【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
309 / 317

第303話 ノラ教官とグラ教官

しおりを挟む
 「ノラ、グラ。 この2人が戦士職のリーダーだ。 みっちりと叩き込んでやれ」

 セムネイルは最初にルイスとカイルをノラ達の下へと連れてきた。

 「おー! よろしくな!」

 「ふ~ん……他の子達よりはマシそうね」

 ノラはルイスの背中を叩き、グラは2人を怪訝な顔で見つめた。

 「よ、よろしくっす!」

 「……よろしくお願いします」

 坊主頭のルイスは礼儀正しく頭を下げるが、獣人であるノラに思う所があるのか、金髪を掻き上げていたカイルは少し間をおいてから頭を下げた。

 「戦士職の生徒は2人を入れて20名か。 やはり戦士職を目指す者は多いな」

 セムネイルは集まっている生徒達を見回し、顎を撫でる。

 18 名の生徒達は男女バラバラだが、皆一様に不安気だ。 セムネイルはともかく、まだ実力の分からないノラ達の事を懐疑的な目でも見ている。

 「じゃあ、始めるか。 2人に任せるが、もう出しとくか?」

 「勿論だぞ! お前達、ちゃんと見てろよ?」

 「ふふ、まぁ先ずはそれからよね」

 戦士職の生徒達が戸惑っていると、ノラは背中に横刺しで収納していた漆黒の大剣を軽々と構え、グラはブレスレットを2本の大剣へと変えた。

 「おぉぉ……! あの大きさの大剣をあんなに軽々と! 信じられないっす!」

 「くっ……確かにそうだね」

 ルイスとカイルは感嘆の声を上げ、他の者達も驚きの声を口にする。

 すると、セムネイルが又もや地竜を4次元の穴から放り出した。 目と鼻の先に現れた地竜に戦士職の生徒達は悲鳴を上げる暇もなく、蛇に睨まれた蛙の様に固まる。

 「ゴァァァァァァァァァァ!!」

 離れた場所で最初の指導を始めているリンやセリス達の生徒達は悲鳴を上げるが、2人の教官が無視して講義を続けるのを戸惑いながらも聞いていた。

 グラウンドの外では未だに不安げな校長シパルとササガが見守っている。

 「じゃあ、またおかわりが必要になったら呼んでくれ。 俺はリンの班に行ってくる」

 セムネイルは咆哮を上げる地竜を無視して立ち去り、ノラとグラは地竜の方へと歩みを進める。

 「じゃあ、先ずは戦士の戦い方ね。 ノラちゃん、ちょっと攻撃避けてて」

 「おー! 楽勝だぞ!」

 ノラは漆黒の大剣を軽々と片手に地竜の目の前へと躍り出る。

 「あ、危ないっすよ!!」

 ルイスが大声を上げて警告するが、ノラは無邪気な笑みで返しながら地竜の大口を危なげ無く躱した。

 「にししし、こんな攻撃俺には当たらないぞー!」

 戦士職の生徒達から驚きの声が上がる。

 ノラは地竜の牙、爪、尻尾からなる攻撃を全て躱し、周囲を回る様にして回避し続ける。

 その姿はまるで踊り子のようだ。

 「亜人なのに……なんて美しい」

 亜人に対し差別的なカイルは、舞の様に踊るノラを見て呆然とした。 他の者達も同様だ。

 男子生徒達は憧れの眼差しを向け、女子生徒達は頬を染める。

 「はい、注目! 先ず、この中に実戦経験のある者は手を挙げなさい。 ん~……少ないわね」

 グラに問われ、幾人かが手を挙げたが数名だけだった。

 「じゃあ、本当に基礎からね。 竜はどれぐらい強いか知ってるかしら。 えっと……ルイス、分かる?」

 「うっす! 魔物の中で頂点にして最強っす! 人間ではSランク冒険者パーティー竜の尻尾が上級の竜を狩れたと聞いたっす!」

 「うん、間違ってないよ。 でも、この地竜は竜の中では最弱。 翼竜や火竜等の他の竜からすると……捕食される側。 覚えたかな?」

 グラの目が紅く光り、薄っすらと浮かべた笑みにルイスは背筋に悪寒が走るのを感じていた。

 「……うっす」

 他の生徒達も感じていた様だが、グラから発されるものが何かすら理解できていない様だ。

 (はぁ……殺気も分からないか。 まぁ……その辺の冒険者ギルドに居る雑魚よりはまだ可能性があるかな)

 「おーい! グラ! 俺はいつまで避けるんだ?! 流石に暇だぞー!」

 グラが内心でため息を吐いていると、地竜の攻撃を回避し続けているノラに文句を言われる。

 ノラはあくびすらしており、暇なのだ。

 「あ、ごめんねノラちゃん。 もう少しお願い。 さて、今ずっと回避しているノラちゃんを見てどう思う? カイル……だっけ」

 「は、はい! とても……美しいです」

 見惚れる様にノラを見つめるカイルは呆然と呟き、グラは指先で眉間を押さえた。 

 「……他に誰かいる?」

 他の戦士職の生徒達を見渡すが、誰も発言しようとはしない。

 だが、ルイスだけは挙手をした。

 「うっす! ノラ教官は地竜の攻撃を全て見切っているっす!! 爪からの斬撃、噛み付き、尻尾による殴打を全て紙一重で避けてるっす!」

 「へぇ、よく見てるわね。 ルイスの言った通り、ノラちゃんは地竜の攻撃を見切って避けてる。 魔物の多くは、攻撃パターンに限りがあるからそんなに難しくは無い筈よ」

 他の生徒達はグラの講義を聞きながら、ノラの動きを改めて注視する。

 しかし、明らかに真似できそうにない動きでノラは避けていた。 半身で回転しながら跳んだり跳ねたりしており、常人には不可能である。

 「あの……無理では?」

 1人の生徒が挙手し発言するが、グラは手に持つ2本の大剣を地面に突き刺し笑みを浮かべた。

 「無理なら死ぬよ。 そもそも、戦士職には回避は必須な技術だからね。 君達が冒険者になればパーティーを組むわよね? つまり、戦士職が前衛にして最後の砦なの。 前衛が死ねば、後衛は全滅する」

 グラは現実を生徒達に叩き込む。

 「弓使い、魔法使い、回復要員。 仲間を守れるのは前衛だけなの。 それを絶対に忘れないで。 冒険していれば、地竜に出会うかもしれない。 その時に、君達はそうやって怯えて仲間と一緒に死ぬの?」

 神魔大戦の時代に、多くの仲間や同胞を失ったグラだからこその説得力だ。 

 「君達が竜の攻撃を防御するのは難しい。 なら回避するしかない。 分かったわね? さて、この班が一番人数も多いし、さっさとやるよ。 ルイス、来なさい」

 指名されたルイスは目を見開き、足を動かす事が出来ない。

 目の前には獰猛な死が待ち構えているのだ、当然である。

 「大丈夫。 ノラちゃんと私が側で指導してあげる。 それと、この訓練すら無理なら君達本当に終わりだよ? 周りから落ちこぼれって言われてるんでしょ? 強くなりたいんでしょ? 見返したいなら男を見せなさい!」

 グラの叱咤にルイスは拳を握りしめ、足を前へと踏み出した。

 「やるっす!!」

 「ふふ、そうよ。 人間、強くなりたいなら進みなさい。 人間の強みは飽くなき生への渇望なんだから」

 グラに連れられ、ルイスは汗だくになりながら暴れる地竜の前へと立つのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

美咲の初体験

廣瀬純七
ファンタジー
男女の体が入れ替わってしまった美咲と拓也のお話です。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

処理中です...