200 / 258
200話突破記念episode!そして彼女達は尾行する
しおりを挟む
※ep200は前ページあとがきに書いた通り特別編でお送りします。
体育祭が終わり、代休となった月曜日の昼下がり。
宏美は休日を利用してこの近辺で1番の大きさを誇る複合商業施設であるオゾンに来ていた。
体育祭明けだし筋肉痛だしで正直出たくはなかったが、母親から半ば強引におつかいを頼まれたのだ。
言われた物はわざわざオゾンに来なくても近くの小さなスーパーで揃うが、どうせ出掛けるならついでに本屋やCDショップなんかも見たいなと思い、少し離れた場所にあるがこちらを選んだ。
さて、バスを乗り継いでオゾンについて早速店内に入ろうとしていた所で…。
「ん?」
一方その頃。
同日同時刻、美江もまたオゾンに来ていた。
今日のお目当ては、最推しであるアーティストの最新シングルのDVD付初回限定盤である。
正直一人でこんなに人が沢山いる場所に来るのは不安もあり、心細さもあった。
でもCDは直接お金を払ってその場で受け取るまでの流れが彼女にとっては譲れないこだわりだった。
以前は予約用紙を書いて店員に渡すシステムだったのが、今では予約もネットで完結する。
陰キャに優しい世界になったと思う。
ならそのまま届けてもらえばと思うかもしれないが、発送と言う発想もないのが美江であった。
けしてダジャレではないぞ!
さて彼女も意を決して目当てのCDショップを目指してオゾンの入口に足を踏み入れたところで。
「…ん…?」
更に更に同日同時刻!
津川瑞穂もまたオゾンに来ていた!
これはもはや偶然と言うより必然と言って差し支えないのではないか!
彼女の目的は秋服の調達であった。
良さそうな物があればばあちゃんにも何か買って帰ろうかな、なんて考えながら、彼女もまたオゾンの入口を潜ろうとして…。
「んんっ!?」
三人揃って驚いた理由は三人共に同じだった。
三人の視線の先には悠太が居る。
ついでにそれを尾行している志麻が後方に居るのはもはや驚かない…。
意図せずして元カノ4人が同時にオフの日の悠太を目撃すると言う奇妙な状況が出来上がってしまった。
…いや、一人はストーカーしてるんだから偶然でもなんでもない訳だが…。
とにかくそんな状況が誰かの思惑なのか出来てしまったのである。
もしそんな状況を考えて作るような奴がいるならとんでもないラブコメ脳であるだろう。
しかもである。
「「「「あいつ、私(あたし)の誘いを断ったのに!」」」」
そう、この男。
そんな奇跡的に集まった4人からの誘いを断ってここに来ているのである。
宏美は体育祭以降積極的になろうと決めたから、どうせこのまま一人で出るくらいならと今朝誘ってみた。
しかし断られた。
そして美江。
一人で買いに行くのが不安であり心細かった彼女は、悠太に付き添いを頼んだ。
しかし断られた!
瑞穂も瑞穂で買い出しに付き合ってと頼んだのだが断られた!
…まぁ以前ランジェリーショップに連れ回されたトラウマがあるから用が無くても断られていた可能性は充分あった訳だが……。
志麻も志麻で体育祭での目論見がことごとく潰され、深刻な悠太不足に陥っていた。
なんとしても体育祭で作る予定だった悠太との密な時間を取り戻す為の時間を作りたかったのである。
そう思っていたのに、である。
意を決して明日1日を私にちょうだい!とメール。
しかし!珍しく悠太が返事を返してきたと思って期待したのに!明日は用があると一蹴されてしまった。
「私との密な時間を断るほど何をしようとしてるんだろう……。」
かくして志麻の予定は、そんな自分との密な時間よりも優先されている悠太の予定を探るストーキングに決まった。
もっとも、ストーキング自体そんな事情が無くても日課として行っている物なのだが、それはそれである。
と、言う訳で。
ここに役者は揃った。
揃ってしまったのである。
ただでさえ意味不明な状況。
しかし!状況はもっと複雑であった!
入口付近にある時計塔下のベンチ。
そこに腰掛けてしきりに時計を気にする悠太。
そしてなんと言っても彼は!
「「「「…なんかいつもと服装違くない…?」」」」
そう!この男!ここぞとばかりに彼女達が見た事の無い新しい服を着ていたのである。
遠目からでも分かる新品の白ワイシャツにスキニージーンズと言う出で立ち!
元々背が高く、比較的痩せ型な悠太である。
不覚にもそれが似合っていてカッコイイと思ってしまったのは4人の総意だった…しかし…!
「あの男…あたしの荷物持ちを断っといてあんな見た事もない服でバッチリ決めちゃってさ…。
しかもあの感じ…!」
瑞穂がちゃっかり荷物持ちと言ってしまってるのはご愛嬌。
「「「「アイツ…デートじゃない…?」」」」
自分達が見た事の無い、まさしくデートの為と言わんばかりの勝負服コーデ。
誰かを待って居るのかソワソワと落ち着かない挙動。
これは…デートではないか。
だとしたら一体誰と!?
