真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第163話 火葬と埋葬

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 ◆赤髪のクウネルside◆

 赤髪のクウネルは手に着いた土を払う。

 「よし。 その……あの……モロ、これで終わり?」

 赤髪のクウネルはとても大きな洞窟が有る広場にモロの案内で訪れていた。 

 そして、素手と魔法で作った巨大な穴に歩く屍となっていた森狼達の死体を集めて入れ終えた所だ。

 歩く屍と化していた魔物の死体を積んで、赤髪のクウネルの火炎で燃やしていたのだが、森狼だけはきちんと弔いたいとモロが言い始め赤髪のクウネルはそれを渋々了承した。

 (ふん……あんなに悲しそうな顔で言われたら仕方ないじゃん。 全く……やっと助かったと思ったのに、直ぐにこんな労働させるなん……て)

 赤髪のクウネルが周囲を見渡すと、大きな洞窟の周りには幾つもの小さな洞窟があり毛皮や腐った肉が吊るしてるのが見える。

 この大きな洞窟や小さな洞窟が沢山ある場所には、少し前まで多くの森狼達が住んでいた事が見てとれた。

 モロも、周辺を懐かしそうに寂しそうに見つめていて胸が締め付けられる。
 
 赤髪のクウネルは知る由もないが、この場所こそがモロが森狼王として君臨し多くの群れを纏めて暮らしていた森狼の王国だったのだ。

 しかし、突如として飛竜王に襲撃され殆どの群れを殺された。 そして、モロは奮闘の末に呑み込まれたのだが黒髪のクウネルのおかげで生き延びたのだ。

 きっと、モロは王として群れを守れなかった事を悔いているのだろう。

 (……え? なんで私の胸が締め付けられるのよ。 確かにモロは悪い魔物じゃない……と、思う)

 大きな穴に集められた群れの死体を見つめる姿に、やはり赤髪のクウネルの心は揺さぶられる。

 (でも、キュウベイみたいに大切かって言われるとそうじゃないんだよね……。 ん~……アイツの意識が関係してるのかな?)

 自身の感情が分からずに首を捻っていると、別れを済ませたモロがやって来た。

 「クゥン……ははっ、急に名前を呼んでくれるとはどういう風の吹き回しだい? クウネル」

 少し無理をして明るく振る舞うモロに赤髪のクウネルはそっぽを向く。

 「ふんっ! う、うるさいわね! 別に、名前があるなら……呼ぶのが普通だし、狼って呼ぶのが面倒くさくなっただけよ!」

 「クフクフ、そうか。 さて、そうだね……弔う森狼達はこれで全部の筈かな」

 「オーケー、じゃあ火葬してから埋葬しよっか。 燃やすからゴブリン達も離れてー!」

 手伝っていたゴブリン達とモロ達が離れたのを確認してから、大きな穴に火炎を放った。

 「火炎! ガァァァァァアアア!!」

 穴の底は炎で包まれ、大きな火柱が立ち上る。

 キュウベイやゴブリン達とモロは死んだ多くの森狼達に黙祷を捧げ、赤髪のクウネルも静かに目を閉じた。

 (お母さん達の事も、ちゃんと弔いたいな。 ちゃんとアスカガルドに行ってるとしても……この世界ではもう死んだんだから)

 いつか、必ず家族や村の皆を弔うと誓いながら炭へと変わる森狼達に黙祷を捧げる。

 「これで……もう動く事はないよね」

 同じ森狼のモロは、静かに火柱を見つめ続ける。

 「ガフ、あぁ……そうだね」

 なんとも気まずい雰囲気が座る赤髪のクウネルとモロの間に流れる。

 この大きな洞窟のある場所に来てから、キュウベイは黙々と手伝い今も黙って赤髪のクウネルとモロを見守っていた。

 きっと、キュウベイにも思う事があるのだろう。

 (モロの仲間を殺したのは私じゃないけど、動く死体になった狼達の殆んどを倒したのは私だからね……やっぱり、嫌に思ってるのかな)

 パチパチと焼ける音が聞こえる。

 そして、赤髪のクウネルはふと全然空腹が来ないことに気付いた。

 (あれ? そういえば……全然お腹空かない。 こんなもんだっけ? アッチだと結構食べてたのに。 あの化け物の作るご飯、美味しいけど量が半端じゃなかったからな……もしかして食べ過ぎてお腹空かなくなったとか?)

