[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第212話 ユアンVS元灼炎

 「……ユアン、久し振りだね」

 エブラノは愛おしそうに、サードでありユアンに語り掛ける。

 しかし、当然ながら返事は無い。

 「サード大先輩……そんな可愛い顔だったんすか」

 「マジかよ。 1番年上なのは知ってたけど、めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか!」

 フィフスとフォースの言う通り、今のユアンは呪いが解け識別不能だった素顔が見えていた。

 「ふふ、君の後輩達は賑やかですな。 ユアン、君の素顔は私の想像通りだ……とても綺麗だよ」

 ゆっくりと大剣を構え近付いてくるユアンに、エブラノは微笑みながら拳を構える。

 「エブラノ様、俺も付き合うぜ」

 同じ様に拳に魔力を込めたフォースがエブラノの隣に立つ。

 「矢での援護は任せて下さいっす」

 「よろしく頼むよ。 戦うのは、四天王を引退して以来だな。 ……はっ!! 元灼炎、全力で行かせてもらう!」

 エブラノの拳に纏っていた魔力が炎の様に燃え上がった。

 ◆◇◆

 大剣を振るうユアンはその身体を精霊人形に変えられたにも関わらず、生前と違わぬ力を持っていた。

 音を置き去りにする剣撃をエブラノのは燃える手刀で捌き切る。

 「ふふ、流石だねユアン。 暗部でも君は最強と名高かった」

 高速で振るわれる大剣とエブラノの手刀がぶつかる度に火花が散り、フォースは手を出せずにいた。

 「う、うぉぉぉ?! 上級魔族って偉そうなだけの魔族だと思ってたのに違うのか!?」

 「フォース知らないんっすか? エブラノ様は上級魔族の中で最強のお方っすよ。 まぁ……長い平和で他の上級魔族達は忘れてたみたいっすけどね」

 フィフスは砦の瓦礫に登り、援護する隙を伺うが攻防が早すぎて狙いが絞れずに戸惑っていた。

 「おっと……ふぅ、少し鈍ったかな」

 ユアンとエブラノの戦いが始まって数分、エブラノの頬が裂け血を噴き出した。

 「エブラノ様! くそ! 俺もやってやるんだ! サードに恋人をこれ以上傷付けさせて堪るか!!」

 フォースは角を生やし、本気でユアンに殴りかかった。 しかし、殴られる瞬間にユアンの額からも天を突く角が生え無機質な瞳は真紅に染まる。

 「魔人化!? くそっ! しまっ……」

 フォースが気付いた時には、ユアンの身体は一瞬で掻き消えた。

 「やれやれ、ダメだよユアン」

 フォースの後ろに光の速度で出現し、凄まじい勢いで大剣を突き刺す。

 「あ、あ……エブラノ様!」

 しかし、刺されたのはフォースとユアンの間に入ったエブラノであった。

 「仲間想いの君が、そんな事をしたらダメだよ……かふっ」

 エブラノは血を吐きながら、ユアンを抱きしめた。

 「す、すみません! 俺、援護しようと……くそ! 足手まといに……本当にすみません!」

 謝るフォースにエブラノの微笑む。

 「君達の出番が来たよ。 フォース、フィフス、このまま私はユアンを離さない。 決して離しはしない。 2人の全力で、私諸共殺るんだ」

 エブラノも全力で角を生やし魔人と化した。 これで、エブラノに残された時間はあと僅かである。

 しかし、そのお陰で抜け出ようと足掻くユアンはエブラノの凄まじい力で押さえ付けられていた。

 「そんな……そんなの! くそが! また俺のせいで、俺のせいで!」

 歯を食いしばり、魔人化しそうなフォースをフィフスが制止する。

 「フォース落ち着くっす! 急がないと、エブラノ様が保たないっすよ!」

 「……分かってる。 分かってるよ! うぁぁぁぁぁ!!」

 フォースは拳に魔力を込める。

 フィフスも角を生やし、弓と矢に魔力を込め始めた。

 「ふふ、ありがとう。 フォース、君が気に病む必要は無い。 君とフィフスが居てくれるから、ユアンを止められるんだ……私1人だったら無理だったよ」

 無機質な顔のまま暴れるユアンをエブラノは愛おしそうに抱き締め続ける。

 「フォース、いくっすよ! 魔弓術秘奥義魔人討ち!」

 「分かってんよ!! 魔格闘術秘奥義魔人貫手!」

 フォースが放った必殺の貫手とフィフスの放った矢が重なり、そのままユアンの胸を貫いた。 当然ながら、抱き締めていたエブラノの胸諸共。

 「がはっ……良くやった、二人共」

 心臓にある精霊を閉じ込めるコアを破壊されたユアンはゆっくりと動きを止め始める。

 「ふふ……ユアン、お帰り。 私と共に……逝こう」

 エブラノは息を引き取る瞬間、ユアンの表情が生前の知っている顔に戻ったのを確かに見た。 そして、微笑みながら口を開く。

 『もう、私の本当の顔を見たな~? じゃあ、結婚確定だからね~』

 戯ける彼女の声を聞いたエブラノは幸せそうに微笑んだまま息絶えた。
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