また4人の思考は一致した。
元々ストーカーしていた志麻は勿論だが、この時4人の今後の行動は意図せずして一致した。
コイツが誰を待っていて、そして何をするのか。
何がなんでも突き止めてやると…。
かくして元カノ4人からストーカーされてる、なんていう本当に意味が分からない状況になっている事など露知らず。
いや、志麻に関しては結構前から気付いているが。
悠太は今もソワソワと待ち合わせ相手を待っていた。
「まさかあたし以外の元カノの誰か…?
いや…。」
とりあえず瑞穂はその可能性を一度考えつつも、以前二人で勉強会をした事もあると聞いたハルたん会長に電話をかける。
「あ、もしもしハルたん?」
まさかとは思うが、念の為だ。
「何よ…?こんな時間に…。」
電話に出たハルたん会長は寝起きなのか声がまだ眠そうである。
「もう昼前なんだけど…。
まぁいいや。
今日悠太がめちゃくちゃ気合い入れたコーデで誰かを待ってるからハルたんかと思ったけどその様子なら違うみたいだね。」
「は!?え!?ちょ!?なんの話!? 」
それにはハルたん会長も目が覚めたようである。
「うぅん、こっちの話。
それじゃお休み~」
「ちょ!?今どこにい…」
有無を言わさず電話を切る。
予想通りではあるがハルたんではない。
じゃあやっぱり他の元カノ…?
そう考え、瑞穂は注意深く辺りを見回す。
やっぱり金澤さんは悠太の居る位置から少し離れた物陰に隠れてその様子を伺っている。
この地点で金澤さんではないのは間違いないが…。
そして更に辺りを見回していて瑞穂は気付く!
「…ん?」
よくよく見ると志麻のみならず美江や宏美も物陰に隠れて悠太の様子を伺っているではないか!
「いや、本当何だこの状況…。」
そう思うだろう!作者もそう思っている!
とりあえず最初から悠太にしか興味がない志麻は当然こちらに目もくれない。
でも他の二人はこの状況に気付いてそうな物だが…。
しかし他の二人もまた目の前の悠太の待ち合わせ相手を今か今かと待つばかりで周りの事等気にも止めていなかった!
そう、この場で冷静に現状を見れているのは瑞穂だけだった。
そして…それから数分後。
「「「「来た!」」」」
悠太の元に誰かが駆け寄る。
相手は…。
「「「「女だ!」」」」
ほぼ確信していたとは言え、まさか本当に女だとは。
4人の思考がまた一致する。
そして悠太の元に駆け寄ったその女性を見た4人は同時に戦慄する。
その女性は小柄で、悠太と比べると背は肩程しかない。
首筋ほどの長さの茶髪に、薄く化粧が施された色白で整った顔立ち。
服装は薄桃色の花柄ワンピース!
これがまた清楚な彼女にピッタリと合っていた!
「お待たせ!ごめんね!遅くなっちゃった!」
「え、あぁ…。」
それもそのはずである。
悠太もまた彼女の美しさに釘付けであった!
「どうしたの?」
「え?あ、あぁ!俺もさっき来たばっかりだから!」
嘘である。
実際は元カノ達よりもよっぽど早く来ている!
いや同時に来てる志麻は除外だが……。
除外だしそれが嘘だと言うのをリアルに見ていた志麻は知っている!
「あの男…鼻の下伸ばしやがって!」
今にも手提げバッグの紐を噛みちぎりそうな勢いの宏美。
その殺気だった目線に周囲がビクつく!
ちなみに志麻は既に持って来ていた高そうなハンカチを噛みちぎっていた!
「嘘つき!」
それも割と早い段階で!
そんな事で張り合っても意味はない訳だが!
なんならこんな事もあろうかと用意していた予備のハンカチも既に噛みちぎられている!
これも張り合う意味はない!
「それで、どうかな?」
さて、遅れてやって来た件の女はそう言ってその場でくるりと回る。
「かっ、可愛い!宇宙一可愛い!」
「ほんと?嬉しい!」
「「「「あの野郎…!」」」」
この男、デレデレである!
自分達の誘いを断っておきながら!
「なんなんあのデレデレ顔…!宇宙一はひなちゃんじゃなかったん…!」
美江も苛立ちからその場で地団駄を踏む。
「じゃ、行こうか。」
そう言ってナチュラルに腕を組むその女!
「その、悠太君。」
「「「「はぁぁぁ!?」」」」
まさかの名前呼び。
しかもめちゃくちゃナチュラルに腕まで組んで!
あの男、いつの間にあんな可愛い女子と仲を深めていたのか。
「大体…アイツ俺はもう恋愛したくないんだとか言ってなかったっけ…!?」
宏美お気に入りの手提げバッグの肩掛け紐にどんどん彼女の歯がくい込んでいく!
「あんな女が居るだなんて聞いてないんだけど…!」
瑞穂も瑞穂で拳を強く握り締め過ぎて綺麗に仕込んだ付け爪が手にくい込んでいてめちゃくちゃ痛い。
「あ…動く!」
そのまま二人はゆっくりと店内に足を踏み入れる。
当然4人もその後を追おうとして…そして気付く!
