真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第9話 特訓と勉強

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 クウネルは1歳の誕生日を過ぎてから、行動の幅がすごく広がった。

 まず、家から出してもらえるようになったのだ。

 代わりに身を守る為の術を教わる事になり地獄の特訓が始まった。

 最近は午前中に母エルザの槍術と父のロスや祖父トールの戦斧の扱い方を習っている。

 前世の祖父同様、武器の扱いを教える時の両親と祖父は凄く厳しいスパルタ訓練だ。

 下手したら、前世の祖父以上に厳しかった。

 それも当然であり、この世界には魔物が居るからだ。

 巨人のエルザやロスより大きい猪の魔物が、近くの森に居る過酷な世界だ。 家から出るなら、常に危険が伴う。

 午前中は訓練、午後はお昼寝してから夕方まで祖父トールと勉強をするのがクウネルの日課になっていた。

 現在は勉強の時間である。
 トールの肩に乗って、地理の勉強をしている。

 「ええか、クウネルよ。この世界は広い、形はそうじゃな……大雑把に言うと巨大な丸に近いの。 今、儂らが暮らしとるこの村が巨大な丸の真ん中辺りじゃわい。 この村から北は全て魔の森になっておる。 人の住めぬ、魔物の領域じゃ」

 トールは木の枝(丸太)で地面に絵を書きクウネルに説明をする。

 (巨大な丸って……じーじ本当に大雑把過ぎじゃない? しかも、魔の森ひっろ!)

 「巨大な丸の形の大陸……の半分も魔の森なの……?」

 「ぐあっはぁはっ! 本当にクウネルは賢いの。そうじゃ、現在は北は全て魔の森じゃな。だが、昔はそうでは無かった」

 トールは昔を懐かしむように答えた。

 (うわぁ、じーじ意味深ー! 気になるやんか!)

 「昔は……? じーじの若い頃は……違った?」

 「うむ、その通りじゃ。その話はまた今度、歴史の話をする時にゆっくり話してやるわぃ」

 どうやら、今日は地理の勉強のみに集中する様だ。

 「ん……わかった」

 (ちぇっ、歴史の話が楽しみだ)

 「よしよし、良い子じゃな。では、始めるとするかの。 この村から南に行けば巨人の王国が有る。幾つか街や村も有ったと思うが、一番大きいのが王都じゃ。クウネルが、もうちと大きくなればじーじが連れて行ってやろう」

 トールが小枝で巨人の王国を大雑把に書いた地図に書き足す。

 (せやろ、せやろ? 私めちゃくちゃ良い子なんやで? っていうか、巨人の王都ってどんな所? 全然想像付かないぞ)

 「王都も……丸太で出来てるの?」

 クウネルが今住んでる村を基準に想像していると、孫の可愛さに思わずトールは笑う。

 「ぐあっはぁはっ! 流石に王都は石造りじゃわい。大工やら鍛冶職人やらが王都にはおるでな。儂が住めるぐらいでかいぞー!」

 (ですよねー、流石に石造りか~。 でも、じーじは岩山をくり貫いて住んでますけども?)

 「え!? じーじが住めるの? ……今は山の中に住んでるのに」

 「ここには、大工がおらぬでな。皆住んでる家々も、最初に儂が見様見真似で建てたんじゃぞ?」

 トールは側にあった小枝(丸太)を器用に積み上げて見本をクウネルに見せた。 その様はまさに積み木だ。

 (まぁ、この巨体でなら積み木するのと同じだよね)

 「じーじ……すごいね」

 「そうじゃろ、そうじゃろ。さて、地理の話しに戻るかの。更に南へと行くと獣王国が有る。祝いの席にも来てた獣人の国じゃ。 足の早さや、力の強さで王を決める中々変わった国じゃぞ」

 トールは小枝で地図に獣王国を書き足し、どんな広さの国かを教える。

 (うんうん、誕生日に来てくれてた商人さんも男の獣人だったからさー。 可愛い女の子の猫耳が見たいです、はい)

 クウネルがうんうん頷いていると、トールは満足気に微笑みそのまま続きを話し始めた。

 「よしよし、次じゃな。 南西に向かうと竜神帝国が、更に南西に行くと最小の国である魔王国連合があるんじゃ。どちらも今の国としての形になってからは、行った事が無いが。かなり癖の強い亜人達が住んどる。 ほれ、クウネルも祝いの席で会ったじゃろ」

