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第70話 世界樹の狂った女王
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クウネルとモロが服の事ですれ違いを起こしてる頃、世界樹の都ではエルフの女王に討伐の報告が行われていた。
――世界樹に直接建てられた、エルフの王族が住む大きな館にて。
王座に座る美貌の女王ミアーナが、弓姫長サキの討伐報告を聞いていた。
「――――以上が報告となります」
エリートの近衛長でもあるサキは、自分の報告が完璧だったと自負していた。
しかし報告を受けたエルフの女王ミアーナは、その美貌が崩れるのも躊躇せず顰めっ面をしている。
(え? ……何故だ? 何を失敗した?)
「弓姫長サキ、1つ問おう。 エルフ弓姫隊の損害は何名だ?」
(損害の報告も先程キチンとした筈……)
不思議に思いながらも、高らかに再度報告をする。
「はっ!! 私達、エルフ弓姫隊の損害は0で有ります! 全員無事に帰還致しました!」
「ふぅ……損害が0なのは何故だ?」
ため息を吐き、再度問い掛けられたサキは疑問を抱きながらも答える。
「は、はぁ……我等亜人連合軍の数が多く、討伐対象の巨人トールを完封出来たからだと……」
サキの答えに、心底おかしいと女王ミアーナは笑い出した。
「ふふ……あははははははっ! 真か、お主は本当にそんな風に考えておるのか? あははははははははっ! あ~……こんなに笑うたのは久し振りぞ?」
「なっ! ……では、陛下は私達が損害無く帰還するとは思っていなかったと……?」
「ふふ……アヤツと私は元魔戦将軍ぞ? 私だけでも、今の腑抜けた亜人連合軍等……皆殺しに出来る。 分かるか? お前達は、手加減されたのだよ。 まるで、赤子がじゃれてくるのをあやすように誰も死なせないように気遣われたのだ。 それを、完封だと? あはははははっ!」
プライドの高いサキは歯ぎしりをし、衝撃の事実に鼓動が早くなる。
(そんな……あり得ない。 それに、女王陛下が討伐を許可したと云うことは大罪人だという話しは事実の筈)
サキはまだ笑い続ける女王ミアーナに問い掛けた。
「もし、それが事実なら……自分自身を殺しに来た相手に手加減をしたのは何故でしょうか」
「ふふっ……知れた事よ。 亜人達の未来の為、勇者達が攻めて来た時に抵抗できる兵を減らしたく無かったのよ」
「い、いえ……そんな事は。 事実として、勇者殿は私達の救援に来て下さいましたし、トールを討伐したのも勇者殿です。 彼は味方では……」
「あはははははっ! 本当に、本当に今の亜人達は腑抜けだ。 平和ボケと云うべきか。 味方な筈無かろう? 数年後かもっと早いかは知らぬが……あの大戦と同じ殺戮がまた行われるであろうな」
あっさりと言ってのけた女王ミアーナの発言にサキは目を見開く。
「で、では! 何故、戦友で有る筈のトール討伐を許可したのですか!?」
サキの言葉に、先程まで笑っていた女王ミアーナは真顔となり手を差し出した。
「そうであるな、その話をする前に……報告に有った例の物を貰おう」
「……はっ! こちらです、トールが袋に入れて腰に下げておりました」
サシャが、大事そうに持ち帰った袋を女王に献上する。
「あぁ! やはり、やはりアヤツが隠しておったか。 ふふ、お会いしとうございました……私の愛しいお方」
袋から欠けた角を取り出し、頬擦りを始めた女王に少し引きながらも疑問をぶつけた。
「じょ、女王陛下!? まさか、その欠けた角の為に戦友トールを裏切ったと?!」
サシャがぶつけた疑問は、女王の逆鱗に触れる。 愛しい人に向ける表情をしていたミアーナは突如として激怒した。
「この無礼者めが! この角は、私の愛しいお方魔王様の形見ぞ!? 愚か者めが……そんな事だから真実を見ず騙されるのよ」
あまりの気迫にサキは頭を垂れ、謝罪する。
「ま、魔王様の……形見? これは、とんだ御無礼を! どうか、どうかお許しを……」
元魔戦将軍である女王ミアーナの殺気は凄まじく、全身から冷や汗が滲み出た。
(まさか、まさかこの女王は……死んだ魔族の角の為に戦友を殺させたの? 狂ってる、女王は狂ってる!)
「ふふ、あぁ愛しいお方。 もう良いぞ、大義であった。 我等亜人が滅ぶその時まで、阿呆な平和を満喫するが良い」
完全に興味を失ったサキを放置し、女王ミアーナは玉座から立ち上がる。
「はっ! ……最後に無礼を承知でお聞きします。 勇者達が本当に攻めてきた時、女王陛下はどうされるのですか?」
一縷の望みに賭けたサキの問いに、女王ミアーナは満麺の笑みで答えた。
「ふっ……知れた事よ。 その時は、愛しいお方と共に果てよう。 今度は、絶対に離れません……愛しいお方」
玉座の間から退出する女王ミアーナを頭を垂れたまま見送ったサキの胸中は絶望であった。
それはそうだろう、正しいと確信して亜人最強であり亜人を救った英雄トールを裏切ったのだ。 なのに、トールは最後の最後まで亜人の事を想っていた。 本当にふざけた話だ。
自分達を守ろうとしていた者を、自分達で裏切ったのだから。
(陛下の話が本当なら、何か、何か手を打たなきゃ! 妖精長と鬼人の族長に連絡をとらねばならないな……もう、手遅れかもしれないが)
信じがたい事実を知ったサキだが、直ぐに行動を移す事を決意する。 私達を最後まで想ってくれていたトールを、次こそは裏切らないように。
――世界樹に直接建てられた、エルフの王族が住む大きな館にて。
王座に座る美貌の女王ミアーナが、弓姫長サキの討伐報告を聞いていた。
「――――以上が報告となります」
エリートの近衛長でもあるサキは、自分の報告が完璧だったと自負していた。
しかし報告を受けたエルフの女王ミアーナは、その美貌が崩れるのも躊躇せず顰めっ面をしている。
(え? ……何故だ? 何を失敗した?)
