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第122話 接近する気配
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クウネルが街に接近すると、ミンチ肉や突き刺さった地竜のオブジェはあらかた片付いてあった。
大勢のゴブリン兵達が地竜の死体を引きずっている。
また後でまとめてクウネルに骨と皮にするよう依頼が来ることだろう。
「あのオブジェ、センス良かったのにな~。 まぁ仕方ないか、芸術とは凡人には理解されないのさ。 あ~あ、勿体無い」
«――クウネル。 あの地竜のオブジェの採点を聞きますか?»
「あ、いえ大丈夫です。 すみませんでした。 さて、大きめな瓦礫でも片付けるの手伝うか~」
クウネルが瓦礫と化した城壁を跨ぐと、直ぐに周りのゴブリン達が気付き何故かクウネルを拝み始めた。
「え? 何で? ゴブリン独自の感謝を表すやり方なのかな……まぁ、いいや。 どうも~」
クウネルは不思議に思いながら拝むゴブリン達に会釈をし、瓦礫の中心で何やら指示を出している将軍と王様の下へと向かった。
「おーい、王様に将軍さん。 何か手伝おーかー? ……って、私の接近にはもっと早く気付いてたのに、何でそんなにびっくりした顔してるの? もしかして、私の口にお肉付いてる?」
クウネルがゴブリン達を潰さないように座り口元をもごもごさせていると、王様がクウネルに気づかれないように将軍に何やら耳打ちをした。
「ギガ! クウネル様、お心遣い感謝致します! もし、可能でしたら崩れた王城の瓦礫を外に出して頂けますと助かります。 私達には重すぎて、困っていたので」
「ほいほーい、了解。 任せて~! 後、弓兵長君もそうだったけど様呼びは苦手なんだ。 呼び捨てでいいよ」
気さくに話すクウネルに、将軍は目を見開き首を凄まじい速度で横に振った。
「ギ!? そ、そんな事は出来ません! どうかお許しを」
「堅い! 堅いよ将軍さん! もっと気楽にいこうよ」
「ギガガ、ギド将軍は堅物でな。 許してくれ、クウネルよ」
「緩い! 緩いよ王様! っていうか、将軍さんはギドって名前なのか。 ほーん、モロは魔物は基本名前無いって言ってたのにな。 ……まぁ、どうでもいいや。 別にいいよー! じゃあ、ぱぱっと片付けて来るよ」
クウネルは王様とギドに見送られ、安全そうな場所に皮袋を置いてから王城の瓦礫の撤去を開始した。
「と、言っても私からしたらちょっと大きめの石だからな~。 ポイポイポイっと、こりゃすぐ終わるね。 しかし……瓦礫撤去したら、次は街の復興かー。 ここまで関わったんだもん、街の復興も手伝おっかな……」
クウネルは城の瓦礫を片付けながら、ふと立ち止まる。
「……ねぇ、鑑定さん」
«――はい»
「私、ちゃんと守れたかな」
絞り出すように出した声は少し震えていた。
«――クウネルが来なければ、戦いを選択しなければ、避難の時間を稼がなければ、周囲のゴブリン達は1匹も生き残れなかったと推測します。 ちゃんと守れましたよ、クウネル»
鑑定の忖度無い評価に、クウネルは嬉しそうに笑った。
「えへへ……そっか。 ありがとう、鑑定さん。 今度こそ、ちゃんと守れたんだね。 あの時みたいに、逃げるしか出来なかった頃より成長出来たのかな……」
«――クウネル?»
