彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。

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過ぎた時間は戻らなくても

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やぁ良い子のみんな!三澄お兄さん(強調)だよ!

今日は皆にクイズがあるんだ!

じゃあ出すよ?

子供の時はあるのに大人になって無くなったら後悔する物って何かな!?

正解は~夏休みと言う名の長期連休だよ!

考えても見てほしい。

大人になって働き始めてから1ヶ月以上も休むなんて先にも触れたがよっぽど特別な理由が無ければ普通に職務怠慢案件である。

どころか1週間連続で休むのですら気軽には出来ないし、体調不良なんかの事情でも無ければ職場内で悪く言われたりもするだろう。

そしてそんな不可能を可能にしてしまうのがこの学生時代限定の夏休みなのである。

一度は社会人になりそのチャンスを手放してしまった俺だが、今の俺は再びそのチャンスを掴んだのだ!

そして俺はそれを利用して働きだしてからは想像さえも出来なかったど平日の(強調)昼間に(強調)この辺りでは最大級となるショッピングモール、オゾンの中にある本屋に訪れていた。

考えてみたらこの世界に転生してからは随分とバタバタで、こうしてゆっくり本屋に足を運ぶ機会も無かった。

元来、俺はラノベや漫画、アニメ等を好むオタクなのである。

働きだしてからも暇な時は大体ラノベや漫画を読み漁り、好きな物はグッズも集め、時には自分で描いてみたりするくらいにはのめり込んでいた。

まぁそんな訳で今日ここに来た目的は気になる作品が無いかを探しに来たのもあるのだが、実は目的は他にもある。

「今俺は高校生だけどスマホで見た日付け的には転生前の年数とそんなに変わらないんだよなぁ...。」

つまりである。

理屈で言えば、今の俺は過去の世界にタイムスリップをしたと言うよりは住む世界が変わると同時に若返ったと言う感じなのだろう。

そもそも俺がそのまま若返ったところでこんな風にはならなかっただろうし...。

兎にも角にも、今の状態を正しく把握する為には生前の世界と今の世界がどれほど繋がっているかを理解する必要がある。

と、言う訳で俺がその為に選んだのが本屋なのだ。

生前付近と品揃えがそんなに変わらなければ、最初に考えた通りただ環境が整い過ぎてる事を差し引いても俺は若返っただけと言う事実が証明されるのだ。

「おぉ...やっぱ大体変わらないな。

お、夢幻新刊出てんじゃん!

今日発売日か!

気になってたんだよなぁ。」

夢幻、と言うのは生前の世界で俺が読んでいたラノベである。

普通の高校生海真桐人が、死神神社の巫女として神社に来たものに試練を与える巫女の茜と出会い、世界征服を企む日向誠と戦う為の力を求めて試練に挑むと言う感じのホラー要素が若干あるものの笑いあり涙ありの異能バトルラブコメである。
※作中作が思い付かなかったと言う言い訳のただの自作宣伝です←

「前回いいとこで終わってモヤモヤしてたんだよなぁ。」

表紙の絵柄も(実際にはありません)好きだししばらくそのまま見ていたいが、早速手に取って裏側の作品説明に視線を落とす。

まぁもう買うのは確定なのだがそれはそれである。

「げっ...。」

と、しばし説明書きを読み進めていると、背後から随分と失礼な反応を向ける存在が近付いて来た。

俺は幽霊族の少年じゃないので無視する事にします!

「ちょっと...!」

だって一人でこんな場所にいる時に知り合いと遭遇するとか気まずくない?

そりゃ陽キャはそのまま合流して一緒に行こうぜウェイ!とかなるのだろうが、生憎俺は陰キャぼっちである。

しかもその遭遇した相手は不幸にも元カノなのだ。

これは逃げるしか...逃げられない!

