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第169話 冒険者ギルドでの聞き取り
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「ん? 来たのは衛兵達か……だが、何でだ?」
「あ、セムネイルの兄貴に会いに行く前に冒険者ギルドで待っていた仲間にハヤの事を伝えたからですかね?」
セムネイルとソクドが地下室から上がると、大勢の衛兵達が屋敷の中を捜索していた。
「探せ! ボルルト男爵は誘拐と殺人の重罪人だ! 必ず捕まえろ!」
「「「「「はっ!」」」」」
どうやら何らかの事情でセムネイルが殺したゴミ野郎を捕縛しに来たようだが、残念ながら当の本人は地下室に転がっている。
「地下室に行けば死んでいるのが見つかるな……面倒だ。 さっさと行くぞ、ソクド」
「は、はい」
セムネイルがソクドを連れ、屋敷の外へと出たその瞬間。 高速で屋敷の屋上から飛来した何者かがセムネイルに斬り掛かった。
「ちっ、早いな。 ソクド、離れてろ!」
ソクドを放り投げ、魔剣で受け止める。 そして、攻撃を受けた事で透明化の魔法が解けてしまった。
(ん? この太刀筋は……やれやれ、懐かしいな)
目にも止まらぬ攻撃を全て捌き切り、鍔迫り合いになった所でようやく襲撃者は攻撃の手を止めた。
「いてっ!」
先程行われた攻防は、ソクドを放り投げ屋敷の壁にぶつかるまでの1秒足らずの出来事である。
「んん? おぉ、ソクドに……セムネイル殿か。 あいや、すまんすまん。 屋敷から変な気配が移動しとったからの……ほっほっほっほ」
「くっくっくっ、やはりお前かソルバ」
「いてて……あ、ギルマスじゃねぇか!」
セムネイル達に襲い掛かったのは、南の街ミンガムの冒険者ギルドマスターであるソルバであった。
ソルバは刀を下げ、鞘へと一瞬で納めた。 その動きには一切の無駄はなく、ソクドの目には止まらなかっただろう。
「しかし……セムネイル殿とソクドがこの屋敷に居ったなら、ハヤちゃんは無事なのかの?」
「勿論だ。 セムネイルの兄貴に助けられ、今は安全な所に居るよ。 でもよ、何でギルマスが此処に? それに、あの衛兵達は何なんだ?」
ソルバはソクドの返答を聞き、嬉しそうに微笑んだ。
「ほっほっほっほ、お前が血相を変えてパーティーメンバーに報告したじゃろ? その話が儂の所に来てな。 前から黒い噂の絶えぬゴミ貴族じゃ。 この際、いちゃもんつけて捕まえてハヤちゃんを助けようと思っての」
ソルバは髭を撫でながら何でもない事のように笑う。 しかし、貴族を捕縛させるべく衛兵達を動かせる所を見るにソルバの権力は冒険者ギルドマスターの領分を大きく超えているとセムネイルは予測していた。
恐らく、ソルバは冒険者ギルドマスター以上の権限を持っているのだろう。
セムネイルはソルバを冷静に見定めるように見つめていた。
「そうか……すまねぇ。 ありがとうギルマス! 俺達みたいな落ちぶれたAランク冒険者パーティー何かの為に……恩に着るぜ!」
「気にするでない。 だが、無事で何よりじゃ。 おっと、不味いの」
「おい! さっきの物音は何だ!? 外を確認して来い!」
屋敷の中から衛兵達の声が聞こえ、見つかる前にセムネイル達は移動する事にした。
◆◇◆
冒険者ギルドのギルマス部屋に到着したセムネイル達は椅子に座り、ソルバに事の経緯を説明していた。
「ほっ! なるほどの。 セムネイル殿、かたじけない」
「構わん。 ソクド達には協力すると伝えていたからな。 それと、さっき話したハヤを攫った奴等について何か分からないか?」
セムネイルの問いにソルバは眉をひそめる。
「そうじゃなぁ……儂の知る限りではその様な冒険者パーティーは聞いた事が無いのぉ。 この国に所属するSランク冒険者達は全員顔を知っておる。 可能性としては、他国に所属するSランク冒険者パーティーですかの。 しかし……そやつらが魔王とはな」
「ふむ……この冒険者ギルドに顔を出したパーティーにも不審な奴等は居なかったんだよな?」
「うむ、それは確かじゃよ。 異様な気配がすれば、儂が直ぐに分かるからの」
手がかりが無い事にセムネイルはため息を吐き、立ち上がる。
「そうか。 すまん、助かった。 今日は一旦帰るとする。 明日、ダンジョンの事でまた来るからよろしく頼む」
「ほっほっほっほ、こちらこそ助かりました。 竜の洞窟の件よろしく頼みますぞ」
「任せろ。 ソクドはどうする? 俺の4次元に来るか?」