「いや、何でも無いよ。 よーし、瓦礫の撤去が全部終わったら私の土魔法で街を建設してみよっかなー」
この数日間、ずっとモヤモヤしていた気持ちが晴れたクウネルは座ったまま大きく伸びをし瓦礫の撤去を再開しようとした。
しかし、鑑定からの報告に目を見開く。
«――クウネル、この地点に向けて何かが接近しています。 数は――数千です»
「えぇ!? 嘘でしょ? 勘弁してよー!」
屈んで作業していたクウネルは、勢いよく立ち上がり声を張り上げ危険を知らせる。
「王様ー! ギドさん! 何かが向かって来てる! 数は数千! 非戦闘員を直ぐに街の中央に集めて、兵士達は囲んで守備に付いて! 敵なら私が迎撃する! モローーー!」
緊急事態の為、ギド達の返答を待たずにクウネルは動き出した。
ゴブリン達が騒ぎ始めるが、パニックを抑えるのはクウネルの役目ではない。
「アオーーーーーンッ!」
クウネルの大声が聞こえたのだろう。 遠くからモロの遠吠えが響き渡ってきた。
「よし、直ぐに合流できるね。 鑑定さん、接近してくる方角を教えて!」
«――現在地点より、右方向。その方角から接近»
「りょーかい!」
ゴブリン達を踏まないように細心の注意を払いながら街を出る。
そして、一目散に走り出した。
後方にモロと奥さんの姿が一瞬見える。
止まらなくても、クウネルの背中を追って迷わずに来れるだろう。
「よーし、スピードアーーーーーップ!」
◆◇◆
街を出てから数十分、草原を走り抜けた先に深い森が見えたのでとりあえずクウネルは止まって様子を見ていた。
「私の気配察知に反応があるね。 なら……結構近いな」
草原から見ている、深い森から出て来るようだ。
「見張らしもいいし、ここで待ち構えるのが吉かな。 お、モロ待ってたよ~」
「クフークフー、ふ~やっぱり早いねクウネル。 見失いそうで怖かったよ。 で、何が来てるんだい?」
舌を出して荒く呼吸するモロとクイーンが追い付き、無事に合流した。 モロはまだ少し余裕そうだが、妻であるクイーンはふらふらしている。
「まだ分かんないけど数は数千ぐらい、もう直ぐ見える筈だよ。 あ、これ飲んで~」
クウネルは水魔法で手のひらの上に冷たい水を出してモロ達に差し出す。
「ふふん、実は練習したのだよ。 前は、吹き飛ばしちゃったからね。 私、クウネルは学ぶ乙女ですから!」
「クゥン、あはは、ありがとうクウネル。 ほら、お前も頂きなさい」
モロに言われ、クイーンもクウネルの出した水を美味しそうに飲み干した。
「クフークフー、ありがとう貴方。 クウネルにお礼を伝えて下さい」
クイーンの言葉を聞いて、クウネルは思わず微笑む。
「何々ー? 奥さんデレ期なの? ちょっと前は殺気漏れ漏れの増し増しだったの……に? あれ? え? モロの奥さんの言葉が分かる! え?! 何で!?」
クウネルが驚いていると、クイーンも目を見開き驚いた。
「クゥン!? 本当だわ! 私もクウネルの話す言葉が分かるわ!」
「やっばぁ、超嬉しい! 何々、ちょっと向こうでお話しする? そうする?」
«――鑑定Lvupの際に取得した言語機能強化によりクウネルが望む相手と会話が可能です»
鑑定からの補足にクウネルは頷く。
「あ~、そんな事言ってたね。 やっぱり鑑定さん便利だわ~! じゃあ、あの地竜王神と普通に会話したのもソレのお陰かね?」
「クゥン? えっと、クウネル?? 誰に話しかけているんだい? 妻と話せるようになったのは嬉しいんだけど、とりあえず2人とも集中しよっか。 もう見えるよ」
「クゥ……すみません貴方」
モロに注意されクイーンは直ぐ黙ったが、クウネルは喋るのを止める気配は無かった。 そんなクウネルにモロは苦笑いを浮かべる。
「もー、モロは分かってない! 分かってないよ! 私と奥さんには色々あったのよ? それを……あ、ほんとだ」
クウネルが森を見ると、武器を持った多くのゴブリン達と周囲を警戒しながら守る様に付き添っている森狼達がぞろぞろと出て来ていた。
よく見るとゴブリン達も森狼達も傷だらけだ。
「あらまーボロボロやん。 しかも、数千どころか……数万の間違いじゃない? 鑑定さん」
«――訂正。 察知した時点では数千の気配でしたが、現在は3万程の反応が有ります»
「なるへそね、鑑定さんの気配察知範囲外にもまだ沢山居た訳だ。 とりあえず治療したげなきゃ……どうしようモロ。 薬を作ろうにも、皮袋は街に置いて来ちゃった」
「ガルル……うーん、あの森狼は私の傘下では無いね。 よし、私と妻で話しを聞いて来るよ。 クウネルは皮袋を取って来たらいいさ」
頼れるモロの言葉にクウネルは親指を立てて応える。
「さすがモロ! さすモロ! オッケー! じゃあ、よろしくね。 なんか、私を見て戦闘態勢に入ってるし。 居ない方が良さげだ。 よろしくー!」
巨人のクウネルを見て、ゴブリンや森狼達は慌ただしく戦闘態勢に入り始めた。
これ以上刺激したら、録な事にならないだろう。
ここはモロ達に任せるのが最善だと、クウネルは来た道を全力で戻るのであった。
大勢のゴブリン兵達が地竜の死体を引きずっている。
また後でまとめてクウネルに骨と皮にするよう依頼が来ることだろう。
「あのオブジェ、センス良かったのにな~。 まぁ仕方ないか、芸術とは凡人には理解されないのさ。 あ~あ、勿体無い」
«――クウネル。 あの地竜のオブジェの採点を聞きますか?»
