真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第217話 偵察と母からの問い詰め

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 「ねぇ……これ、バレない?」

 「クフクフ、そのままネルはうつ伏せで居てくれよ? ここからなら大丈夫だと思うけど、立ち上がったら直ぐに見つかるだろうね」

 ネル達は海が見える岸辺に到着し、崖の上から眼下の大集落跡地を見ていた。

 青く透き通る様な海の上には巨大な建造物が見えるが、ボロボロだ。

 恐らくトロール達の住んでいた大集落は海岸近くの海上に建てられていたのだろう。

 今も幾つもの木材等の残骸が海の上に浮いており、時折不自然に木材が動き海の中に大きな存在が潜んでいることを示していた。

 「姉御……見える限りでは水竜の姿は無いようですが、何か分かりやすか?」

 「ん、ちょっと待ってね……うわぁ、居る居る。 あの大集落跡地の下に大きな気配が沢山あるよ」

 ネルが気配察知に集中すると、海の中で蠢く気配が現れる。

 (鑑定、数は? 此処からステータスの鑑定も出来ないかな)

 «――確認。 判明――水竜60体の気配を確認。 ステータスの鑑定は視界に入っていない為無理でした。 ネル、私はこれより海岸の地形をアップロードし現在地の確認へと移ります»

 (結構多いわね……でも、前に倒した飛竜を考えたら勝てないことも無いのかな……ん? 現在地の確認?? あ、そういえば海岸に来たら分かるって言ってたわね。 ん、お願い)

 「えっと、数は60体ね。 それで、どうする? もうちょっと近付いてみる??」

 ネルの側で同じ様に四つん這いのキュウベイが目を凝らす。

 「……アレは? 姉御、大集落の中に誰か居るかは分かりやせんか?!」

 「え? ん~……ごめんねキュウベイ。 水竜達の気配が強過ぎて分かんない。 どうしたの? 何か見えた?」

 キュウベイは何やら慌て、同じ様に目を凝らしていたモロが吠えた。

 「ガウッ! これは困ったね……ネル、あの廃墟の中にまだ誰か居るみたいだよ」

 「えっ?!」

 2匹に言われ、少し身を乗り出したネルの視界にも確かに動く物が見える。

 海上に建築された大集落は、海岸から伸びた木の橋で陸と繋がっているのだが、廃墟となった家からこっそり現れた複数の小柄な生き物はその橋を目指して走り出した。

 恐らく水竜に食われる前に橋を渡りきり、陸地まで逃れようとしているのだろう。

 「まさか、トロールの生き残り?! あっ! 水竜達が動き出した!!」

 「姉御! 俺とモロ殿を肩に!!」

 走り出した直後に水竜達の気配が一斉に動くのを察知したネルは直ぐ様立ち上がり、キュウベイとモロを肩に乗せて崖を一気に駆け下りた。

 「「「「「「シャルガァァァァァ!」」」」」」

 その間にも、橋の下からは白色の海蛇に似た水竜が幾つもの顔を出し獲物に喰らいつこうと迫る。

 「しかも、あの大きさ多分子供のトロールよね!? もぉ、最悪! そんなの絶対に見捨てられないじゃない!!」

 ネルはハルバードを構え、橋の上を懸命に走る3匹の子トロール達を救いに向かうのであった。

 ◆◇◆

 ネルが大集落跡地に到着した頃、クウは昼飯を食べながら母に問い詰められていた。

 「ねぇ、クウちゃん。 どうして、あの部屋に入ろうとするの? 田所さんの旦那さんから聞いたわよ~?」

 「え? あ、あはは~……バレてーら。 う~ん、分かんない。 でも、必要な気がするんだよ。 お母さんこそ、何でそんなにあの部屋に入って欲しくないのさ」

 クウからの問い掛けに母は分かりやすく顔を顰める。

 「……入って欲しくないからよ」

 「そ、そっか……」

 普段のおっとりとした少女らしくない母の様子にクウは無難な返答を返した。

 「午後からの修行……どうしよっか」

 「え? う~ん、お願いします! 強くならないといけないので!!」

 「ふふ♪ ソレは……あの部屋に入る為? それとも、アースの事をあの神から問い質す為?」

 母は笑みを浮かべながらクウに問う。

 普段と同じ笑みに見えるが、目は全く笑っていなかった。

 「……両方だよ、お母さん。 何か、大切な事を忘れてる気がするんだ。 ソレがあの部屋に行けば分かるって……何かが訴えてるの」

 クウはどう返すべきか一瞬悩んだが、直感に従い素直に答えた。

 (クウちゃん……あの記憶は殆ど食べた筈なのに。 そう……やっぱり、ずっとは繋ぎ止めれないのね)

 母は目を見開き、少し考えた後に何かを覚悟した表情でクウの手を握る。

 「……そう、分かったわ。 先に言っておくけど、見張りをお願いした田所さんの旦那さんは私の眷属では最強だからね? もし、倒せたなら好きにすれば良いわ。 だから、だからそれまでは……お母さんのクウちゃんで居てほしい。 お願い……」

 「えぇ……? いや、分かんないけどお母さんはお母さんだよ? 大丈夫だってば、のは後にも先にもお母さんだけじゃん」

 理解出来ない母のお願いにクウは首を傾げながら手を握り返した。

 「……そうね」

 母は寂しげに笑うばかりであった。
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