「「「あっ…。」」」
元々気付いていた瑞穂はともかく、他三人は他の元カノの存在をここで認識した。
「あ、あなた達も来てたんだ。」
まず宏美がそう言う。
「あたしはさっきから気付いてたけどね…。」
呆れ顔で返す瑞穂。
「ぜ、全然気付かんかった…。」
驚いた様子の美江。
「私も!ずっと悠太しか見てなかったし!」
「「「そうだ(じゃ)ろうね。」」」
志麻の反応に他全員がハモった。
そして三人は改めて思った。
本当、なんだろうこの状況…。
「あ!行っちゃうよ!
話すのは後!とりあえず今は追わなきゃ!」
まさかの志麻が仕切ってる。
流石の現役ストーカーぶりである。
いや現役ストーカーってなんだ…。
出来たら現役アイドルとかにしてほしかったです…。
とりあえず追いかける事に異論は無かった三人はそれに従う…。
「行くよ!元カノストーカー同盟だね!」
ストーカーの先輩だからと言わんばかりにすっかりリーダー気取りな志麻。
「「いやストーカー同盟って…。」」
それにゲンナリな表情の宏美、瑞穂組。
いや…実際尾行してる訳だしそれに近い事をしてるにはしてるけど…。
私(あたし)はまだそんな重い感じじゃないし!
宏美、瑞穂組の思考が被る!
ちなみにあえてまだを付けてるのは念の為である。
深い意図は無いのである、
「ぼ、帽子とサングラスとマスク…持って来とけば良かったかな…。」
「いや…いらないでしょ。」
美江の呟きに宏美がツッコむ。
「だ、だってもしバレた時に誤魔化せんかもしれんし…。」
志麻程ではないが不審者になった事もある美江である。
変装には事欠かない…いや事欠かないなら不審者になってないな…。
と言うか大人しそうなのに結構乗り気じゃん…。
それにゲンナリ顔の宏美。
さて、悠太はと言うと向かった先は…。
映画館であった。
「映画館!?そんなのえっちだよ!!」
「「はぁ…?」」
志麻の突然の発言に何言ってんだコイツ的な反応の宏美、美江組。
「いや…確かに薄暗い場所だし隣に座ったら距離も近いっちゃ近いけど…。」
対してそう言う話に免疫がある瑞穂は呆れながらそう返す。
「そうだよ!どうせ皆映画に夢中だしこっちの事なんて見てないからキスぐらいしてるかもじゃん!」
「「き!キス!?」」
「そ、そんな、こんな人がいっぱい居るのにそんな大胆な事…!」
顔を真っ赤にしてめちゃくちゃ動揺する美江。
「そ、そうだよ。
さ、流石にこんな場所でする訳ないじゃん。
隣だって言ってもちゃんと仕切りだってあるし…。」
宏美も少し頬を染めながら言う。
「あ、折角だからペアシートにしようよ。」
と、ここで件の女が彼女達に更なる爆弾を投下する!
「「「「ペアシートだと!?」」」」
あの!カップルの為に用意された!
仕切りもなくカップルが仲睦まじく寄り添って映画を見れるあの!?
ここでも4人の思考は完全に一致!
「はい!これはクロ!間違いなくクロ!」
そんな中1番最初に口を開いたのは志麻だ。
「いやクロって…。」
宏美は思った。
これが確かに私達と付き合っていた時にだったら。
これは間違いなく浮気である。
問答無用でギルティである。
でも私達はもう今では元カノな訳で。
本来なら悠太が幸せならそれで良いはずだし、祝福するべきなんだろうけど…。
やっぱり気にはなる。
私だって悠君が…。
いやいや…。
と言うかあれだけ頑なに嫌がってた悠君がこんなにあっさり彼女を作る訳ないし!
…確かに状況的にはそうにしか見えないけど!
でもちゃんと見てないと本当にそうかは分からないし!
こ、ここは元カノであり友達でもある私がちゃんと悠君が変な女に捕まってないか見極めなきゃだし…!
「と、兎に角!私達もほら!席を取りに行こ!」
自分に言い訳しながらそう提案する。
「そ、そうじゃね。」
美江が同意する。
「ま、このまま帰るつもりは最初からないしね。」
瑞穂もそう言って同意。
「なら早く買お!」
志麻が先陣を切る。
結局悠太達が座る席の3列後ろの席に並んで座る形となった。
さて、今回二人が見ている映画はCMやSNSで話題のラブロマンス作品である。
高校生カップルの甘酸っぱくも切ない日常を描いた作品である。
それは良いとして……。
「「「「ペアシートだからってくっつき過ぎじゃない…?」」」」
肩を寄せあって映画に目線を向ける2人があまりにお似合いに見えた。
元カノ達のモヤモヤが止まらない!
いつの間にか宏美が苛立ちをまぎらわすつもりで買って入ったキャラメル味のポップコーンが空になってた。
ビックサイズにしたのに!
さて物語も佳境に。
と!ここで主人公とヒロインのキスシーンに突入!
そしてなんと!
