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ドキドキ二人三脚!
しおりを挟む「じゃ、さっそくやっていこっか。」
ハルたん会長と瑞穂の二人三脚の練習の一環として、全員でパターンを変えながら二人三脚をやってみようと言う話になった。
とりあえず全員体操服に着替え、改めて練習場所に戻った所で瑞穂がそう切り出す。
「あ、ちなみに悠太は確定でここに居る全員と1回ずつね?」
「ちょw」
ほらw片杉が露骨に嫌そうな顔してんじゃねぇかw。
「と言う訳で、まずはそうだなぁ……。」
あ、瑞穂が仕切る感じ……?
色んな意味で嫌な予感しかしないんだが……。
「じゃあまずはハルたんやりなよ!」
「え!?私!?」
「まぁ会長ファーストか。」
これには一応俺も納得して言う。
「そんなレディーファーストみたいなノリで!?」
ハルたん会長はあんまり納得してないっぽいけど……。
「ほらほら、時間が押してんだから早く早く!」
言いながら瑞穂はしゃがみ込んで俺とハルたん会長の足に専用のベルトを巻き付ける。
うわ、これ思ったより距離近い……!
横向きにピッタリと体をくっつけて、お互いの首筋と肩にそれぞれの腕を回して支え合う体制を取る。
その近さ故にハルたん会長から漂ういい匂いがダイレクトに伝わってくる。
さっきまでの練習で汗をかいてるだろうに全然不快な匂いは無い。
むしろ俺の方が不快な匂いをさせてそうで心配になってきた……。
と言うかこの距離感で全員とってマジかよ……。
こんなの心臓がもたないだろ……。
そんな事を考えながら隣のハルたん会長の方を見る。
こっちもこっちで顔を赤くして俯いている。
可愛い。
こ、ここは俺がリードしないと……。
「と、とりあえずいきなり走ろうとしたら危ないしまずはゆっくり歩く練習からしてみようか。
それで慣れてきたらちょっとずつペースを上げていこう。」
「そ、そうね。」
「じゃ、じゃあ、行くぞ?
1、2、1、2。」
少しずつ歩き始める。
覚束無い足取りではあるものの、確実に前に進めている。
「す、凄い!瑞穂とは大違い!」
「聞こえてるんだけど?」
「じゃあちょっとずつペース上げてくよ。」
「う、うん、分かったわ。」
練習は順調に進んだ。
どうやら筋は良いようで、一度慣れてくるとヒヤヒヤする場面も実際に転けることも無く走れるようになっていた。
「ありがとう、悠太君。
とても良い練習になったわ。」
「そりゃ良かった。」
「それじゃ、どんどん行くよ!」
さて、瑞穂の先導のもと次に選ばれたのは絵美だ。
「え!絵美初めてやないん!?めっちゃ上手くない!?」
開始早々抜群の相性を見せる俺と絵美。
「そりゃそうだよー!だって毎日一緒に散歩してるもん!」
「いやそれ犬の悠太やろ!?
それにベルトはリードやないからな!?」
「何となく散歩に連れていかれる犬の気持ちがわかったワン!」
「だからなんで悠も最近そんな乗り気なん!?」
次に蘭ちゃんと組むと……。
「よっしゃ!ウチらの相性見せたるわ!行くで!悠!」
「おぉ……おぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
俺を引きずりながら全力疾走する蘭ちゃん。
こう言うの見た事あるぅぅぅぅぅぅ!?
ロープで縛って車とかと繋いで引きずり回すやつぅぅぅ!?
「ストップストップ!
二人三脚になってないから!?」
「わ、マジやん!スマンな悠……。」
「だ、大丈夫……。」
流石に少し休憩を挟んでから次は片杉。
「あまり近付かないでもらえますか……?」
「いや、しょうがないだろ……。
そう言うルールなんだから。」
「どうだか……。
どうせ下心全開なんでしょう……?」
「そんな訳ねぇだろ……。」
「ふん、口ではなんとでも言えますね。」
こりゃ反論するだけ無駄っぽいな……。
「良いからさっさとやるぞ。
早く終わらせたいんだろ?」
「それはそうですね。
あなたと12,742キロメートル以下の距離で生活するなんて苦痛でしかありませんから。」
「地球の裏側の距離じゃねぇか……。」
「はい、だから常に苦痛と言う事になりますね。 」
「と言うか二人ともなんで地球の裏側の距離なんて知識がそんな一瞬で出てくるの……。」
ハルたん会長が呆れた顔で言う。
「しかもマジやん……。」
スマホを見ながら蘭ちゃんも呆れ顔である。
「ちなみに少しでも触ったらセクハラで訴えますからそのつもりで。」
「破綻してんじゃねぇか……。」
当然そんな条件かつ最悪な相性故に盛大に転ける。
「って!?」
「きゃっ……。」
コイツきゃっとか言うのか……。
なんか意外……。
「な、なんですか。
わ、私だって一応女子なのですからそんな声も出ます……!」
「いや、そうかもしれないけど……意外と可愛いとこあるんだなって……。」
「っ……!?と、鳥肌がたつので離れてください……!」
「いやだからこれ二人三脚!」
訂正!全然可愛いくねぇ!
