【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第302話 見定め

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 「な……何だよアレ」

 悲鳴を上げながら逃げ惑う生徒達の中にその場から動かない者達が居た。

 その内の1人がギムノである。

 目の前に突如として現れた圧倒的捕食者。

 Sランク冒険者でも勝ち目の薄いと言われる魔物最強の竜が咆哮を上げているのをギムノは呆然としながら見上げていた。

 戦力差は明らかで、全ての教官や生徒達が集まっても瞬殺されると瞬時に脳が理解する。

 「はは……こんなのに勝てる訳ねぇだろが」

 逃げ出したい衝動にかられるギムノだが、何故か動かない。 何故なら、地竜を背に立つセムネイルが黙って生徒達の様子を観察しているからだ。

 見定めるセムネイルの視線に気付いた幾人かは動かない、いや動けない。

 それは意地であり、無謀とも言えるだろう。

 だが、この時だけはその無謀が功を成す事になる。

 地竜が出現して僅か数十秒。

 「ふむ……各リーダーが決まったな」

 見極めたセムネイルは地竜を振り返り、まるで蝿でも叩くように軽く手を振り地竜の顎を叩いた。

 ゴキンッ! 「ゴギャッ?!」

 すると、地竜の巨大な頭は回転し首の骨が折れる音がグラウンドに響き渡り、そのまま地竜は力無く崩れ落ち絶命する。

 「おいおい……まじかよ」

 グラウンドの外から見ていたササガと校長のシパルは生徒達を助けに向かおうと動き出していたが、その必要も無かった事に唖然とする。

 「フィスト様と同じか、それ以上の力じゃな。 恐ろしい……地竜をまるで赤子のように捻るとは」

 ササガは羨望の眼差しを向け、シパルは恐怖した。

 「嘘だろ……? あの教官……強過ぎだろ」

 ギムノの呟きに、逃げ出さなかった者達が同意する様に頷いた。

 「さて、じゃあ地竜がどんなトカゲか見たな? コレを倒す為に、先ずは班分けをする」

 セムネイルは何事も無かった様に生徒達の方へと歩み寄る。

 「え……?」 「班分け……?」 「もう逃げなくてもいいの……?」 「結界の外に居るシパル校長とササガ教官の所に逃げようよ!」 「でも、俺達を強くしてくれるって……」 「嘘かも」 「そうよ、あの怪物を出したのは新しい教官なのよ?」

 危機が去ったからか、逃げ出そうとしていた者達も立ち止まりどうすべきか右往左往していた。

 怯える者、疑う者、助けを求める者、反応は様々だがセムネイルは無視して口を開く。

 「戦士職の者はノラとグラの所に行け。 弓使いはリンだ。 魔法使いの者はセリスの所に集まれ。 ん? どうした、さっさと動けぇぇ!!」

 「ひっ、は、はい!!」 

 「「「「はいっ!!」」」」

 指示された事に狼狽えていると、セムネイルの怒号が響き生徒達は急いで待機していたセリス達の下へと走り始めるのであった。

 ◆◇◆

 「おい、お前達は待て」

 逃げ出さなかった4名の生徒達をセムネイルは呼び止めた。

 「……うす」

 肌が浅黒い、坊主頭の大柄の男子生徒がセムネイルの方へと振り向く。

 「はい!」

 先程の生徒とは真反対の様な、肌が青白いサラサラな金髪をなびかせた男子生徒が一番乗りでセムネイルの前へと進み出る。

 「おう、元気だな。 そっちの2人も来い」

 「……なんですか?」

 紫髪のショートカットが良く似合う女子生徒がセムネイルを睨みながらやって来た。 横目でリンの方を見ており、恐らく弓使いでリンの弓が気になっているのだろう。

 「ちっ」

 最後の1人であるギムノも舌打ちをしながらセムネイルの前へと整列した。

 セムネイルの背後では地竜が骸となっているのだ。 逆らうべき相手では無い事は、プライドの高いギムノでも分かりきっている。

 4人の生徒達は何故呼ばれたのか分からず、各々にセムネイルを見つめていた。

 「地竜からよくぞ逃げ出さなかったな。 お前達は各班のリーダーに任命する。 お前から名と職を名乗れ」

 セムネイルの一言に4人は目を見開き、指を差された坊主頭の男子生徒が姿勢を正した。

 「うっす! 自分はゴンブ フォル ルイスと申します。 ゴンブ男爵家の三男っす! 職は重戦士っす!」

 ルイスは名乗り終えると深々と頭を下げ、強者であるセムネイルに敬意を示した。

 「では、次は私かな? 初めまして、カイルと申します。 生まれは商人の出ではありますが、いずれSランク冒険者となり貴族になる男です。 職は聖騎士……を目指していますが、今はただの戦士です」

 貴族では無いカイルだが、仰々しく頭を下げる。 その仕草は何処か不自然だが、セムネイルは気にしない。

 「……イザベラよ。 生まれも育ちも狩人の村。 職は勿論、弓使いよ」

 イザベラは淡々と自己紹介を終え、リンや弓使いの生徒達の方を見つめている。

 「……オーウェン フォル ギムノだ。 オーウェン男爵家の四男。 魔法使いなのは知ってるだろ」

 茶髪を指先で掻きながらギムノは呟き、隣に並ぶルイスとカイルが驚愕の表情を浮かべた。

 「自分、知らなかったっす! ギムノはあの冒険者から貴族に這い上がったオーウェン家の血筋だったんっすね!」

 「ふ、ふ~ん……下の名しか今まで名乗らなかったのは訳ありかい? ま、まさかあの戦士として高名なオーウェン殿の身内とは……」

 2人が騒いでいる間、イザベラはずっとリンを見つめている。 ギムノの事は全く興味が無いようだ。

 ギムノは顔を顰め、セムネイルの方を睨む。

 「それで? 俺達はどうしたら良いんだ? リーダーなんか出来る様な面子じゃないだろ。 俺達はFクラスだぞ」

 「そんな事は知らん。 言っておくが、地竜を目の前にして逃げ出さない人間は今の世界では少ない筈だ。 無謀にしろ、プライドにしろお前達は堪えた……誇れ。 お前達には才能がある」

 ギムノは久し振りに期待した。

 この魔王を名乗る教官なら、本当に強くしてくれるかもと。
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