「「「「はぁっ!?」」」」
それに当てられたのか、なんとこの女!隣の悠太の横顔に顔を寄せたのである。
悠太も悠太で全く拒むどころか黙ってそれを受け入れている!
…ように見えた。
彼女達からは。
しかし実際は寝ている悠太の耳元に件の女が起きてと囁いているだけだった!
でもそんな事ただでさえ薄暗くて視界が悪い中で、しかもバレないように少し離れた位置に座った彼女達に分かるはずもなく。
「「「「あの女やりやがった…!」」」」
彼女達の思考と声は一致した!
「あのぉ…場内ではお静かにお願いします…。」
スタッフが遠慮がちに言ってくる。
「「「「あ、はい…。」」」」
当然そんな言葉で彼女達の苛立とモヤモヤが収まるはずもなく…。
その後の映画の内容なんて彼女達の頭には当然入って来なかった!
さて上映が終わり劇場を出ようとした時。
「え!?お前ら!? 」
普通にバレた。
まぁ…志麻に関しては最初からバレていた訳だが…。
位置的に上に居るだけあり、終わって上がろうとしている悠太らとバッチリ出くわしてしまった。
「…で、その人誰?」
驚く悠太に対して悪びれる様子もなく、肩を竦めながら聞く瑞穂。
「ふふふ。」
すると、隣の女はここで不敵に笑ったのである!
「な、何笑って…。」
これには瑞穂も思わずたじろぐ。
「あぁあ、ここまでか。
もうちょっと楽しみたかったんだけどなー。」
「あのなぁ…お前らこいつは…「コンタクト、慣れないから目が疲れるんだよね。」」
悠太の言葉を遮り、ポケットからメガネを取り出すその女。
そしてそれをかける。
「えっ! 」
それに一番最初に反応を示したのは美江だ。
「楽しかったね、悠太君。
いやお兄ちゃん?」
そう言って彼女、日奈実は微笑む。
「「「「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
多分今日一声が出た。
スタッフにめっちゃくちゃ怒られました。
「で…どう言う事?」
その後、場所をファミレスに移した一行。
早速瑞穂が悠太を問い詰める。
「あー…えっと…。」
その後、悠太がした説明を纏めるとこうだ。
体育祭の日、告白現場を覗き見された日奈実は悠太を叱りつけた。
そんな日奈実の機嫌を直す為に、悠太がなんでも言う事を聞くと言ってしまったのが全ての始まり。
それに日奈実はじゃあ私とデートしてと一言。
ただし、妹としてじゃなくて、この日は恋人として、と。
呼び方を変えたのもだからで、雰囲気を変えてデートに臨んだのは今日だけはちゃんと異性として見てもらおうという目論見からだった。
普段メガネをかけていて地味な印象だった日奈実なだけに、ガッツリメイクしてメガネも今日はコンタクト。
しかも服装も普段の印象とは全く異なるスタイル。
友達である美江がすぐに気付かない筈である。
「ごめんね、皆さんの事は結構早い段階で気付いてたんだけど。」
いや気付いてたんかい!
総意である。
「マジか、全然気付かなかった。
あ、志麻は気付いてたけど。」
「流石悠太!私の事見つけるの上手過ぎじゃん!
大好き!」
「いや…まぁストーカーだし毎日付きまとわれてたらな…。」
ですよねぇ…。
同じく総意であった。
「そ、それよりあなた!兄妹なのにキスしてなかった!?」
「そ、そうよ…ひなちゃん!どうなん!?」
志麻、美江が詰め寄る。
「え!?日奈実!?したのか!?」
「え!?してないよ!」
「嘘!私達はちゃんとこの目で見たんだから!」
血走った目で詰め寄る志麻!
でもそんな志麻に臆することなく考え込む日奈美。
「あ、もしかしてあれかな。
お兄ちゃんがせっかく良いシーンなのに寝てるから起こそうと思って耳元で囁いた時かな? 」
「なんだ…。
え、それ録音してある?目覚ましにしていい? 」
「もぉ、お兄ちゃんったら…。」
そんな様子に4人は全力のため息。
本当なんだこれ…。
4人の総意である。
どこか安心したような……でもシスコンの悠太ならあながち安心とも言えない状況にゲンナリする…。
「まぁ良いか…。
じゃ、悠太。
今から荷物持ち付き合って。」
肩を竦めてから瑞穂が一言。
「あ!ズルい!私も!」
と、納得いかないとばかりに志麻も挙手!
「わ、私もCDショップに付き合ってもらわんとじゃし!」
そう言ってしがみつく美江。
「じゃあ私とは本屋ね。」
「宏美まで!?」
それに日奈実はやれやれと肩を竦める。
「またやろうね、悠太君?」
「ちょ、日奈実…。」
「ふふふ、じゃ、折角だし皆で回ろっか。」
一度肩を竦めてから日奈実が提案する。
「えぇ!私は悠太と二人の方が!」
それに不満気な志麻。
「あなたには渡さんもん!」
そう言って自分の方に悠太を引き寄せる美江。
「本当罪作りな男だね、悠太。」
ウリウリと肘でグリグリしてくる瑞穂。
それに宏美がやれやれと肩を竦める。
結局、この後は6人で夕方までの時間を過ごすのだった。
めでたしめでたし…なのか?