「いや、仲間達の所に戻るぜ。 ハヤの事は頼んます! セムネイルの兄貴!」
セムネイルは頷き、冒険者ギルドを後にした。
「あ、セムネイルの兄貴に会いに行く前に冒険者ギルドで待っていた仲間にハヤの事を伝えたからですかね?」
セムネイルとソクドが地下室から上がると、大勢の衛兵達が屋敷の中を捜索していた。
「探せ! ボルルト男爵は誘拐と殺人の重罪人だ! 必ず捕まえろ!」
「「「「「はっ!」」」」」
どうやら何らかの事情でセムネイルが殺したゴミ野郎を捕縛しに来たようだが、残念ながら当の本人は地下室に転がっている。
「地下室に行けば死んでいるのが見つかるな……面倒だ。 さっさと行くぞ、ソクド」
「は、はい」
セムネイルがソクドを連れ、屋敷の外へと出たその瞬間。 高速で屋敷の屋上から飛来した何者かがセムネイルに斬り掛かった。
「ちっ、早いな。 ソクド、離れてろ!」
ソクドを放り投げ、魔剣で受け止める。 そして、攻撃を受けた事で透明化の魔法が解けてしまった。
(ん? この太刀筋は……やれやれ、懐かしいな)
目にも止まらぬ攻撃を全て捌き切り、鍔迫り合いになった所でようやく襲撃者は攻撃の手を止めた。
「いてっ!」
先程行われた攻防は、ソクドを放り投げ屋敷の壁にぶつかるまでの1秒足らずの出来事である。
「んん? おぉ、ソクドに……セムネイル殿か。 あいや、すまんすまん。 屋敷から変な気配が移動しとったからの……ほっほっほっほ」
「くっくっくっ、やはりお前かソルバ」
「いてて……あ、ギルマスじゃねぇか!」
セムネイル達に襲い掛かったのは、南の街ミンガムの冒険者ギルドマスターであるソルバであった。
ソルバは刀を下げ、鞘へと一瞬で納めた。 その動きには一切の無駄はなく、ソクドの目には止まらなかっただろう。
「しかし……セムネイル殿とソクドがこの屋敷に居ったなら、ハヤちゃんは無事なのかの?」
「勿論だ。 セムネイルの兄貴に助けられ、今は安全な所に居るよ。 でもよ、何でギルマスが此処に? それに、あの衛兵達は何なんだ?」
ソルバはソクドの返答を聞き、嬉しそうに微笑んだ。
「ほっほっほっほ、お前が血相を変えてパーティーメンバーに報告したじゃろ? その話が儂の所に来てな。 前から黒い噂の絶えぬゴミ貴族じゃ。 この際、いちゃもんつけて捕まえてハヤちゃんを助けようと思っての」
ソルバは髭を撫でながら何でもない事のように笑う。 しかし、貴族を捕縛させるべく衛兵達を動かせる所を見るにソルバの権力は冒険者ギルドマスターの領分を大きく超えているとセムネイルは予測していた。
恐らく、ソルバは冒険者ギルドマスター以上の権限を持っているのだろう。
セムネイルはソルバを冷静に見定めるように見つめていた。
「そうか……すまねぇ。 ありがとうギルマス! 俺達みたいな落ちぶれたAランク冒険者パーティー何かの為に……恩に着るぜ!」
「気にするでない。 だが、無事で何よりじゃ。 おっと、不味いの」
「おい! さっきの物音は何だ!? 外を確認して来い!」
屋敷の中から衛兵達の声が聞こえ、見つかる前にセムネイル達は移動する事にした。
◆◇◆
冒険者ギルドのギルマス部屋に到着したセムネイル達は椅子に座り、ソルバに事の経緯を説明していた。
「ほっ! なるほどの。 セムネイル殿、かたじけない」
「構わん。 ソクド達には協力すると伝えていたからな。 それと、さっき話したハヤを攫った奴等について何か分からないか?」
セムネイルの問いにソルバは眉をひそめる。
「そうじゃなぁ……儂の知る限りではその様な冒険者パーティーは聞いた事が無いのぉ。 この国に所属するSランク冒険者達は全員顔を知っておる。 可能性としては、他国に所属するSランク冒険者パーティーですかの。 しかし……そやつらが魔王とはな」
「ふむ……この冒険者ギルドに顔を出したパーティーにも不審な奴等は居なかったんだよな?」
「うむ、それは確かじゃよ。 異様な気配がすれば、儂が直ぐに分かるからの」
手がかりが無い事にセムネイルはため息を吐き、立ち上がる。
「そうか。 すまん、助かった。 今日は一旦帰るとする。 明日、ダンジョンの事でまた来るからよろしく頼む」
「ほっほっほっほ、こちらこそ助かりました。 竜の洞窟の件よろしく頼みますぞ」
「任せろ。 ソクドはどうする? 俺の4次元に来るか?」
「いや、仲間達の所に戻るぜ。 ハヤの事は頼んます! セムネイルの兄貴!」
セムネイルは頷き、冒険者ギルドを後にした。
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