なんとこの娘、涼し気な青の半袖ワンピースに身を包んだ瀬川宏美は逃げようとする俺の服の袖を掴んで来たのである。

「人の顔見て急に逃げるとか酷くない?」

ムッとした表情でそう言ってくる宏美。

「出会って開口一番[げっ...。]も大概だと思うけどな...。」

「だってそりゃ...休みの日のプライベートの時間に元カレと出会ったら[げっ...]って言いたくもなるじゃん?」

「そうだな。

だから俺は逃げようとしてるんだが...。」

「でも今は友達じゃん?」

「ならなんで[げっ...]って言われてんの俺...。」

「それはそれだよ。」

「どれがどれだってばよ...。」

「それよりさ、それ、夢幻でしょ?

新刊買うんだ。」

俺に逃げる意思が無くなったと分かると、宏美は俺が手に取っていた文庫本に目を向ける。

「あ、あぁ。

まぁな、お前も買いに来たのか?」

「一応ね、前までは誰かさんに借りてたけど今は借りれないし。

でも続きは気になるじゃん?」

お察しの通りその誰かさんとは俺の事である。

彼女とは元々SNSを通じて知り合い、お互いオタ仲間だと言うのを知って盛り上がったのがきっかけで仲良くなったのだ。

それだけに付き合ってた時はよくオススメを貸して感想を語り合っていた。

「前回は本当に続きが気になるところで終わってたからな。」

「そう!それ!茜ちゃん、急にだったから本当びっくりした。

どうなるのかずっと楽しみで今日を心待ちにしてたんだ!」

「あぁ、あれは本当びっくりだったよな!

でも俺はあの続きが気になる終わらせ方も良かったと思うけど主人公の幼なじみが部屋に乗り込んで来るシーンも好きなんだよな。」

「分かる!!ほんと千里ちゃん健気で可愛すぎるよね!」

そう言って勢い良く頷く彼女の目は漫画とかなら☆になるくらいに輝いていた。


「パジャマでそのまま来ちゃうとことかさぁ...もう...本当最高だよね!」

楽しそうに、どこか嬉しそうに語る姿はあの時確かに傍にいて幸せを感じていたあの頃の宏美の姿と重なって見えた。

彼女とこんな風に好きな作品の話で盛り上がる時間が好きだった。

隣で見せてくれた楽しそうにはしゃぐ仕草も、嬉しそうに笑う表情も、このままずっと見ていたいと思っていた。

「それであの...えっと...。」

急に黙ったからか、彼女もそれに反応して冷静になったようである。

そうだ、もうそんな時間は終わったんだ。

あの頃は良かったとどんなに振り返っても、こうして転生して若返っても、もう二度と戻らない。

「...なんか、こう言うの久しぶりだよな。」

「う、うん。」

こうして感じる少しの寂しさを、彼女もまた感じているのだろうか。

どちらにせよ、あの時の幸せだった時間は、気持ちは、もう二度と戻らない。

でも、転生した今だからこそ出来る事があるのも事実じゃないだろうか。

「なぁ、もう買ったのか?」

「え、今からだけど...。 」

突然の俺の問いかけに怪訝な表情をする宏美。

「なら俺が買って貸してやるよ。」

「え、それは...。」

そう言うと、宏美は躊躇いがちに返す。

「友達でも貸し借りくらいはすんだろ。

それに新刊だけ持っててもしょうがないだろ?」

「で、でも...。」

彼女もその理屈は分かっているのだろうが、まだ躊躇いが勝っているような感じだ。

「大丈夫、お前も楽しみにしてたんだろうしすぐに読む。

最悪徹夜して明日までには貸してやる。

だからさ、たまにはまた感想言い合ったりしないか?」

「良いの...?」

「嫌か?」

「別に嫌...じゃないけど...。」

そう返しつつも、その表情はどこか嬉しそうだった。

「じゃ、そう言う訳で買ってくるわ。」

「あ、私半分出す!」

「良いっての。」

失ってしまった物は戻らない。

でも失ったからこそまた一から作れる物だってある。

新刊を手にレジに向かう足取りはどこか軽くなっていた。






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