「あ、いえ大丈夫です。 すみませんでした。 さて、大きめな瓦礫でも片付けるの手伝うか~」
クウネルが瓦礫と化した城壁を跨ぐと、直ぐに周りのゴブリン達が気付き何故かクウネルを拝み始めた。
「え? 何で? ゴブリン独自の感謝を表すやり方なのかな……まぁ、いいや。 どうも~」
クウネルは不思議に思いながら拝むゴブリン達に会釈をし、瓦礫の中心で何やら指示を出している将軍と王様の下へと向かった。
「おーい、王様に将軍さん。 何か手伝おーかー? ……って、私の接近にはもっと早く気付いてたのに、何でそんなにびっくりした顔してるの? もしかして、私の口にお肉付いてる?」
クウネルがゴブリン達を潰さないように座り口元をもごもごさせていると、王様がクウネルに気づかれないように将軍に何やら耳打ちをした。
「ギガ! クウネル様、お心遣い感謝致します! もし、可能でしたら崩れた王城の瓦礫を外に出して頂けますと助かります。 私達には重すぎて、困っていたので」
「ほいほーい、了解。 任せて~! 後、弓兵長君もそうだったけど様呼びは苦手なんだ。 呼び捨てでいいよ」
気さくに話すクウネルに、将軍は目を見開き首を凄まじい速度で横に振った。
「ギ!? そ、そんな事は出来ません! どうかお許しを」
「堅い! 堅いよ将軍さん! もっと気楽にいこうよ」
「ギガガ、ギド将軍は堅物でな。 許してくれ、クウネルよ」
「緩い! 緩いよ王様! っていうか、将軍さんはギドって名前なのか。 ほーん、モロは魔物は基本名前無いって言ってたのにな。 ……まぁ、どうでもいいや。 別にいいよー! じゃあ、ぱぱっと片付けて来るよ」
クウネルは王様とギドに見送られ、安全そうな場所に皮袋を置いてから王城の瓦礫の撤去を開始した。
「と、言っても私からしたらちょっと大きめの石だからな~。 ポイポイポイっと、こりゃすぐ終わるね。 しかし……瓦礫撤去したら、次は街の復興かー。 ここまで関わったんだもん、街の復興も手伝おっかな……」
クウネルは城の瓦礫を片付けながら、ふと立ち止まる。
「……ねぇ、鑑定さん」
«――はい»
「私、ちゃんと守れたかな」
絞り出すように出した声は少し震えていた。
«――クウネルが来なければ、戦いを選択しなければ、避難の時間を稼がなければ、周囲のゴブリン達は1匹も生き残れなかったと推測します。 ちゃんと守れましたよ、クウネル»
鑑定の忖度無い評価に、クウネルは嬉しそうに笑った。
「えへへ……そっか。 ありがとう、鑑定さん。 今度こそ、ちゃんと守れたんだね。 あの時みたいに、逃げるしか出来なかった頃より成長出来たのかな……」
«――クウネル?»