「私もやりたい!」
と、ここで入口からこっそり覗いていた志麻一ならぬ志麻が元気良く挙手をする。
「ま、せっかくだし良いんじゃない?
仲間外れにするのも可哀想だし。」
「うーんまぁ……。」
「やった!悠太!初めての共同作業だね?」
「ポッと顔を赤く染めながら意味深な事言うんじゃありません……。
それよりお前二人三脚の経験は?」
「無いよ!
だから私の初めては悠太にあげるね!」
「二人三脚の初めてってなんだよ……?」
「あ……でも悠太は初めてじゃないんだよね……。」
「二人三脚の話な!?
ほら!?周りから変な目で見られてんじゃねぇか!?」
……だいぶ脱線したが、早速スタート。
「ふへへ、悠太と合法で接触出来る……。」
「いや……言い方……。」
相変わらず志麻は志麻である……。
初めてとの事だからまずはゆっくり歩く所から、と思っていたのだが、なんと志麻は確実に、そして完璧に俺の足の動きに合わせてくるのだ。
「え、上手い!」
そう言って絵美が拍手する。
「そりゃそうだよ!
悠太の歩くペース、歩幅は完璧に把握してるから!」
志麻は志麻だった……。
もはや驚かない……。
「そ、そうなんだ……あはは……。」
ほら……絵美が苦笑いしてんじゃねぇか……。
「じゃ、最後はあたしね。」
瑞穂が走る側になり、代わりにハルたん会長が俺と瑞穂の足を専用ベルトで固定する。
「ねぇねぇ悠太。」
「なんだよ?ニヤニヤしやがって……。」
この顔の瑞穂は絶対ロクでもない事考えてる……。
「どさくさに紛れて触ってもあたしは怒らないからね?」
「ぶっ!?」
やっぱり!
「お、お前は何言ってんだよ!?」
「えー?肩の話だけど。
悠太は何を想像したのかな?」
コイツ!!
「ほら、行くよ!」
「わ!ちょ!?いきなり!?」
そんな急に引っ張ったら!?
「「うわぁ!?」」
二人して盛大に転ける。
先に俺が背中から倒れ、その上に瑞穂が倒れる形になる。
「ってて……。
大丈夫か……?」
「あ……えっと、うん。」
「二人共大丈夫!?」
絵美が駆け寄ってくる。
「なんとかな……。
瑞穂、大丈夫なら離れてくれるか……?」
「えっ!?あ、いや、ちょっと待って……。 」
「いや、この体制で待つのは流石に……。」
意図せずしてこのまま腕を回せば瑞穂を抱きしめるような体制になり、瑞穂の背中の感触や体温がダイレクトに伝わってきている。
そしてさっきのハルたん会長の時よりも近くでいい匂いが……!
「わ、悠太も瑞穂ちゃんも顔真っ赤!」
「「っ……!?」」
「って……え?瑞穂も?」
「そ、そんな訳無いじゃん!
ほ、ほら、早くやるよ!」
「お、おう。」
体制的に視点は瑞穂の後頭部になる為、顔は見えない。
でも確かに耳が少し赤くなっているような気がした。
普段あんな感じなのにこういう状況で顔赤くなったりするんだなぁ……。
「って!?」
コイツ!?結んでる方の足で同じく結んでる俺の足を踏みやがった!?
「ばーか…。」
そう言ってそっぽを向く。
「い、良いから走るよ!」
「お、おう。」
その後の練習では転ける事なくすぐに走れるようになった。
「二人共息ピッタリになったね!」
そんな様子を見て絵美が拍手する。
「これでも元カノだからね。」
「3日間の、だけどな……。」
「あははは。」
笑って誤魔化しやがった……。
「会長も瑞穂ちゃんもだいぶ慣れてきたみたいだし、良い練習になったね!」
「そやな!ウチらも結構楽しかったしな!」
「引きずり回されただけなんだよなぁ……。」
とまぁ……一波乱も二波乱もあったものの……。
「まぁ、でも……たまにはこう言うのも悪くないな。」
転生前の学生時代、そしてついこないだまで。
運動がそもそも好きじゃない俺にとって体育祭なんて憂鬱の種でしかなかった。
でも今は違う。
疲れはしたけど、なんだか気分が良い。
一緒にその疲れを共有出来る仲間がいる。
その事実に心が満たされる。
そう思うと、少しだけ体育祭も楽しみだと思える気がした。
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