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第210話 かつての絶望的だった相手
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「クルルル! ガァァァアアアア!」
「きゃっ! 何よ、微妙な距離で火炎吹くとか最低!!」
ネルに襲来した飛竜達は、直接ネルに襲い掛からずに射程内の距離から火炎を放ってきていた。
(コイツら、私の知ってる飛竜とは違うの?! ちょっと確認が必要ね。 鑑定!)
ステータス画面
種族 マウンテン ワイバーン
年齢 25
レベル 66
HP 12000/12000
FP 6800/8000
攻撃力 10000
防御力 4000
知力 8000
速力 15000
スキル 竜鱗Lv3. 飛行Lv6. 火耐性Lv5. 魔物食らい. 魔物殺し. 大物食い. 連携LvMAX
魔法 火炎Lv5
戦技 爪連撃Lv2. 噛み付きLv3. 尻尾回転撃Lv1
状態異常 空腹
(私を昔攫った飛竜並みに強い上に、群れで狩りをするタイプの飛竜なのね。 確かに皮膚の色が少し違うのかも? でも、まぁあの頃の私に比べて強くなったし……雑魚ね!)
急いで鑑定結果に目を通し、ハルバードを振り回した際の風圧で火炎を阻む。
「速射!」
「ガァギャ?!」
キュウベイはネルを守る為に正確無比な矢を大弓から射るが、度重なる戦闘で矢が殆ど尽きていた。
「不味いでさぁ! 姉御、殺れても後……3匹です!」
「分かった! おりゃぁぁ、槍突き!」
ネルは踏み込み、周囲を飛び回る飛竜目掛けてハルバードの切っ先で突く。
戦技として放たれた槍突きの速度は凄まじく、避けれなかった飛竜の1匹を貫いた。
「ガァァッ!!」
地面へと絶命した飛竜が落下し、それを見た他の飛竜達は狙いをキュウベイに変える。
キュウベイは持ち前の速力を使い、木の上を飛んで火炎を回避するが執拗に飛竜達はキュウベイを追い回す。
翼の生えたラプトルの様な見た目の飛竜は余程飢えているのか鋭利な爪でキュウベイを捕まえようと飛び掛かった。
「速射! ちっ、矢が無くなりやした!」
予告通り3匹の飛竜を倒したキュウベイだったが、矢切れを起こし大弓で飛竜の爪を弾く。
「キュウベイに手を出さないで!」
其処にネルのハルバードが振るわれ、飛竜の首が真っ二つに斬れ死体が地面へと吹き飛んだ。
「ガギャァ?!」
「姉御、ありがとうございやす」
「肩に乗ってキュウベイ!」
ネルはキュウベイを回収し、距離をとって火炎を放ってくる飛竜からの攻撃を耐える。
(ちょっと鑑定! 何か策はないの?!)
«――肯定。 土魔法の壁でワイバーンを囲み一網打尽にする事を推奨»
「りょーかい! 土魔法発動!! 伸びろ土壁!」
ネルは土魔法を発動させ、残りの飛竜達を高くそびえ立つ土壁に閉じ込めた。
「キュウベイ、ちょっと我慢しててよ! はぁぁぁぁぁ!」
ネルはハルバードを構え、土壁の届かぬ上へと逃れようと連携を崩した飛竜達を斬り殺す。
その斬撃の速度は凄まじく、膨大なステータスの力にネルが徐々に適応しだしている事を示していた。
「「「「「「ガギャァァァァ?!」」」」」」
「流石です、姉御! ……姉御?」
土壁諸共斬ったネルは自身の成長を実感し、両親の仇である絶望的な力を持っていた転移者である4人の顔を思い出していた。
決して忘れぬ4人の顔を。
「ふふ、コレなら彼奴等を殺せる。 お父さんとお母さんの仇がとれる! あの時の私とは違うのよ! もう、絶望的だと思った飛竜すら雑魚になった。 殺せる、彼奴等を殺せる! お祖父ちゃんを裏切った亜人達も全員……皆殺しに出来る!!」
身体の中から溢れる高揚感をネルは抑えきれない。 赤髪は揺れ、仇の顔を思い浮かべるだけで怒りが憎しみが理性を焼く。
«――ネル! 今暴走したら、キュウベイを傷付けてしまいますよ! 落ち着いて下さい!»
