真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
30 / 247

第30話 説明と呼び名

しおりを挟む
 ――っていう事が、気絶してる間にあった」

 クウネルは、夢の筈が無いアスカガルドでの出来事をざっくりと家族に話したのだが……両親の表情は暗い。

 ちなみに、クウネルは朝からドラゴンステーキを口いっぱいに頬張っている。

 (6食分も食べてないんだもん、そりゃ食も進みますよ。 うまうま、自分で仕止めた獲物の肉の味は格別ですなぁ。 まぁ、とりあえず話したけど。もちろんすんなり信じてくれる訳がないよね~)

 ロスとエルザは、クウネルは初めての実戦のストレスで変な夢でも見たと思っている。 当たり前だが、娘が気絶から目を覚ましたら巨神のいる世界に招待された等と言い始めたら信じるのは難しいだろう。

 前世の地球でも、神に会ったと言い始めた人間は漏れ無く病院送りになるのではないだろうか。

 「いや、クウネルを信じない訳じゃないんだが。 さすがに、巨神なんて居ないだろう?  じーじから聞いた事は有るけど……おとぎ話だ」

 ロスが頭をボリボリ掻きながら呟く。

 「やれやれ、ロスは本当に馬鹿者じゃわい。 クウネルが言っておる事は間違い無いじゃろう。 巨神様は実在する」

 祖父トールだけが、疑う事無くクウネルの話しをすんなりと受け入れ信じていた。

 「どうしてクウネルの話しが本当ってわかるの?」

 エルザはトールが間違いないと何故言い切れるのか不思議なようだ。

 (私も不思議です。 何故に?)

 「クウネルの話しに出て来た、バザムと名乗る巨人は儂の妻じゃ。 もう、大昔の大戦の時に死んだがの」

 「だが、大昔に死んだおふくろの名前はクウネルも前に親父から聞いてたんだろ? なら、それが夢に出ても可笑しくはないじゃないか」

 「ぐあっはぁっは! クウネルや、バザムはどんな容姿じゃった?」

 (モッチャモッチャモッチャモッチャ、死んでから2日経ってるのにこの美味しさって竜やばくない? 狩り尽くす? ……って、ちょっと急に話し掛けないでよ! 喉に詰まるやん)

 「んぐ、ゴクンッ! お祖母ちゃんの容姿? えっと……茶髪の短髪で、おでこから口元にかけて斜めに古傷が合ったよ。 見た目の歳は……ママぐらいかな? 後は……腕や足に沢山の古傷があって筋肉もムキムキで凄く格好良かった」

 (本当に私のお祖母ちゃんは格好いい巨人だった。 血が繋がって無いって分かってからも、孫として可愛がってくれたし)

 クウネルは祖母の事を考え、少し寂しくなりながら飛竜の肉に齧り付く。

 「そうか……あの頃の見た目のままなのか。 儂だけが、歳をとってしまったのぅ。 まぁ、そんな事はええ。 そうじゃろ! バザムは大昔の王国で一番の美人じゃったんじゃ! 猛アタックして嫁に来てもらったんじゃぞ!」

 祖父トールは何処か寂しそうに笑ったが、それ以上に嬉しそうに微笑んだ。 皺だらけの顔で笑うトールは、大昔に亡くした妻の話しを聞けて嬉しくて仕方がなかった。

 「えぇ? 親父、本当におふくろの容姿はクウネルが言ったのであってるのか?」

 「もちろんじゃ、儂はクウネルにバザムの名前しか言っておらん。 ということはじゃ、巨神様の話しもアスカガルドの話しも本当じゃろうて」

 「んー、でも、そもそも巨神様は何でクウネルを?」

 両親に見つめられたクウネルは食事を続けながら応えた。

 「えっと、お祖母ちゃんが初めての実戦で竜を殺したのをお祝いしたかったんだって。 他の巨人のおじちゃん達も沢山お祝いしてくれた」

 (あの巨神王国流の掛け声とやらは、本当に迫力が凄かったからね)

 「ふむ? もしや、バザムや他の戦士達に祝い言葉を受けたか?」

 「ん、お祖父ちゃん正解。 あれは、凄かったよ」

 「ぐぁっはぁっは! そうか、アレを受けたか! クウネルよ、アレは大昔の戦士団で新人の戦士に贈る名誉有る伝統じゃ。 懐かしいのぉ」

 「あれ? クウネル、どうしてじーじをお祖父ちゃんって呼ぶんだ? 数日前まではじーじだったのに」

 「お祖母ちゃんがね、ばーば呼びは照れるから呼ぶならお祖母ちゃんにしてって、言ってた。 だから、じーじもお祖父ちゃん呼びにする」

 (じゃないと、お祖母ちゃんだけ除け者みたいで嫌だからね)

 クウネルは何やら絶句する両親の顔を見ながらドラゴンステーキを咀嚼する。

 「ぐあっはぁっは! うむ、お祖父ちゃんって呼ばれるのもええのう。さすが、儂の妻じゃ」

 「え?! えぇ!? クウネル、じゃあパパもお父さん呼びが良い!」

 「ママも! お義父さんだけズルいですよ! ママも、お母さんって呼んで! クウネル!」

 (はいはいはいはい、この両親は全く。 どれだけ私の事が好きなのさ。 もう、照れるじゃん。 別にいいけどさ) 

 クウネルは照れながらも、現世の両親達に愛されている事を実感し幸せそうに微笑んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...