「弓姫長サキ、1つ問おう。 エルフ弓姫隊の損害は何名だ?」
(損害の報告も先程キチンとした筈……)
不思議に思いながらも、高らかに再度報告をする。
「はっ!! 私達、エルフ弓姫隊の損害は0で有ります! 全員無事に帰還致しました!」
「ふぅ……損害が0なのは何故だ?」
ため息を吐き、再度問い掛けられたサキは疑問を抱きながらも答える。
「は、はぁ……我等亜人連合軍の数が多く、討伐対象の巨人トールを完封出来たからだと……」
サキの答えに、心底おかしいと女王ミアーナは笑い出した。
「ふふ……あははははははっ! 真か、お主は本当にそんな風に考えておるのか? あははははははははっ! あ~……こんなに笑うたのは久し振りぞ?」
「なっ! ……では、陛下は私達が損害無く帰還するとは思っていなかったと……?」
「ふふ……アヤツと私は元魔戦将軍ぞ? 私だけでも、今の腑抜けた亜人連合軍等……皆殺しに出来る。 分かるか? お前達は、手加減されたのだよ。 まるで、赤子がじゃれてくるのをあやすように誰も死なせないように気遣われたのだ。 それを、完封だと? あはははははっ!」
プライドの高いサキは歯ぎしりをし、衝撃の事実に鼓動が早くなる。
(そんな……あり得ない。 それに、女王陛下が討伐を許可したと云うことは大罪人だという話しは事実の筈)
サキはまだ笑い続ける女王ミアーナに問い掛けた。
「もし、それが事実なら……自分自身を殺しに来た相手に手加減をしたのは何故でしょうか」
「ふふっ……知れた事よ。 亜人達の未来の為、勇者達が攻めて来た時に抵抗できる兵を減らしたく無かったのよ」
「い、いえ……そんな事は。 事実として、勇者殿は私達の救援に来て下さいましたし、トールを討伐したのも勇者殿です。 彼は味方では……」
「あはははははっ! 本当に、本当に今の亜人達は腑抜けだ。 平和ボケと云うべきか。 味方な筈無かろう? 数年後かもっと早いかは知らぬが……あの大戦と同じ殺戮がまた行われるであろうな」
あっさりと言ってのけた女王ミアーナの発言にサキは目を見開く。
「で、では! 何故、戦友で有る筈のトール討伐を許可したのですか!?」
サキの言葉に、先程まで笑っていた女王ミアーナは真顔となり手を差し出した。
「そうであるな、その話をする前に……報告に有った例の物を貰おう」
「……はっ! こちらです、トールが袋に入れて腰に下げておりました」
サシャが、大事そうに持ち帰った袋を女王に献上する。
「あぁ! やはり、やはりアヤツが隠しておったか。 ふふ、お会いしとうございました……私の愛しいお方」
袋から欠けた角を取り出し、頬擦りを始めた女王に少し引きながらも疑問をぶつけた。
「じょ、女王陛下!? まさか、その欠けた角の為に戦友トールを裏切ったと?!」
サシャがぶつけた疑問は、女王の逆鱗に触れる。 愛しい人に向ける表情をしていたミアーナは突如として激怒した。
「この無礼者めが! この角は、私の愛しいお方魔王様の形見ぞ!? 愚か者めが……そんな事だから真実を見ず騙されるのよ」
あまりの気迫にサキは頭を垂れ、謝罪する。
「ま、魔王様の……形見? これは、とんだ御無礼を! どうか、どうかお許しを……」
元魔戦将軍である女王ミアーナの殺気は凄まじく、全身から冷や汗が滲み出た。
(まさか、まさかこの女王は……死んだ魔族の角の為に戦友を殺させたの? 狂ってる、女王は狂ってる!)
「ふふ、あぁ愛しいお方。 もう良いぞ、大義であった。 我等亜人が滅ぶその時まで、阿呆な平和を満喫するが良い」
完全に興味を失ったサキを放置し、女王ミアーナは玉座から立ち上がる。
「はっ! ……最後に無礼を承知でお聞きします。 勇者達が本当に攻めてきた時、女王陛下はどうされるのですか?」
一縷の望みに賭けたサキの問いに、女王ミアーナは満麺の笑みで答えた。
「ふっ……知れた事よ。 その時は、愛しいお方と共に果てよう。 今度は、絶対に離れません……愛しいお方」
玉座の間から退出する女王ミアーナを頭を垂れたまま見送ったサキの胸中は絶望であった。
それはそうだろう、正しいと確信して亜人最強であり亜人を救った英雄トールを裏切ったのだ。 なのに、トールは最後の最後まで亜人の事を想っていた。 本当にふざけた話だ。
自分達を守ろうとしていた者を、自分達で裏切ったのだから。
(陛下の話が本当なら、何か、何か手を打たなきゃ! 妖精長と鬼人の族長に連絡をとらねばならないな……もう、手遅れかもしれないが)
信じがたい事実を知ったサキだが、直ぐに行動を移す事を決意する。 私達を最後まで想ってくれていたトールを、次こそは裏切らないように。
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