両手の拳から炎がちらつき始め、火が燻りだす。
思考が怒りと憎しみに染まり掛けたその時、鑑定の声が頭の中に響きネルは肩に乗るキュウベイを見た。
(殺せる、殺せる殺せる殺せる! 全員皆殺しに……キュウベイ? キュウベイ……キュウベイ、どうしてそんな顔をしているの?)
ネルを心配するキュウベイの顔を見たネルは自身の両手から炎が出始めている事を気付いた。
「姉御、聞こえやすか? 落ち着いて下せい! 姉御!」
はっきりとキュウベイの声も聞こえ、ネルは必死に炎を抑えようと拳を握り締める。
「大丈夫! 大丈夫! 消えろ、消えろ消えろ消えろ! 此処に仇は居ない、落ち着いて……落ち着くのよ」
理性を取り戻せたネルは怒りと憎しみを鎮め、何とか火を消す事に成功する。
「姉御良かった……大丈夫ですかい?」
拳からは煙が吹き出し、少しの火傷ですんだネルは肩に乗るキュウベイに笑いかけた。
「あはは……もう大丈夫。 ごめんね、びっくりしたよね。 痛たた……」
「姉御、火傷を! 早く治癒の葉で治療しやしょう!」
キュウベイはネルから飛び降り、治癒の木へと向かった。
ネルはそんな優しいキュウベイの後ろ姿を見ながら、もし暴走していたらと考え背筋に冷たいものが走る。
(ねぇ、鑑定。 私……自分が本物だって思ってる。 名前だって、私はクウネルよ。 でも、もしさ……アイツが本物で私はただの怒りと憎しみだけの偽者だったら。 キュウベイに危害を加えてしまう前に、アイツと交代して消えた方が良いのかな?)
この時、初めて鑑定からの返事は無かった。
「きゃっ! 何よ、微妙な距離で火炎吹くとか最低!!」
ネルに襲来した飛竜達は、直接ネルに襲い掛からずに射程内の距離から火炎を放ってきていた。
(コイツら、私の知ってる飛竜とは違うの?! ちょっと確認が必要ね。 鑑定!)
ステータス画面
種族 マウンテン ワイバーン
年齢 25
レベル 66
HP 12000/12000
FP 6800/8000
攻撃力 10000
防御力 4000
知力 8000
速力 15000
スキル 竜鱗Lv3. 飛行Lv6. 火耐性Lv5. 魔物食らい. 魔物殺し. 大物食い. 連携LvMAX
魔法 火炎Lv5
戦技 爪連撃Lv2. 噛み付きLv3. 尻尾回転撃Lv1
状態異常 空腹
(私を昔攫った飛竜並みに強い上に、群れで狩りをするタイプの飛竜なのね。 確かに皮膚の色が少し違うのかも? でも、まぁあの頃の私に比べて強くなったし……雑魚ね!)
急いで鑑定結果に目を通し、ハルバードを振り回した際の風圧で火炎を阻む。
「速射!」
「ガァギャ?!」
キュウベイはネルを守る為に正確無比な矢を大弓から射るが、度重なる戦闘で矢が殆ど尽きていた。
「不味いでさぁ! 姉御、殺れても後……3匹です!」
「分かった! おりゃぁぁ、槍突き!」
ネルは踏み込み、周囲を飛び回る飛竜目掛けてハルバードの切っ先で突く。
戦技として放たれた槍突きの速度は凄まじく、避けれなかった飛竜の1匹を貫いた。
「ガァァッ!!」
地面へと絶命した飛竜が落下し、それを見た他の飛竜達は狙いをキュウベイに変える。
キュウベイは持ち前の速力を使い、木の上を飛んで火炎を回避するが執拗に飛竜達はキュウベイを追い回す。
翼の生えたラプトルの様な見た目の飛竜は余程飢えているのか鋭利な爪でキュウベイを捕まえようと飛び掛かった。
「速射! ちっ、矢が無くなりやした!」
予告通り3匹の飛竜を倒したキュウベイだったが、矢切れを起こし大弓で飛竜の爪を弾く。
「キュウベイに手を出さないで!」
其処にネルのハルバードが振るわれ、飛竜の首が真っ二つに斬れ死体が地面へと吹き飛んだ。
「ガギャァ?!」
「姉御、ありがとうございやす」
「肩に乗ってキュウベイ!」
ネルはキュウベイを回収し、距離をとって火炎を放ってくる飛竜からの攻撃を耐える。
(ちょっと鑑定! 何か策はないの?!)