体育祭が終わり、代休となった月曜日の昼下がり。
宏美は休日を利用してこの近辺で1番の大きさを誇る複合商業施設であるオゾンに来ていた。
体育祭明けだし筋肉痛だしで正直出たくはなかったが、母親から半ば強引におつかいを頼まれたのだ。
言われた物はわざわざオゾンに来なくても近くの小さなスーパーで揃うが、どうせ出掛けるならついでに本屋やCDショップなんかも見たいなと思い、少し離れた場所にあるがこちらを選んだ。
さて、バスを乗り継いでオゾンについて早速店内に入ろうとしていた所で…。
「ん?」
一方その頃。
同日同時刻、美江もまたオゾンに来ていた。
今日のお目当ては、最推しであるアーティストの最新シングルのDVD付初回限定盤である。
正直一人でこんなに人が沢山いる場所に来るのは不安もあり、心細さもあった。
でもCDは直接お金を払ってその場で受け取るまでの流れが彼女にとっては譲れないこだわりだった。
以前は予約用紙を書いて店員に渡すシステムだったのが、今では予約もネットで完結する。
陰キャに優しい世界になったと思う。
ならそのまま届けてもらえばと思うかもしれないが、発送と言う発想もないのが美江であった。
けしてダジャレではないぞ!
さて彼女も意を決して目当てのCDショップを目指してオゾンの入口に足を踏み入れたところで。
「…ん…?」
更に更に同日同時刻!
津川瑞穂もまたオゾンに来ていた!
これはもはや偶然と言うより必然と言って差し支えないのではないか!
彼女の目的は秋服の調達であった。
良さそうな物があればばあちゃんにも何か買って帰ろうかな、なんて考えながら、彼女もまたオゾンの入口を潜ろうとして…。
「んんっ!?」
三人揃って驚いた理由は三人共に同じだった。
三人の視線の先には悠太が居る。
ついでにそれを尾行している志麻が後方に居るのはもはや驚かない…。
意図せずして元カノ4人が同時にオフの日の悠太を目撃すると言う奇妙な状況が出来上がってしまった。
…いや、一人はストーカーしてるんだから偶然でもなんでもない訳だが…。
とにかくそんな状況が誰かの思惑なのか出来てしまったのである。
もしそんな状況を考えて作るような奴がいるならとんでもないラブコメ脳であるだろう。
しかもである。
「「「「あいつ、私(あたし)の誘いを断ったのに!」」」」
そう、この男。
そんな奇跡的に集まった4人からの誘いを断ってここに来ているのである。
宏美は体育祭以降積極的になろうと決めたから、どうせこのまま一人で出るくらいならと今朝誘ってみた。
しかし断られた。
そして美江。
一人で買いに行くのが不安であり心細かった彼女は、悠太に付き添いを頼んだ。
しかし断られた!
瑞穂も瑞穂で買い出しに付き合ってと頼んだのだが断られた!
…まぁ以前ランジェリーショップに連れ回されたトラウマがあるから用が無くても断られていた可能性は充分あった訳だが……。
志麻も志麻で体育祭での目論見がことごとく潰され、深刻な悠太不足に陥っていた。
なんとしても体育祭で作る予定だった悠太との密な時間を取り戻す為の時間を作りたかったのである。
そう思っていたのに、である。
意を決して明日1日を私にちょうだい!とメール。
しかし!珍しく悠太が返事を返してきたと思って期待したのに!明日は用があると一蹴されてしまった。
「私との密な時間を断るほど何をしようとしてるんだろう……。」
かくして志麻の予定は、そんな自分との密な時間よりも優先されている悠太の予定を探るストーキングに決まった。
もっとも、ストーキング自体そんな事情が無くても日課として行っている物なのだが、それはそれである。
と、言う訳で。
ここに役者は揃った。
揃ってしまったのである。
ただでさえ意味不明な状況。
しかし!状況はもっと複雑であった!
入口付近にある時計塔下のベンチ。
そこに腰掛けてしきりに時計を気にする悠太。
そしてなんと言っても彼は!
「「「「…なんかいつもと服装違くない…?」」」」
そう!この男!ここぞとばかりに彼女達が見た事の無い新しい服を着ていたのである。
遠目からでも分かる新品の白ワイシャツにスキニージーンズと言う出で立ち!
元々背が高く、比較的痩せ型な悠太である。
不覚にもそれが似合っていてカッコイイと思ってしまったのは4人の総意だった…しかし…!
「あの男…あたしの荷物持ちを断っといてあんな見た事もない服でバッチリ決めちゃってさ…。
しかもあの感じ…!」
瑞穂がちゃっかり荷物持ちと言ってしまってるのはご愛嬌。
「「「「アイツ…デートじゃない…?」」」」
自分達が見た事の無い、まさしくデートの為と言わんばかりの勝負服コーデ。
誰かを待って居るのかソワソワと落ち着かない挙動。
これは…デートではないか。
だとしたら一体誰と!?