 トールが地図に書き足しているのを見ながら、クウネルは誕生日会を思い出す。

 (あ~はいはい、覚えてますよ。 あの表情が分からないリザードマンみたいな竜人と、めちゃくちゃ偉そうな山羊の角を生やした魔族でしょ。 っていうか、あんなに偉そうなのに最小の国なんかーい! 絶対にそんな国は行きたくないなー)

 「ん、覚えてる……よ」

 クウネルの返答にトールは嬉しそうだ。

 「うむ、流石儂の孫じゃ、記憶力も抜群じゃの。 その二国が亜人側では最強と呼ばれておる。しかし、本当に最強なのは儂ら巨人族じゃがな。ぐあっはぁはっ!」

 (ソウデスネ、巨人は脳筋の種族デスモンネ)

 クウネルが半目でトールを見ていると、気付いたトールが苦笑いをする。

 「む? 何じゃ、信じとらん顔をしとるぞ? ぬぅ、よし次の勉強の時間は歴史じゃ。その時に、どれだけ儂ら巨人族が強いか教えてやろう」

 「じーじが強いのは……信じてるよ」

 「ぐあっはぁはっ! そうか、そうか! よし、次は……西じゃの。 西に行くと、世界樹の都と癒しの森が有るぞ。 魔の森から来る魔物達を迷わせ、儂ら亜人を守り癒してくれる不思議な森が有る国じゃ。 世界樹はその名の通り、この世界で1番大きな木でな。 エルフ達がその周りに街を造り都となったそうじゃ。 エルフと妖精達は仲が良くての、何処かに行く時には大概一緒に居る。エルフの弓術と妖精の元素魔法がべらぼうに強いんじゃ」

 祖父トールの説明を聞きながら、クウネルは誕生日会で出会ったエルフと妖精に思いを馳せる。

 (あー、あの美人さんなエルフ達と妖精達はやっぱり仲良しなんだね。 其処の国だったら行きたいなー! また妖精に会いたいしな~。 超可愛いかったからさ)

 トールの書いた地図を見ながら、何時か行こうとクウネルは決意した。

 「じーじは……行った事ある?」

 「あぁ、有るぞ。世界樹の都の女王とは古い付き合いじゃからの」

 (ふえー、やっぱりエルフは長生きなんだね。 じーじと古い付き合いって……軽く200歳越えの仲って事?! ズッ友やん)

 「いずれ、じーじと一緒に行くか?」

 コクコクコクコク

 クウネルが小刻みに頷くと、トールはまた大笑いした。

 それを見て、クウネルの頬も緩む。

 (声がうるさいけど、私と居るとたくさん笑ってくれる。 何か嬉しいね。 照れるけど)

 「ぐあっはぁはっ! 約束じゃな。さて、後は……更に西か。
 更に西に行くと鬼人の集落が有るぞ。見た目は厳ついし、言葉も流暢ではないが付き合ってみると良い奴等何じゃよ。
 体術に優れておっての、素手で魔物を狩る姿は迫力満点じゃったな」

 トールが書き足した地図には多くの国の名前が書かれているが、鬼人だけは集落と書かれている所を見るに数は少ないのだろう。

 (私のお祝いに、めちゃくちゃでっかい猪狩ってきてくれた亜人だねー。 うん、確かに言葉は片言だったけど悪い亜人では無さそうだったと思う。 顔は鬼だからめちゃくちゃ怖いんだけどね。 それに、少し食べたけど美味しかったな~)

 「猪……嬉しかった」

 「うむ、アレは旨かったの。飯の話をしてたら腹が空いてきた、どれ、クウネルよ。魔の森の近くで果実でも採って食べようではないか」

 「行く! お腹……空いた」

 (さっすがじーじ! 話がわかるーー!)

 クウネルは現在、母エルザに謎の食事制限を言われており。 ご飯以外の間食を我慢するよう言われてる。

 だが、この腹減りとの付き合いが前世からのクウネルからしたら我慢とか云々のレベルでは無いのだ。

 空腹というよりも、飢餓に近い。

 そんなクウネルが食事を我慢出来ないのを知ってるからか、結局ロスやトールがこうしてこっそり何かを食べる機会を作っているのだ。

 (ありがとう! 本当にいつもありがとう! パパ、じーじ!)

 ズシーンッ! ズシーンッ! ズシーンッ!!

 クウネルはトールの肩に乗ったまま移動する。

 とても見晴らしが良いが、魔の森の奥にデカイ飛竜みたいのが飛んでいるのを見てしまい。 咄嗟にクウネルは目を逸らす。 気にしたら負けなのだ。

 かなりの距離が離れているので、危険は無いだろうと高を括ってクウネルは見なかった事にした。
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