«――肯定。 土魔法の壁でワイバーンを囲み一網打尽にする事を推奨»
「りょーかい! 土魔法発動!! 伸びろ土壁!」
ネルは土魔法を発動させ、残りの飛竜達を高くそびえ立つ土壁に閉じ込めた。
「キュウベイ、ちょっと我慢しててよ! はぁぁぁぁぁ!」
ネルはハルバードを構え、土壁の届かぬ上へと逃れようと連携を崩した飛竜達を斬り殺す。
その斬撃の速度は凄まじく、膨大なステータスの力にネルが徐々に適応しだしている事を示していた。
「「「「「「ガギャァァァァ?!」」」」」」
「流石です、姉御! ……姉御?」
土壁諸共斬ったネルは自身の成長を実感し、両親の仇である絶望的な力を持っていた転移者である4人の顔を思い出していた。
決して忘れぬ4人の顔を。
「ふふ、コレなら彼奴等を殺せる。 お父さんとお母さんの仇がとれる! あの時の私とは違うのよ! もう、絶望的だと思った飛竜すら雑魚になった。 殺せる、彼奴等を殺せる! お祖父ちゃんを裏切った亜人達も全員……皆殺しに出来る!!」
身体の中から溢れる高揚感をネルは抑えきれない。 赤髪は揺れ、仇の顔を思い浮かべるだけで怒りが憎しみが理性を焼く。
«――ネル! 今暴走したら、キュウベイを傷付けてしまいますよ! 落ち着いて下さい!»
両手の拳から炎がちらつき始め、火が燻りだす。
思考が怒りと憎しみに染まり掛けたその時、鑑定の声が頭の中に響きネルは肩に乗るキュウベイを見た。
(殺せる、殺せる殺せる殺せる! 全員皆殺しに……キュウベイ? キュウベイ……キュウベイ、どうしてそんな顔をしているの?)
ネルを心配するキュウベイの顔を見たネルは自身の両手から炎が出始めている事を気付いた。
「姉御、聞こえやすか? 落ち着いて下せい! 姉御!」
はっきりとキュウベイの声も聞こえ、ネルは必死に炎を抑えようと拳を握り締める。
「大丈夫! 大丈夫! 消えろ、消えろ消えろ消えろ! 此処に仇は居ない、落ち着いて……落ち着くのよ」
理性を取り戻せたネルは怒りと憎しみを鎮め、何とか火を消す事に成功する。
「姉御良かった……大丈夫ですかい?」
拳からは煙が吹き出し、少しの火傷ですんだネルは肩に乗るキュウベイに笑いかけた。
「あはは……もう大丈夫。 ごめんね、びっくりしたよね。 痛たた……」
「姉御、火傷を! 早く治癒の葉で治療しやしょう!」
キュウベイはネルから飛び降り、治癒の木へと向かった。
ネルはそんな優しいキュウベイの後ろ姿を見ながら、もし暴走していたらと考え背筋に冷たいものが走る。
(ねぇ、鑑定。 私……自分が本物だって思ってる。 名前だって、私はクウネルよ。 でも、もしさ……アイツが本物で私はただの怒りと憎しみだけの偽者だったら。 キュウベイに危害を加えてしまう前に、アイツと交代して消えた方が良いのかな?)
この時、初めて鑑定からの返事は無かった。
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