 気まずい雰囲気を誤魔化すように考え事をしていると、頭の中に鑑定の声が響く。

 «――ステータスに暴食関連が全て消えていました。 恐らく、それが原因かと»

 (ふーん……まぁ、別に困らないし、いっか)

 「よし、じゃあモロ。 そろそろ埋葬し……ん?」

 立ち上がろうとした瞬間、普通とは違う気配を感じた。 

 「なんか、気持ち悪い気配がする。 鑑定?」

 «――察知。 いえ、何も反応は有りません»

 「なんだ? 上? 」

 モロは、立ち上がりかけて止まった赤髪のクウネルを心配する。

 「クゥン? クウネル、どうしたんだい?」

 しかし、赤髪のクウネルはモロに答えずに巨木の上を睨むように見上げていた。

 (……うぐ?! 気持ち悪っ!!)

 突如押し寄せた嗚咽感に、思わず口を押さえる。

 (何かが木の枝の上に立ってる……。 なにこれ、こんな気配は知らない……いや違う、知ってる。 この感じ、お母さんやお父さんを殺した奴等と同じ……強すぎる相手の気配だ。 ……うっぷ、早く皆を逃がさなきゃ!!)

 吐き気を我慢し、赤髪のクウネルは上を睨みながら叫んだ。

 「モロ、今すぐ撤退。 キュウベイ私の肩に! 木の上に気持ち悪いぐらい強いのが居るから注意して! モロ、お婆ちゃんやゴブリン達を背中に乗せて全員で逃げて!! モロ達が逃げないと私達も逃げれない!」

 「了解です! 失礼しやす!!」

 キュウベイは赤髪のクウネルの肩に飛び乗り、大弓を構えた。

 「ガウッ?! 分かった、アオーーーーンッ! 早く私の背中に!」

 モロは慌てるゴブリン達を背中に担ぎ、一目散に逃げ出した。

 「ガフ! クウネル、キュウベイ、必ず直ぐに逃げてくれよ!」

 モロ達が走り去り、その背中を見送った赤髪のクウネルは自身の行動に舌打ちをする。

 (ちっ、なんで私こんな事してるんだろ。 お母さん達の仇を討たないといけないのに……)

 「姉御? 大丈夫ですか?」

 キュウベイに心配され、赤髪のクウネルは意識を取り戻す。

 (ダメ、しっかりして私。 お祖父ちゃんに教わったでしょ? 集中、集中しなきゃ)

 「ふー……ありがとうキュウベイ。 大丈夫だよ。 モロも逃げたし、様子見たら即ダッシュで逃げようね」

 「へい! 姉御は必ず俺が守ります!」

 (えへへ……キュウベイと一緒なら勝てるかな?  いや、でも、またあの時みたいになったら……)

 肩に乗るキュウベイを頼もしく思いながらも、失った時の事を考えてしまい赤髪のクウネルは身震いする。

 «――察知?! クウネル、来ます!!»

 鑑定の警告の直後、巨木の上に立っていた何かが音もなく降りてきた。 そして、膝をつきながら何時でも飛びかかれるように構えている赤髪のクウネルと大弓を構えるキュウベイの前に現れた何かは気だるそうに青い髪を掻き上げる。

 「あれ~? なんでバレたのかな? めんどくさいなぁ、まだ見つかる予定じゃ無かったのに……な」

 気だるそうに文句を呟いたのは……人型の何かだった。
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