また4人の思考は一致した。
元々ストーカーしていた志麻は勿論だが、この時4人の今後の行動は意図せずして一致した。
コイツが誰を待っていて、そして何をするのか。
何がなんでも突き止めてやると…。
かくして元カノ4人からストーカーされてる、なんていう本当に意味が分からない状況になっている事など露知らず。
いや、志麻に関しては結構前から気付いているが。
悠太は今もソワソワと待ち合わせ相手を待っていた。
「まさかあたし以外の元カノの誰か…?
いや…。」
とりあえず瑞穂はその可能性を一度考えつつも、以前二人で勉強会をした事もあると聞いたハルたん会長に電話をかける。
「あ、もしもしハルたん?」
まさかとは思うが、念の為だ。
「何よ…?こんな時間に…。」
電話に出たハルたん会長は寝起きなのか声がまだ眠そうである。
「もう昼前なんだけど…。
まぁいいや。
今日悠太がめちゃくちゃ気合い入れたコーデで誰かを待ってるからハルたんかと思ったけどその様子なら違うみたいだね。」
「は!?え!?ちょ!?なんの話!? 」
それにはハルたん会長も目が覚めたようである。
「うぅん、こっちの話。
それじゃお休み~」
「ちょ!?今どこにい…」
有無を言わさず電話を切る。
予想通りではあるがハルたんではない。
じゃあやっぱり他の元カノ…?
そう考え、瑞穂は注意深く辺りを見回す。
やっぱり金澤さんは悠太の居る位置から少し離れた物陰に隠れてその様子を伺っている。
この地点で金澤さんではないのは間違いないが…。
そして更に辺りを見回していて瑞穂は気付く!
「…ん?」
よくよく見ると志麻のみならず美江や宏美も物陰に隠れて悠太の様子を伺っているではないか!
「いや、本当何だこの状況…。」
そう思うだろう!作者もそう思っている!
とりあえず最初から悠太にしか興味がない志麻は当然こちらに目もくれない。
でも他の二人はこの状況に気付いてそうな物だが…。
しかし他の二人もまた目の前の悠太の待ち合わせ相手を今か今かと待つばかりで周りの事等気にも止めていなかった!
そう、この場で冷静に現状を見れているのは瑞穂だけだった。
そして…それから数分後。
「「「「来た!」」」」
悠太の元に誰かが駆け寄る。
相手は…。
「「「「女だ!」」」」
ほぼ確信していたとは言え、まさか本当に女だとは。
4人の思考がまた一致する。
そして悠太の元に駆け寄ったその女性を見た4人は同時に戦慄する。
その女性は小柄で、悠太と比べると背は肩程しかない。
首筋ほどの長さの茶髪に、薄く化粧が施された色白で整った顔立ち。
服装は薄桃色の花柄ワンピース!
これがまた清楚な彼女にピッタリと合っていた!
「お待たせ!ごめんね!遅くなっちゃった!」
「え、あぁ…。」
それもそのはずである。
悠太もまた彼女の美しさに釘付けであった!
「どうしたの?」
「え?あ、あぁ!俺もさっき来たばっかりだから!」
嘘である。
実際は元カノ達よりもよっぽど早く来ている!
いや同時に来てる志麻は除外だが……。
除外だしそれが嘘だと言うのをリアルに見ていた志麻は知っている!
「あの男…鼻の下伸ばしやがって!」
今にも手提げバッグの紐を噛みちぎりそうな勢いの宏美。
その殺気だった目線に周囲がビクつく!
ちなみに志麻は既に持って来ていた高そうなハンカチを噛みちぎっていた!
「嘘つき!」
それも割と早い段階で!
そんな事で張り合っても意味はない訳だが!
なんならこんな事もあろうかと用意していた予備のハンカチも既に噛みちぎられている!
これも張り合う意味はない!
「それで、どうかな?」
さて、遅れてやって来た件の女はそう言ってその場でくるりと回る。
「かっ、可愛い!宇宙一可愛い!」
「ほんと?嬉しい!」
「「「「あの野郎…!」」」」
この男、デレデレである!
自分達の誘いを断っておきながら!
「なんなんあのデレデレ顔…!宇宙一はひなちゃんじゃなかったん…!」
美江も苛立ちからその場で地団駄を踏む。
「じゃ、行こうか。」
そう言ってナチュラルに腕を組むその女!
「その、悠太君。」
「「「「はぁぁぁ!?」」」」
まさかの名前呼び。
しかもめちゃくちゃナチュラルに腕まで組んで!
あの男、いつの間にあんな可愛い女子と仲を深めていたのか。
「大体…アイツ俺はもう恋愛したくないんだとか言ってなかったっけ…!?」
宏美お気に入りの手提げバッグの肩掛け紐にどんどん彼女の歯がくい込んでいく!
「あんな女が居るだなんて聞いてないんだけど…!」
瑞穂も瑞穂で拳を強く握り締め過ぎて綺麗に仕込んだ付け爪が手にくい込んでいてめちゃくちゃ痛い。
「あ…動く!」
そのまま二人はゆっくりと店内に足を踏み入れる。
当然4人もその後を追おうとして…そして気付く!