「いや、何でも無いよ。 よーし、瓦礫の撤去が全部終わったら私の土魔法で街を建設してみよっかなー」
この数日間、ずっとモヤモヤしていた気持ちが晴れたクウネルは座ったまま大きく伸びをし瓦礫の撤去を再開しようとした。
しかし、鑑定からの報告に目を見開く。
«――クウネル、この地点に向けて何かが接近しています。 数は――数千です»
「えぇ!? 嘘でしょ? 勘弁してよー!」
屈んで作業していたクウネルは、勢いよく立ち上がり声を張り上げ危険を知らせる。
「王様ー! ギドさん! 何かが向かって来てる! 数は数千! 非戦闘員を直ぐに街の中央に集めて、兵士達は囲んで守備に付いて! 敵なら私が迎撃する! モローーー!」
緊急事態の為、ギド達の返答を待たずにクウネルは動き出した。
ゴブリン達が騒ぎ始めるが、パニックを抑えるのはクウネルの役目ではない。
「アオーーーーーンッ!」
クウネルの大声が聞こえたのだろう。 遠くからモロの遠吠えが響き渡ってきた。
「よし、直ぐに合流できるね。 鑑定さん、接近してくる方角を教えて!」
«――現在地点より、右方向。その方角から接近»
「りょーかい!」
ゴブリン達を踏まないように細心の注意を払いながら街を出る。
そして、一目散に走り出した。
後方にモロと奥さんの姿が一瞬見える。
止まらなくても、クウネルの背中を追って迷わずに来れるだろう。
「よーし、スピードアーーーーーップ!」
◆◇◆
街を出てから数十分、草原を走り抜けた先に深い森が見えたのでとりあえずクウネルは止まって様子を見ていた。
「私の気配察知に反応があるね。 なら……結構近いな」
草原から見ている、深い森から出て来るようだ。
「見張らしもいいし、ここで待ち構えるのが吉かな。 お、モロ待ってたよ~」
「クフークフー、ふ~やっぱり早いねクウネル。 見失いそうで怖かったよ。 で、何が来てるんだい?」
舌を出して荒く呼吸するモロとクイーンが追い付き、無事に合流した。 モロはまだ少し余裕そうだが、妻であるクイーンはふらふらしている。
「まだ分かんないけど数は数千ぐらい、もう直ぐ見える筈だよ。 あ、これ飲んで~」
クウネルは水魔法で手のひらの上に冷たい水を出してモロ達に差し出す。
「ふふん、実は練習したのだよ。 前は、吹き飛ばしちゃったからね。 私、クウネルは学ぶ乙女ですから!」
「クゥン、あはは、ありがとうクウネル。 ほら、お前も頂きなさい」
モロに言われ、クイーンもクウネルの出した水を美味しそうに飲み干した。
「クフークフー、ありがとう貴方。 クウネルにお礼を伝えて下さい」
クイーンの言葉を聞いて、クウネルは思わず微笑む。
「何々ー? 奥さんデレ期なの? ちょっと前は殺気漏れ漏れの増し増しだったの……に? あれ? え? モロの奥さんの言葉が分かる! え?! 何で!?」
クウネルが驚いていると、クイーンも目を見開き驚いた。
「クゥン!? 本当だわ! 私もクウネルの話す言葉が分かるわ!」
「やっばぁ、超嬉しい! 何々、ちょっと向こうでお話しする? そうする?」
«――鑑定Lvupの際に取得した言語機能強化によりクウネルが望む相手と会話が可能です»
鑑定からの補足にクウネルは頷く。
「あ~、そんな事言ってたね。 やっぱり鑑定さん便利だわ~! じゃあ、あの地竜王神と普通に会話したのもソレのお陰かね?」
「クゥン? えっと、クウネル?? 誰に話しかけているんだい? 妻と話せるようになったのは嬉しいんだけど、とりあえず2人とも集中しよっか。 もう見えるよ」
「クゥ……すみません貴方」
モロに注意されクイーンは直ぐ黙ったが、クウネルは喋るのを止める気配は無かった。 そんなクウネルにモロは苦笑いを浮かべる。
「もー、モロは分かってない! 分かってないよ! 私と奥さんには色々あったのよ? それを……あ、ほんとだ」
クウネルが森を見ると、武器を持った多くのゴブリン達と周囲を警戒しながら守る様に付き添っている森狼達がぞろぞろと出て来ていた。
よく見るとゴブリン達も森狼達も傷だらけだ。
「あらまーボロボロやん。 しかも、数千どころか……数万の間違いじゃない? 鑑定さん」
«――訂正。 察知した時点では数千の気配でしたが、現在は3万程の反応が有ります»
「なるへそね、鑑定さんの気配察知範囲外にもまだ沢山居た訳だ。 とりあえず治療したげなきゃ……どうしようモロ。 薬を作ろうにも、皮袋は街に置いて来ちゃった」
「ガルル……うーん、あの森狼は私の傘下では無いね。 よし、私と妻で話しを聞いて来るよ。 クウネルは皮袋を取って来たらいいさ」
頼れるモロの言葉にクウネルは親指を立てて応える。
「さすがモロ! さすモロ! オッケー! じゃあ、よろしくね。 なんか、私を見て戦闘態勢に入ってるし。 居ない方が良さげだ。 よろしくー!」
巨人のクウネルを見て、ゴブリンや森狼達は慌ただしく戦闘態勢に入り始めた。
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