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第61話 フォレスト ウルフ クイーン の誇り
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王である夫が死んだ、夫と共に立ち向かった多くの熟練の森狼達も死んだ。
残されたのは、女王で有る私と成狼になったばかりの4匹と幼い群れの子供達が数十匹だけ。
この森は私達の縄張りであり、王国でもあった。
それを、突如襲い奪ったのは何処からともなく現れた巨大な魔物だった。 博識な夫はその魔物を、ワイバーンと呼んでいた。 でも、種族としての呼び方は飛竜だとその時に教わったが、何故夫がそんな事を知っていたのかは今となっては分からない。
そもそも、夫がよく使う2足型の言語の意味は私には難しすぎるが、そんな事はどうでも良い。 今は残された群れの子供達を飢えないようにするのが女王たる私の務め。
しかし、次にあの飛竜とやらに襲われたら私の命も無いだろう。
せめて、4匹の成狼したばかりの森狼達に狩りの経験を積ませて私が居なくなっても群れを生き残らせれるようにしなくては。
「アオーーーンッ!! ガウッ! ガウッ!」
私が隠れ家の洞窟に向かって集合の合図を掛けると4匹の森狼達が集まってくれた。
「「「「アオーーーーーンッ!」」」」
よし、夫より群れへの影響力は無いけどこの森狼達は私に従ってくれるみたいね。
やるしかない。 そうだ! あの食べれないスライムと呼ばれる魔物ばかりが居る、小さな森から獲物を探そう。
そうすれば、あの飛竜に見つかる危険も少ない筈だわ。
◆◇◆
小さな森へと入ると、嗅いだ事のない匂いがする。
「クンクン……」 何だろう、あの飛竜とは違う匂い。
でも辺りに飛び散っている血は飛竜の血だし、大きな穴も出来ている。 何かと戦った? あれだけの大きさの飛竜だ、きっと顔だけを突っ込んで獲物を襲ったに違いない。
でも、襲われた筈のもう1つの匂いは、アッチに向かっている。 あの飛竜を負傷させる程の魔物が居るだろうか?
少なくとも、この匂いからは強者の香りはしない。
いや、何を迷ってるの私! こうしている間にも、群れの子供達は腹を空かし待っているのよ。
獲物を捕って帰らねば。
夫や、共に戦い死んだ多くの群れに申し訳が立たない。 大丈夫、飛竜程の強さでは無ければ殺れる筈よ。
自分にそう言い聞かせて、匂いに向かって歩き出した。
◆◇◆
おかしい……匂いの気配が察知出来る距離まで来たが。 それ以外の気配が全然無い。
縄張りの森には、私達以外にもたくさんの魔物や動物が住んでいた筈だ。 獲物としては小さすぎる魔物や動物ばかりだが、辺りはスライムの気配ばかり。
もしや、あの飛竜が全て食い散らかしたのか? 夫の愛する、縄張りの森を王国を荒らしたのか!?
もしそうなら、これから狩る獲物が最後なのかもしれない。 後は、時間を掛けて群れは餓死していくだろう。
おのれ、あの時……夫に群れを頼まれなければ、一矢報いて共に死ねたのに!
「グルルルル……」 「「「「クゥン?」」」」
はっ! いけない、私は女王。 最後まで、決して諦める訳にはいかないの。
しっかりしなくては。
……え? 匂いの気配が、こっちに向かって帰ってくる。
嘘でしょ? 追われている危険性も考えない魔物なの? いえ、これは私達に好都合ね。
待ち伏せをして、速やかに獲物を仕留めて隠れ家に帰る。 そうすれば、あの飛竜に見つかる事は無いわ。
「クンクンッ………グルルルル! ガウッ! ガウッ!」
「「「「ガウッ! アオーーーーーンッ!」」」」
群れに、狩りの準備を始めるよう伝える。
大丈夫、きっと上手くいく。
◆◇◆
隠れて暫く待つと、木々を掻き分ける音が聞こえ始める。
本当に警戒もせずに戻ってきた。 余程、自分の強さを誇る魔物か……それとも知能が低いのか。
しかし、スライムしか居ないこの森に何故戻って来たのだろう? 私達に気付いているなら、戻ってくる筈がない。
え?! 2足型種族!? 何故この森にっ?!
現れたのは、黒い髪の大きな2足型種族だ。 多分、雌だろう。
2足型が身に付ける、服と呼ばれる物を付けているという事は知能の高い2足型種族だという証拠。
しまった! もしや、夫の知り合いで会いに来ていたの!? 不味い、森狼達を止めなきゃ!
さすがに、亡き夫の知り合いを喰う訳にはいかない! それに、もしかしたら食料の調達をお願いできるかも。
この時、私は失敗した。
驚き、希望、憶測、願望、様々な事を考えていたせいで、森狼達に狩り中止の合図を出すのが遅れてしまった。
「ガァッ!」 「「「ガウッ!」」」
4匹の森狼達が、何故かスライムを捕獲していた2足型に襲い掛かる。
あ! ダメよ! 待って!!
止める暇もなく、1匹の森狼が2足型に噛み付いた。 2足型は驚くも、片腕でそれを止めて凌いでいる。
咄嗟に防御した? もしや、気配は察知していたの? やはり、敵では無いのよ!
どうしよう、止めようにも既に攻撃を此方から仕掛けてしまった。 私は夫のように、2足型の言語は喋れない。
どうしよう、どうしよう! ダメ、考えが纏まらない!
「「「ウ――……!」」」 「ガウッ! ガウガウッ!」
「ボァァァアアアッ!」
分からない2足方の言語を叫んだ直後、2足型の口から火柱が上がった。
「キャインッ!?」
2足型の片腕に噛み付いていた森狼が火に呑まれてしまった。 もう助からないだろう。
あぁ! 数少ない成狼が! 私のせいだ、私の判断が遅かったから……もう仕方ない!
頭では分かってる……狩りは命懸け、誇り高き森狼はそうして生きてきた! でも、許せない!
「グルルルルッ! アオーーーーーンッ!!!!」
夫の知り合いでも、友人でも許せない!
勝手な事だとは分かってる、でも……もう誰も奪わせない!!
残されたのは、女王で有る私と成狼になったばかりの4匹と幼い群れの子供達が数十匹だけ。
この森は私達の縄張りであり、王国でもあった。
それを、突如襲い奪ったのは何処からともなく現れた巨大な魔物だった。 博識な夫はその魔物を、ワイバーンと呼んでいた。 でも、種族としての呼び方は飛竜だとその時に教わったが、何故夫がそんな事を知っていたのかは今となっては分からない。
そもそも、夫がよく使う2足型の言語の意味は私には難しすぎるが、そんな事はどうでも良い。 今は残された群れの子供達を飢えないようにするのが女王たる私の務め。
しかし、次にあの飛竜とやらに襲われたら私の命も無いだろう。
せめて、4匹の成狼したばかりの森狼達に狩りの経験を積ませて私が居なくなっても群れを生き残らせれるようにしなくては。
「アオーーーンッ!! ガウッ! ガウッ!」
私が隠れ家の洞窟に向かって集合の合図を掛けると4匹の森狼達が集まってくれた。
「「「「アオーーーーーンッ!」」」」
よし、夫より群れへの影響力は無いけどこの森狼達は私に従ってくれるみたいね。
やるしかない。 そうだ! あの食べれないスライムと呼ばれる魔物ばかりが居る、小さな森から獲物を探そう。
そうすれば、あの飛竜に見つかる危険も少ない筈だわ。
◆◇◆
小さな森へと入ると、嗅いだ事のない匂いがする。
「クンクン……」 何だろう、あの飛竜とは違う匂い。
でも辺りに飛び散っている血は飛竜の血だし、大きな穴も出来ている。 何かと戦った? あれだけの大きさの飛竜だ、きっと顔だけを突っ込んで獲物を襲ったに違いない。
でも、襲われた筈のもう1つの匂いは、アッチに向かっている。 あの飛竜を負傷させる程の魔物が居るだろうか?
少なくとも、この匂いからは強者の香りはしない。
いや、何を迷ってるの私! こうしている間にも、群れの子供達は腹を空かし待っているのよ。
獲物を捕って帰らねば。
夫や、共に戦い死んだ多くの群れに申し訳が立たない。 大丈夫、飛竜程の強さでは無ければ殺れる筈よ。
自分にそう言い聞かせて、匂いに向かって歩き出した。
◆◇◆
おかしい……匂いの気配が察知出来る距離まで来たが。 それ以外の気配が全然無い。
縄張りの森には、私達以外にもたくさんの魔物や動物が住んでいた筈だ。 獲物としては小さすぎる魔物や動物ばかりだが、辺りはスライムの気配ばかり。
もしや、あの飛竜が全て食い散らかしたのか? 夫の愛する、縄張りの森を王国を荒らしたのか!?
もしそうなら、これから狩る獲物が最後なのかもしれない。 後は、時間を掛けて群れは餓死していくだろう。
おのれ、あの時……夫に群れを頼まれなければ、一矢報いて共に死ねたのに!
「グルルルル……」 「「「「クゥン?」」」」
はっ! いけない、私は女王。 最後まで、決して諦める訳にはいかないの。
しっかりしなくては。
……え? 匂いの気配が、こっちに向かって帰ってくる。
嘘でしょ? 追われている危険性も考えない魔物なの? いえ、これは私達に好都合ね。
待ち伏せをして、速やかに獲物を仕留めて隠れ家に帰る。 そうすれば、あの飛竜に見つかる事は無いわ。
「クンクンッ………グルルルル! ガウッ! ガウッ!」
「「「「ガウッ! アオーーーーーンッ!」」」」
群れに、狩りの準備を始めるよう伝える。
大丈夫、きっと上手くいく。
◆◇◆
隠れて暫く待つと、木々を掻き分ける音が聞こえ始める。
本当に警戒もせずに戻ってきた。 余程、自分の強さを誇る魔物か……それとも知能が低いのか。
しかし、スライムしか居ないこの森に何故戻って来たのだろう? 私達に気付いているなら、戻ってくる筈がない。
え?! 2足型種族!? 何故この森にっ?!
現れたのは、黒い髪の大きな2足型種族だ。 多分、雌だろう。
2足型が身に付ける、服と呼ばれる物を付けているという事は知能の高い2足型種族だという証拠。
しまった! もしや、夫の知り合いで会いに来ていたの!? 不味い、森狼達を止めなきゃ!
さすがに、亡き夫の知り合いを喰う訳にはいかない! それに、もしかしたら食料の調達をお願いできるかも。
この時、私は失敗した。
驚き、希望、憶測、願望、様々な事を考えていたせいで、森狼達に狩り中止の合図を出すのが遅れてしまった。
「ガァッ!」 「「「ガウッ!」」」
4匹の森狼達が、何故かスライムを捕獲していた2足型に襲い掛かる。
あ! ダメよ! 待って!!
止める暇もなく、1匹の森狼が2足型に噛み付いた。 2足型は驚くも、片腕でそれを止めて凌いでいる。
咄嗟に防御した? もしや、気配は察知していたの? やはり、敵では無いのよ!
どうしよう、止めようにも既に攻撃を此方から仕掛けてしまった。 私は夫のように、2足型の言語は喋れない。
どうしよう、どうしよう! ダメ、考えが纏まらない!
「「「ウ――……!」」」 「ガウッ! ガウガウッ!」
「ボァァァアアアッ!」
分からない2足方の言語を叫んだ直後、2足型の口から火柱が上がった。
「キャインッ!?」
2足型の片腕に噛み付いていた森狼が火に呑まれてしまった。 もう助からないだろう。
あぁ! 数少ない成狼が! 私のせいだ、私の判断が遅かったから……もう仕方ない!
頭では分かってる……狩りは命懸け、誇り高き森狼はそうして生きてきた! でも、許せない!
「グルルルルッ! アオーーーーーンッ!!!!」
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