「「「あっ…。」」」
元々気付いていた瑞穂はともかく、他三人は他の元カノの存在をここで認識した。
「あ、あなた達も来てたんだ。」
まず宏美がそう言う。
「あたしはさっきから気付いてたけどね…。」
呆れ顔で返す瑞穂。
「ぜ、全然気付かんかった…。」
驚いた様子の美江。
「私も!ずっと悠太しか見てなかったし!」
「「「そうだ(じゃ)ろうね。」」」
志麻の反応に他全員がハモった。
そして三人は改めて思った。
本当、なんだろうこの状況…。
「あ!行っちゃうよ!
話すのは後!とりあえず今は追わなきゃ!」
まさかの志麻が仕切ってる。
流石の現役ストーカーぶりである。
いや現役ストーカーってなんだ…。
出来たら現役アイドルとかにしてほしかったです…。
とりあえず追いかける事に異論は無かった三人はそれに従う…。
「行くよ!元カノストーカー同盟だね!」
ストーカーの先輩だからと言わんばかりにすっかりリーダー気取りな志麻。
「「いやストーカー同盟って…。」」
それにゲンナリな表情の宏美、瑞穂組。
いや…実際尾行してる訳だしそれに近い事をしてるにはしてるけど…。
私(あたし)はまだそんな重い感じじゃないし!
宏美、瑞穂組の思考が被る!
ちなみにあえてまだを付けてるのは念の為である。
深い意図は無いのである、
「ぼ、帽子とサングラスとマスク…持って来とけば良かったかな…。」
「いや…いらないでしょ。」
美江の呟きに宏美がツッコむ。
「だ、だってもしバレた時に誤魔化せんかもしれんし…。」
志麻程ではないが不審者になった事もある美江である。
変装には事欠かない…いや事欠かないなら不審者になってないな…。
と言うか大人しそうなのに結構乗り気じゃん…。
それにゲンナリ顔の宏美。
さて、悠太はと言うと向かった先は…。
映画館であった。
「映画館!?そんなのえっちだよ!!」
「「はぁ…?」」
志麻の突然の発言に何言ってんだコイツ的な反応の宏美、美江組。
「いや…確かに薄暗い場所だし隣に座ったら距離も近いっちゃ近いけど…。」
対してそう言う話に免疫がある瑞穂は呆れながらそう返す。
「そうだよ!どうせ皆映画に夢中だしこっちの事なんて見てないからキスぐらいしてるかもじゃん!」
「「き!キス!?」」
「そ、そんな、こんな人がいっぱい居るのにそんな大胆な事…!」
顔を真っ赤にしてめちゃくちゃ動揺する美江。
「そ、そうだよ。
さ、流石にこんな場所でする訳ないじゃん。
隣だって言ってもちゃんと仕切りだってあるし…。」
宏美も少し頬を染めながら言う。
「あ、折角だからペアシートにしようよ。」
と、ここで件の女が彼女達に更なる爆弾を投下する!
「「「「ペアシートだと!?」」」」
あの!カップルの為に用意された!
仕切りもなくカップルが仲睦まじく寄り添って映画を見れるあの!?
ここでも4人の思考は完全に一致!
「はい!これはクロ!間違いなくクロ!」
そんな中1番最初に口を開いたのは志麻だ。
「いやクロって…。」
宏美は思った。
これが確かに私達と付き合っていた時にだったら。
これは間違いなく浮気である。
問答無用でギルティである。
でも私達はもう今では元カノな訳で。
本来なら悠太が幸せならそれで良いはずだし、祝福するべきなんだろうけど…。
やっぱり気にはなる。
私だって悠君が…。
いやいや…。
と言うかあれだけ頑なに嫌がってた悠君がこんなにあっさり彼女を作る訳ないし!
…確かに状況的にはそうにしか見えないけど!
でもちゃんと見てないと本当にそうかは分からないし!
こ、ここは元カノであり友達でもある私がちゃんと悠君が変な女に捕まってないか見極めなきゃだし…!
「と、兎に角!私達もほら!席を取りに行こ!」
自分に言い訳しながらそう提案する。
「そ、そうじゃね。」
美江が同意する。
「ま、このまま帰るつもりは最初からないしね。」
瑞穂もそう言って同意。
「なら早く買お!」
志麻が先陣を切る。
結局悠太達が座る席の3列後ろの席に並んで座る形となった。
さて、今回二人が見ている映画はCMやSNSで話題のラブロマンス作品である。
高校生カップルの甘酸っぱくも切ない日常を描いた作品である。
それは良いとして……。
「「「「ペアシートだからってくっつき過ぎじゃない…?」」」」
肩を寄せあって映画に目線を向ける2人があまりにお似合いに見えた。
元カノ達のモヤモヤが止まらない!
いつの間にか宏美が苛立ちをまぎらわすつもりで買って入ったキャラメル味のポップコーンが空になってた。
ビックサイズにしたのに!
さて物語も佳境に。
と!ここで主人公とヒロインのキスシーンに突入!
そしてなんと!
「「「「はぁっ!?」」」」
それに当てられたのか、なんとこの女!隣の悠太の横顔に顔を寄せたのである。
悠太も悠太で全く拒むどころか黙ってそれを受け入れている!
