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第13話 巨神への祈り
しおりを挟む(ダメダメ巨神じゃん、何で見捨ててるねん)
クウネルの心のツッコミを知ってから知らずか、トールは続きを話し始めた。
「いや、正確には見ている事しか出来んかったのが正しいんじゃがな」
「どうして? じーじ」
「大きな戦争があったと言ったじゃろ? 歴戦の巨人が死にゆく中、若き巨人達は巨神様に祈った。 今こそ我等を救いたまへと。 しかし……巨神様が救いを与える事は無かった」
やるせない気持ちが込み上げるのか、トールは拳を握り締める。
「元々、巨神様への信仰は勝利の祈願や狩りの成功の感謝を祈るのが始まりじゃったからな。巨神様も、さぞ悩まれた事じゃろ。 そして戦争が終わり、種族の危機に何もしてくれぬ神に用は無いと信仰が廃れていったんじゃ」
話し終えたトールの横顔は酷く寂しそうである。
(まー、そうだよね。 前世でも、何もしてくれない神に用は無いって人多かったと思う。 仕方無い事なんだろうけど、じーじの寂しそうな顔を見るとそんな事は言えないよ……あ、そうだ)
何かを思い付いたクウネルはトールの目の前に移動する。
「じーじ」
「ん? なんじゃクウネル」
「巨神様には、どうやって祈るの?」
トールはキョトンとした後、嬉しそうに笑い始めた。
「ぐぁっはぁっはっ! やはりクウネルは本当に優しい子じゃの。よし、じーじが教えてやろう。 まず食べ物を祭壇に供える、次に獲物を得られた感謝を巨神様に祈る。 祈りが伝わると、供えた供物は巨神様に送られる筈じゃ。 これだけじゃな、ほれやってみなさい」
そう言って、トールは大きなバナナを一本クウネルに渡した。
(え? 待ってじーじ。 私これ食べたこと無いんですけど、今世でまだバナナ食べた事無いんですけどー?! 祈ったら消えちゃうんでしょ? えー、どうしよっかなー)
クウネルがバナナを抱え、もたもたしているとトールは笑う。
「ぐあっはぁっは! 安心せいクウネルや、ちゃんとまだあるからの」
(さっすがじーじ! もう! それならそうと、早く言ってよ~)
「ん。やってみる」
クウネルはバナナを祭壇に置いて、心のなかで祈る。
(巨神様、初めましてクウネルって言います。 じーじの孫です、今日も美味しいご飯食べれてます。 ありがとうございます)
「こんな感じで良いのかな……? じーじ?」
クウネルが祈り終わると祭壇に置いたバナナが光り始める。 その光りが収まると、バナナは消え去ったのでどうやら祈りは成功したのだろう。
しかし、トールの方を見ると何故か固まっている。
(え? 何故に?)
「クウネル、お主…巨神様に祈るのは初めてじゃったよな?」
「うん。そだよ?」
(え? 何? 怖いんですけど)
「先程、クウネルが祈った後供物が消えたじゃろ? その時にクウネルも同じ光で包まれておった。 これは、長年巨神様を信仰せんと起こらん事じゃ。 何故なら、その光りは巨神様の祝福。 巨人にとっては、最高の栄誉なんじゃよ。 それを初めての祈りで得られるとは……さすが儂の孫じゃ! ぐあっはぁっは!」
トールは膝を叩き笑う。
よく笑う祖父だが、クウネルは祖父の笑顔が大好きなので自身も笑顔になる。
(ほえー、よくわからんけど。 本当にバナナ消えたし、巨神は実在するんだねー。 祝福とかは良くわかんないけど、あ! もしかして、じーじにあった巨神の加護ってやつ? ちょっと確認しとくか)
「ステータス、オープン」
クウネルはこの時、大きなミスをした事に気付かなかった。
ステータス画面
名前 クウネル
年齢 1
職業 戦士見習い
種族 ベビージャイアント
レベル 1
HP 300/300
FP 15/15
攻撃力 150+1000
防御力 20
知力 15
速力 50
スキル 鑑定Lv1.???? ????
魔法 無し
戦技 叩き割りLv1(new).槍突きLv1(new)
状態異常 空腹
加護 ??? 巨神の愛し子(new)
(ふむふむ、え? 攻撃力+1000ってどゆこと? 確かに、1歳の誕生日を過ぎてから数ヶ月訓練したから多少はステータス上がってたけど。 おかしいやん、他の素のステータスも上がってるけど攻撃力+1000に比べたら微々たるもんやん)
クウネルは浮かび上がった半透明のステータスを凝視し、色々と変わった事に戸惑う。
(まぁ、他のステータスはレベル上がって無いから少ないのは仕方ないか。 OK、OK! 前向きに捉えよう。 うん、良いことだね。 大丈夫、大丈夫。巨神の愛し子って加護が増えてるけど。 これは、アレだ。 ロリコンとかそういうのでは無く、久し振りに新しく祈ってくれた巨人が現れたから大サービスってやつだ。 で、その加護の効果が攻撃力+1000なのね。だよね? そうだよね? じーじが好きな神様だから、訴えたくは無いぞ。 訴えるべき裁判所が存在しないけど!)
クウネルがステータスを確認し終え、トールを見ると。
見たことない顔で固まっているトールが、其処には居た。
それも、凄く怖い顔で。
(え? もしかして、さっきのロリコン云々口に出してました?)
「クウネル……お主。 まさかとは思っておったが……魔王様の生まれ変わりなのか?」
(………はい?)
唐突なトールの言葉に、クウネルは目を点にするのであった。
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