冷酷王太子に嫁いだら、ベタ惚れされて離してくれません

白米

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俺の癒しはお前だけ。王太子、嫉妬と溺愛が止まりません!?

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 穏やかな陽射しが降り注ぐ王宮の庭園。
芝生の上を、にぎやかな子どもたちの笑い声が駆け抜けていた。

「アリシアお姉ちゃーん!こっち来てー!」

「はいはい、待ってくださいね~!」

ひらひらと動く白いスカート。
その中心で、侯爵令嬢であり王太子妃となったアリシアが、楽しそうに笑っていた。

今日は王宮に併設された福祉院の子どもたちが、庭園に遊びに来ている日。

アリシアは彼らと顔なじみで、ふだんから時折絵本を読んだり、お菓子を配ったりしていた。

「アリシアお姉ちゃん、これ見て!四つ葉のクローバー!」

「まぁ、すごいわね!……あなたに、幸せがたくさん訪れますように」

子どもの小さな手をそっと包み、にこやかに微笑むアリシア。

その姿を、少し離れた東屋からじっと見つめていたのは——もちろん彼、王太子レオンハルトだった。

(……よく笑っている)

その表情は、政務中に見せるものとも、彼の前でのものとも違う。
まるで母鳥がひなを守るような、あたたかくてやわらかい眼差し。

その一瞬、レオンハルトの胸に得体の知れない感情が走った。

(……なんだ、この……むず痒い感情は)

アリシアの笑顔が、誰かに向けられるたびに、胸の奥がちくりと疼いた。



「わーっ!アリシアお姉ちゃん大好きー!」

「こらこら、順番ですよ~!」

ぎゅうぎゅうと子どもたちに抱きつかれ、アリシアは笑いながらも軽くふらつく。

その瞬間——

「離れろ」

ぴたりと場の空気が止まった。

庭園に現れたのは、黒の軍装に身を包んだ王太子・レオンハルト。

冷徹な雰囲気と鋭い目つきに、子どもたちは一斉にアリシアの背に隠れる。

「……レオンさま?」

「お前に触れるなと言ったはずだ」

「いや、言ってませんし!? 子どもたちですし!?」

「関係ない。……俺のものに、気安く触れるな」

「言い方ァーー!!」

アリシアは思わずツッコミを入れそうになったが、子どもたちが怖がるのでぐっと我慢する。

「大丈夫よ。レオンさまはちょっと言葉が足りないだけで、怖くないのよ~。ね?」

「…………」

(本人、全く否定しない……)

子どもたちはアリシアの後ろからレオンハルトをちらちら見ていたが、やがて一人の女の子が意を決して口を開いた。

「……あの、王子さま。アリシアお姉ちゃん、私たちのこと、大好きなんです」

「……知っている」

「だから、わたしたちもアリシアお姉ちゃんを、大好きなんです」

「…………」

レオンハルトは少しだけ視線を伏せ、そっと言葉を吐き出した。

「——それでも、俺は……お前に独り占めされたいと思ってしまう」

そのつぶやきは、小さくて、誰にも聞こえなかった。
けれどアリシアだけは、確かにそれを感じ取った。

(……レオンさま、嫉妬してるの?)

ほんの少し、くすりと笑ってしまった自分に気づいて、アリシアはそっと彼の腕に手を添えた。

「子どもたちに焼きもち焼くなんて、可愛いところありますね」

「可愛くない。俺は真剣だ」

「……はいはい」

(けど、そんな不器用なところが——やっぱり、好きなんだなぁ)

アリシアは心の中で小さくつぶやいた。



夕暮れどき。
子どもたちが帰り、庭園の静けさが戻った王宮のバルコニー。

アリシアはほっと一息つきながら、金色の空を見上げていた。

隣に立つレオンハルトも、黙ってその横顔を見つめている。

「今日も、楽しかったなぁ……」

アリシアがつぶやくように言うと、レオンハルトがゆっくり頷く。

「……お前の笑顔を、たくさん見られた」

「ふふっ……レオンさまって、ほんとに私のこと見てますよね」

「見ていない時があったか?」

「……うわ、さらっと言った」

頬が赤くなるのを隠せず、アリシアはカップを持ち上げてごまかす。
紅茶の香りがふわりと鼻をかすめたその時、彼女はふと漏らす。

「わたし……いつか、自分の子どもを抱いてみたいです」

レオンハルトの指が、わずかに止まった。

「子ども……か」

「はい。今日みたいに笑ったり、泣いたり、転んだり……。そんな小さな命を、大切に育てていきたいなって」

アリシアの表情はどこか遠くを見つめるようで、それが余計にレオンハルトの胸をざわつかせた。

(……アリシアが、他の誰かとの子どもを……いや、違う)

彼は静かに目を伏せた。

「……重たかった、ですよね。すみません。なんとなく、言いたくなっただけで」

「……いや」

「え?」

「……少し、考えさせてくれ」

その言葉に、アリシアは小さく頷くしかなかった。



翌朝。
アリシアは一人で刺繍をしながら、少しぼんやりしていた。

(レオンさま、なんて思ったかな……)

昨夜の“子どもがほしい”という言葉が、やはり重すぎたのではと不安がよぎる。

そんな時——コンコンと扉がノックされた。

「アリシア、入る」

「……レオンさま?」

彼はためらいなく入ってきて、アリシアの手元に視線を落とす。

「お前、今……何を作っている?」

「……ベビー服、です。サイズも分からないのに、ただの夢ですけど……」

レオンハルトは数秒の沈黙ののち、ゆっくりと腰を下ろした。

「……俺は、父に愛された記憶がない」

「えっ……」

「冷たく、遠かった。母も、いつも誰かに遠慮していた。だから、家庭にいい印象はない」

アリシアはそっと彼の手を取る。

「……でも、アリシア。お前を見ていると……“家族”というものが、少しずつ分かってきた気がする」

「……レオンさま」

「俺は、お前の願いを叶えたい。だから……子どもがほしい。お前との子どもを、抱きたいと思った」

その言葉に、アリシアの目に涙が浮かぶ。

「……ほんとう、ですか?」

「ああ。俺は不器用だが、きっと……幸せな家庭を、お前と築ける気がする」

そっと彼女の手を引き寄せ、おでこに口づけを落とす。

「アリシア。……未来も全部、お前に預けたい」

「……はい。わたしも、レオンさまとなら……どんな未来でも、歩いていけます」

しっかりと抱きしめられた胸の中は、あたたかくて、優しくて。

ふたりの“未来”が、やわらかく確かに動き出す音がした。
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