…ように見えた。
彼女達からは。
しかし実際は寝ている悠太の耳元に件の女が起きてと囁いているだけだった!
でもそんな事ただでさえ薄暗くて視界が悪い中で、しかもバレないように少し離れた位置に座った彼女達に分かるはずもなく。
「「「「あの女やりやがった…!」」」」
彼女達の思考と声は一致した!
「あのぉ…場内ではお静かにお願いします…。」
スタッフが遠慮がちに言ってくる。
「「「「あ、はい…。」」」」
当然そんな言葉で彼女達の苛立とモヤモヤが収まるはずもなく…。
その後の映画の内容なんて彼女達の頭には当然入って来なかった!
さて上映が終わり劇場を出ようとした時。
「え!?お前ら!? 」
普通にバレた。
まぁ…志麻に関しては最初からバレていた訳だが…。
位置的に上に居るだけあり、終わって上がろうとしている悠太らとバッチリ出くわしてしまった。
「…で、その人誰?」
驚く悠太に対して悪びれる様子もなく、肩を竦めながら聞く瑞穂。
「ふふふ。」
すると、隣の女はここで不敵に笑ったのである!
「な、何笑って…。」
これには瑞穂も思わずたじろぐ。
「あぁあ、ここまでか。
もうちょっと楽しみたかったんだけどなー。」
「あのなぁ…お前らこいつは…「コンタクト、慣れないから目が疲れるんだよね。」」
悠太の言葉を遮り、ポケットからメガネを取り出すその女。
そしてそれをかける。
「えっ! 」
それに一番最初に反応を示したのは美江だ。
「楽しかったね、悠太君。
いやお兄ちゃん?」
そう言って彼女、日奈実は微笑む。
「「「「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
多分今日一声が出た。
スタッフにめっちゃくちゃ怒られました。
「で…どう言う事?」
その後、場所をファミレスに移した一行。
早速瑞穂が悠太を問い詰める。
「あー…えっと…。」
その後、悠太がした説明を纏めるとこうだ。
体育祭の日、告白現場を覗き見された日奈実は悠太を叱りつけた。
そんな日奈実の機嫌を直す為に、悠太がなんでも言う事を聞くと言ってしまったのが全ての始まり。
それに日奈実はじゃあ私とデートしてと一言。
ただし、妹としてじゃなくて、この日は恋人として、と。
呼び方を変えたのもだからで、雰囲気を変えてデートに臨んだのは今日だけはちゃんと異性として見てもらおうという目論見からだった。
普段メガネをかけていて地味な印象だった日奈実なだけに、ガッツリメイクしてメガネも今日はコンタクト。
しかも服装も普段の印象とは全く異なるスタイル。
友達である美江がすぐに気付かない筈である。
「ごめんね、皆さんの事は結構早い段階で気付いてたんだけど。」
いや気付いてたんかい!
総意である。
「マジか、全然気付かなかった。
あ、志麻は気付いてたけど。」
「流石悠太!私の事見つけるの上手過ぎじゃん!
大好き!」
「いや…まぁストーカーだし毎日付きまとわれてたらな…。」
ですよねぇ…。
同じく総意であった。
「そ、それよりあなた!兄妹なのにキスしてなかった!?」
「そ、そうよ…ひなちゃん!どうなん!?」
志麻、美江が詰め寄る。
「え!?日奈実!?したのか!?」
「え!?してないよ!」
「嘘!私達はちゃんとこの目で見たんだから!」
血走った目で詰め寄る志麻!
でもそんな志麻に臆することなく考え込む日奈美。
「あ、もしかしてあれかな。
お兄ちゃんがせっかく良いシーンなのに寝てるから起こそうと思って耳元で囁いた時かな? 」
「なんだ…。
え、それ録音してある?目覚ましにしていい? 」
「もぉ、お兄ちゃんったら…。」
そんな様子に4人は全力のため息。
本当なんだこれ…。
4人の総意である。
どこか安心したような……でもシスコンの悠太ならあながち安心とも言えない状況にゲンナリする…。
「まぁ良いか…。
じゃ、悠太。
今から荷物持ち付き合って。」
肩を竦めてから瑞穂が一言。
「あ!ズルい!私も!」
と、納得いかないとばかりに志麻も挙手!
「わ、私もCDショップに付き合ってもらわんとじゃし!」
そう言ってしがみつく美江。
「じゃあ私とは本屋ね。」
「宏美まで!?」
それに日奈実はやれやれと肩を竦める。
「またやろうね、悠太君?」
「ちょ、日奈実…。」
「ふふふ、じゃ、折角だし皆で回ろっか。」
一度肩を竦めてから日奈実が提案する。
「えぇ!私は悠太と二人の方が!」
それに不満気な志麻。
「あなたには渡さんもん!」
そう言って自分の方に悠太を引き寄せる美江。
「本当罪作りな男だね、悠太。」
ウリウリと肘でグリグリしてくる瑞穂。
それに宏美がやれやれと肩を竦める。
結局、この後は6人で夕方までの時間を過ごすのだった。
めでたしめでたし…なのか?
0
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
恋愛
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる