をしないようにと思ったのか、サクリのベッドから離れ、入口近くの壁に背中を預ける。
「……」
サクリはそんな彼を一瞥し、冷めてしまった他の料理も、少しずつだが口に運ぶ。
腹が立つ。
そう、これは、ほとんど交友のない他人に、自分の心を見透かされてしまったことへの羞恥からくる怒りだった。
――すみません、カーフィア様。私は、貴女様を他人に侮辱させるきっかけを作ってしまいました。
信奉する女神様に対して、私はなんと不敬だったのだろう。
――ごめんね、カルラ。レーリア。私は、いつの間にか、貴女達を汚してしまっていたのね。
何よりも大切な親友たちを、私はいつの間にか、不甲斐ない自分を苦しめるための言い訳にしてしまっていた。
「……悔しい。悔しいよ……」
サクリは涙をこぼしながらも、食事を続ける。
カーフィア様は、苦しんで死ななければいけないなんて仰っていない。
カルラとレーリアは、最後まで私の味方だった。ずっと変わらず、私のことを心配してくれて、気にかけてくれていたのに……。
どうして、どうして私は、他人に言われるまでその事を忘れてしまっていたのだろう。
「あっ、あああっ……」
サクリは懸命に涙を堪えていたが、やがてスプーンを手から落とし、顔を両手で抑えて、嗚咽まじりに涙で顔を濡らす。
「……無理をするな」
いつの間にか、ジェノが側にやってきて、サクリの落としたスプーンを拾ってトレイに戻す。そして、彼は、泣きじゃくるサクリの肩に優しく手を置いた。
「サクリ。俺達の仕事は、目的の村までお前を送り届けるだけで終わりだ。だが、お前はその村にたどり着いてからが本番だ。だから、自分を責めている余裕はない。今は力を蓄えて置くべきだ」
ジェノの声は、別人のように優しかった。
「……でも、どうせ、どうせ私は、もう……」
「何を言っている。お前は病を治すために旅を続けているんだろう? そのために、これから聖女に会いに行くんだ。初めからそんな弱気でどうする」
ジェノの言葉に、サクリが顔を上げる。すると、彼は微笑んでいた。
サクリはその笑顔を見て、呆然としてしまう。
それがあまりにも優しかったから。
この人は、私の病が治ることを、心から願ってくれている。それがその笑顔で分かった。
「……ああっ、そうか。この人は、本当はとても……」
サクリはジェノの優しさに気づいたが、それを嬉しくは思いながらも、一つのことを女神カーフィアに誓う。
この旅の間は、もう自身を責めるのは、やめると。
そう。それくらいのことはしなければ申し訳が立たない。
……自分は、この優しさを裏切ることはできても、報いることは決してできないのだから。
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